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97 尊顔
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神社のお守りを複数個持ってると、お守りの中に入ってる神様同士で喧嘩するとか、そういう都市伝説がある。
実際の所は、日本の神様同士は仲が良いので喧嘩は起きないとされている(色んなスピリチュアルカウンセラー的な人がそう言っていた)。
では、アレの中には何が入ってたのだろう。そんな話。
私が幼稚園くらいの頃だ。母方の祖母が、知り合いに木彫りの神仏の像を貰った。と言っても、新興宗教的なものでは無く、よくあるメジャーな神仏像だった。
「旅先の土産物屋さんにあったの。あなたの家に同じ像があったから、好きかと思って」
知人は親切心で祖母にくれたそうだ。
祖母は貰った神仏像を、以前からあった神仏像の隣に飾った。お水などのお供えをしたり手を合わせる目的は無く、インテリアとして飾っていた。
それからひと月程経った頃だろうか。異変に気付いたのは祖父だった。
「なあ、この神様、顔が変わってないか?」
「顔?」
「何か泣きそうな顔に見えるぞ」
神仏像は朗らかな笑顔を浮かべている。でも言われてみれば表情筋の造作は、泣き始める前の顔の歪みにも見える。祖母は言った。
「うーん、同じ物並べてるからね。作った人は違うから、そんな風に見えるんじゃないの?」
木彫り=手彫りなので、作り手の癖が出たと思ったらしい。だが、その数日後。
「…ねえ、あげたやつ、ちょっと変わって見えるけど気のせい?」
神仏像をくれた知人が来た際、知人はハッキリとそう言った。
「『変わった』? どんな風に?」
「…何か、苦しそうっていうか。あたし持ってきた時、こんな泣きそうな顔してたかな」
言われてみれば、そんな気もする。しかも短期間に2人も指摘してきた。神仏像の顔が泣きそうになるなんて、これは良くないかもしれない。
祖母は急いで拝み屋の元を訪れた。
「これね。前から家にあった像が『何だお前、この家を守ってるのはこっちだぞ!』って主張していて、新しく来たこっちが泣いているのね。同じ像を隣に飾っちゃダメだったみたい」
祖母は拝み屋さんに、貰った像を預かってもらう事にしたという。
ちなみに、前からあった像は顔が変わる事も、何か謂れがある訳でもなく、今日まで祖母宅に鎮座している。
収集品を飾る時は、同じ物を隣同士に飾る事があるものだが、物同士にも相性があるのだろうか。世にも不思議な自己主張の話。
実際の所は、日本の神様同士は仲が良いので喧嘩は起きないとされている(色んなスピリチュアルカウンセラー的な人がそう言っていた)。
では、アレの中には何が入ってたのだろう。そんな話。
私が幼稚園くらいの頃だ。母方の祖母が、知り合いに木彫りの神仏の像を貰った。と言っても、新興宗教的なものでは無く、よくあるメジャーな神仏像だった。
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祖母は貰った神仏像を、以前からあった神仏像の隣に飾った。お水などのお供えをしたり手を合わせる目的は無く、インテリアとして飾っていた。
それからひと月程経った頃だろうか。異変に気付いたのは祖父だった。
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「顔?」
「何か泣きそうな顔に見えるぞ」
神仏像は朗らかな笑顔を浮かべている。でも言われてみれば表情筋の造作は、泣き始める前の顔の歪みにも見える。祖母は言った。
「うーん、同じ物並べてるからね。作った人は違うから、そんな風に見えるんじゃないの?」
木彫り=手彫りなので、作り手の癖が出たと思ったらしい。だが、その数日後。
「…ねえ、あげたやつ、ちょっと変わって見えるけど気のせい?」
神仏像をくれた知人が来た際、知人はハッキリとそう言った。
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言われてみれば、そんな気もする。しかも短期間に2人も指摘してきた。神仏像の顔が泣きそうになるなんて、これは良くないかもしれない。
祖母は急いで拝み屋の元を訪れた。
「これね。前から家にあった像が『何だお前、この家を守ってるのはこっちだぞ!』って主張していて、新しく来たこっちが泣いているのね。同じ像を隣に飾っちゃダメだったみたい」
祖母は拝み屋さんに、貰った像を預かってもらう事にしたという。
ちなみに、前からあった像は顔が変わる事も、何か謂れがある訳でもなく、今日まで祖母宅に鎮座している。
収集品を飾る時は、同じ物を隣同士に飾る事があるものだが、物同士にも相性があるのだろうか。世にも不思議な自己主張の話。
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