33 / 40
第1章
29 緑色の薔薇。
しおりを挟む
なんやかんや有って、やっとフィンランド。
まぁ、天候にも恵まれたから早く着いた方、らしいんだけど。
長かった。
《先ずは宿に行こうか》
《洗濯物も溜まりましたし、ソチラも溜まっているでしょうしね》
「怖いわ、溜めてた分の解放が怖い」
『手加減する努力はするよ』
爽やかな笑顔だけど、内心は失神しなきゃ良いだろうとか思ってそう。
《程々でお願い致しますね、でないと本気で2人で逃げますから》
「ありがとうキャサリン」
《取らないで?》
《取ってませんし取る気も無いのでご心配無く》
「あそこは?」
『あぁ、あの家紋なら問題無い筈ですよ』
宿には旗が掲げられてて、中でも信用度が高いとされるキャラバンの家紋が幾つか有って。
要は御用達って事で、あんまり信用度が低い客は満室だって断られるらしい。
今まで断られた事は無いけど、緊張するよね。
《2部屋で宜しいでしょうか》
《うん、お願いします》
《畏まりました》
船を降りた時より、ホッとする。
流石に異国で野宿は嫌だし、安宿は床がギシギシし過ぎて本当に嫌なんだよね、床抜けそうな音がするんだもんマジで。
「はぁ」
《はいはい休む前に先ずはお風呂に入って下さい》
《今日は先に入りなよキャサリン、少し洗濯してから入るし》
《では遠慮無くお先に失礼致します》
使用人用の大浴場と、部屋付きの個室風呂が有るんだけど。
ウキウキ、本当に好きみたい、女体。
《さ、洗えるのから洗っちゃおう》
「はーい」
この宿の設備も、美味しい食事も全部、先人達のお陰。
有り難いと思う反面、自分もこんな風に役に立ちたいなとも思う。
でも、それが本当に思い当たらないんだよね。
申し訳無いな、こんなのが転生しちゃって。
《また溜息、どうしたの?》
「いやさ、役に立つ様な頭を持って無いから、申し訳無いなと思って」
『イーライ』
「だってさ、他にもっと」
『私達の役に立っているとは、思えないんだろうか』
《それに、実務に関わる事だけが役に立つ事でも無いと思うよ?監視役や見回りも、立派なお仕事じゃない?》
そこは本当に、そう思う。
でも。
『やっと自由に動ける様になったんだ、ゆっくり、なすべき事を見極める為にも、一緒に考えていこう』
《それこそクレア・セシルとしての人生も、僕らだってイーライが居なかったらどうなってたか、僕らにも考える時間は欲しいからね?だから焦らないで、1つずつ、一緒に考えよう》
無能だからか、弱いからか。
本当に、もし2人に出会わなかったら、好いて貰って無かったら。
いや、流石に陛下が何とかしてくれるか。
うん、だよね。
だってもし何も手助けが無かったら、不満しか無かったら、どうにかして魔王を誘い出して一緒に自爆するとか考えてたか。
次に賭けて自死か。
危ういな、転生者。
けどアレか、転移者もそれは同じか。
「よし、洗い物してお風呂に入って、ご飯を食べてからまた考えよう」
どうして、こんな事に。
「ほら可愛い」
『ガブリエラ、笑いものにする為なら』
「微笑んでる様に見えないか、すまんね」
『あ、いや、別にそう言うワケでは』
「美点とまでは言わないけれど、特技だとか、良い部分だと思うけどな」
『女装が、ですか』
「おう、良いじゃないか、どうしたって私は似合わないんだし」
『そもそも見て無いので、判断しかねるんですが』
「だってこの体だぜ?」
『ちょっ』
「ほれ、しっかり見て判断しなさい」
確かに、凡そ女性とは思えない体付きの良さ。
腹筋は幾つにも割れ、肌の色は健康そのもの。
『その、確かに、イブニングドレスは少し似合わないかも知れませんが』
「アフタヌーンドレスもだよ、布で隠しても筋肉は隠せない、もう女装にしか見えないんだけど。マジで見たいか?萎えるぞ絶対」
『ですけど、人を選ぶには外見だけでは』
