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疑惑 3
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「軽トラは事故後に来た道を戻っていったか、事後現場からガソリンスタンドまでの場
所に住んでいるということですか?」
「私達も素人じゃないので、最初から反対方向の防犯カメラも解析しましたが、そのカ
メラにも車は映っていませんでした。
事故現場の近くに住む住民も徹底的にあらいましたが、誰一人捜査線上には上がって
こなかった。
これだけ捜査をして手掛かり一つないということは……」
「まさか……」
「軽トラ自体が存在していなかったと考えるのが妥当だと思います。
つまり、佐々木さんの目撃証言には疑問があると言わざるを得ない」
開いた口が塞がらなかった。
「佐々木がもし嘘をついているとしたら、どうしてそんなことを?」
刑事さんは首を横に振る。
「あくまで、佐々木さんが嘘をついたとは言っていません。
疑問があると言っただけです。
しかし、もし彼が故意に嘘を言っていたのなら、何か理由があるのでしょう。
当時、その後も何度か佐々木さんから話を訊きましたが彼の目撃証言は変わりませんでした」
あいつが嘘をついた理由が想像できなかった。
中学生が嘘の目撃証言を作る必要性がどこにある?
嘘をつく必要があるのは犯人くらいのものだ。
いや、しかし……。まさか佐々木に限って……
「佐々木が月野さん一家を……、という可能性もあるんですか?」
「海中で亡くなった月野さん夫婦のうち、奥さんの腕には鋭利な刃物で刺された跡が見
つかった、とだけ言っておきましょう」
警察は佐々木が刺したと疑っている。
「それに」
「それに?」
「今だから言えるのですが、月野さんは多額の借金があったことも分かっています」
衝撃の一言だった。
たしか、遥の両親は自営で飲食店を営んでいたはずだ。
それで借金が膨らんでいったのか。
「何も知らなかったのですね?」
刑事さんが真っ直ぐ私を見つめた。私は頷くことが精一杯で、何も応えることができなかった。
「すいません。本当は事故の真相を知っているのではないかと思って本田さんの様子を
さぐりながら喋っていたのですが、あなたは本当に何も知らなかったようだ」
私が何か知っているかも知れないと考えたのだろう。
「私には色々とショックがでか過ぎました」
「……では、最後に一つだけ確認をお願いします」
彼はスーツのポケットから数枚の写真を取り出すと私に見せた。
「これは佐々木さんが怪我をした後に、包丁を持った女が逃走している姿を防犯カメラ
が捉えた映像を写真で撮ったものです」
確かに誰かが走っているような姿が映っているが、画像が粗すぎて分からない。
「これじゃあ、顔まで分からないですね」
「動画で見るともう少し綺麗に映っているんですけどね。
そして捜査の結果、現場から2キロメートル離れたコンビニに立ち寄っていることが
判明しました。これが女の写真です」
手渡された複数枚の写真は、コンビニで買い物をしている女だった。刃物は持っていないようだ。当然だ。刃物を見せびらかせてコンビニに入ったら、すぐに通報されるのがオチだ。
何の気なしに写真をめくっていくと、ある写真に眼がとまり思わず息を飲んだ。
お前がやったのか?
いや、でも何で……。
「ああ、その写真が一番女の顔をはっきり捉えているんですよ」
写真を持つ手が震えた。
そんな、何で?どうしてこんなことを……?一体何があったんだ?
「本田さん?この女を知っているんですか?」
「刑事さん、少しだけ時間をください」
すぐに電話をかけると、すぐに病院に来るよう指示した。
過去の事故も含め、全ての真実を明らかにしなければならない。
絶望感と罪悪感、それに遥のことを疑ってきた10年間の自分を解放する時がきたんだ。
私も佐々木も、そして遥も、もうそろそろ前を向いて歩いてもいいんじゃないのか。
所に住んでいるということですか?」
「私達も素人じゃないので、最初から反対方向の防犯カメラも解析しましたが、そのカ
メラにも車は映っていませんでした。
事故現場の近くに住む住民も徹底的にあらいましたが、誰一人捜査線上には上がって
こなかった。
これだけ捜査をして手掛かり一つないということは……」
「まさか……」
「軽トラ自体が存在していなかったと考えるのが妥当だと思います。
つまり、佐々木さんの目撃証言には疑問があると言わざるを得ない」
開いた口が塞がらなかった。
「佐々木がもし嘘をついているとしたら、どうしてそんなことを?」
刑事さんは首を横に振る。
「あくまで、佐々木さんが嘘をついたとは言っていません。
疑問があると言っただけです。
しかし、もし彼が故意に嘘を言っていたのなら、何か理由があるのでしょう。
当時、その後も何度か佐々木さんから話を訊きましたが彼の目撃証言は変わりませんでした」
あいつが嘘をついた理由が想像できなかった。
中学生が嘘の目撃証言を作る必要性がどこにある?
嘘をつく必要があるのは犯人くらいのものだ。
いや、しかし……。まさか佐々木に限って……
「佐々木が月野さん一家を……、という可能性もあるんですか?」
「海中で亡くなった月野さん夫婦のうち、奥さんの腕には鋭利な刃物で刺された跡が見
つかった、とだけ言っておきましょう」
警察は佐々木が刺したと疑っている。
「それに」
「それに?」
「今だから言えるのですが、月野さんは多額の借金があったことも分かっています」
衝撃の一言だった。
たしか、遥の両親は自営で飲食店を営んでいたはずだ。
それで借金が膨らんでいったのか。
「何も知らなかったのですね?」
刑事さんが真っ直ぐ私を見つめた。私は頷くことが精一杯で、何も応えることができなかった。
「すいません。本当は事故の真相を知っているのではないかと思って本田さんの様子を
さぐりながら喋っていたのですが、あなたは本当に何も知らなかったようだ」
私が何か知っているかも知れないと考えたのだろう。
「私には色々とショックがでか過ぎました」
「……では、最後に一つだけ確認をお願いします」
彼はスーツのポケットから数枚の写真を取り出すと私に見せた。
「これは佐々木さんが怪我をした後に、包丁を持った女が逃走している姿を防犯カメラ
が捉えた映像を写真で撮ったものです」
確かに誰かが走っているような姿が映っているが、画像が粗すぎて分からない。
「これじゃあ、顔まで分からないですね」
「動画で見るともう少し綺麗に映っているんですけどね。
そして捜査の結果、現場から2キロメートル離れたコンビニに立ち寄っていることが
判明しました。これが女の写真です」
手渡された複数枚の写真は、コンビニで買い物をしている女だった。刃物は持っていないようだ。当然だ。刃物を見せびらかせてコンビニに入ったら、すぐに通報されるのがオチだ。
何の気なしに写真をめくっていくと、ある写真に眼がとまり思わず息を飲んだ。
お前がやったのか?
いや、でも何で……。
「ああ、その写真が一番女の顔をはっきり捉えているんですよ」
写真を持つ手が震えた。
そんな、何で?どうしてこんなことを……?一体何があったんだ?
「本田さん?この女を知っているんですか?」
「刑事さん、少しだけ時間をください」
すぐに電話をかけると、すぐに病院に来るよう指示した。
過去の事故も含め、全ての真実を明らかにしなければならない。
絶望感と罪悪感、それに遥のことを疑ってきた10年間の自分を解放する時がきたんだ。
私も佐々木も、そして遥も、もうそろそろ前を向いて歩いてもいいんじゃないのか。
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