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14話 形勢逆転
しおりを挟むタハラ・レイン視点
「ねえ、本当にルーナと新人ちゃんの2人で良かったの?」
村を襲った魔獣の追跡中、レインが言った。
「問題ない。ルーナは私情を仕事に持ち込む奴じゃないって
お前が一番よく知ってるだろ」
「そりゃあ、そうだけどさ。他にもし村を襲った魔獣が2人の方を襲ったらどうするのさ。
村の人守りながらだと厳しいんじゃない?」
「それこそ問題はねえよ。ルーナも十分強いし、あいつもいるし」
「あいつって新人ちゃんのこと?ずいぶん信用してるんだね」
「まあ。俺が学生時代、勝てなかった奴が3人居る。
一人目は剣聖、グレイブ。二人目は魔法学校の校長。
そしてあろうことか三人目が彼女だ。あいつが負けるやつなら
俺がいても厳しいよ」
レインは信じられないという風に目を見開きながら
「ウソでしょ」
「ウソなら良かったんだけどな」
会話をしながらも2人は足は止めなかった。
だんだんと魔獣の気配が強くなってきている。
かなり近づいてきているのだ。
「雑談も終わりにしよう。おいでなすったぞ」
ズシンズシンと大地が揺れて、木々が踊る。
2人の目の前には、巨大な狼のような魔獣が表れていた。
「援護頼む。俺に当てるなよ」
「了解。しくじらないでよ」
エマ視点
「敵だ。戦闘準備して」
ルーナの声が村に響いた。
その声を聞いて村人達に動揺が走る。
「うそ、もう戻ってきたの」
「ばかな、タハラさん達がやられたのか」
「こわいよ、こわいよお母さん」
パニックになる寸前のようだ。
「大丈夫です。落ち着いてください」
村人達1人1人に声をかけて
なんとか落ち着かせる。
予想外なのは確かだが、冷静さを欠いてはいけない。
小屋の扉が勢いよく開いて、
その次の瞬間にルーナさんが飛び込んできた。
「エーマ!! 村の人達をここに集めて。
魔獣が来てる。しかも一匹じゃない」
「複数!!一匹じゃないんですか」
報告では村をおそった魔獣は一匹というはずだった。
にもかかわらず襲撃は複数。
なにかがおかしかった。
「わからない。魔獣はわたしがやる。あなたは防御魔法を貼って
みんなを守って」
「でも、ひとりじゃ」
ルーナは携えていた剣を抜いた。
あたしがミスをしたせいで今の状況になってるから、
自分のミスは自分で解決する。
「戦いだけに集中したい。だからお願い」
「うん、わかった。気をつけて」
「がぁああああああああああ」
ルーナさんの獣のような叫びと共に剣が振りをろされ
魔獣を頭から切り裂いた。
すでに村には同じように切り裂かれ絶命した
ものが2体転がっている。
村を襲撃しに来たのは全部で13匹。
残りは10匹だ。
わたしたちが聞かされていたよりも多すぎる
数がこの村を襲撃している。
魔獣は狼のような姿をしており、それは報告と同じだった。
でも、違和感があるとすれば報告よりもひどく小さいのだ。
村にあった足跡に彼らはすっぽりとおさまってしまう。
あきらかにサイズが違う。
姿が同じで、サイズが小さいということは
・・・・・・子ども?
村を襲った魔獣が、妊娠をしたメスだった。
そう考えると辻褄があう。
村の人達でも追い払えたのは、妊娠していて弱っていたから。
村を襲ったのは栄養補給といったところか。
わたしたちが村に到着したくらいに出産をして、
子ども達がもう動いて自発的に狩りをしている。
魔獣とは恐ろしい生き物だ。
ただ今のところありがたいことに迎撃は上手くいっている。
わたしが村の人達を守ることに専念をして、
ルーナさんが魔獣を倒すことに集中する。
役割を分担することで
ルーナさんは守りを気にせずに
全力で戦うことができているからかなり優性だ。
また時間がたてばこの魔獣達の母と戦っているであろうタハラ
たちも増援として帰ってきてくれるはずだ。
それに私たちの目的は護衛であって殲滅じゃないから、
時間だけかせぐという方法もある。
これは、いけそうだ。
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