上 下
94 / 131
4章 天使と悪魔と運営と

15 鈴木、布教される!

しおりを挟む
「それにしても、流石はナツキだな。気が付けば圧倒してたもんな」
「そこは年季の差じゃないですか?彼は精々金神装備に変更して半年も経ってないんじゃないですかね。あと、ダンジョンばかりで対人戦をあまりして来なかったんじゃないですか?」
「なるほど……俺達は対人の比率の方が多かったもんな!」
「そういう事です。まぁ、勿論ダンジョンも行きましたけどね。圧倒的な経験値の差というやつですね」

 俺とナツキは通路を駆けながら、先程のフロウとの戦闘を振り返っていた。
 ナツキは武器の不利をものともせず、手持ちの防具スキルだけでほぼ圧倒したのだから彼のプレイヤースキルは素晴らしいの一言だ。

「あの凄まじい突きで逝ったと思ったらキッチリ護符の範囲で収めてんだからなぁ」
「即死に繋がる頭部と心臓付近は避けましたからね。なにより護符を貼り付けているかどうかは対人戦の読み合いでは基礎中の基礎です」
「あいつ、ニートで無課金だからなぁ。回復ドリンクとかで節約して護符なんて持って無かったんだろうな」
「対人戦中にドリンク飲む余裕なんてないくらい、わかりそうなもんですけどね」
「そこはほら、ニートの頂きさんだからじゃない?」
「ハハッ!自称24時間勤務だったらしいですけどね!」
「ブフッ!止めろよな。あんまり言うと全国の自宅警備員さん達を敵に回しちゃうぞ?」
「それは怖いですね!ぜひ自宅警備員の方々はダンボールかビニールハウスに再就職して頂きたいですね!ブハハッ!」

 そう走りながら器用にゲラゲラ笑うナツキ。こいつもこの世界に来て随分と素が出てきたな。

「お前……万が一元の世界に戻ったら世界チャットで今のログ流してやるからな~」
「止めてくださいよ!僕のクールでお金持ちなイケメン御曹司のイメージが崩れますって~」

 ニヤリと悪い笑みを浮かべてそう言うと、ナツキは「え~」と嫌そうな顔をして「止めてよ~」と言う姿に、イケメンでクールな御曹司なイメージは沸かないね。だってJSが嫁だし。
 よし!もう少しからかってやろう!

「何を言ってるんだこのJSマニアが!月刊わたしの義兄ちゃんを毎月5冊も買いやがって!」
「なッ!何故それを!」
「……え?!」
「え?!……」

 前にネットでたまたまニュースになっていた雑誌の名前を適当に言って話はでっち上げただけなのに……なにこの反応!思わず「え?」って声が出ちゃったよ!
 ナツキも俺の驚いた顔に混乱しちゃってるし!しかし、それにしたって……

「適当に言ったのに当たってるのかよ!この犯罪者予備軍め!」
「なんですって?!月刊わたしの義兄ちゃんは二次元だからいいんですよ!ちなみに、5冊の内訳は使用鑑賞予備!そして予備の予備と布教用です!もし戻ったらスズキくんにも差し上げますよ」
「いやーロリコンにされてしまうー」

 開き直ったナツキは獲物を見つけた肉食獣のような笑みを浮かべて俺に迫る!このままでは俺までロリコンになってしまう!あ、実年齢35で18・19の嫁さん貰うあたり俺も立派なロリコンだったわ。うはははは。

 そんな和気藹々と話しながらも、実はかなりの数のエンカウントがあったのだが、どれも大したことがなく、俺のワンパンで壁にめり込んだり、ナツキの剣で一瞬にして首無しデュラハンにされたりと歯牙にもかけず、ひたすら走っていたのだが──

「ようやっと次の部屋だな」
「通路を走ってて気が付いたんですけど、僕達は下へ下へと移動させられているみたいですよ」
「マジか!階段とか無かったのにな」
「通路を曲がる度に少しずつ床が斜めになってましたよ」
「まぁ……地下でもなんでもいいさ。俺はブァアミリオンをブチのめせればね」

