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第1章
24 実際陸路。
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船旅前の陸路が、まぁ長い。
外洋、北海側まで陸路の方が安いし早いから、仕方が無い。
アイルランド側から船でグルっと回る事も出来るんだけど、費用が高いし時間が掛かる、けど楽。
王族の馬車に乗った後に普通の馬車で荒れ道は、しんどい。
ウォルターは御者だらか今は馬を操作してるけど、苦じゃなさそう。
本当に慣れてるっぽい。
でも。
《やっぱり道が悪いとキツいね》
「本当、板バネの意味が無くなる、もうちょっと整地するのって難しいの?」
《侵略される事を考えるとね、コレが今の限界なんじゃないかな》
「ぁあ、でも、魔法で何とかなんない?」
《何とかって?》
「そこだよねぇ、浮かせるのって凄い大変なんでしょ」
《お太りになるか、クッションを足すか、ですね》
「クッションまだ有るんだ」
《男性のお尻は鍛えていないと薄いそうですから、どうぞ》
「キャサリンは大丈夫なの?」
《お肉が有りますし、イーライ様の予備用ですから》
《それか僕の膝の上か》
「いや絶対、後に響くよ?」
《イーライのクッションの分まで使って、こう横に座るとか》
「ぁあ、この座面の下にも板バネを使えば良いんだ」
《成程》
「でも良いのかな、移動が便利になっちゃうよ?」
《軍用で人を運ぶなら荷馬車とかになるし、馬車の内部の改良だから大丈夫だと思うよ、ね?》
《細かい設計にならないなら、大雑把なら大丈夫かと》
でも兵糧とかの事も考えて、敢えて発表されて無いモノも有るんだよね。
シリアルバーとか缶詰はダメだし、大きな道路は敢えて完全には整備されてない。
先人達が諍いを起こさせない為に敢えて我慢してたのに、僕の我儘だけで開発して良いのかな。
「止めとく、それで被害が拡大しても嫌だし、正史派に攻撃されても嫌だし」
《あ、それ、後でウォルターと話し合おう。膝の上に来て》
「あ、うん」
正史派。
それは転移転生前の世界や歴史こそが正しいと思う者、又はそれらを利用しようとする者も含む、一種の宗教的思想支持者を指す。
休憩時に話が有る、と言われたのは、その事についてだった。
《イーライは正史派の思想が、ある意味では理解出来るって事だよね》
「うん。向こうの歴史や出来事が全て正しいとは思えないけど、災害とかも有って否定出来無いから、簡単に良い悪いで片付けられないと思う」
『例えばイーライにとって、どの出来事が、どちらとも思えない出来事なんだろうか』
「ポンペイの噴火、ココでは予言されてて人の被害は無いし、今は火山灰土の採掘場になってる。向こうでは人的被害も有ったけど、結果的に歴史が綺麗に残る事になった。だからもし同じ事が起きるってなったら、人は完全に避難させて、敢えて歴史がしっかり残る様に同じ事が起きるのを待つか。ココと同じ道を選ぶか、兎に角出来る方を選ぶ、どっちも正しいと思うから」
『鉄道や鉄の船についてはどう思う』
「それこそ教会派が合意したら、とか?」
《あぁ、正史派は大概が教会派らしいしね》
「もー、ね、砂漠地帯の一神教は大人しいのに」
《魔女狩りがね、やっぱり》
『ココでは魔法も魔道具も皆が扱える。正史通りに行いたいなら、寧ろ先ずは自らを裁くべきだろうに』
「裁くのは正しい側、だから裁きたいんだよ、正しいって証明しないと怖くて生きられない」
《少し聞き難かったんだけど、前のイーライって、多神教?》
「うん、今もね。でも一神教だったらどう思うかは何時も考えてた、知り合いに居たから」
『国としては過度な清貧を批判はしていても、教義は批判していない事は、分かって貰えてるだろうか』
「僕は分かるけど、他の人はどうだろうね。全てを認めて受け入れてくれないと許せない人って、居るから」
《そうだね、残念だけど君の母親とかね》
「本当、子供なんだよあの人」
『イーライの生前の年を聞くか、今でも偶に悩むんだが』
「聞く理由によるけど、多分言わないよ、利用しないなら知る意味が無い筈だし」
《少しだけ、僕らも子供っぽいと思われて無いか不安なんだよ》
「良いじゃん、年相応な時も有るし、大人びてるなと思ったり、凄い幼い時が有っても良いと思うんだけど、そんなにカッコつけたい?」
《つけたいよ、良いと思われ続けてたいんだし》
「文句が無いから困るんだよねぇ、フラれたら刃傷沙汰間違い無し、どっちかが死ぬ事になる」
『そうした魔法も一緒に探そう、心移りしそうになれば死ぬ魔法も探す』
《良いね、勝手に死んでくれたら手間が省けるし》
「けど愛してないと死んじゃうからって愛されるのも、何か嫌」
『なら掛かっている事を忘れれば良い、代わりの対価が支払われると思う魔法』
