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第2章

2 - 5 浜辺と海と女神さまと

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宿屋で二人部屋を二部屋取り、そこで寝たわけだが───

《まさに水面下での攻防って感じでしたね♪》

(ああ……なんで大部屋取らなかったのかと心底後悔したわ……)

そう……俺が四人なんだからと二人部屋を二部屋  でいいよね?なんて軽い感じで切り出したのが事の発端だった。

「私が同室なら寝過ごす心配もないですね」

「そうだな。アンナは朝早いもんな」

「「あぁ!?待ちなさいよ!」」

ささっと俺と同じ部屋に入室しようとするアンナをミレーヌとカナが肩を掴んで廊下へと引きずり出す。

「なんですか?二人ともどうしたんですか?」

アンナはぺっぺっと肩を掴む手を優しく払い笑顔で二人を見る。


「なにサラッと同室になろうとしてるんですか!」
「ぬけがけはだめ!ぜったい!」 

ミレーヌとカナは顔を真っ赤にしてアンナを睨み付ける。

《止めないんですか?》
(ええ~……やだなぁ……)
仕方ない…廊下で揉めては宿屋にも悪いしな…
俺は火花を散らす三人の間に決死の覚悟で入り
───
「みんなその辺で少し落ち着こ───」


「雷斗さんは」「雷斗様は」「雷斗さまは」

「「「黙ってて!!」」」


「はぅぃ……」
俺の決死の覚悟は簡単に千切られた───

《役立たずですね~。マダオはやっぱりマダオなんですね》

グサッ!

女神さまのトドメの口撃によって俺のライフは超必殺技が使える位にまで削られた!

(もういいよ……俺は寝るよ……)
《スネチャマはおデリケートざますからね~》
(ジャイ子は黙っててくれよ……)

俺が部屋に入った後も廊下では三人による激しいバトルが繰り広げられ───

勝者は───


キィィー……パタン……

「ええっ!もう寝ちゃってる……これじゃ勝った意味が……」
彼女はガクッと肩を落とす

「あっでも……寝てるってことは……」ふふふっと悪い笑顔を浮かべ───
彼女はチュッと頬へ優しくキスをする。

「えへへ……今日は移動ばっかりで疲れたし私も寝よ~」 



チュンチュン!チュンチュン!

「雷斗さん……雷斗さん……」ユッサユッサ

「う……ん……」

「雷斗さん……雷斗さん……」ユッサユッサ

「っぁ……ふぁ~ぁ……おはようアンナ……」

「おはようございます。下の階に食事が用意されてますよ」

「あぁ…ん?……他の二人は?」

「既に下で待ってますよ」

「そうか……すぐ行くからアンナも下で待っていてくれないか?」

「かしこまりました」

とアンナは部屋を出て下の階へと向かった。
そう言えば昨日は結局どうなったんだろう……

《スネチャマはおデリケートざますから。あの後すぐに布団に入ってふて寝してしまったざます》
(誰がスネチャマか!あんなカッパベアーでもおちょぼ口でもねーわ!)
《あら……昨日よりは元気になってますね?》
(あぁ……なんかいい夢を見た気がしてさ……)

頬の辺りがなんだかくすぐったいような……

《ふふっ良かったですね♪》
(ところで……昨日は結局誰が勝ったんだ?)

《それはヒ・ミ・ツです!負けた二人は最初こそ壁に耳を付けて聞き耳を立てていたのですが、何事もなさすぎて寝ましたし……勝った方は勝った方で何も発展しなくて諦めて寝ましたので……誰が勝者でもよろしいかな~と》

ヘタレ過ぎて100年の恋も冷めるんじゃないかと思いました───などと女神さまは恐ろしい事を口にする。

俺はそんなセリフに慌てて下の階へと降りる。

「みんなおはよう!」

「おはようございます!雷斗様!」
「雷斗さまおはよー!」
「ふふっ。やっと降りて来られましたね」

結局誰だったんだろうなぁ……

「雷斗様?昨日はよく寝れましたか?」

「雷斗さまー!カナはぐっすり眠れたよー!」

「雷斗さん……お食事をお持ちしますね」


ぬぅ……みんなの顔を見ても昨日同室したのが誰だか全くわからん!

そうして少しばかりモヤモヤしたまま朝食を済ませ馬車に乗り、この先にあるバルナバス領へと移動を開始したのだった───


そしてお昼も過ぎた頃───


バシャバシャバシャ!

