上 下
18 / 109
第一章 舞台の幕が上がるまで

17話 変わり始めた未来(悪役令嬢side)

しおりを挟む

 「ナーシングドリンク、ですか?」

 寒い冬が終わりを告げ、花々が咲く季節。コードウェル公爵家の応接間に、私とジェームズ殿下はいた。
 忙しい殿下が、合間を縫って会いに来てくれたのは一時間ほど前のこと。せっかく殿下が会いに来てくれるのだからと身支度を命じ、美しく着飾った。
  
 私はヒロインのような可愛らしい顔立ちはしていない。悪役令嬢として生まれたからだろうか。可愛らしさより美しさが際立つ顔立ちで、愛らしいデザインは似合わなかった。

 髪の色も青く、ヒロインのローズピンクの髪とは対照的だ。意識が芽生える前は、可愛らしいデザインのドレスを好んでいたようだが、一掃した。似合わないものを着ても意味はない。
 メイドは再三確認をして来たが、私は変わらず捨てるよう命じた。

 今となっては、比較的落ち着いた色合いのドレスを着るようにしている。これは、自分とヒロインは違うのだという意思表示でもあった。

 私の今日のドレスは、アーモンドグリーンの落ち着いたものだ。くすみがかった緑は落ち着きがあるものの、ダークカラーではない。子どもが着て違和感のない色味だ。

 造りはシンプルで、胸の下で切り替えたスカートは広がることなくストンと下りている。子どもらしい部分と言えばチュール素材でできていることだろうか。そのおかげで、大人びたドレスに少しばかりの可愛らしさがあった。

 花のような愛らしさを持つヒロインは、本当に外見だけは可愛らしいのだ。悪役令嬢である私では、愛らしさでは叶わない。

 だからこそ、私が身につけるべきは美しさだった。髪や服装のみでなく、立ち居振る舞いも完璧に。愛らしく天真爛漫に見えるのが彼女の武器ならば、私が持つべきは完璧な美しさだ。


 そうして向かったお茶の席。和やかに談笑していた殿下から出たのは、聞きなれない言葉だった。
 
 「そう。何でも、体調不良を予防する効果のあるジュースらしい。国でも騎士のためにまとめ買いをしたほどだ。医師も認めるほどの効果があると聞いているよ」

 そう笑顔で言う殿下に、私は微笑みを浮かべた。

 「それは良いことですね。騎士は身体が資本ですから。でもそんなに素晴らしいジュースができるなんて驚きです。どこの商会のものですか?」

 そう問いかける私に、殿下はキラリと目を輝かせる。
 きっと、殿下にとっても興味深い話だったのだろう。誰かに話をしたくて仕方がなかったようだ。

 「それがね、商会の商品ではないらしい。今年の2月に我が国初の株式会社ができたんだよ。僕はまだ詳しくわからないけれど、とても画期的な取り組みだそうだ。父上もとてもお喜びになっていた」
 「国王陛下が?」

 株式会社、それは前世ではよく聞いた単語だ。世間でよく見る会社はほとんどが株式会社だった。私は特段詳しくないが、そうすべき理由はあったのだろう。
 歴史の授業で初めての株式会社というのは学んだことがあった。受験対策で覚えたりもしたが、内容は既に忘れてしまった。

 前世では、4人家族の末っ子として生まれた。父の家系は代々医師をしており、兄がその跡取りとして育てられた。
 私は末娘だったこともあり、可愛がって育ててもらえた覚えがある。母の躾は厳しかったけれど、理不尽なことは一切なかった。

