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第3章
3 - 8 ツェーザルは男爵から草履番に転職しました
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闇夜の空を最大速度で飛翔すること数分
「ここがツェーザルの別荘か…」
こいつ…逃げるだけならまだしも、誘拐団から購入した少女達まで律儀に連れ出しやがって…
《もういっそ捕まってる子達を全員拠点間移動魔法で屋敷へ飛ばしてしまえばいいんじゃないですかね?》
(う~ん…後でアンナ達に怒られるだろそれ…)
《それはそうでしょうけど…》
(まぁ…仕方ないか…一度戻って説明しておこう…)
「【ポータル】」
魔法を念じたと同時に俺の目の前にゲートが開く
そのゲートを潜ると俺は瞬時に自分の屋敷の入り口へと到着する
ガチャ──と扉を開いた俺は「ただいま!」と入り口で声をあげる
その声を聞いて奥からカナが顔を出した
トテトテッと駆け足で俺の前に来たカナはムギュッと抱きつき
「雷斗さまー!おかえりなさい!ふつかもどこにいってたの!カナさみしかったよぉ」
と瞳を潤ませている…この腹黒幼女め…俺のツボを押さえている!
《カナさんはある意味最強ですからね~》
「あ~…カナ?その…寂しがらせて済まなかった。今帰って来たのは急用があったからなんだ。今から言う事をアンナかミレーヌに伝えてくれないかな?」
と俺は真剣な眼差しでカナに言うと
「……わかりました雷斗様。どういったご用件でしょう?」
とカナは普段隠している大人の顔を見せる
「今俺はツェーザルの別荘の前に着いたのだが、そこに捕まっている少女達を一時的にこの屋敷の…そうだな…食堂にでも飛ばすから、その子達を見てやって欲しいと伝えてくれないか?」
「私のような子達は尽きないのですね……わかりました。必ず三人で少女達を介抱します……だからあんしんしてまかせてね!雷斗さま!」
そう宣言したカナはニパッと最高の笑顔を俺に向けてくる
「ははっ!実に頼もしいな!それじゃ、頼んだよ!」
とカナを抱き寄せオデコにキスをして──
「ららら!らいとさま⁉」
「行ってくる!」
頭から湯気を出しそうなくらい赤らめた顔をするカナを尻目に俺は「【ポータル】」を発動!
ツェーザルの別荘前へと戻った──
よし…まずは捕まっている少女達を救出する!
「【シャドウハイド】」
影になった俺は別荘の塀までダッシュ!
「【クリアラビリンス】」で別荘内部を掌握する
「【サンドストーム】」と念じて壁を砂へと変換して開いた穴から内部へと突入した
本邸襲撃からさほどの時間も経ってないことから、俺がここまで襲撃しに来ると思ってもいなかったのか…警備がかなり手薄な印象だ
これは好都合とばかりに、マーカーが密集している部屋へと俺は真っ直ぐに駆ける!
部屋の前には申し訳程度に見張りが一人だけ居るのを確認した俺は駆ける勢いそのままに飛び蹴りをぶちかます!
「ぉ───」と声を上げることも出来ずに吹き飛んでいく見張りが先の壁に頭からめり込んだのを確認した俺は扉をぶち破った!
やはり中には捕らえられた少女達の姿があった。
少女達は突如乱入してきた俺を見て驚きを隠せない様子だ
「俺はギルドから派遣されて君たちを助けに来た者だ!今から君達には安全な所へ移ってもらう!」
俺の言葉に戸惑う少女達の前に「【ポータル】」と魔法を発動!ゲートが少女達の前に出現した!
