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創生の杖
22 孫、神に喧嘩を売る!
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『昼休憩を挟みまして────大変お待たせ致しました!只今より!決勝戦を開始いたします!第一ブロックを勝ち上がり、決勝戦に進出致しましたのは────杖術使い!ここまでの戦いの尽くを一撃の下に勝ち上がって来た猛者!レキアスぅぅぅぅぅ!』
【うおおおおおお】
解説のコールに、既に盛り上がっていた観客席から一層の声が上がる中、静かな足取りで舞台の上に足を運ぶ奴を俺は舞台袖で睨みつけつつ、解説の次のコールを待つ────
『続きまして!第二ブロック準決勝では、見事兄弟対決を制して勝ち上がってまいりました!汚い手を使わせれば右に出る者はこの大陸には居ない事は親戚一同の総意との事!グレイブぅぅぅぅ!』
【ぶぅぅぅぅぅぅぅぅ!】
解説のコールに観客席からは一斉にブーイングが巻き起こるの中、俺は舞台袖から飛び出して
「こぅぅぅらぁぁぁ!解説ぅぅ!決勝戦まで俺の扱い変わらねぇのかよ!」
『あんたが悪いんでしょ』
「か……カスミまで……」
解説席に陣取った俺の嫁(予定)は刺すような冷ややかな視線を俺に向けていた。
おおカスミよ……まだ準決勝の勝ち方に腹を立てているとは心が狭い。
俺がかっくりと肩を落としている姿を見て、レキアスが口の中でくつくつと笑っている中、解説から開始の合図が告げられる。
向かい合った俺とレキアスは、どちらかから動く事はなく、しかし油断なく武器を構え──
「はぁ……神様にコメディは刺激が強すぎたかなぁ……そんなに面白かった?」
「……なに?」
「下々の会話は海龍王様のお気に召しましたか?と尋ねてるんですよ」
「はて……確かに俺は海龍族と呼ばれる半魔人だが……後は一体なんの事やら──」
とぼける目の前の男、レキアスにニヤリと口を歪めて言葉を続けた。
「一度は世界を望み、呼び出した軍勢を駆逐され、少数のプレイヤーに討伐された無能な王様だって聞いてるけど?」
ギリッ──
場内のどよめき、観客席の煩い程の声が飛び交う中、目の前から確かに聞こえた歯軋りの音──
それと同時にブワッ──とレキアスからドス黒い殺気が膨れ上がる。
「おおぅ……少し煽ってやるつもりだったのに……」
吹き付ける強烈な殺気に俺は顔をひくつかせ、冷たい汗を背中に流す。
俺はどうやら地雷を踏んだらしい。
「何処で聞いたか知らないが、若いのに随分と物知りじゃないか?んん?」
「……風の噂を少し小耳に挟んだ程度だけどね」
目尻を下げ、唇を歪ませて愉快そうなトーンで問いかけるレキアスに、俺は気圧されていたのか……いつの間にか開始位置から半歩ほど下がっていた。
「風の噂か……ならばこういう噂は聞かなかったか?」
瞬間
俺の目の前から奴の……レキアスの姿が掻き消えた
「海龍王は最強の神である──と」
その声を背中から聞くと同時に、俺の背を突き破り、腹から一本の杖が生えてきた。
喉から込み上げる物を必死に堪えて剣を後ろに振るえば、ゾブリという異物が抜けるような感覚が奔ると同時にレキアスは再び俺の正面へと現れた。
俺は口の中でなんとか回復スキルを発動させ、貫通した風穴を埋め、ペッと赤い塊を吐き出した。
「回復スキル持ちか。ヒーラーが剣を振り回すとは滑稽だな。そうだ、今から杖でも持ったらどうだ?」
「────皆からそう言われるよ……俺には才能が無いってね」
「ふむ。まさに正しい意見だ」
「でもな……俺にはこの──」
バサッ──と俺の背中から純白の羽が顕現する!
「翼がある!」
「ふむ……それは何度か見せていたな。見た目の不細工具合からして、エルフとのハーフという訳でも無さそうだが……」
「ぶさ?!女の子ホイホイと言われる程の俺の顔面が?!」
「なるほど……魂の段階で融合しているようだな……ナアオも面白い世界を創っているようだな」
憤る俺をよそに、レキアスは一人で勝手にふむふむと何かを見ては勝手に納得している。
「喰らえ!〈フェザーシュート〉」
「〈スプラッシュ〉」
俺の放った羽の矢を、レキアスは事もなく舞台から水柱を突き上げて叩き落とす。
「この!〈ボックスプロテクト〉!」
「一度誰かに破られたフィニッシュホールドは大概他の相手にも破られるものだぞ?」
レキアスの身体を四方から囲むようにして組み上げた不可視の結界だったが、レキアスが杖をくるりと回しただけで結界はその力を霧散させる。
「なんだそれ?!」
「驚いている暇なぞないぞ?〈アクアサイクロン〉」
俺の結界を霧散させたレキアスは、そのまま俺の方に杖を突き出すとクルクルと先端を回転させれば大量の水が吹き出して、それらがまるで意思を持った一つの塊のように、とぐろを巻くようにして俺に迫る!