 進路を決める際も、私は自分の意思を認めてもらえた。兄は父の跡を継ぐため医学部以外の選択肢はなかったが、私には自由に選ぶように言ってくれたのだ。

 あのまま生きていれば、父の認める男性と結婚し、それなりに幸せな人生だったに違いない。けれど、ドラマティックな人生は送れなかったはずだ。

 それを思えば、今の人生は理想そのものだ。誰もが羨む地位に生まれ、誰もが憧れる王子様に溺愛される。こんな夢のような日々はない。

 そんな幸せに浸っていた私の思考を凍らせたのは、殿下の何気ない一言だった。

 「その株式会社もナーシングドリンクも、アクランド子爵家のご令嬢が発案したそうだ。それほど優秀な者がいるなら、この国の未来も明るいね」

 微笑んでそう語る殿下に、私は手元のカップを滑らせた。
 陶器の割れる音に、控えていたメイドが慌てて駆け寄ってくる。殿下も驚きの表情を浮かべていたが、すぐに手を取って心配してくれた。

 「ブリジットお嬢様!? お怪我はございませんか!?」
 「リジー! 大丈夫かい? 痛いところは!?」

 心配する二人に大丈夫だと告げる。しかし、私の内心は穏やかではなかった。

 (アクランド子爵……ヒロインの生家じゃない……!)

 「リジー……どうかしたかい? 手が震えている。火傷でもしてしまったかな?」
 「いいえ……いいえ、殿下。そうではないのです……」

 首を横に振り、否定の意を述べる。火傷なんてしていない。
 ただ、その名前をこんなに早く聞くと思っていなかっただけだ。

 (ヒロインは小説でも転生者だった。でも、こんな風に早い段階で名前が知られることはなかったはず)

 だとするならば、この世界にいるヒロインは何者だ? 小説のヒロインは、聖女として以外にロクな功績はなかった。彼女はどこまでも欲深い女で、自分が愛されること以外興味がなかったのだから。
 しかし、現状彼女の存在は国王にまで知れ渡ることとなった。どういうことなのか。彼女は小説通りのヒロインではないのか?

 考えられるのは、私と同じ世界からこちらに来たという可能性だ。そうであるならば、このようなイレギュラーもあり得るだろう。
 しかし、そうなると問題がある。ヒロインもこの物語を知っているということだ。

 「リジー、大丈夫かい?」

 割れた食器を片しに、メイドが部屋を退出する。扉の閉まる音は何故だか私の不安をかき立てた。
 そんな私を、殿下は心配そうな表情で見つめている。私を呼ぶ声を聞き、ぎゅっと眉を寄せた。不安でたまらないのだと分かる表情を作り、言葉をこぼす。

 「アクランド子爵家のご令嬢は、以前お話した聖女になる方なのです。
 今からそんなに優秀だなんて……私とは、やはり違うのですね」

 言い切ると、俯いて顔を伏せた。予想外の展開に苛立ちが募っていたのだ。
 小説通りのヒロインならばなかったであろう展開。これは私にとってかなりのストレスだ。小説そのままに生きていけば幸せになれる私にとって、小説外の動きをする者など迷惑と言ってもいい。

 しかし、そんな苛立ちを殿下に見せるわけにはいかない。私は心優しいブリジット。そうでなければならないのだから。

 俯いたままの私を心配してくれたのだろう。殿下はそっと私の背に触れて、安心させるように撫でてくれた。

 「リジー、何も心配することはないよ。僕は前に言っただろう? 君以外の傍にいるつもりはないと。僕のためを思って身を引こうとする優しい君がいいんだ。
 例え、アクランド子爵令嬢がどれほど素晴らしい女性でも、僕にとっての唯一は君だ。

 だからそんなに不安そうにしないで。君には笑顔が似合うよ」

 そうだ。私は何も間違えていない。ブリジットとして正しい道を歩んでいる。
 殿下との絆を結び、今もこうして私のために心を砕いてくれているのだ。本来なら、ただこのまま生きていれば良かった。

 しかし、ヒロインが同じ世界からの転生者なら、別の策が必要だろう。ただ黙ってブリジットの幸せを認めるとは思えない。
 殿下ほど結婚相手として素晴らしい方もいないのだ。ヒロインが小説どおりに殿下を狙う可能性は高い。

