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第0章

チュートリアル 5 睡眠中に女神さまに報告をしよう!

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「すいません、自分から家に呼んだのに大したおもてなしもできなくて……」

アンナは、そう申し訳なさそうに言うと顔を俯かせた。
テーブルの上には食事の用意がされている。
献立は野菜サラダと豆のスープに硬いパン。

何処に申し訳なさそうにする理由があるのか──

《献立の内容が少々貧相だからではないですか?》

(なるほど……たしかに昼にレストランで食べた食事と比べるのは酷ですね)

そういうことか───アンナは食事が貧相な事を気にして……だが、俺からすれば誰かと食事を共に取る──といのが一番の贅沢だと俺は思う。それがアンナのような子となら尚更だ。


「俺は一人が多かったから、誰かと食事を取れるというのがとても嬉しい。それがアンナのような可愛らしい子となら尚更……ね。」


俺は思っていたことを素直に伝え「だからおもてなしが出来ないなどと思わないで欲しい。」とお願いする。


アンナは頬を朱色に染め、更に俯いてしまう。何故だ。

《何故だもなにも……口説かれて困ってるんだと思いますよ?》

俺は女神さまの戯れ言を無視し、アンナに「折角作ってくれたんだ、冷めないうちに食べよう。」と促し椅子に座ってもらう。

アンナと俺は気まずい空気の中食事を済ませ──

「雷斗さんはベッドを使ってください。」

「ここはアンナの家なんだから、ベッドはアンナが使わないと。俺は床で構わない。それに女の子を床で寝かせて俺がベッドで寝るなんて執行者として許容できないからね。」

「そこまで言われると……ではせめてこの毛布を使ってください!」

俺はアンナから毛布を受け取りお礼を言うと床に転がる。
いざ寝る体勢を取るとすぐに意識がまどろんでいく。

流石に今日は色々ありすぎた……おばあちゃんが女神さまになり、俺は異世界へ来ていきなりの戦闘、そこからご飯を食べて──ギルドに行って──それから……



目を瞑っている俺の目蓋に光が映り込む。
俺は光が眩しくて目を開け体を起こすと──

「どうでしたか?今日の体験は?」

そう、俺の目の前には女神さまが愛らしい笑顔を浮かべている。
俺はなぜ女神さまが目の前に居るのかといぶかしがる。

「そんな顔をしないでくださいよ。ここは貴方の夢の中ですよ。今私が目の前に現れたのは、今後の行動についての説明も兼ね、異世界初日の感想でも聞こうかな~と。」

「それなら別に起きてる時でいいじゃないですか……寝ているのに頭を使わされるなんてブラック企業ですか。」

俺の苦情に女神さまは頬を膨らませプンプン!と怒り「起きてる時だと貴方が私の“愛らしい”顔を見られないでしょ?」と寝言を──あぁ今は夢の中だから寝言なのか……

「とりあえず、感想から聞いてもいいですか?」

女神さまはワクワクした顔で詰め寄ってくる。顔からは私の異世界楽しいでしょ!誉めて誉めて!と書いてあるようだ──まぁ、俺もこの世界の初日は楽しめたし素直にその思いを口にする。

「この世界に連れてきてくれてありがとうございます。初日から色々とあったけど、楽しくやって行けそうです。女神さまに感謝を。」


女神さまは俺の告白に「そうでしょう、そうでしょう」と満足そうに頷きその愛らしい顔を綻ばせる──こうしていると素敵な女神さまなのに……盗聴盗撮の常習犯だからなぁ……


あっ!俺の考えが伝わったのか女神さまは眉を寄せて俺を睨み──
「おほん!では今後の話なのですが──基本的にお好きにして頂いて構いません。善行を重ね、悪行を見過ごさないで頂ければ私の力も次第にこの世界に干渉できるようになります。そうなればこの世界の住人も、 もう少し住み善い世界になると思います。」

