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83 巡回者
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約1年半前から、『オカルト好きな家族に囲まれ育った作者のホラーエッセイ』というコンセプトで不可解&不思議話を紹介している。
確かに零感(霊感無し)以上霊感未満な一家ではあるが、住んでいる家もなかなかの豊富なネタがある。そんな実家で起きた話を色々と。
現在某県某市にある実家は、私が小学2年の頃、平成が始まって間もなくに建てられた木造2階建ての一軒家だ。
我が家で土地を買い取るまで、そこの土地は田んぼであった。同じ町内で生まれ育った父曰く、『記憶の限り民家も石碑もいわくも無い、ただの田んぼだった』とのことなので、半世紀以上前から既に田んぼだったのだろう。
そしてその家で、中二病気質な父と信心深い母のもと、私を始めとする4兄弟はオカルトに強く興味を持ちながら生まれ育ったのである。
私が20代半ばの時のこと。
その日、仕事が休みだった私は、出掛ける支度をしていた。時刻は午後4時。久しぶりに会う仕事終わりの友人と、ショッピングをしてから夕食を食べる予定だった。
家族は仕事や学業でまだ帰宅しておらず、母も買い物に行き、自宅には私が1人きり。自室で化粧をしていると、階下で音がした。
明確な足音ではなく、床を踏んで起きる軋む音が、廊下を移動し、階段を上って来る。ところが、階段を3,4段上った所で音がしなくなった。
(飲み物でも持ってこようと台所へ引き返したかな?)
私は気にせず化粧を続けた。すると、また廊下を踏みしめる軋みが聞こえ、階段を上ってくる。
ところが、またも階段を3,4段上った辺りで音が止まったのだ。
(誰?何やってるの?)
私は化粧を中断すると自室から出て、階段へ静かに向かった。
大方、携帯中毒の弟か妹が歩きながらネット記事でも見つつ歩いているのだと思ったが、違っていた。階段には誰も居なかったのだ。
(家鳴りを足音と勘違いしたのか?でも音が動いていたしな)
当時、外飼いの犬が居たのだが、警戒心が強く家族以外に吠える子だった。飼い犬が反応しないので家族だと思ったのだが、違っていたのか。
私は1階に下り、玄関の靴を確認したり、台所と茶の間を見たが、帰宅した家族の姿や痕跡も無かった。
(誰も居ない…。じゃあ、家鳴り?)
首を傾げつつ、自室に戻り化粧を再開すると、また踏みしめる軋みがしたのだ。
(え)
軋む音は、またも1階廊下から階段へ。私は携帯電話を握りしめ、階段を自室から見やった。階段を踏む様な軋みの音は、また複数回。心なしか、さっきよりゆっくりに思えた。
(何が居るの…?)
自室から階段は上から踊り場までしか見えず、下から4段目は到底分からないのだが、得体の知れない気配を感じた。
恐怖で何も出来なかったが、実質対峙していた時間は5分程か。私の耳に、屋外の飼い犬が家族に甘える声が届いた。間もなく玄関を誰かが開け、入る音がした。
車で買い物に行っていた母が、ついでに帰宅途中の弟を拾って帰って来たのだ。
私は急いで階下に降りると、2人に出来事を話した。
「何か、さっきから1階の廊下を歩き回る軋む音がしてさ。私しか居ない筈なのに」
「やだ。居宅窃盗かな」
近所には農家が多く、つい数年前にも家人の農作業中に空き巣(厳密には家人が敷地内に居るのに、家屋に浸入された)案件があったので、私も家族もそれを疑った。
そこで、私達3人は1階の全部屋を収納まで開けて探索した。窓や裏口の施錠も見たが、開いている箇所も侵入者の痕跡すらも無かった。
何はともあれ、私の勘違いという事で事なきを得た。
(問題の実家の階段…。プライバシー保護のため色調を変えてます)
後日、母からこんな話をされた。
「でもさ、この家、結構家鳴り酷いよ。勘違いしても仕方ない」
「まあ、築20年近いからね」
「この前も日中に、廊下を誰かが歩くみたいに順番に家鳴りが聞こえてきたからね」
「何で奥から順番に家鳴りがするんだよ…」
家鳴りとは、『何かが移動するかのごとく』順番に鳴り響くものなのだろうか。