《呪いに近そうだから、やっぱり古い魔法、原始の魔法とか、神の魔法って呼ばれる分類っぽいよね》
「それか魔道具か、会えるかな、神様に」
《世界を変える気が無いからこそ、きっと会えるよ》
『あぁ、世界を変える事に比べたら、私達の願いは葡萄の種より小さい』
《ね、よし、そろそろ馬車に戻ろ。準備して》
「うん」
神が叶えるのは、願いに見合う者の見合った願いだ、と。
そして対価は様々で、見合わぬと放棄する者、それだけかと驚く者が居るとも聞く。
私達の願いは1つ、イーライと死ぬまで幸せのままに一緒に居る事。
子は、もし出来れば、イーライに似た子が欲しい。
《今日はココまでだね》
「えー、やっと港に着いたのに」
『夜間出港が未だに禁止されている以上は、仕方無い』
「それも魔女狩りだとか理想郷だとかのせいでしょ?」
『それは、後で話そう』
「また、まぁ、だよね」
《宿を取らないとね》
夜間出港が未だに禁止されているのは、スペインで興った新興一神教団が原因。
そして、そのスペインを制圧したのは、赤い天使。
「それが、ロッサ・フラウ?」
《本当かどうかは分からないけど、魔王と竜と制圧したらしい》
「それ絵本で似たのが有ったけど」
《本にだけ真実が隠されているとは限らないじゃん?》
『確かに、寓話にも真実が無いとは言い切れないが』
赤い天使と竜と魔王。
自らを愚かだと知らない民が偽予言者に操られ、利用されていた。
悪事を悪事と知らずに悪に手を染め、功績を収めれば楽園へ行けると唆され、混乱を齎す道具を作ろうとした。
けれど、どんな功を成そうとも、愚か者は楽園と言う名の死を齎された。
それでも女は子を産み続け、男は田畑を肥やし続けた、いつか楽園へ行けると信じ。
そして偽予言者と権力の有る者だけが、真の楽園で贅沢を続けた。
その事を悲しんだ神が赤い天使と花の色をした竜、そして魔王を遣わした。
一夜にして国が滅び、嘗て崇められていた女神が復活し、国は新たな王が支える事になった。
その国では誰もが学べ、好きな相手と婚姻を成し、子供が1人でも殺される事はない。
平和で新しい、けれども伝統と歴史と神が残る国に生まれ変わった。
《スペインをウチのブリテン王国やフランク王国が制圧したとされているけれど、多分、ロッサ・フラウだと思う》
「僕はそんなに神様を知らないけど、ロッサ・フラウなんて知らないよ?」
《もっと言うと、多分、転移者だと思う》
「えっ?」
『パトリック、それは流石にどうなんだ』
《一夜にして国を滅ぼせる程の精霊や神なら、もっと崇められても良いのに、ココやスペインでも1国に1神殿しか存在していない。しかも本当に一神教由来の赤い天使なら、一神教がもっと持ち上げても良い筈、なのに赤い天使は教会では語られていない、寧ろ赤き衣の者としか語られない。演目としてすらも取り入れられて無いのが、不自然なんだよ、凄く》
「それだけで」
《だけじゃないんだ、ロッサ・フラウは突然発生してる、その前までの文献には名も無い。しかもスペインでの出来事の直後に建てられた神殿ばかり、それ以前は全く語られていない土地でも、建ってる》
『パトリック、どうして今までその事を』
《君に野心を持って貰いたく無かったのと、コレは僕の使命で趣味だったんだ》
多くを語られない神や精霊の方に僕は興味が湧いた、何故伝承が少ないのか、どうして統合されてしまったのか。
そう追えば転移転生者の何かに繋がるかも知れない、真の王族しか知れない事でも、もしかしたら何かを知れるんじゃないかと思って色々と探った。
「なん、僕?」
《うん、全ての転移転生者を国が把握出来てるワケが無い。もしかすれば何か例外が有るかも知れない、危険視されない方法は、そもそも監視を回避する方法は無いか。けど無かった、翼有る者が転生者を加護してる、だから知れる者には知れる体制が既に整ってる、少なくとも100年以上前から》
「知れる者が、転移者?」
《危険な転移転生者を処分する者が居ないと、ココまで治安は保てて無かったと思う》
「ぁあ、スペインでの出来事は、そっか」
《そんな事が出来るのは、やっぱり転移者だと思う。しかも神々や天使、それこそ竜や魔王まで協力してるなら、それしか無い》
「でも魔王って、ウチで凄い暴れちゃったじゃん?」
《そもそもアレは人間が仕掛けた事、また魔王に手を出したのが悪いんだよ》
『転移者なんだ、事件の大元は』
「正史派?」
《と言うか、魔王悪派だね》
『転移者を迎え撃ち、ウチに引き渡しに来た事が有るらしい。その転移者は魔王を倒せば帰れるのだと主張していて、何とか考え直して貰おうとしたんだが、ダメだったそうだ』
王宮での教育を洗脳だと主張し、再び魔王の元へ。
《で、魔王に迎え撃って貰った対価に、土地を内々に与えたんだって》
『あの立ち入り禁止区域には、本当に魔王の城が有る』