「さあ!ここを潜れば君たちは安全だ!急いでほしい!他の奴等が来る前に君たち全員を運ばないとならないんだ!」
と一気に捲し立てた俺に一人の少女が前に出る
「ホントに…安全ですか?…家に…おうちに帰れますか?」
不安な顔でそう問いかける彼女の頭を俺は掌で優しく撫で──
「俺が来たからにはもう大丈夫だから…安心してこのゲートを潜って欲しい。この先には俺の仲間の女の子達が君たちを看護するために待っているからさ!」
と笑いかける俺を彼女は見上げて──こくん──と頷き後ろにいる少女達へ向かって──
「みんな…私は行くよ…だからみんなも…」と説得してくれる。
その声に応じるように一人、また一人と少女達は立ち上がり彼女の前に集まった
彼女は再び振り返ると俺を見上げ─「最後にあなたのお名前を教えてくれませんか?」
そう問われた俺は静かに「俺の名前は久世雷斗だ」と答える──
「久世雷斗様…」
「さぁ!俺の魔力にも限りがある!早くこのゲートを潜ってくれ!」
そして彼女達はゲートを潜って行った──今頃は屋敷の皆がうまくやってくれているであろう……
「よし!」(それじゃあ残りのゴミ掃除と行きますか!)
《まったくもう…雷斗さんったら…忍ぶどころか暴れるんですから…》
監禁部屋を飛び出した俺は再びマーカーが集結している部屋へ向かって突き進む!
すでに姿を隠すこともしない俺を見かける度に襲ってくる護衛の奴等をなぎ倒し、ついに目的の部屋へと辿り着く!
そして扉を蹴り破り中へと踏み込めば、すでに何人もの護衛が集まっていた
「ツェーザル!ここが年貢の納め時だ!潔く腹を切れ!」と俺は大声を張り上げる
すると、その中に一際体のデカいおっさんが扉を蹴り破って侵入した俺に向かって声を発する
「貴様が執行者などと口から出まかせを言っている気が触れた男か!我が屋敷での狼藉の数々!決して許されるものではないと知れ!者ども!こいつを切り刻めぃ!」
なるほど…どうやらこいつがツェーザルで間違いないようだな…と脳内に記憶している間にも周囲に展開する護衛達は次々と武器を構えて四方から押し寄せてくる!
正面から突き出された剣を手の甲で弾き、背後から振り下ろされる斧を華麗なサイドステップで回避!着地と同時に左右から襲い掛かる男の拳を両手で片方ずつ掴んで力の限り振り回す!
俺を中心にコマのように回転する男二人に俺を取り囲んでいた者どもは次々に吹き飛ばされ行動不能に陥っている
それを見たツェーザルは慌てて後ろを向き逃げ出し──た訳ではないようだな…
背後の扉を開けたツェーザルは「出番ですよ先生!」とお決まりの強いやつ?を呼び出したのだ!
《このテンプレな展開が素晴らしいです!さすがは腐っても貴族!演出を心得てますねぇ》
(どこで感心してるんだよ…)
「貴様…我の弟子を屠ったのか?」と扉を潜って出て来たのは全身黒ずくめの男
「弟子ってのは苦無の使い手の事か?」と白々しく問う俺に黒ずくめは「いかにも」と頷く
「それなら確かに俺が倒したが…命までは奪ってないぜ?」と言う俺の口角は自然と上がっている
「もっとも…今頃は自分が何者で何をしていたのかもわからない状態になっているがな!」
《あ~雷斗さん!今すっごい悪い顔してますよ~!》
(TVに話しかけるおばあちゃんかよ!少し黙っててよ!)
「ふむ…力不足だった者が蹂躙されるのは世の理…だが、我が弟子の敵は取らせてもらおう!」
そう言うや黒ずくめの男は何処からか取り出した苦無を俺に向かって投擲する!
俺は気が付かれないように苦無を叩き落とす!