「ヤッホー!海だあーー!」
「あはははは!つめたくてきもちいい!」


「こらあ!二人とも!日焼け止め塗らないと後で大変だよー!」

海を見て飛び出していくミレーヌとカナ。
それを見て注意するアンナ。

そう……俺達はバルナバス領の観光地でもあるビーチに到着したのだ!


思わず俺は「海って素晴らしーい!」などと叫んでしまい、周囲の観光客から見られ赤面……

「雷斗様ー!なに叫んでるんですかー!」

「うみってすばらしー!あははっ!」

とミレーヌにからかわれ、カナに真似されてといじり倒させる。


しかし……《絶景ですか?》そう絶景なのだ───え?

《よろしかったですね~ちゃんと婚約者達と旅行できて~海だあーー!とか満喫してて~さぞやご満悦でしょうね~》

と明らかに拗ねた子供のような言葉を吐く女神さま。

(なに突然拗ねてるんですか?スネチャマですか?カッパベアーですか?)

《見てるだけだからつまんないだけですー!》

(あー…そゆことね…女神さまなら水着もきっと似合ってるんだろうなー…見たかったなー)

《ふん!そんな棒読みで思ってもないこと言われても嬉しくないです!もういっそ海水で股間の物が腐ってしまえばいいのに……》

しまった!俺の心が一切!いーーっさい!籠ってない心の声は女神さまにはマルッとお見通しだったのか……さらにご機嫌を損ねてしまったらしい。

めんどくさい女神さまだ……《誰がめんどくさいんですか!》

ああ……駄々漏れだったよ……めんどくさい……それに引き換え……目の前にあるパラダイスを見ろよ!

前を向けば揺れる乳達!さらにはビギニのショーツから伸びる太もも達!

今俺は海という名の桃源郷に居るんだぜ!
しかも、この眼前でキャッキャッウフフしている女の子の二人は俺の婚約者!
ああ!異世界万歳!

「あの……雷斗さん?」

「はっ!」

俺はアンナの突然の呼び掛けにトリップしていた意識を元の世界へと戻す。

「何処か遠い目をされてましたが、お体の具合でもわるいのですか?」

と心配そうに俺の顔を覗き込むアンナ───俺の婚約者マジ可愛い!

「い…いや…大丈夫…なんでもないよ?」

「本当ですか?」

と言うなりアンナは俺のオデコに自分のオデコを当てて───

「熱は少しあるようですが……」

なんて言っているが……それどころじゃぁない!
俺の目の前には生の谷間が!薄い布一枚でしか隠されていない生乳が!

「…………雷斗さん……目がやらしいです……」

「はっ!」しまった!余りにもの光景に思わず見入ってしまった……

《白々しい!何が思わずですか!血走った眼球でガン見してたじゃないですか!》

「あー!アンナ!抜け駆けは無しって言ったじゃないか~!雷斗様~!」

「アンナだけずーるーいー!」

と浜辺から駆けてくるカナとミレーヌ───

うむ!ミレーヌの揺れる山脈も素晴らしい!
やっぱ海はちち!じゃなくって“いい!”

俺を囲む大人な魅力を見せつける二人を「むーーー!」と頬を膨らませ自分の胸の無さを悔やむカナ。

そんなカナを優しく抱き上げ、高い高いをしてあげればカナの顔はたちまち笑顔に変わる。

なんやかんやと少々イチャイチャしたあと、各自海へと突撃していった。

俺は浜辺で座りながら浅瀬で遊ぶみんなを見ていて……ふと疑問が浮かんだ。

「なんで海なのに人がこんなに少ないんだ?」

「それは今の時期は海が荒れて少々危険なのと、もともとこの辺りは魔物が多いので人が少ない……と条件が重なって今の時期は誰も近づかないらしいです。」

俺の独り言のような呟きに、たまたま戻ってきたアンナが答えてくれる。

「そうか…でもまぁ…これだけ人が少ないと貸し切りみたいでいいね!また来ような」

「そうですね……次はその…ふ…ふた──「だーー!アンナは直ぐに抜け駆けするー!」

「ゆだんできないねー!」

なんやかんやとワイワイしている内に夕方になって、浜風も冷えてきた。

俺は手早く温度を調節したウォーターバブルでみんなを包み込み海水を洗い落とすと馬車を出しバルナバス領内の街へ行き宿を取る。


もちろん今度はちゃんと四部屋取った!


