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9話(1)

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 夜、ゴブリンAちゃんが、また私を抱きまくらのように抱きついてくる。なんか、Aちゃについている二つのお山、どんどん大きく柔らかくなってる気がするのだけど。これもたくさんご飯を食べていることと関係しているのだろうか。それに対して私のは・・・。


 いや、うらやましくなんてない。それに寝心地もいいから別に不満なんてないから。うらやましくなんて、ないから。


 「た、たいへんだあ、みんな起きろ!」


 私が本当にどうでもいいことで葛藤をしていると、ゴブリンの慌てたような声が聞こえてきた。見張りを担当しているゴブリンが洞窟の入り口から叫んでいる。顔には焦りの表情がうかんでいた。緊急の報告のようだ。


 まだスヤスヤと眠りがっしりと私を掴んで離そうとしてくれないゴブリンAちゃんをちょと乱暴に引き剥がして彼の元に向かう。ごめんよ、だって彼、深刻な顔してるんだもん。


 まだ日は昇っておらず壁に付けられた松明だけであたりは薄暗い。こんな時間に一体どうしたのだろうか?


 あたりをみまわすと、他のゴブリン達もおなじ状況で目をこすりあくびをしながら、なんだどうしたとのろのろと起きようとしている。彼らを横目に私が彼にどうしたの?と聞くと彼は


 「隣の村のやつらが助けを求めて来たんだ!ひどいケガもしている」


 と、震えた手で外の広場の方を指しながら言った。予想外の報告に私は背筋が凍る思いをした。


 この村の近くには私達の村と同じようなゴブリンの村が複数存在している。一緒にこそ住んではいないけど、足りない物を交換したり協力して狩りをしたりするなど友好な関係を築づいていて、仲間のようなものだった。


 そんな彼らが、ケガをしてこの村に訪れてきている。あきらかにおかしな状況だろう。もしケガをしただけならば自分の村で治療することだって出来るはずだ。それにケガの治療をしてほしいという頼みならケガ人自体を寄こす必要などまったくないはず。


 にも関わらず、ケガ人が直接この村に来ている。村に残っていること自体が危険になったのかもしれない。となると・・・


 「わかった、すぐ行くね」


 私はゴブリンに短く返事をすると、すぐに彼が指さす方向に向かった。嫌な予想が頭の中をよぎった。


 隣の村は襲われたのかも知れない。自分たちよりもつよい何者かに。そうとでも考えなければひとりも無事なゴブリンが残っていないなど考えられやしない。私の予想は間違っていてほしいと心で思いながら、ケガ人のもとまで走った。
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