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噂
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気がつくと君島は自分の席に座ったままだった。
寝てしまったのだろうか……。
「おいっ、君島」
はっとして身体を起こすと、同じクラスの鈴原悠斗(すずはらゆうと)が立っていた。
「いつまで寝てんだよ?」
鈴原の声にホッとしつつ、言葉を返せないでいた。
さっきのは夢だったのか……。しかし、あまりにも現実感があった気がした。
「なになに?咲良ちゃんどうしたの、ひどい顔して」
気配を察知した笹原雅樹(ささはらまさき)が興味深げに近づいてきた。君島のことを咲良ちゃんと馴れ馴れしく呼ぶのは男子生徒で彼だけだった。
「あんたと違って勉強してるから疲れてるのよ」
君島は悪態を付きながら教科書をかばんに放り込むと、勢いよく席を立ったが、立ちくらみがして少しよろめいた。
「おいおい大丈夫かよ?何か顔色悪いぞ。身体が熱い気もするし、風邪じゃねえのか?」
心配した様子で鈴原が君島の顔を覗き込む。
「うん、大丈夫だと思う」
君島は答えながら、さっきの出来事を思い返していた。
本当に夢だったのだろうか?
君島は旧校舎を振り返った。いつもと様子が違う彼女に、2人は首を傾げた。
「旧校舎が何かあるのか?」
鈴原の問いに、君島は率直な疑問を口にしてみた。
「旧校舎の二階って……」
「うん?」
「旧校舎の2階って、今は使ってないよね?」
「ああ、確か2階に上がるとすぐ扉が設置されて、鍵も掛かっているはずだ。あの通り
古い建物だしな、デブが歩いたら1階まで落ちちまうよ」
冗談なのか、本気なのか分からない口調で鈴原は応える。
「変な夢だったかも知れないんだけどね。そこに、そこにね……女の子が立ってたの」
「そこって、2階にか?」
「うん。顔は分からなかったけど、長い黒髪が綺麗だったのだけははっきり覚えてる。
その娘がこっちを振り返っている途中で、私寝ちゃったの。まあ、最初から寝てて夢を
見てただけかも知んないけどね」
「……それって、縷々子さんってやつじゃない?」
笹原が困惑した様子で『縷々子(るるこ)さん』の名を口にした。
縷々子さん……。
君島はその名前に訊き覚えがあった。
旧校舎に出るという霊の名前だ。
この高校の生徒であれば、必ず一度は訊いたことのある話だ。
寝てしまったのだろうか……。
「おいっ、君島」
はっとして身体を起こすと、同じクラスの鈴原悠斗(すずはらゆうと)が立っていた。
「いつまで寝てんだよ?」
鈴原の声にホッとしつつ、言葉を返せないでいた。
さっきのは夢だったのか……。しかし、あまりにも現実感があった気がした。
「なになに?咲良ちゃんどうしたの、ひどい顔して」
気配を察知した笹原雅樹(ささはらまさき)が興味深げに近づいてきた。君島のことを咲良ちゃんと馴れ馴れしく呼ぶのは男子生徒で彼だけだった。
「あんたと違って勉強してるから疲れてるのよ」
君島は悪態を付きながら教科書をかばんに放り込むと、勢いよく席を立ったが、立ちくらみがして少しよろめいた。
「おいおい大丈夫かよ?何か顔色悪いぞ。身体が熱い気もするし、風邪じゃねえのか?」
心配した様子で鈴原が君島の顔を覗き込む。
「うん、大丈夫だと思う」
君島は答えながら、さっきの出来事を思い返していた。
本当に夢だったのだろうか?
君島は旧校舎を振り返った。いつもと様子が違う彼女に、2人は首を傾げた。
「旧校舎が何かあるのか?」
鈴原の問いに、君島は率直な疑問を口にしてみた。
「旧校舎の二階って……」
「うん?」
「旧校舎の2階って、今は使ってないよね?」
「ああ、確か2階に上がるとすぐ扉が設置されて、鍵も掛かっているはずだ。あの通り
古い建物だしな、デブが歩いたら1階まで落ちちまうよ」
冗談なのか、本気なのか分からない口調で鈴原は応える。
「変な夢だったかも知れないんだけどね。そこに、そこにね……女の子が立ってたの」
「そこって、2階にか?」
「うん。顔は分からなかったけど、長い黒髪が綺麗だったのだけははっきり覚えてる。
その娘がこっちを振り返っている途中で、私寝ちゃったの。まあ、最初から寝てて夢を
見てただけかも知んないけどね」
「……それって、縷々子さんってやつじゃない?」
笹原が困惑した様子で『縷々子(るるこ)さん』の名を口にした。
縷々子さん……。
君島はその名前に訊き覚えがあった。
旧校舎に出るという霊の名前だ。
この高校の生徒であれば、必ず一度は訊いたことのある話だ。
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