するとうっすらと俺の掌には刃の後が付き、切れた所から血が滴り落ちる
「ほう…我の苦無を叩き落とすとは…我が弟子を倒しただけはあるようだな…だが!」
「っ───」俺は掌に走った刃の痕から全身に痺れが回るのを覚え、片膝を付く
「我が術…痺れ苦無の味は如何かね?」と黒ずくめの男は勝ち誇った顔をして俺へと近づいて来る
「体が…うごか…ない」と身動ぎをする俺を見る黒ずくめの男は勝利を確信しているのか薄らと口角を上げ───
「くく…これから我が秘術の限りを尽くして貴様を葬ってくれよう!喰らえ!秘技!クモ糸縛り!」
黒ずくめの男はどこから取り出したのか判らない金糸を取り出し、膝をついて動けない俺に向かい投げ付け、俺を器用に金糸で縛りあげていく
《おおっと!雷斗さん大ピーンチ!忍者の秘技に成すすべもなく敗れてしまうのかーーー!》
と脳内に響く解説のズラのアナ風の声を真似した女神の声を聞き流し──
「どうだ?鋼鉄製の糸の味は?これで貴様はどう足掻いても身動き一つ取れまい…」という黒ずくめの男の口角は歪なまでに吊り上がり
「これでトドメを刺させてもらうぞ…焦炎地獄!」と黒ずくめの男が叫ぶと…なんと!俺に向かって口から炎を吐き出した!
「ぐあああああ!」哀れ俺は断末魔の悲鳴をあげ炎の海に飲まれ灰燼と化す──
「ふん…他愛無い…」と呟く黒ずくめの男に周囲の護衛達は「「「おおおおお!」」」と大歓声だ!
「流石は先生!見事な腕前!このツェーザル、感服いたしましたぞ!」と諸手を上げて喜ぶツェーザル
パチパチパチパチ!
「いやー!本当に素晴らしい!これがホントの忍者の技って感じだな!」
とツェーザルの背後から現れた鬼の仮面を着けた男は拍手をしながら黒ずくめの男へと歩み出る
「貴様……一体……」と黒ずくめの男は歩み出た鬼仮面を射殺すような鋭い眼光を叩きつけると
「俺は数々の女性を鬼の様に愛した男!」と吠えた鬼仮面は仮面を剥ぎ取った!
「久世雷斗様だ!」(決まったな!)
《さむっ!絶対零度まで空気が冷え込みましたよ!ほら!回りを見てください!悪人の皆さんも口をポカーンと開けてあなたを見てますよ!》(そんなことないやい!)
「貴様はたった今俺が確かに焦炎地獄にて屠ったはずだ!なぜその様な場所から!そしてなぜ無傷なのだ!」と俺を見て混乱する黒ずくめの男──
「そりゃあれだよ!忍法変わり身に術的なやつだよ!ほれ!」と俺は女神さまより教わっていた…というより危うく使われる所だった禁断の魔法【メタモルフォーゼ】を適当な男に向かって発動!たちまちその男は俺と見た目が同じになる──
これを使って女にしてやるって毎回脅された日々は今も俺の脳裏にトラウマとして焼きついて──《ダウトーーー!異議あり!裁判長!被告人は嘘の証言をしています!》
(却下します!異議は認めません!)
その変異の一部始終を見た黒ずくめの男は憤り「貴様!我を愚弄していたというのか!」と吠える
「いやいや。忍術対決だと思ったからこそ、こうしてお付き合いしてあげたっていうのに…それを愚弄だなんて心外だなぁ」俺はそう言うとやれやれ~と肩を竦める
「ならば!もう一度屠るまで!クモ糸縛り!」と金糸を俺にめがけて投げつける……が
「一度見た技は俺みたいな超人には通用しないって知らないのかな?喰らえ!クモ糸縛り返し!」
と飛来する金糸をこっそり【トルネイド】の風で操り黒ずくめの男へ巻き付ける!
