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切り札
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私はサバイバル番組に参加するタレントだった。
参加者を追う『鬼』から全力で逃げ切る。途中『任務』をこなしたり、『切り札』を発動させたりと、体力だけでなく頭も使う。
見事最後まで生き残れば、賞金を生存者で山分け出来る。
まず開始時に、参加者は『切り札』を1枚支給される。『切り札』にはそれぞれ様々な効果があり、任務完了時にも追加支給される。
さて、芸人:モリモトは開始時に『強奪』(他人の所持切り札を全て強制奪取)の札を引き当てた。
そして任務を完了し、『生贄』(捕まりそうになった自分の身代わりにするか、新たに呼び出した鬼に対象者を捕まえさせ強制終了)の札3枚を手に入れた男性アイドル:ケンゴと出会った。
モリモトは何食わぬ顔で『任務クリアすごいっすね!』『さすがスターは違う』などと褒め称える。
「何の切り札貰えたの?」
「えーと、『生贄』3枚」
「…いいねえ、『強奪』発動!!」
《強奪発動。ケンゴの所持する生贄3枚は、モリモトに渡ります》
生贄の札3枚を手にしたモリモトは、ニヤッと笑った。
「『生贄』1枚発動、ケンゴ君!」
《生贄発動。近くの鬼を呼び寄せ、ケンゴを捕まえます》
「そんな…!」
驚くケンゴはそのまま現れた鬼に捕まり、退場。モリモトはカメラに吐き捨てるように呟く。
「俺はどんな手使ってでも、この業界に爪痕を残したいんだ。悪いな」
次にモリモトが遭遇したのは、私。生贄札を2枚も持ってるモリモトは余裕綽々で、世間話をする。
ところが。
角を曲がった瞬間、鬼が2体出現。咄嗟にバラバラに逃げ始めたが…。
「『生贄』発動!! 都子へ!」
《生贄発動。鬼は都子を捕まえます》
切り札発動指示が出たら、逃げるのをすぐに止めないとならない。
「何で今なのさ!」
走るのを止めたが、追って来る鬼1体は私から10メートルしか離れておらず、もう1体もその5メートル程奥から追ってくる。
圧倒的不利。
「悪く思うなよ。これも切り札運ってヤツさ」
嘲笑うモリモトは逃げ去る。
(間に合え!!)
私は鬼2体の鼻先に札2枚を突きつけ叫んだ。
「『支配』2枚発動!!」
《支配2枚発動。鬼2体を都子は支配下につけました》
鬼は目前でピタリと止まる。2体は静かに私の斜め後ろへ移動し、距離を保った。
(イケた、か?)
私の使った『支配』は、札1枚につき鬼1体を支配下につける。
別の鬼と遭遇時に自分の身代わりに『生贄』として使ったり、支配下の鬼を放ち、他者を捕らえて強制終了等も出来る、特殊な切り札だ。
元々、開始時に私へ支給されたのは『三倍』(入手した札の枚数を3倍にする)だった。
ある任務で『支配』を入手したので、遠慮なく『三倍』を使った。
その時は『これで鬼に3回出くわしてもその都度捕まえて、更に3回また鬼に出くわしても捕まえた鬼をそれぞれ身代わりに放ち、計6回鬼を無効化できる!』と考えていたのだが。
(一気に2枚使えて良かった)
モリモトに鬼を1体放とうかと思ったが、視界から居なくなっていた(対象が視界に居ないと切り札は使えない)。
私は復讐を誓った。
場面は、若手女性タレント:カエデと男性アイドル:コウタの遭遇に切り替わる。
「同じメンバーのケンゴが、モリモトさんに嵌められたみたいで…」
「らしいですよね! 本当ひどい!!」
そんな2人と、鬼を連れた私がバッタリ出くわす。2人は慌てて逃げようとするので、私は叫ぶ。
「大丈夫! これ札の効果だから」
2人は『某35憶の女芸人みたいだ』などと言いつつ、立ち止まった。私は訴えた。
「モリモトさんに『生贄』使われました…。『支配』持ってたから何とかなりましたけども」
「うわ! きっとそれケンゴが持ってた札だよ」
私達は作戦を立てた。
カエデがモリモトとコンタクトを取る。旬の可愛いタレントと2人で歩くモリモトは、まんざらでもない表情。
そこへ鬼2体を従えた私が、コウタと共に現れる。
「都子?! 離脱したんじゃ…?」
「『支配下の鬼』1体発動、モリモトを捕捉せよ!」
《支配下の鬼発動。鬼はモリモトを捕まえます》
鬼は逃げるモリモトを捕まえ、離脱させた。コウタが叫ぶ。