そして俺は布団に潜り眠りに就く───
はずだったのだが……俺の意識は暗い世界にて覚醒した───が……俺はこの世界に見覚えがあった。

(女神さまー!今日はどうしたんですかー!わざわざ夢で呼ぶなんてー!女神さまー!)

呼んでもなかなか姿を現さない女神さま……しばらくすると──

俺の目の前に光が集まり……そこから現れたのは────

「あの……すいません……準備に時間がかかりまして……」

とモジモジしている女神さま……だが……(水着!)

そう俺の目の前に居る女神さまは只今水着を着用しておられる!

女神さまの透き通るような肌が露出されまくりだ!そしてなにより……着痩せするタイプだったのかな……胸が大きい!ミレーヌよりも遥かにだ!なんてこったい!あれはエベレストだぜ!


「あの……似合いますか?」と見た目の衝撃とは裏腹に恥ずかしそうにするその姿に萌えない男が居ないわけがない!

「女神さま!すっごい似合ってますよ!」と言うや俺は女神さまを大絶賛!

「こういう時は女神さま~ではなくて名前で呼んで欲しいですね~」
そう言うと女神さまはぷくーっと頬を膨らませる。
正直可愛さの次元が突破どころか超越している!例えるなら可愛さオーバーロードや!

「女神さ──じゃない…ポメリー!すごく可愛いよ!」

「ふふっありがとうございます♪」

二人は座ると身を寄せ合い時間の許す限り他愛ない会話をしたのだった────


翌日
「ふぁあ~あ……なんか疲れが取れてないなぁ……」

結局朝まで脳内会議みたいなもんだったしな……体は休まっても脳は疲れてるって感じだな……

俺は長い欠伸を一つ、鉛のように重い体を起こし───

なにやら自分の周囲に殺気が蔓延していることに気が付く!

「なんだ!」と見渡してみれば……悪鬼羅刹の如く顔を朱色に染めた三人が───まさかっ!

───ゴゴゴゴゴ────

「雷斗さん……ポメリーって方はご存知ですか?」

目を細め、俺を射殺さんばかりの鋭い目線のアンナ


───ゴゴゴゴゴ────

「雷斗様?私達が居るのに浮気ですか?」

怒りが有頂天に達したミレーヌの眉は逆立ち


───ゴゴゴゴゴ────

「雷斗さまー!あのおねえさんもおっぱいおおきかったね?」

カナの普段の明るい声とは違う、低い声が俺に重くのし掛かる


「えーっと……どういう状況でしょうか?」



「どうもこうも!」

「雷斗様が私達の夢に出て来て!」

「ポメリーポメリーって!」


─────な・る・ほ・ど!────

「たまたま同じ夢を見ただけじゃないかな?」

「「「「あ!?」」」」

こわ!みんな一斉にメンチ切ってこなくてもいいじゃないか!

「ああ……なんでもないです……」

ダメだ……怖くてなんにも言えない!これが浮気がバレた亭主の心境なのか……

「雷斗さん、そこに正座してください……」

「はい……」

アンナの神をも殺しかねない殺気の籠った声に……俺はもうガクブルしながら従わざる負えなくなってしまった。


その後夕方夕方になるまでお説教は続き───

(女神さま……ヤりましたね……もう俺のライフは0ですよ……)

代わる代わるお説教され、お詫び?にお土産屋でアクセサリーを買い……解放された頃には深夜になっていた。

《ここらで私もヒロインとしての存在感をアピッとかないと~と思いまして~》

(はぁぁぁぁん?)

《私もその……皆さんみたく……一緒に遊びたかっただけなんです……ついでに雷斗さんは私が独占してるんだぞ!って見せつけようと思って有ること無いこと夢の中に配信しちゃいました!テヘペロ~》

途中までの恥じらいっぽい態度は何処えやら……最後の方なんてもうヤりきった感まで出して……

(なにがテヘペロですか!膝枕耳掻きをしていたとか、お代官様ゴッコをしたとか、ルパンジャンプで飛びかかったとか……有ること無いことじゃねーよ!全部ねーよ!ちくしょう!)

俺の怒りと哀しみが混じった苦情に対し《でもまた……お話し……してくれますよね……》と可愛い声でおねだりされると───

(……まぁ……な……)

俺もチョロかった。
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