「ばかなっ!我が自在に操れる鋼鉄の糸が!」とぐるぐる巻きになって床に転がる黒ずくめの男
「えっと…この後は焦炎地獄~だっけ?」と俺は必殺の灼焔畷掌を黒ずくめの男の胸目掛け突き刺し内部から肉体を焼き尽くす焼き尽くして絶命させ、辛うじて蠢く臓器を摘出し、ツェーザルへ投げつけた──そして、その一部始終を見ていた護衛の奴等は──
「ひいいいいい!悪魔だ!悪魔だああああ!」「かあちゃんだずげでーーー!」等々、悲鳴をあげながら一目散に部屋を飛び出して行こうとするも──
扉から飛び出した瞬間、俺の罠【サンドストーム】と【トルネイド】による砂化の設置魔法により、彼らの体はボロボロと崩れ…砂へと変わって行った──
《これはまさか!日曜の朝8時半にやっていた美少女戦士の必殺技!ハートキャッチ!》
(そんなはずねーだろうがよ…日曜の朝8時半にこんなの放送してたらお茶の間は大参事じゃねーかよ…煩いBPOが黙っちゃいねーぞ?)と今は戻れない過去にすごした世界を懐かしみ──
「さて…と…ツェーザルさんよ…残っているのはあんただけになっちまったな?」と腰を抜かし、尻もちをついているツェーザルに向かって俺は一歩、また一歩距離を詰める
「ままま待って待って待ってくださ下さい!久世殿!いや、久世様ぁ!どうか!どうか命だけはお助けください!何でも言う事を聞きましょう!有り金だって全部差し出します!だからどどどどうか!命!命だけはお助け!お助けください!」と一心不乱に命乞いを始めるツェーザル
「よし、考えてやらなくもない──が、一つ答えろ。お前と同じ趣味を持っているゲルルフ子爵の屋敷はどの辺りにあるんだ?」
「そそそそんな事でいいのか!ファリド子爵領から街道沿いに西に馬車で進んで一週間ほど行った所がゲルルフ子爵の領地だ!そこの中心にある街の古城にゲルルフ子爵は住んでいる!!」
「ほう…なるほどな。素晴らしい情報をどうもありがとう」と笑顔をツェーザルへ向ければ
「ででで!では!我を助けていただけるのですか!!」と歓喜の表情を浮かべるツェーザル
「ああ!考えたけどやっぱ無理だわ!ごめんな!」と再度笑顔をツェーザルに向ければ
「きさきさ貴様!わわわ我を騙したのか!血も涙もない悪鬼とは貴様のことだ!」とツェーザルは顔を真っ赤に染め、掌を返したように喚き散らす
「ふっ…お前にだけは言われたくないな…」と俺は先ほどの黒ずくめの男が持っていた金糸を拾い、ツェーザルの首目掛け投げつける
首に巻き付けられたツェーザルは「ぐわっ!」とまるで鶏が締め上げられているような声を出す
俺はその糸の端を持ち、天井の梁へと飛び移り、梁を跨いで飛び降りた──
するとツェーザルは首に巻き付いた糸に吊り上げられるかのように天井へと舞い上がり──
ピンッ!
と俺が糸を指で弾けば吊り上げられたツェーザルの体からは力が抜け、動かぬ躯へと変わった
俺は糸を離し──「ツェーザル…お前にはこれから転職してもらうぜ。転職先は閻魔の草履番だ」
《うおおお!萌える!萌えるよ雷斗さん!真っ赤に萌えてるよおおお!》
(良かったな……)
その後俺は毎度恒例の屋敷大爆発という花火を上げて──《ふっ…汚い花火だぜ…》などとのたまう女神さまを無視して皆が待つ屋敷へと帰還するのであった───
「ここがツェーザルの別荘か…」
こいつ…逃げるだけならまだしも、誘拐団から購入した少女達まで律儀に連れ出しやがって…
《もういっそ捕まってる子達を全員拠点間移動魔法で屋敷へ飛ばしてしまえばいいんじゃないですかね?》
(う~ん…後でアンナ達に怒られるだろそれ…)
《それはそうでしょうけど…》
(まぁ…仕方ないか…一度戻って説明しておこう…)
「【ポータル】」
魔法を念じたと同時に俺の目の前にゲートが開く
そのゲートを潜ると俺は瞬時に自分の屋敷の入り口へと到着する
ガチャ──と扉を開いた俺は「ただいま!」と入り口で声をあげる
その声を聞いて奥からカナが顔を出した
トテトテッと駆け足で俺の前に来たカナはムギュッと抱きつき
「雷斗さまー!おかえりなさい!ふつかもどこにいってたの!カナさみしかったよぉ」
と瞳を潤ませている…この腹黒幼女め…俺のツボを押さえている!
