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最強の中二病編
その05 告白の返事
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「それで、その告白、受けたの?」
翌朝。
寮を出てセレナと落ち合い、学園本館に向かって通学していた。
どうして彼女が生徒会長の件について知っているのかというと、俺が話したからだ。
別に実力云々のことを正直に話したわけではない。
〈神話学〉の教室に残っていたのは生徒会長を待っていたから、という辻褄が合う嘘をつき、その後会長から告白されるというまさかのイベントがあった、という簡潔な説明をした。
最初、セレナの顔に浮かんだのは困惑だ。
なぜパッとしない冴えない男子生徒が、清楚系美少女として人気の生徒会長に告白されるのか。
それはおそらく永遠の謎だ。
「俺の返事が気になるのか? 君には関係のないことだろ」
「ちょっと! 告白された、とか言われて、その結末が気にならない人なんていないでしょ!」
「この世界には枠に当てはまらない希少な者もいる。それを忘れない方がいい」
「私は普通に気になる人なの!」
子供のように喚くセレナ。
彼女の言葉にいちいち翻弄されるつもりはない。
俺は自分のペースに相手を巻き込む。その流れに誰も逆らうことはできない。
呆れたような目をしてセレナに向き直り、彼女の肩にそっと手を乗せる。
視線が絡み合い、お互いの距離がグッと近づいた。
セレナの顔が紅潮し、視線がソワソワと落ち着きを失って動き出す。
「な、何よ」
「俺には成すべきことがある。追い求める理想の高みに上り詰めた暁には、恋愛というのも考えるべきなのかもしれない」
「てことは……断ったの?」
「当然だ。学生の恋愛に興じている暇などない」
「そう……なんだ」
肩から手を離し、また歩き始めた。
何か考え込んでいる様子のセレナも、慌てたようにして俺の歩行速度に合わせる。
「オスカーが嘘を言ってるとは思えないけど、やっぱり信じられない。そもそも生徒会長と接点なんてあったの?」
「接点……」
「初対面でいきなり告白されるなんてことないでしょ」
「一目惚れだったらしい。集会で俺を初めて見た時から、俺に惹かれたそうだ」
実際は違うが、この場合、一目惚れが妥当だろう。魔眼で俺の秘めている膨大な魔力を知り、それが気になって声をかけた。似たようなものだ。
とはいえ、当然ながら痛い反撃も考えられる。
「生徒会長がオスカーに? オスカーって、顔立ちはまあまあ整ってる方かもしれないけど……めちゃくちゃハンサムってわけでもないし……なんかパッとしないのよね」
ほぼ悪口だった。
人の目を引かない、薄い顔立ち。
印象に残るものといえば、右頬の切り傷くらいか。もし生徒会長が「顔の切り傷フェチ」の人ならば、俺の顔はストライクといったところ。
「八乙女会長は──いや、アリアは……顔の切り傷を見ると性的興奮を覚える人間らしい」
「アリア……性的興奮……」
セレナはセレナで、俺の口から飛び出たふたつの言葉に衝撃を隠せないでいた。
生徒会長のことをわざわざ「アリア」と言い直したのは、俺と会長がやはり親密な関係ではないか、という疑いを持たせるためだ。
それがたとえ恋愛関係でなかったとしても、生徒会長と繋がっているとなれば、やはり西園寺オスカーはその背後に何かを隠している、という絶妙な演出をすることができる。
「心配するな。俺は生徒会長と付き合うつもりはない」
「誰が心配なんか──ッ!」
セレナが急に黙る。
俺の人差し指が、彼女の唇を押さえたからだ。伝わってくる、唇のしっとりとした柔らかさ。そして彼女の体温。
「お前を独りにはしない。約束しよう。これからもこうして、俺が隣を歩いてやる」
「!」
頭から湯気が出るように。
美少女の顔が一気に熱くなる。
俺は彼女から視線をそらさなかった。
真剣に言っているんだ、ということを伝えるために。そうすることで、孤高な少年オスカーにも心があることを演出する。
俺はこの瞬間を楽しんだ。この場の主導権を握っているのは俺だ。
俺の一言が、全てを決める。
彼女を喜ばせることも、苦しめることも、狂わせることもできる。
「このままだと授業に遅れる。急ごう」
蒸発し尽くしたかのように抜けた顔で立ちすくむセレナを急かす。
「……うん」
彼女はまだ意識がはっきりしていないような声で返事をすると、まるで恋人かのような距離で俺の隣を歩くのだった。
《キャラクター紹介》
・名前:二階堂セレナ
・年齢:16歳
・学年:ゼルトル勇者学園1年生
・誕生日:9月29日
・性別:♀
・容姿:長い金髪、緑のツリ目
・身長:160cm
・信仰神:戦いの神ミノス
《次回予告》
生徒会長からの告白の返事を断ったオスカー。
セレナに説明したことのどこからどこまでが本当で、どこからが嘘なのか。
告白騒動の真相に迫る!
