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ラヴィア公国と発生した魔物

9 孫、頭髪が燃える!

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「ここと、ここと……それからここだ」

 ルカがガイルを躾けた後、宿の入り口で涙目になっているカスミを連れ、再びガイルの部屋へと戻った後──

「俺が知ってるのはこれだけだな」

 ガイルが公国の簡易地図に印を打っていく。
 その印は全て襲われた村の場所だ。

「なるほど。こうして見ると線で繋がるな……確か……最後に俺達が保護した奴らはここだ」

 そう言ってガイルが指した場所を見る。
 そして、襲撃された村を線で繋げば──人攫い達は帝国方面から徐々に公国の首都の方へと移動しているのが分かる。

「しかし、襲って攫って港までって結構な距離があるな」
「地図を見る限りだと、襲ってから港まで、そして次のターゲットの村まで戻ってるように見えるんだが」

 地図的に、帝国に一番近い村を襲い、その後公国の首都付近の港まで攫った人を運び、Uターンして帝国に二番目に近い村を襲う……
 なんて無駄な時間を使っているんだろう。
 なんて俺がガイルと唸っていると、横で話を聞いていたカスミも参戦。

「もしかしたら輸送班と襲撃班に分かれているのかもね」
「なるほど」
「この往復、無駄だもんな」
「それから港での出荷班の計3班ってとこね」

 カスミの推論は辻褄も合うし、容易に想像が出来る。
 部屋にあったお菓子を勝手にムシャムシャ食べてるバカが「出荷?!」と関係のない所で反応を見せた。

「う~ん……取り敢えず俺達の拠点に一度戻っていいか?」
「ん?それは構わないが……馬で半日だっけか?」

 顎を手で擦りながら言うガイルに、俺はどうしたんだ?という視線を向ける。

「ああ。そこなら最後に襲われた村の奴もいる。そいつらに、自分たちが住んでた近所の村の場所を聞けば早いだろ?」
「なるほど。いい案ね。地図には無い村もあるもの」

 ガイルの説明に、俺とカスミは納得の表情を浮かべて頷いた。

「んじゃ、それで行くか。ガイルは怪我はもう大丈夫なのか?」
「馬を走らせる程度、なんて事はないぜ」
「よし。今からじゃ日も落ちて危ないからな。明日の朝一で出発しよう」
「おうよ!」
「なら私は港町ならではの美味しい物でも探しに行くわ」
「あ!私も行くー!」
「んじゃ俺も着いてってメシでも食うか」

 俺達3人は、ガイルと一度分かれて港町の出店を散策する事にした。
 まぁ俺の場合は、メシはついでで壊滅させた船がどうなったか?とかを見るつもりだ。

「んふふ」
「なんだ?随分とご機嫌だな?」

 カスミは腕を後ろで組んで、ふんふん♪とご機嫌に鼻歌を歌っている姿が珍しく、俺は何気なく声を掛けた。

「ふふ。なんか懐かしいな~って」
「何が?」
「何年か前の帝国記念祭に遊びに行った時……こうやってグレイブと一緒に出店回ったじゃない?」

 それを思い出してたのよ。と言ってカスミは、ニコニコと幸せそうな笑みを浮かべているが……はて?

「……そんな事あったっけ?」
「あったの!覚えてないの?二人で出店回ったじゃない!」

 ほら!花火大会があった時よ!と目を尖らせて食い気味に迫るカスミに、俺はたじろぎながらも必死に過去の出来事を思い出す。
 花火大会……花火大会……う~む……

「そういうイベント事ってサーリアとバスク兄さんも一緒に居なかったか?」
「居たけど、その時は丁度居なかったのよ!」
「なんじゃそれ……」
「覚えてないならいいわよ!」

 俺達孫一同は……というかカスミは公国に住んでる事もあり、滅多に会う事もなく、たまに会えば必ず全員で遊ぶ事が決まっていて、2人きりになる事なんてないと思うのだが……
 プンスカと怒るカスミに視線を向けると、左手の小指にハマった可愛らしい指輪が目に入った。

「なぁ……その小指の指輪─「なに?!」うお!」

 グリン!と首を回して俺を見るカスミの目力に、俺は思わず一歩後退るが、カスミはそれを追うようにグイッと顔を近づけてくる。近いぞ!

「小指の指輪が?!」

 一歩ニ歩と後退る俺の内面の慌てようなどまるで気にしていないカスミは、グイグイと体ごと近付いてくる。
 俺はなんとかカスミの肩を押えて進撃を止めるが、何故かカスミはボンッ!と頭から湯気を出し始めた。 

「その指輪……」

 ゴクリとカスミの喉の鳴る音が聞こえた。よく見ると、カスミは何かを期待するような表情で俺を見つめている。
 そんな期待されるとな……俺も男だ。ここで決めずにいつ決めるのか!

 俺は意を決して口を開いた!




「オモチャだろそれ?いい歳して恥ずかしくないのか?」
「死ね!このボケナス!」
「あじゃぱー!」

 俺はカスミのフルスイングビンタを喰らい、串焼きの出店に頭ごと突っ込んだ!

「うおおお!あちぃぃぃぃ!燃える!髪の毛が物理的に燃えるぅぅぅ!」
「フン!そのままハゲちゃいなさいよ!ルカちゃん行こ!」
「あっちのイカ焼き食べたい~」

 そんな燃え盛る俺を置いて、カスミは「フン!」と鼻を鳴らし、ルカを連れてさっさと別の出店へと向かったのだった。




 
 

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