《カナさんはある意味最強ですからね~》
「あ~…カナ?その…寂しがらせて済まなかった。今帰って来たのは急用があったからなんだ。今から言う事をアンナかミレーヌに伝えてくれないかな?」
と俺は真剣な眼差しでカナに言うと
「……わかりました雷斗様。どういったご用件でしょう?」
とカナは普段隠している大人の顔を見せる
「今俺はツェーザルの別荘の前に着いたのだが、そこに捕まっている少女達を一時的にこの屋敷の…そうだな…食堂にでも飛ばすから、その子達を見てやって欲しいと伝えてくれないか?」
「私のような子達は尽きないのですね……わかりました。必ず三人で少女達を介抱します……だからあんしんしてまかせてね!雷斗さま!」
そう宣言したカナはニパッと最高の笑顔を俺に向けてくる
「ははっ!実に頼もしいな!それじゃ、頼んだよ!」
とカナを抱き寄せオデコにキスをして──
「ららら!らいとさま⁉」
「行ってくる!」
頭から湯気を出しそうなくらい赤らめた顔をするカナを尻目に俺は「【ポータル】」を発動!
ツェーザルの別荘前へと戻った──
よし…まずは捕まっている少女達を救出する!
「【シャドウハイド】」
影になった俺は別荘の塀までダッシュ!
「【クリアラビリンス】」で別荘内部を掌握する
「【サンドストーム】」と念じて壁を砂へと変換して開いた穴から内部へと突入した
本邸襲撃からさほどの時間も経ってないことから、俺がここまで襲撃しに来ると思ってもいなかったのか…警備がかなり手薄な印象だ
これは好都合とばかりに、マーカーが密集している部屋へと俺は真っ直ぐに駆ける!
部屋の前には申し訳程度に見張りが一人だけ居るのを確認した俺は駆ける勢いそのままに飛び蹴りをぶちかます!
「ぉ───」と声を上げることも出来ずに吹き飛んでいく見張りが先の壁に頭からめり込んだのを確認した俺は扉をぶち破った!
やはり中には捕らえられた少女達の姿があった。
少女達は突如乱入してきた俺を見て驚きを隠せない様子だ
「俺はギルドから派遣されて君たちを助けに来た者だ!今から君達には安全な所へ移ってもらう!」
俺の言葉に戸惑う少女達の前に「【ポータル】」と魔法を発動!ゲートが少女達の前に出現した!
「さあ!ここを潜れば君たちは安全だ!急いでほしい!他の奴等が来る前に君たち全員を運ばないとならないんだ!」
と一気に捲し立てた俺に一人の少女が前に出る
「ホントに…安全ですか?…家に…おうちに帰れますか?」
不安な顔でそう問いかける彼女の頭を俺は掌で優しく撫で──
「俺が来たからにはもう大丈夫だから…安心してこのゲートを潜って欲しい。この先には俺の仲間の女の子達が君たちを看護するために待っているからさ!」
と笑いかける俺を彼女は見上げて──こくん──と頷き後ろにいる少女達へ向かって──
「みんな…私は行くよ…だからみんなも…」と説得してくれる。
その声に応じるように一人、また一人と少女達は立ち上がり彼女の前に集まった
彼女は再び振り返ると俺を見上げ─「最後にあなたのお名前を教えてくれませんか?」
そう問われた俺は静かに「俺の名前は久世雷斗だ」と答える──
「久世雷斗様…」
「さぁ!俺の魔力にも限りがある!早くこのゲートを潜ってくれ!」
そして彼女達はゲートを潜って行った──今頃は屋敷の皆がうまくやってくれているであろう……
「よし!」(それじゃあ残りのゴミ掃除と行きますか!)
