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装備屋へ

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『さぁ、装備更新だ! 』



  などと息巻いては見たものの、僕はホノカがどうやって生産のための設備を手に入れるのか知らなかった。

 

  僕と同じく、ホノカはゲームを初めてまだ数時間。



  その間の大体の時間は僕と一緒にレベリングをしていた。



  彼女から溢れる引っ張り力はどこから溢れているのだろうか。



「ねぇ、ホノカ? 生産って言ってもそれどこでやるの?」

「あぁ、それなら考えてあるよ!」



  良かった。ちゃんと計画があったみたいだ。



「さっき歩きながら掲示板を見てたらね、生産職用のミニクエストがあるらしくって! 今そこに向かってるよっ! 」



  へぇ、掲示板とかあるんだなぁこのゲーム。あとで僕も見てみようっと。



  そんなことを考えていたら、どこからかいい匂いが。



「あっ、ライト! プリンの屋台だって! 美味しそー」

「ほんとだ! お金もあるし…… 寄ってく? おごるよ」

「えっ、本当!? ありがとう! 絶対いい装備作るよー」



  報酬は僕の方が多くもらったから、軽い気持ちで奢ると言ってみたら結構喜んでくれた。



「お兄さん、プレーン一つと…… ホノカ、イチゴとプレーンどっちがいい?」

「うーん、私もプレーンでっ!」

「お兄さんごめん、プレーン二個ね」



「ん、あまーい! おいっし!」



  僕たちは、プリンを食べながら目的の場所へと歩く。卵の味が濃いこのプリンは長時間の戦闘で疲れた体と脳を急速に癒していく。



「ほんっとリアルと遜色ない味がするね…… ていうか今まで食べたプリンのなかで一番美味しいかも!」



 ホノカも喜んでパクついている。



「良ければまた今度一緒に来ない? 僕イチゴ味も気になるんだよね!」

「いいね、来よう来よう!」



 

 そして石畳の道を歩くこと数分。



「生産職を持ってる人がね、そのお店に行くと…… ほらここっ!」



  ホノカが立ち止まった。鎧を背景に、ハンマーと剣がクロスした渋い看板が大きな建物に掛けられている。



「鍛冶屋、かな? 」



  金属の懐かしい匂いがした。



  故郷ではユミとライアンの武具、それに僕の短剣のメンテナンスをしてくれる鍛冶のおっちゃんがいて、彼の店にここはよく似ていた。



  「正確には装備屋さんだね。 鍛冶工房と革工房、そして木工工房が併設されてるらしいの! 冒険者の装備を一括お任せって謳い文句でやってるって!」



「へー、それは興味深いね。ここにこれば装備が揃うっていうのはすっごく便利だね!」



  前世では、フルプレートメイルを使っていたライアンと、革鎧で済ませていた僕とで装備を購入する場所が違っていた。

  別に大きく不便だった訳じゃないけれど、便利なのは良いことだ。



  「それでね、それでねライト! ここに生産職の見習いジョブを持ってる人が訪ねると……」



  ホノカは木で出来た重厚な扉を開け店の中に入る。



  すると……



「いらっしゃーい。……うん? おっと! まだどの分野にも染まっていない見習いのお嬢ちゃん! ご購入かい? それとも……入門かい? 」



  顔面を髭で溢れさせた小柄なおじさんが、勢いよくそうまくし立てた。



  ……その毛ちょっとはラドーに分けてあげればいいのに。
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