我ガ奇ナル日常譚 〜夢とリアルと日々ホラー〜

２７ ロスト・アビリティ

　子供にある、不思議な力の話。

　母から聞いた話。 

　母には、0歳児時代(それも低月齢の頃)の記憶があるという。 
　母は別に記憶力がものすごく良いというわけじゃなく、たまたまその時の記憶があるという。 

「何で低月齢だと考えられるの？」 

　訊くと母は、 

「目が良く見えなかったんだ。ほら、生まれたばかりの赤ちゃんて目がまだ完成してないでしょ？」 

　と、証言した。
　新生児が近くしか見えない事は、周知の事実である。
　私は更に尋ねた。 

「どういう記憶なの？」 

「ばあちゃんち(自分の実家)のお風呂場で、抱きかかえられていたんだけど、何かの拍子に床へゴトンって落ちちゃって、泣くっていう記憶」 

　確認しようにも、両親(私から見て祖父母)にはその記憶が残ってないらしい。


　入浴時に抱きかかえられるという事は、やはり2,3歳児よりも小さいか。
　ある程度成長すると、落ちそうになっても逆にしがみついて阻止するかもしれないからだ。 



　そして私の話。


　私は子供の頃、血液の色で血液型を判別出来た。

　文字にすると中二病みたいだが、子供はよく転んだりして、ケガをしがちだ。
　傷口の出血を見ると、血液型が分かるのだ。

　まずA型は『明るい赤』。赤い絵の具とピンクの絵の具を足した様な、純正の赤よりやや明るい色である。
　同様に、B型は『朱色』。黄色を帯びた赤である。そしてO型は『暗赤』。黒っぽいというか、青味を感じる。

　AB型は判別が難しかった。単純に言えばAとBの色を足した感じなのだが、AB型の友人があまり周りに居なかったので、経験が少なかった。

　そして判別にも条件がある。
　服についた血や、乾いたり時間の経った血はだめだったし、勿論Rｈ因子の判定は出来なかった。


　この特技も、10歳前後から急激に失われた。5～10歳くらいまでの期間限定の特技だった。


　何でそれが出来たのだろう？大人になり、何で失われたのだろう？
　知識と共に力が失われる、そんな感じなのか。


　覚えている人と忘れてる人が居るだけで、全ての人が子供の頃に、未知の力があったかもしれない。

　子を持った今は、親バカとかではなく、そう思えてしまう。