もしかして俺の主人は悪役令息?

一花みえる

文字の大きさ
上 下
39 / 72
1章

ミッション3(5)

しおりを挟む
 うう、今回のビアンカとのお茶会は大変だったな。ちょっと相談しただけなのに、なんかめちゃくちゃ根掘り葉掘り聞かれたし。ジョシュアからすごく心配されたけど、それはなんとか誤魔化すことができた。
 それに、収穫もあったし。
 夕ご飯も終わり、お風呂にも入って、あとは寝るだけになった頃。自分の部屋で、僕は目の前にある茶色の塊をじっと見つめた。
「これ……レッサーパンダ?」
 ビアンカからこっそり貰ったのは、腕にすっぽり収まるくらいのぬいぐるみだった。どうやらビアンカ特製らしい。ふわふわだし、あったかいし、抱きしめると気持ちがいい。
 空想上の生き物だと言われたけど、現世では普通に動物園で見ることができた。この世界は僕が生きていた世界と少し違うみたい。まあ、魔法が使える時点で違うのは当たり前か。
「光属性の練習にどうぞ、って言われてもなぁ。光魔法なんて最上級魔法だよ」
 上位魔法の氷魔法さえ上手く使えないのに。そのさらに上、限られた人しか使えないと言われている光魔法なんて。
 今の僕にはまだまだ遠いところにある。
「このレッサーパンダに光魔法を上手に注げたら、真の力を発揮する。こんなアイテム、ドキサバにあったかなぁ?」
 無限とも言えるほどのやり込み要素が売りのドキサバを何百時間もやり込んだけれど。こんなアイテム、一度も見たことがない。もしかして隠し要素? でも、ゲームはジョシュアが成人してからのお話がメインだし、この時代のストーリーって本当にちょっとしかない。
 だから取りこぼしている可能性もあるけど、そうだとしても目の前にある高い高い壁は変わりようがない。
「光魔法の前に、まずは氷魔法だ!」
「何がですか?」
「ひょあああ!」
 力強く意気込んだ直後、いきなりドアが開けられた。そこにはもちろん、ジョシュアが寝る支度をして立っている。
 うわわ、聞かれちゃったかな。
「ノックしてよ!」
「しましたよ。声もかけたけど、一人でぶつぶつ言っていたから勝手に入りました」
「もう! びっくりしたでしょ!」
 危ない危ない、僕がこっそり書いている作戦ノートはちゃんと机の引き出しに隠している。怪しいことは何もない、はず。
 氷魔法とか光魔法とかは聞かれたかもしれないけど、それは僕の目標ってことで誤魔化すことができるはず。
「それ、なんですか?」
「あ、これ? ビアンカがくれたの。光魔法の訓練に使えるんだって」
「ああ、なるほど。光魔法は魔力のコントロールが難しいですからね」
 ふう、なんとか誤魔化せた。
「お名前はあるんですか?」
「へ? 名前?」
「ええ。せっかくだし、お名前をつけてあげたらどうですか?」
 ふうむ。なるほど、確かにそうだなぁ。ぬいぐるみだけど、名前をつけたら愛着も湧くだろうし。
 愛着が湧いたら、魔法の修行も頑張れるかも。
 何がいいかな。せっかくだから可愛いのがいいなぁ。この子、体が茶色くて丸々しているから。
「みたらし?」
「え? なんですか、それ」
「あー! えっと」
 しまった、この世界にみたらし団子はないんだった!
 うーん、うーん。
 あ、そうだ!
「ミーティア! ミーティアはどう?」
 英語で、流星って意味。ちょっとおしゃれだし、みーちゃんって呼べばみたらしの面影を感じられる気がする。
「いいですね、素敵な響きです」
「でしょ? えへへ、よろしくね、ミーティア!」
 こうして、僕の元にふわふわで可愛いミーティア(本名みたらし)がやってきた。
 この子が僕の強い味方になってくれるんだけど、それはまだまだ先の話。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

アルファな俺が最推しを救う話〜どうして俺が受けなんだ?!〜

車不
BL
5歳の誕生日に階段から落ちて頭を打った主人公は、自身がオメガバースの世界を舞台にしたBLゲームに転生したことに気づく。「よりにもよってレオンハルトに転生なんて…悪役じゃねぇか!!待てよ、もしかしたらゲームで死んだ最推しの異母兄を助けられるかもしれない…」これは第2の性により人々の人生や生活が左右される世界に疑問を持った主人公が、最推しの死を阻止するために奮闘する物語である。

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

買われた悪役令息は攻略対象に異常なくらい愛でられてます

瑳来
BL
元は純日本人の俺は不慮な事故にあい死んでしまった。そんな俺の第2の人生は死ぬ前に姉がやっていた乙女ゲームの悪役令息だった。悪役令息の役割を全うしていた俺はついに天罰がくらい捕らえられて人身売買のオークションに出品されていた。 そこで俺を落札したのは俺を破滅へと追い込んだ王家の第1王子でありゲームの攻略対象だった。 そんな落ちぶれた俺と俺を買った何考えてるかわかんない王子との生活がはじまった。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく、舞踏会編、はじめましたー! 他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。

信じて送り出した養い子が、魔王の首を手柄に俺へ迫ってくるんだが……

鳥羽ミワ
BL
ミルはとある貴族の家で使用人として働いていた。そこの末息子・レオンは、不吉な赤目や強い黒魔力を持つことで忌み嫌われている。それを見かねたミルは、レオンを離れへ隔離するという名目で、彼の面倒を見ていた。 そんなある日、魔王復活の知らせが届く。レオンは勇者候補として戦地へ向かうこととなった。心配でたまらないミルだが、レオンはあっさり魔王を討ち取った。 これでレオンの将来は安泰だ! と喜んだのも束の間、レオンはミルに求婚する。 「俺はずっと、ミルのことが好きだった」 そんなこと聞いてないが!? だけどうるうるの瞳(※ミル視点)で迫るレオンを、ミルは拒み切れなくて……。 お人よしでほだされやすい鈍感使用人と、彼をずっと恋い慕い続けた令息。長年の執着の粘り勝ちを見届けろ! ※エブリスタ様、カクヨム様、pixiv様にも掲載しています

処理中です...