 俺はそう言って扉に手をかける。
 内開きの扉を押して俺達は中に滑り込む。

「暗いな……」
「明かりくらいないんですかね」

 真っ暗の部屋でもプレイヤーである俺とナツキは薄っすらとだが一応周囲を見る事が可能だが、部屋の中はかなり広いらしく、先まで見通す事が出来ない。

 そう二人でキョロキョロとしていると、カッ!と天上から眩い光が降り注いだ。

「眩しッ!」
「くッ!」

 俺とナツキが急な明るさに目を眩ませていると、部屋の奥からカツ……カツ……と人が歩いて来る音が聞こえる。
 
「プレイヤーよ。よくぞここまで辿り着いたと褒めてやろう」

 その声に、明かりに眩んだ目を向けると、GM[魔王ブァアミリオン]がゆっくりと歩いて来るのが見えた。

「やっと黒幕のお出ましか……」
「百万馬鹿!僕を元の世界の召喚された時間に返しなさい!」
「ひゃく?!……口の効き方がなってないですね!」

 歯を剥き出しにして睨み付けるナツキを、ブァアミリオンは片手をスッと振り下ろす。

「ガッ──」
「なッ?!」

 奴が手を振り下ろした瞬間、ナツキが地面に倒れ込んだのだった!

 
しおりを挟む
感想 105

あなたにおすすめの小説

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

英雄の孫は見習い女神と共に~そしてチートは受け継がれる~

GARUD
ファンタジー
 半世紀ほど前、ブリガント帝国は未曾有の危機に陥った。  その危機を救ったのは一人の傭兵。  その傭兵は見たこともない数々の道具を使用して帝国の危機を見事に救い、その褒美として帝国の姫君を嫁に迎えた。  その傭兵は、その後も数々の功績を打ち立て、数人の女性を娶り、帝国に一時の平和を齎したのだが──  そんな彼も既に還暦し、力も全盛期と比べ、衰えた。  そして、それを待っていたかのように……再び帝国に、この世界に魔の手が迫る!  そんな時、颯爽と立ち上がった少年が居た!彼こそは、その伝説の傭兵の孫だった!  突如現れた漆黒の翼を生やした自称女神と共に、祖父から受け継がれしチートを駆使して世界に迫る魔の手を打ち払う!  異色の異世界無双が今始まる!  この作品は完結済の[俺のチートは課金ショップ?~異世界を課金アイテムで無双する~]のスピンオフとなります。当たり前ですが前作を読んでいなくても特に問題なく楽しめる作品に仕上げて行きます

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。 そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは? そこで彼は思った――もっと欲しい! 欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―― ※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。

世界最強の勇者は伯爵家の三男に転生し、落ちこぼれと疎まれるが、無自覚に無双する

平山和人
ファンタジー
世界最強の勇者と称えられる勇者アベルは、新たな人生を歩むべく今の人生を捨て、伯爵家の三男に転生する。 しかしアベルは忌み子と疎まれており、優秀な双子の兄たちと比べられ、学校や屋敷の人たちからは落ちこぼれと蔑まれる散々な日々を送っていた。 だが、彼らは知らなかったアベルが最強の勇者であり、自分たちとは遥かにレベルが違うから真の実力がわからないことに。 そんなことも知らずにアベルは自覚なく最強の力を振るい、世界中を驚かせるのであった。

2年ぶりに家を出たら異世界に飛ばされた件

後藤蓮
ファンタジー
生まれてから12年間、東京にすんでいた如月零は中学に上がってすぐに、親の転勤で北海道の中高一貫高に学校に転入した。 転入してから直ぐにその学校でいじめられていた一人の女の子を助けた零は、次のいじめのターゲットにされ、やがて引きこもってしまう。 それから2年が過ぎ、零はいじめっ子に復讐をするため学校に行くことを決断する。久しぶりに家を出る決断をして家を出たまでは良かったが、学校にたどり着く前に零は突如謎の光に包まれてしまい気づいた時には森の中に転移していた。 これから零はどうなってしまうのか........。 お気に入り・感想等よろしくお願いします!!

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!

やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり 目覚めると20歳無職だった主人公。 転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。 ”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。 これではまともな生活ができない。 ――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう! こうして彼の転生生活が幕を開けた。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

処理中です...