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☆酒好き追放聖女×俺様系伝説の吸血鬼
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普段ご飯を食べ、酒を飲んでいる食事処は、宿屋も併設していて、普段からそこに部屋を取っているわたしだが、その部屋に男を連れ込むようなことはしない。普通に、いつも寝泊まりしている宿でそういうことをするのは恥ずかしい。
わざわざ一度外に出て、別の宿を取ったのだが――。
「――どうした?」
土壇場になって、わたしの中の警戒心が、ギュンっと急上昇した。
先に部屋に入った男が、こちらに笑みを浮かべて、首を傾げる。でも、それが、わたしには、警戒心を薄めるように作った笑顔で、同時に、妙に、攻撃性のある表情にしか見えなかった。
「――……貴方、人間じゃないでしょ」
わたしは思わず、言っていた。
部屋を開けて、灯りを付けるまでの、ほんのわずかな時間。その一瞬の間、彼の瞳が光っていたように見えたのだ。
もし、何かしら魅了の能力のような物を持っている、人型の人外だったら、あの吸い込まれるような不思議な魅力を感じた瞳も、説明がつく。
この世界、人間しかいなかった前の世界とは違い、獣人を初めとした亜人種が数多くいる。その中には、人と同じ形をしているだけで、人間を捕食するような種族も存在していた。
わたしを害する為に、声をかけたのか。女を狙う人外にはいくつか心当たりがある。わたしがただの女ではないことが、彼にとっての誤算か、それとも、分かっていて声をかけたかのか。
「……はぁ、ここまで来てバレるか」
さっきまでの甘い声とは違い、低い、取り繕うことのない声。
やっぱり、と思うのと同時に、すばやく、わたしは腕を掴まれて部屋へと引きずり込まれた。一瞬で扉がしまり、鍵もかかる音がする。どちらも触れていないのに勝手に動くとは、魔法が使えるタイプか。
咄嗟のことに、体が反応しない。意識はしっかりしているとはいえ、それなりにお酒が入っている。機敏な動きはできなかった。
抵抗出来ないまま、わたしは引きずられるようにベッドまで連れ込まれ、そのままベッドの上に押し倒される。
ぼす、とベッドが少し跳ねた。
わたしの上に覆いかぶさる男の瞳は、やはり鈍く光っていた。笑みを深める男の口には、立派な牙が。
「――吸血鬼、か」
「ご名答」
男はわたしの服のボタンを外しながら言う。
まあ、吸血鬼なら、わたしを喰い殺すこともない。吸血鬼というのは意外と小食で、わたしが彼に吸血されたことによって出血性ショックを起こす前に彼らの腹は満腹となるのだ。
死ぬ心配もないなら、血くらいくれてやってもいいかな、と思っていたのだが――。
「旅をしているのは本当さ。でも、思っていた以上にこの辺りは若い女が少ない。焦ったよ。まあ、いいさ。このオレに血を飲んでもらえること、光栄に思うんだね」
「ア?」
――思ってもみない言い分に、わたしは、つい、今にも首筋に噛みつこうとしていた男の横っ面を、思いっきりひっぱたいた。
わざわざ一度外に出て、別の宿を取ったのだが――。
「――どうした?」
土壇場になって、わたしの中の警戒心が、ギュンっと急上昇した。
先に部屋に入った男が、こちらに笑みを浮かべて、首を傾げる。でも、それが、わたしには、警戒心を薄めるように作った笑顔で、同時に、妙に、攻撃性のある表情にしか見えなかった。
「――……貴方、人間じゃないでしょ」
わたしは思わず、言っていた。
部屋を開けて、灯りを付けるまでの、ほんのわずかな時間。その一瞬の間、彼の瞳が光っていたように見えたのだ。
もし、何かしら魅了の能力のような物を持っている、人型の人外だったら、あの吸い込まれるような不思議な魅力を感じた瞳も、説明がつく。
この世界、人間しかいなかった前の世界とは違い、獣人を初めとした亜人種が数多くいる。その中には、人と同じ形をしているだけで、人間を捕食するような種族も存在していた。
わたしを害する為に、声をかけたのか。女を狙う人外にはいくつか心当たりがある。わたしがただの女ではないことが、彼にとっての誤算か、それとも、分かっていて声をかけたかのか。
「……はぁ、ここまで来てバレるか」
さっきまでの甘い声とは違い、低い、取り繕うことのない声。
やっぱり、と思うのと同時に、すばやく、わたしは腕を掴まれて部屋へと引きずり込まれた。一瞬で扉がしまり、鍵もかかる音がする。どちらも触れていないのに勝手に動くとは、魔法が使えるタイプか。
咄嗟のことに、体が反応しない。意識はしっかりしているとはいえ、それなりにお酒が入っている。機敏な動きはできなかった。
抵抗出来ないまま、わたしは引きずられるようにベッドまで連れ込まれ、そのままベッドの上に押し倒される。
ぼす、とベッドが少し跳ねた。
わたしの上に覆いかぶさる男の瞳は、やはり鈍く光っていた。笑みを深める男の口には、立派な牙が。
「――吸血鬼、か」
「ご名答」
男はわたしの服のボタンを外しながら言う。
まあ、吸血鬼なら、わたしを喰い殺すこともない。吸血鬼というのは意外と小食で、わたしが彼に吸血されたことによって出血性ショックを起こす前に彼らの腹は満腹となるのだ。
死ぬ心配もないなら、血くらいくれてやってもいいかな、と思っていたのだが――。
「旅をしているのは本当さ。でも、思っていた以上にこの辺りは若い女が少ない。焦ったよ。まあ、いいさ。このオレに血を飲んでもらえること、光栄に思うんだね」
「ア?」
――思ってもみない言い分に、わたしは、つい、今にも首筋に噛みつこうとしていた男の横っ面を、思いっきりひっぱたいた。
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