「わかりました!女神さまの期待を裏切らないように頑張ります!──でも、盗聴盗撮はほどほどにしてくださいね。」


──と言い終えたところで俺の意識は覚醒する──
周囲を包むスパイスのような匂いが俺の鼻腔を刺激したようだ。

俺は匂いに釣られリビングへと足を運ぶと──
「お早うございます!雷斗さん!今朝食の用意をしてますからね!」
アンナがいそいそと朝食の準備をしていた。

しばらくして朝食が出来上がり、二人で食事を食べ始める。
朝食の献立はパンとスープ、それとベーコンだ。

「雷斗さんは今日はどうするんですか?」

「今日は商業ギルドへ行くよ。家がどうなったか気になるし。」

俺はスープをすすりそう伝え──少し思案し

「アンナも一緒に行かないかい?」

俺の提案にアンナは間髪入れず「ご一緒します!」と言ってくれる。気持ちがいい位早い答えに俺は思わず頬が緩むのを感じる。

俺達二人は朝食を食べ終え商業ギルドへと向かう。

家を出てしばらく歩き商業ギルドに着き扉を開きカウンターへと向かう。 

「ミレーヌ居るかな?」

俺はカウンターに居たスタッフにミレーヌを呼んでもらうよう伝えると、しばらくしてミレーヌが現れた。

「雷斗様~!」

手を振り近付いてくるミレーヌに俺もこたえ手を振る。

「雷斗様!本日は昨日の屋敷の件で来られたんですよね!」

「うん、どうだった?」

「交渉して白金貨8枚まで下げてもらいました!誉めてください!」

俺は頭を差し出して待っているミレーヌの頭をよくやった!と撫でる──

《いいんですか?アンナさんの前でミレーヌさんとイチャイチャして~》

からかう女神さまはスルーして俺は購入の手続きを進め、白金貨をギルドへ支払いアンナと──なぜか一緒に着いてくると言うミレーヌを連れ早速購入した屋敷へと向かう。


「これで当分雨露凌げそうだな。」


俺の漏らした感想に「ふふっ」と笑うアンナとミレーヌ。

そこで俺は──昨日から考えていた事を口にする。

「二人とも、この家に引っ越して一緒に暮らさないか?」

──二人は目を皿のように丸くして驚いている様子。

《当然の反応かと》

(でも、二人の為にも引けません!)

俺は自分の考えを語ることにした。

「俺の正体を知ってしまった二人はもしかしたら今後、俺を邪魔に思う奴等が出てきた時、危険に晒してしまうかもしれない。

であれば最初から近くで守っていた方が都合もいい。

ミレーヌはもちろん商業ギルドの仕事もあるだろうけど、ギルドともそこまで距離は離れていないから大丈夫だろう。

アンナは一人暮らしみたいだったし、万が一襲われたら護るのは少し難しい。

だから二人とも検討してみてくれないかな?」

二人は難しい顔をして熟考している。

そりゃぁそうだろう。昨日今日会ったばかりの男に一緒に住まないか?などと言われたら元の世界なら通報物である。仮に通報されなくても変質者扱いは固いだろう。

《そんなに不安にならなくても大丈夫ですよ。仮にここでフラれても次の子を見繕って囲えばいいんですから。》

(女神さま……?なんか黒くないですか?どんどんイメージが悪くなって行きますよ?そりゃあもう直角に)

《上がってるんですね!》

(今話聞いてた!?下がってるんだよ!滑落だよ!直滑降だよ!なに?どう考えたら自信満々に上がってる!なんて言えんの!)

《それは私が超絶美しい善行の女神なので。むしろ私に何を言われても嬉し泣きする位でなければ執行者とは言えませんよ?》

(それ執行者じゃなくて失効者だから!色々と失っちゃっいけない物を失っちゃてるから!)

「あの!雷斗さん!」

俺が女神さまとの定時脳内漫才をやっているとアンナが強く力の籠った声で俺を呼ぶ。俺が「ん?」とアンナの方へ顔を向けると──

「私、一緒に住みます!───ただし、私に雷斗さんのお仕事のお手伝いをさせてください!」

その言葉に俺は驚き「危ないよ?」と言うと「大丈夫です!」と言って聞かないので一度諦めて「分かった。これから宜しく頼む」と握手を交わしアンナの同居が決まる──するとミレーヌも


「アンナさんが住み込むなら私も住みます!」

「本当にいいのか?」と聞くと「女の子の憧れは執行者様みたいな方に求められ末永く暮らすことですから!」と瞳を輝かせている。

《貴方の世界で言うところの電撃的に出会った芸能人に求婚され幸せになる~という少女マンガみたいなストーリーはこの世界にも童話や伝記としてありますし──女の子は皆そういった物に憧れますからね。》

(そういうもんですかね……)

とミレーヌの同居も決まり、お互いに握手をする。

《転移二日目にしてハーレムを作るなんて……》

(あんたがやれって言ったんじゃないですか!)

《これからは毎日夜が来るのが楽しみですね。》

(ただの同居だからな!お付き合いする!とか結婚とかじゃないから!覗いていても何にもないからな!)

《えー》

もうやだこの女神さま……

こうして俺達3人の生活がスタートしたのであった。


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