※次回は三人称視点となります。以後、タイトルの後に☆がついている話は三人称視点になります。
翌朝。
寮を出てセレナと落ち合い、学園本館に向かって通学していた。
どうして彼女が生徒会長の件について知っているのかというと、俺が話したからだ。
別に実力云々のことを正直に話したわけではない。
〈神話学〉の教室に残っていたのは生徒会長を待っていたから、という辻褄が合う嘘をつき、その後会長から告白されるというまさかのイベントがあった、という簡潔な説明をした。
最初、セレナの顔に浮かんだのは困惑だ。
なぜパッとしない冴えない男子生徒が、清楚系美少女として人気の生徒会長に告白されるのか。
それはおそらく永遠の謎だ。
「俺の返事が気になるのか? 君には関係のないことだろ」
「ちょっと! 告白された、とか言われて、その結末が気にならない人なんていないでしょ!」
「この世界には枠に当てはまらない希少な者もいる。それを忘れない方がいい」
「私は普通に気になる人なの!」
子供のように喚くセレナ。
彼女の言葉にいちいち翻弄されるつもりはない。
俺は自分のペースに相手を巻き込む。その流れに誰も逆らうことはできない。
呆れたような目をしてセレナに向き直り、彼女の肩にそっと手を乗せる。
視線が絡み合い、お互いの距離がグッと近づいた。
セレナの顔が紅潮し、視線がソワソワと落ち着きを失って動き出す。
「な、何よ」
「俺には成すべきことがある。追い求める理想の高みに上り詰めた暁には、恋愛というのも考えるべきなのかもしれない」
「てことは……断ったの?」
「当然だ。学生の恋愛に興じている暇などない」
「そう……なんだ」
肩から手を離し、また歩き始めた。
何か考え込んでいる様子のセレナも、慌てたようにして俺の歩行速度に合わせる。
「オスカーが嘘を言ってるとは思えないけど、やっぱり信じられない。そもそも生徒会長と接点なんてあったの?」
「接点……」
「初対面でいきなり告白されるなんてことないでしょ」
「一目惚れだったらしい。集会で俺を初めて見た時から、俺に惹かれたそうだ」
実際は違うが、この場合、一目惚れが妥当だろう。魔眼で俺の秘めている膨大な魔力を知り、それが気になって声をかけた。似たようなものだ。
とはいえ、当然ながら痛い反撃も考えられる。
「生徒会長がオスカーに? オスカーって、顔立ちはまあまあ整ってる方かもしれないけど……めちゃくちゃハンサムってわけでもないし……なんかパッとしないのよね」
ほぼ悪口だった。
人の目を引かない、薄い顔立ち。
印象に残るものといえば、右頬の切り傷くらいか。もし生徒会長が「顔の切り傷フェチ」の人ならば、俺の顔はストライクといったところ。
「八乙女会長は──いや、アリアは……顔の切り傷を見ると性的興奮を覚える人間らしい」
「アリア……性的興奮……」
セレナはセレナで、俺の口から飛び出たふたつの言葉に衝撃を隠せないでいた。
生徒会長のことをわざわざ「アリア」と言い直したのは、俺と会長がやはり親密な関係ではないか、という疑いを持たせるためだ。
それがたとえ恋愛関係でなかったとしても、生徒会長と繋がっているとなれば、やはり西園寺オスカーはその背後に何かを隠している、という絶妙な演出をすることができる。
「心配するな。俺は生徒会長と付き合うつもりはない」
「誰が心配なんか──ッ!」
セレナが急に黙る。
俺の人差し指が、彼女の唇を押さえたからだ。伝わってくる、唇のしっとりとした柔らかさ。そして彼女の体温。
「お前を独りにはしない。約束しよう。これからもこうして、俺が隣を歩いてやる」
「!」
頭から湯気が出るように。
美少女の顔が一気に熱くなる。
俺は彼女から視線をそらさなかった。
真剣に言っているんだ、ということを伝えるために。そうすることで、孤高な少年オスカーにも心があることを演出する。
俺はこの瞬間を楽しんだ。この場の主導権を握っているのは俺だ。
俺の一言が、全てを決める。
彼女を喜ばせることも、苦しめることも、狂わせることもできる。
「このままだと授業に遅れる。急ごう」
蒸発し尽くしたかのように抜けた顔で立ちすくむセレナを急かす。
「……うん」
彼女はまだ意識がはっきりしていないような声で返事をすると、まるで恋人かのような距離で俺の隣を歩くのだった。
《キャラクター紹介》
・名前:二階堂セレナ
・年齢:16歳
・学年:ゼルトル勇者学園1年生
・誕生日:9月29日
・性別:♀
・容姿:長い金髪、緑のツリ目
・身長:160cm
・信仰神:戦いの神ミノス
《次回予告》
生徒会長からの告白の返事を断ったオスカー。
セレナに説明したことのどこからどこまでが本当で、どこからが嘘なのか。
告白騒動の真相に迫る!
※次回は三人称視点となります。以後、タイトルの後に☆がついている話は三人称視点になります。
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