そして、弟がその移動する者と対峙する事になるとは、その時は思いもしなかったのである。
確かに零感(霊感無し)以上霊感未満な一家ではあるが、住んでいる家もなかなかの豊富なネタがある。そんな実家で起きた話を色々と。
現在某県某市にある実家は、私が小学2年の頃、平成が始まって間もなくに建てられた木造2階建ての一軒家だ。
我が家で土地を買い取るまで、そこの土地は田んぼであった。同じ町内で生まれ育った父曰く、『記憶の限り民家も石碑もいわくも無い、ただの田んぼだった』とのことなので、半世紀以上前から既に田んぼだったのだろう。
そしてその家で、中二病気質な父と信心深い母のもと、私を始めとする4兄弟はオカルトに強く興味を持ちながら生まれ育ったのである。
私が20代半ばの時のこと。
その日、仕事が休みだった私は、出掛ける支度をしていた。時刻は午後4時。久しぶりに会う仕事終わりの友人と、ショッピングをしてから夕食を食べる予定だった。
家族は仕事や学業でまだ帰宅しておらず、母も買い物に行き、自宅には私が1人きり。自室で化粧をしていると、階下で音がした。
明確な足音ではなく、床を踏んで起きる軋む音が、廊下を移動し、階段を上って来る。ところが、階段を3,4段上った所で音がしなくなった。
(飲み物でも持ってこようと台所へ引き返したかな?)
私は気にせず化粧を続けた。すると、また廊下を踏みしめる軋みが聞こえ、階段を上ってくる。
ところが、またも階段を3,4段上った辺りで音が止まったのだ。
(誰?何やってるの?)
私は化粧を中断すると自室から出て、階段へ静かに向かった。
大方、携帯中毒の弟か妹が歩きながらネット記事でも見つつ歩いているのだと思ったが、違っていた。階段には誰も居なかったのだ。
(家鳴りを足音と勘違いしたのか?でも音が動いていたしな)
当時、外飼いの犬が居たのだが、警戒心が強く家族以外に吠える子だった。飼い犬が反応しないので家族だと思ったのだが、違っていたのか。
私は1階に下り、玄関の靴を確認したり、台所と茶の間を見たが、帰宅した家族の姿や痕跡も無かった。
(誰も居ない…。じゃあ、家鳴り?)
首を傾げつつ、自室に戻り化粧を再開すると、また踏みしめる軋みがしたのだ。
(え)
軋む音は、またも1階廊下から階段へ。私は携帯電話を握りしめ、階段を自室から見やった。階段を踏む様な軋みの音は、また複数回。心なしか、さっきよりゆっくりに思えた。
(何が居るの…?)
自室から階段は上から踊り場までしか見えず、下から4段目は到底分からないのだが、得体の知れない気配を感じた。
恐怖で何も出来なかったが、実質対峙していた時間は5分程か。私の耳に、屋外の飼い犬が家族に甘える声が届いた。間もなく玄関を誰かが開け、入る音がした。
車で買い物に行っていた母が、ついでに帰宅途中の弟を拾って帰って来たのだ。
私は急いで階下に降りると、2人に出来事を話した。
「何か、さっきから1階の廊下を歩き回る軋む音がしてさ。私しか居ない筈なのに」
「やだ。居宅窃盗かな」
近所には農家が多く、つい数年前にも家人の農作業中に空き巣(厳密には家人が敷地内に居るのに、家屋に浸入された)案件があったので、私も家族もそれを疑った。
そこで、私達3人は1階の全部屋を収納まで開けて探索した。窓や裏口の施錠も見たが、開いている箇所も侵入者の痕跡すらも無かった。
何はともあれ、私の勘違いという事で事なきを得た。
(問題の実家の階段…。プライバシー保護のため色調を変えてます)
後日、母からこんな話をされた。
「でもさ、この家、結構家鳴り酷いよ。勘違いしても仕方ない」
「まあ、築20年近いからね」
「この前も日中に、廊下を誰かが歩くみたいに順番に家鳴りが聞こえてきたからね」
「何で奥から順番に家鳴りがするんだよ…」
家鳴りとは、『何かが移動するかのごとく』順番に鳴り響くものなのだろうか。
そして、弟がその移動する者と対峙する事になるとは、その時は思いもしなかったのである。
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