《まったくもう…雷斗さんったら…忍ぶどころか暴れるんですから…》
監禁部屋を飛び出した俺は再びマーカーが集結している部屋へ向かって突き進む!
すでに姿を隠すこともしない俺を見かける度に襲ってくる護衛の奴等をなぎ倒し、ついに目的の部屋へと辿り着く!
そして扉を蹴り破り中へと踏み込めば、すでに何人もの護衛が集まっていた
「ツェーザル!ここが年貢の納め時だ!潔く腹を切れ!」と俺は大声を張り上げる
すると、その中に一際体のデカいおっさんが扉を蹴り破って侵入した俺に向かって声を発する
「貴様が執行者などと口から出まかせを言っている気が触れた男か!我が屋敷での狼藉の数々!決して許されるものではないと知れ!者ども!こいつを切り刻めぃ!」
なるほど…どうやらこいつがツェーザルで間違いないようだな…と脳内に記憶している間にも周囲に展開する護衛達は次々と武器を構えて四方から押し寄せてくる!
正面から突き出された剣を手の甲で弾き、背後から振り下ろされる斧を華麗なサイドステップで回避!着地と同時に左右から襲い掛かる男の拳を両手で片方ずつ掴んで力の限り振り回す!
俺を中心にコマのように回転する男二人に俺を取り囲んでいた者どもは次々に吹き飛ばされ行動不能に陥っている
それを見たツェーザルは慌てて後ろを向き逃げ出し──た訳ではないようだな…
背後の扉を開けたツェーザルは「出番ですよ先生!」とお決まりの強いやつ?を呼び出したのだ!
《このテンプレな展開が素晴らしいです!さすがは腐っても貴族!演出を心得てますねぇ》
(どこで感心してるんだよ…)
「貴様…我の弟子を屠ったのか?」と扉を潜って出て来たのは全身黒ずくめの男
「弟子ってのは苦無の使い手の事か?」と白々しく問う俺に黒ずくめは「いかにも」と頷く
「それなら確かに俺が倒したが…命までは奪ってないぜ?」と言う俺の口角は自然と上がっている
「もっとも…今頃は自分が何者で何をしていたのかもわからない状態になっているがな!」
《あ~雷斗さん!今すっごい悪い顔してますよ~!》
(TVに話しかけるおばあちゃんかよ!少し黙っててよ!)
「ふむ…力不足だった者が蹂躙されるのは世の理…だが、我が弟子の敵は取らせてもらおう!」
そう言うや黒ずくめの男は何処からか取り出した苦無を俺に向かって投擲する!
俺は気が付かれないように苦無を叩き落とす!
するとうっすらと俺の掌には刃の後が付き、切れた所から血が滴り落ちる
「ほう…我の苦無を叩き落とすとは…我が弟子を倒しただけはあるようだな…だが!」
「っ───」俺は掌に走った刃の痕から全身に痺れが回るのを覚え、片膝を付く
「我が術…痺れ苦無の味は如何かね?」と黒ずくめの男は勝ち誇った顔をして俺へと近づいて来る
「体が…うごか…ない」と身動ぎをする俺を見る黒ずくめの男は勝利を確信しているのか薄らと口角を上げ───
「くく…これから我が秘術の限りを尽くして貴様を葬ってくれよう!喰らえ!秘技!クモ糸縛り!」
黒ずくめの男はどこから取り出したのか判らない金糸を取り出し、膝をついて動けない俺に向かい投げ付け、俺を器用に金糸で縛りあげていく
《おおっと!雷斗さん大ピーンチ!忍者の秘技に成すすべもなく敗れてしまうのかーーー!》
と脳内に響く解説のズラのアナ風の声を真似した女神の声を聞き流し──
「どうだ?鋼鉄製の糸の味は?これで貴様はどう足掻いても身動き一つ取れまい…」という黒ずくめの男の口角は歪なまでに吊り上がり
「これでトドメを刺させてもらうぞ…焦炎地獄!」と黒ずくめの男が叫ぶと…なんと!俺に向かって口から炎を吐き出した!
