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「なあ、ちょっといいか。」

移動教室で廊下を歩いていると急に話しかけられた。誰かと思い振り返ると、そこにいたのは噂の高橋紘だった。

「えおれ?」

「おう、今日の放課後そこの空き教室来てくれねーか。」

(急に俺になんのようだ?え、シメられる?)

「えーっと、」

「いいか?」

「あー、、、うんわかった。行くね」

「ん、待ってるな。」



「お待たせー、、えっ、あれ高橋くんじゃん!あいつに話しかけられたのか?お前大丈夫かよ?」

「うーん、なんか呼び出しくらっちゃった。」

「うそだろ。行くのか?」

「うーん行くって言っちゃったし。」

「お前がSubにモテモテだから恨まれてんじゃねーの?」

「さぁー、まあ大丈夫だよ。俺強いし。」

「ほんとかよー、なんかあったら言えよ?」

(なんつーかあの顔が気になるんだよな、緊張しまくってるって感じの顔。)

「おう、ついでにSubに迷惑かけんなって言ってくる。」

「っかー、モテ男はちげえな、まあ俺の将来の彼女のためによろしく頼むな。」

「はいはい、の彼女のためな。」

「なんか含みがあるけど、お前の優しさに免じて見逃してやろう!」

「それはどーもありがとうございますー」

「っと、授業遅れる、走るぞ。」

「えー、あちょっと待ってよ。」



            ー


「うしっ、行ってくるわ。」

「ねえほんとに大丈夫なの?」

「愛ちゃん心配すんなって!俺を信じて!」

「えー千鶴のそゆとこあんまり信用できなんだけど。」

「まあまあ愛ちゃん俺と二人で待っとこうぜ?」

「え、いや帰れよ」

「えー僕心配だよ。」

「かわいこぶってもかわいくないから。ほら愛ちゃん送ったげて。俺はほんと大丈夫だから。」

「んもー、なんかあったら電話しろよ!」

「約束だからね!」

「はいはい約束ね、ありがと。」

「じゃあな、健闘を祈る。」

「またねー!」

「じゃあな」


もし仮に俺が怒ってglareを出しちまったら、愛ちゃんに影響大だし、川崎にも心配かけたくないので、ちゃんと帰らせておく。


「っとじゃあ行きますかねえ。」

自ら揉め事に向かうのはなんとも気が引けるが仕方がない。とりあえず約束の場所に行くことにした。


            ー


ガラガラ

空き教室のドアを開けると、高橋くんが仏頂面で仁王立ちしていた。

「あ、高橋くん、ごめん待った?」

「いや大丈夫だ。」

「.....」

気まずい沈黙が流れる。

「えーと、それで、なんの用かな?」

できれば早く終わらせて帰りたい。用件を聞こうと急かすように尋ねると、高橋くんは急に俯いて口に出すのを躊躇っているようだった。

「あー、あの、、、」

「うん」

「、、、榊って今彼女いないんだろ?」

「え、うん、そうだけど」



「あのさ、よかったら俺と付き合ってくれねーか。」



「え?」

「あの、急に何言ってんだって感じだと思うんだけど、付き合ってほしいっつうか。」

てっきりシメられるとばかり思っていたので、その予想は全くなかった。俺は告白されたのか。


「あえーっと、、」

「ちゃ、ちゃんと本気だ。」

赤面した高橋くんは、服を握りしめてそう言い直した。


「えー、あー、んー、。」

なんて返していいかわからない。好きも嫌いも言う前にそもそも話したこともないし、いい噂も聞かない。


(DomとかSubとかで相手を全て選ぶ訳じゃねーけど、ゴリゴリのDomっぽいし、かわいげも無さそうだし、信頼もできないし、安心もできない。付き合うのは無理だよなあ。)

「あーその気持ちは嬉しいけど、わりい。高橋くんとは付き合えない。」

「、、わかった。」

どうやら意外とすんなり引いてくれるらし

「じゃあまずは友達からでどうだ」

い訳ではないらしい。緊張でか、でかい体をもじもじさせてるところ申し訳ないが、友達も何も人に非常識な振る舞いをしている奴とは、あんまり関わりたくない。俺だって人間だし、友達は選ぶ。誰にでもニコニコ優しい訳ではない。守るべきものは死んでも。それが親の直々の教えてある。俺は、愛ちゃんとか、危険に晒せれてるSubの子達を守らなければならない。


「あのさ、急に変わるんだけど、俺、人に迷惑かけるの良くないと思うんだ、人として。」

「え、ああ、そうだな?」

「高橋くんSubの子怖がらせてるんでしょ?」

「え、、、あいや、」

「俺もちゃんと見たことないからなんともいえないけど、実際困ってるやつもいるらしいし、」

「、、、」

「そういうのやめたら友達になるよ。」

「、、、ほんとか?」

「ああ、ちゃんとやめたらな?」

「わかった。じゃあ榊がちゃんと俺がやめれてるって思ったら、友達になろう。」

「ん、いいよ。」

「、、、、!さんきゅーな!ちゃんと変わったと思ったら声かけてくれよ!」

「お、おう、、」

「じゃあ今日は来てくれてありがとな。気をつけて帰れよ!」


「あ、えうん」

あまりにもすんなりと受け入れられて、拍子抜けだ。もっと喧嘩っぱやくて面倒なのかと思ってた。


(あんな嬉しそうな顔、本当にあの非常識Domなのか?でも迷惑かけてるの、否定しなかったしな)


疑問は残ったが、Subが安心できるようになるならそれに越したことはない。そう思い、素直に家に帰った。
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