「ケンゴのカタキだ!」
(視聴率上がったかな?撮れ高あるといいけど)
参加者を追う『鬼』から全力で逃げ切る。途中『任務』をこなしたり、『切り札』を発動させたりと、体力だけでなく頭も使う。
見事最後まで生き残れば、賞金を生存者で山分け出来る。
まず開始時に、参加者は『切り札』を1枚支給される。『切り札』にはそれぞれ様々な効果があり、任務完了時にも追加支給される。
さて、芸人:モリモトは開始時に『強奪』(他人の所持切り札を全て強制奪取)の札を引き当てた。
そして任務を完了し、『生贄』(捕まりそうになった自分の身代わりにするか、新たに呼び出した鬼に対象者を捕まえさせ強制終了)の札3枚を手に入れた男性アイドル:ケンゴと出会った。
モリモトは何食わぬ顔で『任務クリアすごいっすね!』『さすがスターは違う』などと褒め称える。
「何の切り札貰えたの?」
「えーと、『生贄』3枚」
「…いいねえ、『強奪』発動!!」
《強奪発動。ケンゴの所持する生贄3枚は、モリモトに渡ります》
生贄の札3枚を手にしたモリモトは、ニヤッと笑った。
「『生贄』1枚発動、ケンゴ君!」
《生贄発動。近くの鬼を呼び寄せ、ケンゴを捕まえます》
「そんな…!」
驚くケンゴはそのまま現れた鬼に捕まり、退場。モリモトはカメラに吐き捨てるように呟く。
「俺はどんな手使ってでも、この業界に爪痕を残したいんだ。悪いな」
次にモリモトが遭遇したのは、私。生贄札を2枚も持ってるモリモトは余裕綽々で、世間話をする。
ところが。
角を曲がった瞬間、鬼が2体出現。咄嗟にバラバラに逃げ始めたが…。
「『生贄』発動!! 都子へ!」
《生贄発動。鬼は都子を捕まえます》
切り札発動指示が出たら、逃げるのをすぐに止めないとならない。
「何で今なのさ!」
走るのを止めたが、追って来る鬼1体は私から10メートルしか離れておらず、もう1体もその5メートル程奥から追ってくる。
圧倒的不利。
「悪く思うなよ。これも切り札運ってヤツさ」
嘲笑うモリモトは逃げ去る。
(間に合え!!)
私は鬼2体の鼻先に札2枚を突きつけ叫んだ。
「『支配』2枚発動!!」
《支配2枚発動。鬼2体を都子は支配下につけました》
鬼は目前でピタリと止まる。2体は静かに私の斜め後ろへ移動し、距離を保った。
(イケた、か?)
私の使った『支配』は、札1枚につき鬼1体を支配下につける。
別の鬼と遭遇時に自分の身代わりに『生贄』として使ったり、支配下の鬼を放ち、他者を捕らえて強制終了等も出来る、特殊な切り札だ。
元々、開始時に私へ支給されたのは『三倍』(入手した札の枚数を3倍にする)だった。
ある任務で『支配』を入手したので、遠慮なく『三倍』を使った。
その時は『これで鬼に3回出くわしてもその都度捕まえて、更に3回また鬼に出くわしても捕まえた鬼をそれぞれ身代わりに放ち、計6回鬼を無効化できる!』と考えていたのだが。
(一気に2枚使えて良かった)
モリモトに鬼を1体放とうかと思ったが、視界から居なくなっていた(対象が視界に居ないと切り札は使えない)。
私は復讐を誓った。
場面は、若手女性タレント:カエデと男性アイドル:コウタの遭遇に切り替わる。
「同じメンバーのケンゴが、モリモトさんに嵌められたみたいで…」
「らしいですよね! 本当ひどい!!」
そんな2人と、鬼を連れた私がバッタリ出くわす。2人は慌てて逃げようとするので、私は叫ぶ。
「大丈夫! これ札の効果だから」
2人は『某35憶の女芸人みたいだ』などと言いつつ、立ち止まった。私は訴えた。
「モリモトさんに『生贄』使われました…。『支配』持ってたから何とかなりましたけども」
「うわ! きっとそれケンゴが持ってた札だよ」
私達は作戦を立てた。
カエデがモリモトとコンタクトを取る。旬の可愛いタレントと2人で歩くモリモトは、まんざらでもない表情。
そこへ鬼2体を従えた私が、コウタと共に現れる。
「都子?! 離脱したんじゃ…?」
「『支配下の鬼』1体発動、モリモトを捕捉せよ!」
《支配下の鬼発動。鬼はモリモトを捕まえます》
鬼は逃げるモリモトを捕まえ、離脱させた。コウタが叫ぶ。
「ケンゴのカタキだ!」
(視聴率上がったかな?撮れ高あるといいけど)
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