 幸い、私と殿下の仲は良好だ。それならば、殿下が彼女を特別視することがないよう、私も何かしらの功績を立てればいい。

 本来、私の未来には輝かしいハッピーエンドが待っているのだ。ヒロインを倒し、殿下と結ばれる。そんな未来が。
 その未来を正しく実現するため、私は自分の価値をヒロイン以上のものにしなければ。


 「ありがとうございます、殿下。ごめんなさい、心配をおかけして……」

 謝罪する私に、殿下はほっとしたような顔で笑った。

 「気にすることはないよ、リジー。君は僕の大切な婚約者なんだ。君の悩みも不安も、僕が一緒に背負うのは当然さ」
 「殿下……!」

 彼の言葉に、思わず声が漏れた。
 そう、彼はこうしてブリジットを優しく包み込んでくれるのだ。心優しいブリジットを支えなければと、殿下が懸命に言葉を尽くすシーンはどれも心惹かれるものだった。

 「そうですわ、殿下。せっかくですから、アクランド子爵令嬢のなさったことを教えてくれませんか? 素晴らしいことをされたのですもの。私、後学のためにも知りたいと思います」
 「リジー、君は本当に真面目だね。心が不安定なときにも努力するなんて」
 「私は殿下の婚約者ですもの。殿下に相応しくあるために、努力は惜しみません」

 私がそう告げると、殿下は嬉しそうに笑った。自分のために努力する、そんな私の姿が好ましいようだ。

 私個人としても彼と結ばれたいと思っているし、そうあるべきだと思っている。
 そもそもこの世界は、あの小説の世界なのだ。悪役令嬢と王子様が結ばれる逆転劇。ヒロインの活躍など不要な存在だ。
 彼女はただ愚かしく、断罪されるための存在だというのに。

 「アクランド子爵令嬢のことだね。彼女がナーシングドリンクと株式会社の発案者だという話はしたね?
 それはどうやら、貴族だけでなく平民にも行き届くようにするためだったそうだ。平民では貧しいものが多いし、薬も買えない。もっと言えば医者に診てもらうことも難しいらしい。
 そんな平民たちに少しでも届くようにと、価格を下げようと努力した結果だそうだよ。

 アクランド子爵家は比較的裕福らしいけど、彼女自身下級貴族の娘だ。きっと、民の大変な姿を目にする機会もあるのかもしれないね」

 殿下の言葉に微笑んで相槌を打つ。

 要するに、平民への人気取りだったというわけだ。聖女という立ち位置につく人間としては、申し分ない功績だろう。
 とても愛らしく、心優しい貴族令嬢が平民のために動く。その姿は様々な人の心を打つことだろう。その上、将来聖女になるのだ。

 聖女として目覚める前から素晴らしい人間だった、という意識付けとしては完璧だ。何とも腹黒い女だ。そういうところは小説のヒロインらしい。

 小説のヒロインは、ときに自分の可愛らしさを前面に出してか弱いフリをし、またあるときは聖女というステータスを存分に使っていた。その二面性のある姿は、腹黒いとしか言いようがなかった。

 例えば、悪役令嬢であるブリジットに対し「身分を笠に着るのはおやめください」などと言っていたことがある。自分自身が聖女という高位な身分であるにも関わらず、ブリジットの前ではあくまでも子爵令嬢としてあろうとするのだ。

 本来、数百年に一人しかいない聖女は、国王と同じく貴重な人材だ。国王ですら、一定程度の礼は尽くす。
 そんな地位にあるヒロインは、あるときは聖女として、またあるときは子爵令嬢として、自分に都合のいいように在り方を変えるのだ。
 そんなことができる彼女が、純真無垢なはずもない。

 そして、この世界にいるヒロインも同様なのだろう。いや、もっとタチが悪いのかもしれない。
 早々に功績を上げ、聖女になる前からアピールをするような女なのだから。

 「アクランド子爵令嬢は素晴らしいですね。私も、何か民のためになることをできればいいのですが……」
 「何を言っているんだい、リジー。君はもう十分に民のために動いているじゃないか。君はもう、王妃教育を受けているだろう? 母上からもよく頑張っていると聞いているよ。
 僕が王位を継ぐとき、隣にいるのは君だ。立派な王妃になろうと努力することは、民のためになることじゃないか」
 「ジェームズ殿下……はい、そうですね。民のためにも、立派な王妃にならなければ」

 確かに、私は既に王妃教育を受けている。授業は厳しいけれど、必要なことだから仕方ない。それに、小説の最後で私と殿下は結ばれる。それならば、必ずいつか必要になること。きちんとこなすのは当たり前だ。

 しかし、それだけでは大勢からの理解は得られないだろう。王妃教育の大変さなどほとんどの人が知らない。頑張っているからといって、ありがたく思ってくれる人なんていないのだ。
 それならば、やはり私にも功績が必要だ。それも、ヒロインが一番嫌がる方法で。

 「ですが、それとは別に、何か慈善事業になることをしてみようかと思います。慈善事業は貴族としての義務ですし、民とのふれあいも大切でしょうから」

 私の言葉に殿下は一瞬驚いた顔をすると、少し心配そうにこう尋ねた。

「それは素晴らしいことだけれど……大丈夫かい? 君に負担になったりしないかな?」

 そう尋ねる殿下の表情は不安げで、私をとても心配してくれているのだと分かる。その気持ちを嬉しく思いながら頷くと、殿下はほっとしたような顔をした。

 「そうだ、リジー。せっかく婚約者になったんだ、そろそろ君も僕のことを名前で呼んでほしい。リジーさえよければ、愛称でもいいよ?」

 軽くウィンクをしてそう言う彼に、私の胸が高鳴る。
 本来なら、彼を愛称で呼ぶイベントはもう少し先だ。それでも、小説より早く許してくれるということは、それだけ私を思ってくれているのだろう。

 「殿下、本当によろしいのですか……?」

 確認するように問う私に、殿下は優しい笑顔で頷いてくれた。
 それに安堵の息をこぼすと、小説で出ていた彼の愛称を口にする。

 「……ジェイミー……」

 私がそう呼ぶと、彼はぱっと明るい笑顔を浮かべてくれた。
 王族ゆえに愛称で呼び合う相手はいないのだろう。心から嬉しそうにする姿に、私も嬉しさが募った。



 自分は確かにこの人に愛されている。だから、何も心配する必要はない。
 私にできることをしていれば、ヒロインに負けることなどきっとないのだ。

 そう思いながら彼の笑顔を見つめる私は、気づかなかった。

 ――扉の先、酷く冷たい瞳で話を聞いていた者がいることを

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】番が見ているのでさようなら

堀 和三盆
恋愛
 その視線に気が付いたのはいつ頃のことだっただろう。  焦がれるような。縋るような。睨みつけるような。  どこかから注がれる――番からのその視線。  俺は猫の獣人だ。  そして、その見た目の良さから獣人だけでなく人間からだってしょっちゅう告白をされる。いわゆるモテモテってやつだ。  だから女に困ったことはないし、生涯をたった一人に縛られるなんてバカみてえ。そんな風に思っていた。  なのに。  ある日、彼女の一人とのデート中にどこからかその視線を向けられた。正直、信じられなかった。急に体中が熱くなり、自分が興奮しているのが分かった。  しかし、感じるのは常に視線のみ。  コチラを見るだけで一向に姿を見せない番を無視し、俺は彼女達との逢瀬を楽しんだ――というよりは見せつけた。  ……そうすることで番からの視線に変化が起きるから。