荒ぶる水の竜が俺を飲み込もうと、その顎門を開けた瞬間──
「〈アブソーブプロテクト〉」
俺が発動させた新たな結界、吸収型のバリアの前に水竜はその力を吸収され、敢え無くただの水となる。
「ほぅ……準決勝でも使っていたな?それは極々一部のエルフのみが使える神技の一つだが──」
言葉と同時に再びレキアスが俺の視界から姿を晦ますと、腹に再び衝撃が奔る。
「──カフッ」
「神の前には紙同然よな」
今度は俺の正面から──アブソーブの吸収能力の更に上をいく、純粋な力による突破を、目の前のレキアスは難なくこなし、奴の拳は俺の腹を容易く貫通せしめたのだった。
【うおおおおおお】
解説のコールに、既に盛り上がっていた観客席から一層の声が上がる中、静かな足取りで舞台の上に足を運ぶ奴を俺は舞台袖で睨みつけつつ、解説の次のコールを待つ────
『続きまして!第二ブロック準決勝では、見事兄弟対決を制して勝ち上がってまいりました!汚い手を使わせれば右に出る者はこの大陸には居ない事は親戚一同の総意との事!グレイブぅぅぅぅ!』
【ぶぅぅぅぅぅぅぅぅ!】
解説のコールに観客席からは一斉にブーイングが巻き起こるの中、俺は舞台袖から飛び出して
「こぅぅぅらぁぁぁ!解説ぅぅ!決勝戦まで俺の扱い変わらねぇのかよ!」
『あんたが悪いんでしょ』
「か……カスミまで……」
解説席に陣取った俺の嫁(予定)は刺すような冷ややかな視線を俺に向けていた。
おおカスミよ……まだ準決勝の勝ち方に腹を立てているとは心が狭い。
俺がかっくりと肩を落としている姿を見て、レキアスが口の中でくつくつと笑っている中、解説から開始の合図が告げられる。
向かい合った俺とレキアスは、どちらかから動く事はなく、しかし油断なく武器を構え──
「はぁ……神様にコメディは刺激が強すぎたかなぁ……そんなに面白かった?」
「……なに?」
「下々の会話は海龍王様のお気に召しましたか?と尋ねてるんですよ」
「はて……確かに俺は海龍族と呼ばれる半魔人だが……後は一体なんの事やら──」
とぼける目の前の男、レキアスにニヤリと口を歪めて言葉を続けた。
「一度は世界を望み、呼び出した軍勢を駆逐され、少数のプレイヤーに討伐された無能な王様だって聞いてるけど?」
ギリッ──
場内のどよめき、観客席の煩い程の声が飛び交う中、目の前から確かに聞こえた歯軋りの音──
それと同時にブワッ──とレキアスからドス黒い殺気が膨れ上がる。
「おおぅ……少し煽ってやるつもりだったのに……」
吹き付ける強烈な殺気に俺は顔をひくつかせ、冷たい汗を背中に流す。
俺はどうやら地雷を踏んだらしい。
「何処で聞いたか知らないが、若いのに随分と物知りじゃないか?んん?」
「……風の噂を少し小耳に挟んだ程度だけどね」
目尻を下げ、唇を歪ませて愉快そうなトーンで問いかけるレキアスに、俺は気圧されていたのか……いつの間にか開始位置から半歩ほど下がっていた。
「風の噂か……ならばこういう噂は聞かなかったか?」
瞬間
俺の目の前から奴の……レキアスの姿が掻き消えた
「海龍王は最強の神である──と」
その声を背中から聞くと同時に、俺の背を突き破り、腹から一本の杖が生えてきた。
喉から込み上げる物を必死に堪えて剣を後ろに振るえば、ゾブリという異物が抜けるような感覚が奔ると同時にレキアスは再び俺の正面へと現れた。
俺は口の中でなんとか回復スキルを発動させ、貫通した風穴を埋め、ペッと赤い塊を吐き出した。
「回復スキル持ちか。ヒーラーが剣を振り回すとは滑稽だな。そうだ、今から杖でも持ったらどうだ?」
「────皆からそう言われるよ……俺には才能が無いってね」
「ふむ。まさに正しい意見だ」
「でもな……俺にはこの──」
バサッ──と俺の背中から純白の羽が顕現する!
「翼がある!」
「ふむ……それは何度か見せていたな。見た目の不細工具合からして、エルフとのハーフという訳でも無さそうだが……」
「ぶさ?!女の子ホイホイと言われる程の俺の顔面が?!」
「なるほど……魂の段階で融合しているようだな……ナアオも面白い世界を創っているようだな」
憤る俺をよそに、レキアスは一人で勝手にふむふむと何かを見ては勝手に納得している。
「喰らえ!〈フェザーシュート〉」
「〈スプラッシュ〉」
俺の放った羽の矢を、レキアスは事もなく舞台から水柱を突き上げて叩き落とす。
「この!〈ボックスプロテクト〉!」
「一度誰かに破られたフィニッシュホールドは大概他の相手にも破られるものだぞ?」
レキアスの身体を四方から囲むようにして組み上げた不可視の結界だったが、レキアスが杖をくるりと回しただけで結界はその力を霧散させる。
「なんだそれ?!」
「驚いている暇なぞないぞ?〈アクアサイクロン〉」
俺の結界を霧散させたレキアスは、そのまま俺の方に杖を突き出すとクルクルと先端を回転させれば大量の水が吹き出して、それらがまるで意思を持った一つの塊のように、とぐろを巻くようにして俺に迫る!
荒ぶる水の竜が俺を飲み込もうと、その顎門を開けた瞬間──
「〈アブソーブプロテクト〉」
俺が発動させた新たな結界、吸収型のバリアの前に水竜はその力を吸収され、敢え無くただの水となる。
「ほぅ……準決勝でも使っていたな?それは極々一部のエルフのみが使える神技の一つだが──」
言葉と同時に再びレキアスが俺の視界から姿を晦ますと、腹に再び衝撃が奔る。
「──カフッ」
「神の前には紙同然よな」
今度は俺の正面から──アブソーブの吸収能力の更に上をいく、純粋な力による突破を、目の前のレキアスは難なくこなし、奴の拳は俺の腹を容易く貫通せしめたのだった。
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