「ぐあああああ!」哀れ俺は断末魔の悲鳴をあげ炎の海に飲まれ灰燼と化す──
「ふん…他愛無い…」と呟く黒ずくめの男に周囲の護衛達は「「「おおおおお!」」」と大歓声だ!
「流石は先生!見事な腕前!このツェーザル、感服いたしましたぞ!」と諸手を上げて喜ぶツェーザル
パチパチパチパチ!
「いやー!本当に素晴らしい!これがホントの忍者の技って感じだな!」
とツェーザルの背後から現れた鬼の仮面を着けた男は拍手をしながら黒ずくめの男へと歩み出る
「貴様……一体……」と黒ずくめの男は歩み出た鬼仮面を射殺すような鋭い眼光を叩きつけると
「俺は数々の女性を鬼の様に愛した男!」と吠えた鬼仮面は仮面を剥ぎ取った!
「久世雷斗様だ!」(決まったな!)
《さむっ!絶対零度まで空気が冷え込みましたよ!ほら!回りを見てください!悪人の皆さんも口をポカーンと開けてあなたを見てますよ!》(そんなことないやい!)
「貴様はたった今俺が確かに焦炎地獄にて屠ったはずだ!なぜその様な場所から!そしてなぜ無傷なのだ!」と俺を見て混乱する黒ずくめの男──
「そりゃあれだよ!忍法変わり身に術的なやつだよ!ほれ!」と俺は女神さまより教わっていた…というより危うく使われる所だった禁断の魔法【メタモルフォーゼ】を適当な男に向かって発動!たちまちその男は俺と見た目が同じになる──
これを使って女にしてやるって毎回脅された日々は今も俺の脳裏にトラウマとして焼きついて──《ダウトーーー!異議あり!裁判長!被告人は嘘の証言をしています!》
(却下します!異議は認めません!)
その変異の一部始終を見た黒ずくめの男は憤り「貴様!我を愚弄していたというのか!」と吠える
「いやいや。忍術対決だと思ったからこそ、こうしてお付き合いしてあげたっていうのに…それを愚弄だなんて心外だなぁ」俺はそう言うとやれやれ~と肩を竦める
「ならば!もう一度屠るまで!クモ糸縛り!」と金糸を俺にめがけて投げつける……が
「一度見た技は俺みたいな超人には通用しないって知らないのかな?喰らえ!クモ糸縛り返し!」
と飛来する金糸をこっそり【トルネイド】の風で操り黒ずくめの男へ巻き付ける!
「ばかなっ!我が自在に操れる鋼鉄の糸が!」とぐるぐる巻きになって床に転がる黒ずくめの男
「えっと…この後は焦炎地獄~だっけ?」と俺は必殺の灼焔畷掌を黒ずくめの男の胸目掛け突き刺し内部から肉体を焼き尽くす焼き尽くして絶命させ、辛うじて蠢く臓器を摘出し、ツェーザルへ投げつけた──そして、その一部始終を見ていた護衛の奴等は──
「ひいいいいい!悪魔だ!悪魔だああああ!」「かあちゃんだずげでーーー!」等々、悲鳴をあげながら一目散に部屋を飛び出して行こうとするも──
扉から飛び出した瞬間、俺の罠【サンドストーム】と【トルネイド】による砂化の設置魔法により、彼らの体はボロボロと崩れ…砂へと変わって行った──
《これはまさか!日曜の朝8時半にやっていた美少女戦士の必殺技!ハートキャッチ!》
(そんなはずねーだろうがよ…日曜の朝8時半にこんなの放送してたらお茶の間は大参事じゃねーかよ…煩いBPOが黙っちゃいねーぞ?)と今は戻れない過去にすごした世界を懐かしみ──
「さて…と…ツェーザルさんよ…残っているのはあんただけになっちまったな?」と腰を抜かし、尻もちをついているツェーザルに向かって俺は一歩、また一歩距離を詰める
「ままま待って待って待ってくださ下さい!久世殿!いや、久世様ぁ!どうか!どうか命だけはお助けください!何でも言う事を聞きましょう!有り金だって全部差し出します!だからどどどどうか!命!命だけはお助け!お助けください!」と一心不乱に命乞いを始めるツェーザル
「よし、考えてやらなくもない──が、一つ答えろ。お前と同じ趣味を持っているゲルルフ子爵の屋敷はどの辺りにあるんだ?」
「そそそそんな事でいいのか!ファリド子爵領から街道沿いに西に馬車で進んで一週間ほど行った所がゲルルフ子爵の領地だ!そこの中心にある街の古城にゲルルフ子爵は住んでいる!!」
「ほう…なるほどな。素晴らしい情報をどうもありがとう」と笑顔をツェーザルへ向ければ
