入れ替わった彼女

チャロコロ

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 なのに佐々木は私の婚約相手が遥だと応えた。
 そうなると、私は遥と婚約することを以前から佐々木に伝えていたことになる。
 しかし遥と出会ったのは昨日のことだ。出会ってもいない遥と婚約することを他人に伝えるのはおかしい。そもそも、私の婚約相手は琴音だ。遥ではない。
 「遥って、同じ中学の?」
 「当たり前だろ?他に誰かいるのか?あっ。お前まさか浮気してんじゃねえだろな?」
 間抜けな質問に佐々木が呆れる。
 「俺が遥と婚約するって話ってさ、いつお前に話したっけ?」
 惚けた振りをした。 
 佐々木は「いつだったかなー?」と言いながら「3ヶ月ぐらい前だったと思うけど、はっきり覚えてないな。8月だったかな」と興味なさげに応えた。
 3ヶ月くらい前というと、琴音と水族館に行った時期だ。テーブルに置かれた写真に目を向ける。
 「そっか、そうだったかもな」
 「伊吹、お前本当に大丈夫かよ?」
 佐々木の言葉に、現在自分の身に起きていることを話そうか迷った。
 昨日起きた不思議な出来事を話して佐々木に伝えると、佐々木はどんな反応をするだろうか?いくら性格の良いあいつでも、私の異常な言動を訝しがるかも知れない。
 実際、佐々木は私の反応に異変を感じている。
 考え方を変えてみよう。
 私はいつから遥と付き合っているのだろう。
 私の中で遥の記憶は中学生までだ。高校生以降の記憶がない。
 私と遥は中学、あるいは高校生の時から付き合っていたのか?
 それとも社会人になってから付き合ったのだろうか?
 「俺と遥っていつから付き合ってるんだっけ?」
 「何で俺に聞くんだよ。伊吹が遥ちゃんと再会したのは社会人になってからだよ」
 「どういう経緯で出逢ったんだっけ?」
 「俺が知りたいくらいだよ。運命の出会いだ、って興奮しながら根掘り葉掘り伊吹に聞こうとした けど。お前が照れるばっかで何も教えてくれなかったじゃねえか」
 佐々木は私との会話をはっきり覚えているようだ。
 「そうだったかもな」
 「……どうした?」
 佐々木は私のことを心配しているようだ。だが、最後に一つだけ確認したいことがあった。
 「あのさっ。琴音って女知ってるか?」
 「コトネ?」
 「そう琴音。楽器の琴に音楽の音で琴音」
 「んー、誰だそれ?中学時代の同級生か?伊吹から琴音って名前の女は聞いたことないぞ」
 「……ありがとな」
 私は勝手に電話を切った。
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