「ライアン、剣術部顧問のゴライアス教員そっくりの女を抱けるなら、君はその道で生きた方が良い」
そうした女性も居るかも知れないと言うのに。
思わず眉をひそめてしまった。
『すみません、ですが』
「いや、どうにも信用ならないなら無理にとは言わない、君の事を理解してくれるだろう普通の女性も居るワケだし。私の為を思う必要は無いよ、元は孤独に生きるつもりだったんだし、偽装だけなら相手を選ばなければ居るしね」
『僕を理解する女性、ですか』
「渡されたそうじゃないか、ラブレター、婚約を受け入れられたのかどうか尋ねられたよ」
『あぁ、ですけど事情を知らないでしょうし』
「なら、知っているなら構わないんだろ」
騎士職の者は表情に出易い。
その噂とは裏腹に、ガブリエラの表情は全く読めない。
単に飄々としているだけか、隠しているのか。
『何も、アナタが嫌と言うワケでは』
「嫌とは言わないだけで、君が無理している様にしか見えない。苦しめる気は無い、嫌なら嫌とハッキリ言ってくれて構わないんだが、優しいな君は」
『違います、その、どう反応すれば良いのか』
「謙虚なのか何なのか分からないんだが、褒められたら嬉しく無いのか君は」
『流石に女装は』
「なら何処を褒めて欲しいんだ?」
『それも、別に』
「顔が良い、声も良い、頭も良くて優しい。まぁ、褒められ慣れているから利かないか」
『そんな事は』
「女装が嫌なんだな、悪かった、着替えてくれて構わない」
酷く落胆したような、すっかり興味を失った様子に、不満が出そうになってしまった。
彼女は何1つ間違えた事は言っていないし、貶したワケでも無いのに、僕は。
『本当に』
「あぁ、出て行くよ、すまない気が付かなくて」
彼女は持ち前の俊足で足早に部屋から立ち去ってしまった。
そうして残されたのは、男装の侍女と女装した僕。
《お脱ぎになられますか?》
『はい、お願いします』
《僭越ながら、本当に良くお似合いだと思いますが。お嬢様の事がお気に召しませんのでしたら、どうぞご遠慮無くお断り下さい、無碍にされるより遥かにマシですから》
無碍にしているつもりは無かった。
けれど、確かに褒められても喜ばず、それこそ相手を褒める事もしない。
コレではまるで、イーライ令息の元婚約者と同じ事を。
そう思うと、途端に罪悪感が湧き出て来た。
話が分からない相手でも無い筈なのに、僕は、不安や疑問しか口にせず。
褒め返す事も、信用しようともせずに。
『すみません、戸惑いが先行してしまい』
《そうですか。解き終えましたので、では失礼致します》
それから毎日の訪問が止み、いつも通りの静寂が訪れた。
『お忙しいですか、ガブリエラ』
「婚約を断っても、近衛の仕事に問題は無いとお伝えしたかとは思いますが、何か御用でしょうかライアン子爵令息」
流石に女装させるのが早過ぎたのか、凄い躊躇われたし。
あまり圧力を掛ける様な事はパワハラモラハラになるし、卒業まで時間は有るし、生徒からの相談もそこそこ多いし。
だからまぁ、顔を合わせない日が幾日か有ったんだけど。
その間に、何か問題が有ったんだろうか。
『いえ、ただ、お忙しいのかな、と』
「まぁ、何かご相談ですか」
『はい、少し』
「成程、では誰に同席させましょうか」
口説いてたけど、感触はあまり良くなかったし。
元は生徒と教師だからね、学園内の事なら立ち会いが必要になるんだわな、面倒。
『その、個人的な事なので』
「あぁ、ならケントで良いですかね、アイツ、口は固いですから」
バリカタ、マジ粉落としも真っ青の硬さで。
『いえ、なら良いです』
「他の方でも構いませんよ」
『いえ、もう良いです、ありがとうございました』
何だ、何で不機嫌なんだ。
あ、もしかして騎士職が嫌なのか。
なら書簡を返してくれるだけで十分なんだけど、まぁ良いか。
「で、何で俺に相談しますかね?」
『元は君が関わらせた相手じゃないか』
「まぁ、そうですけど、喧嘩でもしたんすか?」
ほら、言ってくんないじゃないっすか。
愚痴なら幾らでも聞きますけど、文句は、何の文句が有るんだろ。
『僕は、誂われてるんじゃ』
「無いっすねそれは、そんな時間が有るなら鍛えろって罰せられますし、本当に殆ど鍛えるか一緒になってダラけるかで。もしかして俺との事疑ってます?」
『いや、それは無いんだけども』
即答された。
イーライにも言われたけど、俺、そんなに魅力無いのかな。
「つか喧嘩っすか?」
『いや、違うんだ、そうじゃ無いんだけれど。どうしたら良いのか、どう思えば良いのか、分からなくて』
「まぁ、暴れ馬より強そうって有名だったんすもんね、そりゃ女に見えない格好だし。マジ強いし」
『だからと言って、そんなにモテないんだろうか』
「あ、いや目茶苦茶モテてますよ、ただ好みが合わないのか誰も受け入れ無かったんすけど。先輩ならまぁ、確かにって感じっすね、言い寄られてたのってゴリゴリに男臭いのばっかで、ぶっ殺したいとか言ってたし」
『それは、僕が男らしく無いから』
「いや男らしいじゃないっすか、相手の名節を未だに守ってあげるとか、俺には無理っすもん」
『その、僕の外見が』
「まぁイーライ系統ですけど、そこまで弱そうでも無いっすよ?」
『本当に、何が彼女の琴線に触れたのか』
「そこも話し合って無いんすか?」
『いや、僕が、納得出来なくて』
「なら断れば良いじゃないっすか、アレは俺も無理っすもん」
『けれど、中身に問題は無い筈で』
「いやだって抱けます?無理っしょ、体格が男っすもん」
『それは、前から、なんだろうか』
「あー、みたいっすよ、俺が出会った時は既に男子かよって背中してましたし。背中に東洋の鬼を浮き上がらせるのが目標だ、とか言ってましたしね」
『鬼』
「はい」
動くの大好き運動大好き、鍛えるの超大好き。
けど家はバリバリに淑やかな子爵家の長女、躾け直しの為に祖父が呼ばれて、逆に家から引き離して融通の利きそうな家に養子縁組させて。
『そんな経歴が』
「まぁ本人は全然気にしてませんけどね、生まれる家を少し間違えただけだって、良く有る事だからお前達も好きに生きろって言われましたし」
『そう』
「だからまぁ、嫌なら嫌って言って大丈夫ですよ、最悪はウチの祖父も出しますし。つか手紙に書いておきましょうか?」
『いや、良いんだ』
「先輩は良い人だって分かってるんで、無理しない方が良いっすよ、あの人は1人でも生きていけるだろうし、先輩の人生の方が大事なんすから」
もし、明日にでも独りぼっちになると思って鍛えろ、とか言う人だし。
ガブリエラさんなりに、先輩に優しさを見せただけかもなんだし。
まぁ、天候にも恵まれたから早く着いた方、らしいんだけど。
長かった。
《先ずは宿に行こうか》
《洗濯物も溜まりましたし、ソチラも溜まっているでしょうしね》
「怖いわ、溜めてた分の解放が怖い」
『手加減する努力はするよ』
爽やかな笑顔だけど、内心は失神しなきゃ良いだろうとか思ってそう。
《程々でお願い致しますね、でないと本気で2人で逃げますから》
「ありがとうキャサリン」
《取らないで?》
《取ってませんし取る気も無いのでご心配無く》
「あそこは?」
『あぁ、あの家紋なら問題無い筈ですよ』
宿には旗が掲げられてて、中でも信用度が高いとされるキャラバンの家紋が幾つか有って。
要は御用達って事で、あんまり信用度が低い客は満室だって断られるらしい。
今まで断られた事は無いけど、緊張するよね。
《2部屋で宜しいでしょうか》
《うん、お願いします》
《畏まりました》
船を降りた時より、ホッとする。
流石に異国で野宿は嫌だし、安宿は床がギシギシし過ぎて本当に嫌なんだよね、床抜けそうな音がするんだもんマジで。
「はぁ」
《はいはい休む前に先ずはお風呂に入って下さい》
《今日は先に入りなよキャサリン、少し洗濯してから入るし》
《では遠慮無くお先に失礼致します》
使用人用の大浴場と、部屋付きの個室風呂が有るんだけど。
ウキウキ、本当に好きみたい、女体。
《さ、洗えるのから洗っちゃおう》
「はーい」
この宿の設備も、美味しい食事も全部、先人達のお陰。
有り難いと思う反面、自分もこんな風に役に立ちたいなとも思う。
でも、それが本当に思い当たらないんだよね。
申し訳無いな、こんなのが転生しちゃって。
《また溜息、どうしたの?》
「いやさ、役に立つ様な頭を持って無いから、申し訳無いなと思って」
『イーライ』
「だってさ、他にもっと」
『私達の役に立っているとは、思えないんだろうか』
《それに、実務に関わる事だけが役に立つ事でも無いと思うよ?監視役や見回りも、立派なお仕事じゃない?》
そこは本当に、そう思う。
でも。
『やっと自由に動ける様になったんだ、ゆっくり、なすべき事を見極める為にも、一緒に考えていこう』
《それこそクレア・セシルとしての人生も、僕らだってイーライが居なかったらどうなってたか、僕らにも考える時間は欲しいからね?だから焦らないで、1つずつ、一緒に考えよう》
無能だからか、弱いからか。
本当に、もし2人に出会わなかったら、好いて貰って無かったら。
いや、流石に陛下が何とかしてくれるか。
うん、だよね。
だってもし何も手助けが無かったら、不満しか無かったら、どうにかして魔王を誘い出して一緒に自爆するとか考えてたか。
次に賭けて自死か。
危ういな、転生者。
けどアレか、転移者もそれは同じか。
「よし、洗い物してお風呂に入って、ご飯を食べてからまた考えよう」
どうして、こんな事に。
「ほら可愛い」
『ガブリエラ、笑いものにする為なら』
「微笑んでる様に見えないか、すまんね」
『あ、いや、別にそう言うワケでは』
「美点とまでは言わないけれど、特技だとか、良い部分だと思うけどな」
『女装が、ですか』
「おう、良いじゃないか、どうしたって私は似合わないんだし」
『そもそも見て無いので、判断しかねるんですが』
「だってこの体だぜ?」
『ちょっ』
「ほれ、しっかり見て判断しなさい」
確かに、凡そ女性とは思えない体付きの良さ。
腹筋は幾つにも割れ、肌の色は健康そのもの。
『その、確かに、イブニングドレスは少し似合わないかも知れませんが』
「アフタヌーンドレスもだよ、布で隠しても筋肉は隠せない、もう女装にしか見えないんだけど。マジで見たいか?萎えるぞ絶対」
『ですけど、人を選ぶには外見だけでは』
「ライアン、剣術部顧問のゴライアス教員そっくりの女を抱けるなら、君はその道で生きた方が良い」
そうした女性も居るかも知れないと言うのに。
思わず眉をひそめてしまった。
『すみません、ですが』
「いや、どうにも信用ならないなら無理にとは言わない、君の事を理解してくれるだろう普通の女性も居るワケだし。私の為を思う必要は無いよ、元は孤独に生きるつもりだったんだし、偽装だけなら相手を選ばなければ居るしね」
『僕を理解する女性、ですか』
「渡されたそうじゃないか、ラブレター、婚約を受け入れられたのかどうか尋ねられたよ」
『あぁ、ですけど事情を知らないでしょうし』
「なら、知っているなら構わないんだろ」
騎士職の者は表情に出易い。
その噂とは裏腹に、ガブリエラの表情は全く読めない。
単に飄々としているだけか、隠しているのか。
『何も、アナタが嫌と言うワケでは』
「嫌とは言わないだけで、君が無理している様にしか見えない。苦しめる気は無い、嫌なら嫌とハッキリ言ってくれて構わないんだが、優しいな君は」
『違います、その、どう反応すれば良いのか』
「謙虚なのか何なのか分からないんだが、褒められたら嬉しく無いのか君は」
『流石に女装は』
「なら何処を褒めて欲しいんだ?」
『それも、別に』
「顔が良い、声も良い、頭も良くて優しい。まぁ、褒められ慣れているから利かないか」
『そんな事は』
「女装が嫌なんだな、悪かった、着替えてくれて構わない」
酷く落胆したような、すっかり興味を失った様子に、不満が出そうになってしまった。
彼女は何1つ間違えた事は言っていないし、貶したワケでも無いのに、僕は。
『本当に』
「あぁ、出て行くよ、すまない気が付かなくて」
彼女は持ち前の俊足で足早に部屋から立ち去ってしまった。
そうして残されたのは、男装の侍女と女装した僕。
《お脱ぎになられますか?》
『はい、お願いします』
《僭越ながら、本当に良くお似合いだと思いますが。お嬢様の事がお気に召しませんのでしたら、どうぞご遠慮無くお断り下さい、無碍にされるより遥かにマシですから》
無碍にしているつもりは無かった。
けれど、確かに褒められても喜ばず、それこそ相手を褒める事もしない。
コレではまるで、イーライ令息の元婚約者と同じ事を。
そう思うと、途端に罪悪感が湧き出て来た。
話が分からない相手でも無い筈なのに、僕は、不安や疑問しか口にせず。
褒め返す事も、信用しようともせずに。
『すみません、戸惑いが先行してしまい』
《そうですか。解き終えましたので、では失礼致します》
それから毎日の訪問が止み、いつも通りの静寂が訪れた。
『お忙しいですか、ガブリエラ』
「婚約を断っても、近衛の仕事に問題は無いとお伝えしたかとは思いますが、何か御用でしょうかライアン子爵令息」
流石に女装させるのが早過ぎたのか、凄い躊躇われたし。
あまり圧力を掛ける様な事はパワハラモラハラになるし、卒業まで時間は有るし、生徒からの相談もそこそこ多いし。
だからまぁ、顔を合わせない日が幾日か有ったんだけど。
その間に、何か問題が有ったんだろうか。
『いえ、ただ、お忙しいのかな、と』
「まぁ、何かご相談ですか」
『はい、少し』
「成程、では誰に同席させましょうか」
口説いてたけど、感触はあまり良くなかったし。
元は生徒と教師だからね、学園内の事なら立ち会いが必要になるんだわな、面倒。
『その、個人的な事なので』
「あぁ、ならケントで良いですかね、アイツ、口は固いですから」
バリカタ、マジ粉落としも真っ青の硬さで。
『いえ、なら良いです』
「他の方でも構いませんよ」
『いえ、もう良いです、ありがとうございました』
何だ、何で不機嫌なんだ。
あ、もしかして騎士職が嫌なのか。
なら書簡を返してくれるだけで十分なんだけど、まぁ良いか。
「で、何で俺に相談しますかね?」
『元は君が関わらせた相手じゃないか』
「まぁ、そうですけど、喧嘩でもしたんすか?」
ほら、言ってくんないじゃないっすか。
愚痴なら幾らでも聞きますけど、文句は、何の文句が有るんだろ。
『僕は、誂われてるんじゃ』
「無いっすねそれは、そんな時間が有るなら鍛えろって罰せられますし、本当に殆ど鍛えるか一緒になってダラけるかで。もしかして俺との事疑ってます?」
『いや、それは無いんだけども』
即答された。
イーライにも言われたけど、俺、そんなに魅力無いのかな。
「つか喧嘩っすか?」
『いや、違うんだ、そうじゃ無いんだけれど。どうしたら良いのか、どう思えば良いのか、分からなくて』
「まぁ、暴れ馬より強そうって有名だったんすもんね、そりゃ女に見えない格好だし。マジ強いし」
『だからと言って、そんなにモテないんだろうか』
「あ、いや目茶苦茶モテてますよ、ただ好みが合わないのか誰も受け入れ無かったんすけど。先輩ならまぁ、確かにって感じっすね、言い寄られてたのってゴリゴリに男臭いのばっかで、ぶっ殺したいとか言ってたし」
『それは、僕が男らしく無いから』
「いや男らしいじゃないっすか、相手の名節を未だに守ってあげるとか、俺には無理っすもん」
『その、僕の外見が』
「まぁイーライ系統ですけど、そこまで弱そうでも無いっすよ?」
『本当に、何が彼女の琴線に触れたのか』
「そこも話し合って無いんすか?」
『いや、僕が、納得出来なくて』
「なら断れば良いじゃないっすか、アレは俺も無理っすもん」
『けれど、中身に問題は無い筈で』
「いやだって抱けます?無理っしょ、体格が男っすもん」
『それは、前から、なんだろうか』
「あー、みたいっすよ、俺が出会った時は既に男子かよって背中してましたし。背中に東洋の鬼を浮き上がらせるのが目標だ、とか言ってましたしね」
『鬼』
「はい」
動くの大好き運動大好き、鍛えるの超大好き。
けど家はバリバリに淑やかな子爵家の長女、躾け直しの為に祖父が呼ばれて、逆に家から引き離して融通の利きそうな家に養子縁組させて。
『そんな経歴が』
「まぁ本人は全然気にしてませんけどね、生まれる家を少し間違えただけだって、良く有る事だからお前達も好きに生きろって言われましたし」
『そう』
「だからまぁ、嫌なら嫌って言って大丈夫ですよ、最悪はウチの祖父も出しますし。つか手紙に書いておきましょうか?」
『いや、良いんだ』
「先輩は良い人だって分かってるんで、無理しない方が良いっすよ、あの人は1人でも生きていけるだろうし、先輩の人生の方が大事なんすから」
もし、明日にでも独りぼっちになると思って鍛えろ、とか言う人だし。
ガブリエラさんなりに、先輩に優しさを見せただけかもなんだし。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
異世界母さん〜母は最強(つよし)!肝っ玉母さんの異世界で世直し無双する〜
トンコツマンビックボディ
ファンタジー
馬場香澄49歳 専業主婦
ある日、香澄は買い物をしようと町まで出向いたんだが
突然現れた暴走トラック(高齢者ドライバー)から子供を助けようとして
子供の身代わりに車にはねられてしまう
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
サディストの私がM男を多頭飼いした時のお話
トシコ
ファンタジー
素人の女王様である私がマゾの男性を飼うのはリスクもありますが、生活に余裕の出来た私には癒しの空間でした。結婚しないで管理職になった女性は周りから見る目も厳しく、私は自分だけの城を作りまあした。そこで私とM男の週末の生活を祖紹介します。半分はノンフィクション、そして半分はフィクションです。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
異世界無知な私が転生~目指すはスローライフ~
丹葉 菟ニ
ファンタジー
倉山美穂 39歳10ヶ月
働けるうちにあったか猫をタップリ着込んで、働いて稼いで老後は ゆっくりスローライフだと夢見るおばさん。
いつもと変わらない日常、隣のブリっ子後輩を適当にあしらいながらも仕事しろと注意してたら突然地震!
悲鳴と逃げ惑う人達の中で咄嗟に 机の下で丸くなる。
対処としては間違って無かった筈なのにぜか飛ばされる感覚に襲われたら静かになってた。
・・・顔は綺麗だけど。なんかやだ、面倒臭い奴 出てきた。
もう少しマシな奴いませんかね?
あっ、出てきた。
男前ですね・・・落ち着いてください。
あっ、やっぱり神様なのね。
転生に当たって便利能力くれるならそれでお願いします。
ノベラを知らないおばさんが 異世界に行くお話です。
不定期更新
誤字脱字
理解不能
読みにくい 等あるかと思いますが、お付き合いして下さる方大歓迎です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる