旧校舎の少女

チャロコロ

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異変

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 「はははっ、何言ってるんですか。三嶋先生だって男子生徒に人気あるじゃないですか。
 私みたいにおじさんになると若者の行動が理解できなくなって、生徒からは嫌われるば
 かりですからねえ」
 「いえ、私はそんな……。
  私も生徒の行動には理解に苦しむことがよくあります。
  あっ、すいません。話が逸れてしまいましたね。続きをお願いします」
 「おお、そうでしたね。それだけ人気のあった縷々子さんにとって不幸な出来事が起き
 たんだ」
 「不幸な出来事……ですか」
 佐々木が突如神妙な面持ちになったため、鈴原が思わず同じ言葉を復唱した。
 「ああ、あれは3年の冬だった。
  ある女子生徒が教室内で首を吊って自殺したんだ。
  男に振られたショックから衝動的に自殺したって話だ。
  その女子生徒はバレーボール部のエースで活発な娘だったから、学校でも人気があっ
  てな。
  特に生来からの面倒見の良さとさっぱりした性格から、同性から絶大な支持を受けて
 いたんだ。
  だが、話は1人の生徒の単なる自殺では終わらなかった」
 真冬の陽が沈みかけて闇に変わりゆく中で鈴原の体温は反比例して上昇し、汗が頬を通ってテーブルに落ちた。
 「その日、男子生徒が教室のごみ箱を焼却炉に持っていこうとごみ箱を持ち上げたら、
 ぐじゃぐじゃに丸まった手紙を見つけたんだ。
  そこには自殺した女子生徒の字で、学校や両親への謝罪と男子生徒に振られたことが
 淡々と書かれていた。遺書だったんだよ。
  それを見たクラスメイトは全員泣き崩れた。死ぬ必要はないだろう、って。
  そして遺書の最後には、『縷々子』とだけ書かれた文字の上に、その名前を必死に隠す
 ようにペンでぐしゃぐしゃと書き殴られていた。
  生徒が落ち着いてきたころに、誰かが些細な疑問を口にしたんだ。『何で遺書がごみ箱
 に入っていたんだ?』ってな。
  誰が最初に疑われたかは言うまでもないだろう」
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