12 / 45
9話(1)
しおりを挟む
夜、ゴブリンAちゃんが、また私を抱きまくらのように抱きついてくる。なんか、Aちゃについている二つのお山、どんどん大きく柔らかくなってる気がするのだけど。これもたくさんご飯を食べていることと関係しているのだろうか。それに対して私のは・・・。
いや、うらやましくなんてない。それに寝心地もいいから別に不満なんてないから。うらやましくなんて、ないから。
「た、たいへんだあ、みんな起きろ!」
私が本当にどうでもいいことで葛藤をしていると、ゴブリンの慌てたような声が聞こえてきた。見張りを担当しているゴブリンが洞窟の入り口から叫んでいる。顔には焦りの表情がうかんでいた。緊急の報告のようだ。
まだスヤスヤと眠りがっしりと私を掴んで離そうとしてくれないゴブリンAちゃんをちょと乱暴に引き剥がして彼の元に向かう。ごめんよ、だって彼、深刻な顔してるんだもん。
まだ日は昇っておらず壁に付けられた松明だけであたりは薄暗い。こんな時間に一体どうしたのだろうか?
あたりをみまわすと、他のゴブリン達もおなじ状況で目をこすりあくびをしながら、なんだどうしたとのろのろと起きようとしている。彼らを横目に私が彼にどうしたの?と聞くと彼は
「隣の村のやつらが助けを求めて来たんだ!ひどいケガもしている」
と、震えた手で外の広場の方を指しながら言った。予想外の報告に私は背筋が凍る思いをした。
この村の近くには私達の村と同じようなゴブリンの村が複数存在している。一緒にこそ住んではいないけど、足りない物を交換したり協力して狩りをしたりするなど友好な関係を築づいていて、仲間のようなものだった。
そんな彼らが、ケガをしてこの村に訪れてきている。あきらかにおかしな状況だろう。もしケガをしただけならば自分の村で治療することだって出来るはずだ。それにケガの治療をしてほしいという頼みならケガ人自体を寄こす必要などまったくないはず。
にも関わらず、ケガ人が直接この村に来ている。村に残っていること自体が危険になったのかもしれない。となると・・・
「わかった、すぐ行くね」
私はゴブリンに短く返事をすると、すぐに彼が指さす方向に向かった。嫌な予想が頭の中をよぎった。
隣の村は襲われたのかも知れない。自分たちよりもつよい何者かに。そうとでも考えなければひとりも無事なゴブリンが残っていないなど考えられやしない。私の予想は間違っていてほしいと心で思いながら、ケガ人のもとまで走った。
いや、うらやましくなんてない。それに寝心地もいいから別に不満なんてないから。うらやましくなんて、ないから。
「た、たいへんだあ、みんな起きろ!」
私が本当にどうでもいいことで葛藤をしていると、ゴブリンの慌てたような声が聞こえてきた。見張りを担当しているゴブリンが洞窟の入り口から叫んでいる。顔には焦りの表情がうかんでいた。緊急の報告のようだ。
まだスヤスヤと眠りがっしりと私を掴んで離そうとしてくれないゴブリンAちゃんをちょと乱暴に引き剥がして彼の元に向かう。ごめんよ、だって彼、深刻な顔してるんだもん。
まだ日は昇っておらず壁に付けられた松明だけであたりは薄暗い。こんな時間に一体どうしたのだろうか?
あたりをみまわすと、他のゴブリン達もおなじ状況で目をこすりあくびをしながら、なんだどうしたとのろのろと起きようとしている。彼らを横目に私が彼にどうしたの?と聞くと彼は
「隣の村のやつらが助けを求めて来たんだ!ひどいケガもしている」
と、震えた手で外の広場の方を指しながら言った。予想外の報告に私は背筋が凍る思いをした。
この村の近くには私達の村と同じようなゴブリンの村が複数存在している。一緒にこそ住んではいないけど、足りない物を交換したり協力して狩りをしたりするなど友好な関係を築づいていて、仲間のようなものだった。
そんな彼らが、ケガをしてこの村に訪れてきている。あきらかにおかしな状況だろう。もしケガをしただけならば自分の村で治療することだって出来るはずだ。それにケガの治療をしてほしいという頼みならケガ人自体を寄こす必要などまったくないはず。
にも関わらず、ケガ人が直接この村に来ている。村に残っていること自体が危険になったのかもしれない。となると・・・
「わかった、すぐ行くね」
私はゴブリンに短く返事をすると、すぐに彼が指さす方向に向かった。嫌な予想が頭の中をよぎった。
隣の村は襲われたのかも知れない。自分たちよりもつよい何者かに。そうとでも考えなければひとりも無事なゴブリンが残っていないなど考えられやしない。私の予想は間違っていてほしいと心で思いながら、ケガ人のもとまで走った。
1
お気に入りに追加
48
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
女神様から同情された結果こうなった
回復師
ファンタジー
どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
この称号、削除しますよ!?いいですね!!
布浦 りぃん
ファンタジー
元財閥の一人娘だった神無月 英(あずさ)。今は、親戚からも疎まれ孤独な企業研究員・27歳だ。
ある日、帰宅途中に聖女召喚に巻き込まれて異世界へ。人間不信と警戒心から、さっさとその場から逃走。実は、彼女も聖女だった!なんてことはなく、称号の部分に記されていたのは、この世界では異端の『森羅万象の魔女(チート)』―――なんて、よくある異世界巻き込まれ奇譚。
注意:悪役令嬢もダンジョンも冒険者ギルド登録も出てきません!その上、60話くらいまで戦闘シーンはほとんどありません!
*不定期更新。話数が進むたびに、文字数激増中。
*R15指定は、戦闘・暴力シーン有ゆえの保険に。
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~
Lunaire
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
他作品の詳細はこちら:
『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】
『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】
『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる