美しき吸血鬼は聖女に跪く

朝飯膳

文字の大きさ
上 下
47 / 103
猫かぶり聖女×奴隷吸血鬼

16

しおりを挟む
「お、お呼びでしょうか……」

 びくびくとわたしの様子をうかがうヴィヴィーナは、わたしについている使用人の中でも一番気が弱い。しかし、同時に、金さえ払えばしっかり仕事をこなすしたたかさがあった。わたし専用の御者の兄譲りの性格をしているのである。

 お金、という分かりやすいものがなければ、強い者になびいて、長いものに巻かれる性格をしているが、お金さえ払えば仕事はする。ヴィヴィーナの兄を見ていれば、それは信用できる。

「ヴィヴィーナ、アンタ、わたしに買われなさい」

 そう言って、わたしは彼女に小袋を持たせる。――中身は全て、ティディアン銀貨だ。数を演出するため、また、平民の彼女に使いやすいように銀貨にしたが、換金すれば金貨にもなる。彼女の兄を買収したのと同じ金額だ。
 中身を確認したヴィヴィーナは、分かりやすく目を輝かせる。

「それを受け取れば、アンタは名目上だけでなく、絶対的なわたしの使用人になる。神殿から命じられた仕事以外もこなさないといけない。でも、お金には困らない。――アンタの兄からきいてるでしょ?」

 ヴィヴィーナは興奮気味に、こくこくと頭を上下に振った。「やってくれるわね」というわたしの言葉に、彼女は否定するはずもなく。

「じゃあ、まずは何か食べ物を買ってきて。誰にもバレずにね。消化がよくてそれなりの品質ならなんでもいいわ。――ああ、お金はこれを使って。釣銭は好きにしていいわ」

 わたしは、小袋とは別に、硬貨を握らせる。彼女はそれを受け取るが、少し不思議そうな表情を見せた。

「お食事でしたらそちらが――」

 ちらっと見るのは、ヴィヴィーナでない、別の使用人が用意した食事だ。先ほど、ドドが口にして、毒がある、と断言した。

「もう、今後、わたしはアンタの買ってきたものしか食べないわ。アンタが買ってきたものに『も』何か混ぜられてたら、今度はアンタが一番に疑われるから」

 そう言うと、彼女はサッと顔を青くさせた。この食事が、どういうものか分かってしまったのだろう。

「犯人はまだ探さなくていいわ。先にわたしが万全に動けるようになりたいから。分かったら、さっさと何か買ってきて」

「か、かしこまりました」

 ヴィヴィーナは一礼して、そそくさと部屋を出ていく。――久々に、まともなものが食べられそうだ。
 元気になったらとりあえず、ドドに血をあげないと……。
 わたしはそんなことを考えながら、ベッドへと再び寝そべった。酷く、疲れた。

「ドド、ヴィヴィーナが戻ってきたら起こして。少し、眠るわ」

「はい、シャシャ様」

 ドドの返事を聞きながら、わたしは目を閉じた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

女の子がひたすら気持ちよくさせられる短編集

恋愛
様々な設定で女の子がえっちな目に遭うお話。詳しくはタグご覧下さい。モロ語あり一話完結型。注意書きがない限り各話につながりはありませんのでどこからでも読めます。pixivにも同じものを掲載しております。

大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました

扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!? *こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。 ―― ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。 そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。 その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。 結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。 が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。 彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。 しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。 どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。 そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。 ――もしかして、これは嫌がらせ? メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。 「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」 どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……? *WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。

初めてのパーティプレイで魔導師様と修道士様に昼も夜も教え込まれる話

トリイチ
恋愛
新人魔法使いのエルフ娘、ミア。冒険者が集まる酒場で出会った魔導師ライデットと修道士ゼノスのパーティに誘われ加入することに。 ベテランのふたりに付いていくだけで精いっぱいのミアだったが、夜宿屋で高額の報酬を貰い喜びつつも戸惑う。 自分にはふたりに何のメリットなくも恩も返せてないと。 そんな時ゼノスから告げられる。 「…あるよ。ミアちゃんが俺たちに出来ること――」 pixiv、ムーンライトノベルズ、Fantia(続編有)にも投稿しております。 【https://fantia.jp/fanclubs/501495】

【R18】聖女のお役目【完結済】

ワシ蔵
恋愛
平凡なOLの加賀美紗香は、ある日入浴中に、突然異世界へ転移してしまう。 その国には、聖女が騎士たちに祝福を与えるという伝説があった。 紗香は、その聖女として召喚されたのだと言う。 祭壇に捧げられた聖女は、今日も騎士達に祝福を与える。 ※性描写有りは★マークです。 ※肉体的に複数と触れ合うため「逆ハーレム」タグをつけていますが、精神的にはほとんど1対1です。

傾国の聖女

恋愛
気がつくと、金髪碧眼の美形に押し倒されていた。 異世界トリップ、エロがメインの逆ハーレムです。直接的な性描写あるので苦手な方はご遠慮下さい(改題しました2023.08.15)

エッチな下着屋さんで、〇〇を苛められちゃう女の子のお話

まゆら
恋愛
投稿を閲覧いただき、ありがとうございます(*ˊᵕˋ*) 『色気がない』と浮気された女の子が、見返したくて大人っぽい下着を買いに来たら、売っているのはエッチな下着で。店員さんにいっぱい気持ち良くされちゃうお話です。

性処理係ちゃんの1日 ♡星安学園の肉便器♡

高井りな
恋愛
ここ、星安学園は山奥にある由緒正しき男子校である。 ただ特例として毎年一人、特待生枠で女子生徒が入学できる。しかも、学費は全て免除。山奥なので学生はみんな寮生活なのだが生活費も全て免除。 そんな夢のような条件に惹かれた岬ありさだったがそれが間違いだったことに気づく。 ……星安学園の女子特待生枠は表向きの建前で、実際は学園全体の性処理係だ。 ひたすら主人公の女の子が犯され続けます。基本ずっと嫌がっていますが悲壮感はそんなにないアホエロです。無理だと思ったらすぐにブラウザバックお願いします。

お屋敷メイドと7人の兄弟

とよ
恋愛
【露骨な性的表現を含みます】 【貞操観念はありません】 メイドさん達が昼でも夜でも7人兄弟のお世話をするお話です。

処理中です...