【完結】悪役令嬢と自称ヒロインが召喚されてきたけど自称ヒロインの評判がとんでもなく悪い

堀 和三盆
恋愛
 オカルト研究会がやらかした。異世界へ行く魔法陣を作り出そうとして、逆に向こうから自称ヒロインと悪役令嬢を召喚してしまった。魔法陣の製作者によると時間はかかるが元の世界に戻すことは可能らしい。帰還させるまでの間、二人は学校で生徒として保護することで話は付いた。そして生徒会長である俺が悪役令嬢の世話をすることになった。  悪役令嬢は真面目だ。掃除も嫌がらずにやってくれる。優秀な彼女はすぐにこちらの生活に馴染んでくれた。  一方その頃自称ヒロインは……。  ※委員長side(4話)とおまけの1話を追加しました。

【完結】何でも欲しがる義妹が『ずるい』とうるさいので魔法で言えないようにしてみた

堀 和三盆
恋愛
「ずるいですわ、ずるいですわ、お義姉様ばかり! 私も伯爵家の人間になったのだから、そんな素敵な髪留めが欲しいです!」  ドレス、靴、カバン等の値の張る物から、婚約者からの贈り物まで。義妹は気に入ったものがあれば、何でも『ずるい、ずるい』と言って私から奪っていく。  どうしてこうなったかと言えば……まあ、貴族の中では珍しくもない。後妻の連れ子とのアレコレだ。お父様に相談しても「いいから『ずるい』と言われたら義妹に譲ってあげなさい」と、話にならない。仕方なく義妹の欲しがるものは渡しているが、いい加減それも面倒になってきた。  ――何でも欲しがる義妹が『ずるい』とうるさいので。  ここは手っ取り早く魔法使いに頼んで。  義妹が『ずるい』と言えないように魔法をかけてもらうことにした。

6人の夫と巫女になった私が精霊作りにはげむ1年間の話【R18】

象の居る
恋愛
2021/12/10本編完結 //番外編開始です。 異世界に巫女として召喚され夫6人相手に一年間、精霊を産んでほしいと頼まれました。断ろうとしましたが既に『精霊の卵』が体に宿っているとのこと。産まないと発情しっぱなしらしく……。 オオカミ獣人とヘビ獣人、人の話を聞かない綺麗な妖精と小さなおっさん妖精、目つきが危ない美丈夫とキョドってる大男。めんどくさい6人と子作り(精霊)開始!! 異世界で過ごすなかなか大変な一年の記録です。 タグ追加→ クンニ、フェラ、お漏らし、逆アナル ヒロインは30歳、男は25~41歳です。 R18は※印つけます。エロは13話から入ります。中盤あたりに獣姦が入ります。 設定に矛盾あったらスミマセン。 ムーンライトノベルズさんでも連載中です。 ※完結まで予約投稿済みです。本編完結後に番外編が始まります。

【完結】親に売られたお飾り令嬢は変態公爵に溺愛される

堀 和三盆
恋愛
 貧乏な伯爵家の長女として産まれた私。売れる物はすべて売り払い、いよいよ爵位を手放すか――というギリギリのところで、長女の私が変態相手に売られることが決まった。 『変態』相手と聞いて娼婦になることすら覚悟していたけれど、連れて来られた先は意外にも訳アリの公爵家。病弱だという公爵様は少し瘦せてはいるものの、おしゃれで背も高く顔もいい。  これはお前を愛することはない……とか言われちゃういわゆる『お飾り妻』かと予想したけれど、初夜から普通に愛された。それからも公爵様は面倒見が良くとっても優しい。  ……けれど。 「あんたなんて、ただのお飾りのお人形のクセに。だいたい気持ち悪いのよ」  自分は愛されていると誤解をしそうになった頃、メイドからそんな風にないがしろにされるようになってしまった。  暴言を吐かれ暴力を振るわれ、公爵様が居ないときには入浴は疎か食事すら出して貰えない。  そのうえ、段々と留守じゃないときでもひどい扱いを受けるようになってしまって……。  そんなある日。私のすぐ目の前で、お仕着せを脱いだ美人メイドが公爵様に迫る姿を見てしまう。

処理中です...