「ででで!では!我を助けていただけるのですか!!」と歓喜の表情を浮かべるツェーザル
「ああ!考えたけどやっぱ無理だわ!ごめんな!」と再度笑顔をツェーザルに向ければ
「きさきさ貴様!わわわ我を騙したのか!血も涙もない悪鬼とは貴様のことだ!」とツェーザルは顔を真っ赤に染め、掌を返したように喚き散らす
「ふっ…お前にだけは言われたくないな…」と俺は先ほどの黒ずくめの男が持っていた金糸を拾い、ツェーザルの首目掛け投げつける
首に巻き付けられたツェーザルは「ぐわっ!」とまるで鶏が締め上げられているような声を出す
俺はその糸の端を持ち、天井の梁へと飛び移り、梁を跨いで飛び降りた──
するとツェーザルは首に巻き付いた糸に吊り上げられるかのように天井へと舞い上がり──
ピンッ!
と俺が糸を指で弾けば吊り上げられたツェーザルの体からは力が抜け、動かぬ躯へと変わった
俺は糸を離し──「ツェーザル…お前にはこれから転職してもらうぜ。転職先は閻魔の草履番だ」
《うおおお!萌える!萌えるよ雷斗さん!真っ赤に萌えてるよおおお!》
(良かったな……)
その後俺は毎度恒例の屋敷大爆発という花火を上げて──《ふっ…汚い花火だぜ…》などとのたまう女神さまを無視して皆が待つ屋敷へと帰還するのであった───
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俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
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"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
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その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
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これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。
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どんなに良い女でも肉便器にするとオナホと変わらない。
その真実に気付いた俺は若返って、生意気な女達を食い散らす事にする
俺のスキル『性行為』がセクハラ扱いで追放されたけど、実は最強の魔王対策でした
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アレンのスキルはたった一つ、『性行為』。職業は『愛の剣士』で、勇者パーティの中で唯一の男性だった。
聖都ラヴィリス王国から新たな魔王討伐任務を受けたパーティは、女勇者イリスを中心に数々の魔物を倒してきたが、突如アレンのスキル名が原因で不穏な空気が漂い始める。
「アレン、あなたのスキル『性行為』について、少し話したいことがあるの」
イリスが深刻な顔で切り出した。イリスはラベンダー色の髪を少し掻き上げ、他の女性メンバーに視線を向ける。彼女たちは皆、少なからず戸惑った表情を浮かべていた。
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アレンのスキル『性行為』は、女性の愛の力を取り込み、戦闘中の力として変えることができるものだった。
だがその名の通り、スキル発動には女性の『愛』、それもかなりの性的な刺激が必要で、アレンのスキルをフルに発揮するためには、女性たちとの特別な愛の共有が必要だった。
そんなアレンが周りから違和感を抱かれることは、本人も薄々感じてはいた。
「あなたのスキル、なんだか、少し不快感を覚えるようになってきたのよ」
女勇者イリスが口にした言葉に、アレンの眉がぴくりと動く。
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