「へー、有るんだ、実際」
『まぁ、更に裏が有る。エルフ側との和解をと、同じブリテン王国に居住区を構えさせたんだが』
《アヴァロンは天に上ったままで、偶に魔道具庁に来てくれるけど、和解の道は遠いみたい》
「まぁ、家を追われたんだしね、直ぐに何も無しには許せないだろうし」
《で、まぁ、黒船で夜間出港を行い新大陸まで行ったのが、旧スペイン体制だった》
『夜間出港は勿論、未だに船を黒く塗る事も帆を黒や濃い色、海や空の色に似せる事も禁じられている』
「転移転生者のせいじゃん」
《だからこそ、物事を前に進めるのも、転移転生者に出来る事だとも思う》
「あー、上手く出来てるなぁ、そうなったら教会派と関わる事になって。そこで教会側とか天使様が許せば実行されるし、まだ早いとなれば許可が出ない、しかも教会側が反対してても神託には逆らえない。弱体化させ過ぎれば神託の権威が損なわれる、そして転生者には天使が付いてて、天使と言えば教会派か一神教か。良く出来てるよなぁ」
『その仕組みも全て、実は転移転生者が計画しての事なのかも知れない』
《侮らず見誤らず、逸脱しなかった者だけが生き残れる、と思ってる》
「僕、間違えてたら死んでた?」
《例え僕が守ってても不遇の死を遂げる可能性が有った、天使の加護が離れて不運が続いて、それこそ魔王に手を出せば。僕らは太刀打ち出来ない、彼は不死身、一生狙われ続けたら終わる》
「天使様の加護は信じてるんだ」
《例え見守るだけだとしても、見放したって事は周りの神霊に影響する筈、居ない事で悪い子だって事がバレる。なら誰が手を下すか、直接は手を下さないにしても、そう転がる様に差し向けてもおかしくない》
『事例が有るのか、パトリック』
《評判が悪い者の記録が、一切、無い》
「あー、記録からも抹消されてるんだ」
『怖くないのか、イーライ』
「寛容だって信じてるもん、それこそ運が悪いと思った事も無いし、見放されるよりずっと良いけど。苦痛じゃないのかな、ある意味で同性愛者を見守り続けてるんだし」
《まだ女の子になる前なだけだし、嫌なら魔道具に導けば良いだけじゃない?》
「あ、そっか、宜しくお願いします、天使様」
外洋、北海側まで陸路の方が安いし早いから、仕方が無い。
アイルランド側から船でグルっと回る事も出来るんだけど、費用が高いし時間が掛かる、けど楽。
王族の馬車に乗った後に普通の馬車で荒れ道は、しんどい。
ウォルターは御者だらか今は馬を操作してるけど、苦じゃなさそう。
本当に慣れてるっぽい。
でも。
《やっぱり道が悪いとキツいね》
「本当、板バネの意味が無くなる、もうちょっと整地するのって難しいの?」
《侵略される事を考えるとね、コレが今の限界なんじゃないかな》
「ぁあ、でも、魔法で何とかなんない?」
《何とかって?》
「そこだよねぇ、浮かせるのって凄い大変なんでしょ」
《お太りになるか、クッションを足すか、ですね》
「クッションまだ有るんだ」
《男性のお尻は鍛えていないと薄いそうですから、どうぞ》
「キャサリンは大丈夫なの?」
《お肉が有りますし、イーライ様の予備用ですから》
《それか僕の膝の上か》
「いや絶対、後に響くよ?」
《イーライのクッションの分まで使って、こう横に座るとか》
「ぁあ、この座面の下にも板バネを使えば良いんだ」
《成程》
「でも良いのかな、移動が便利になっちゃうよ?」
《軍用で人を運ぶなら荷馬車とかになるし、馬車の内部の改良だから大丈夫だと思うよ、ね?》
《細かい設計にならないなら、大雑把なら大丈夫かと》
でも兵糧とかの事も考えて、敢えて発表されて無いモノも有るんだよね。
シリアルバーとか缶詰はダメだし、大きな道路は敢えて完全には整備されてない。
先人達が諍いを起こさせない為に敢えて我慢してたのに、僕の我儘だけで開発して良いのかな。
「止めとく、それで被害が拡大しても嫌だし、正史派に攻撃されても嫌だし」
《あ、それ、後でウォルターと話し合おう。膝の上に来て》
「あ、うん」
正史派。
それは転移転生前の世界や歴史こそが正しいと思う者、又はそれらを利用しようとする者も含む、一種の宗教的思想支持者を指す。
休憩時に話が有る、と言われたのは、その事についてだった。
《イーライは正史派の思想が、ある意味では理解出来るって事だよね》
「うん。向こうの歴史や出来事が全て正しいとは思えないけど、災害とかも有って否定出来無いから、簡単に良い悪いで片付けられないと思う」
『例えばイーライにとって、どの出来事が、どちらとも思えない出来事なんだろうか』
「ポンペイの噴火、ココでは予言されてて人の被害は無いし、今は火山灰土の採掘場になってる。向こうでは人的被害も有ったけど、結果的に歴史が綺麗に残る事になった。だからもし同じ事が起きるってなったら、人は完全に避難させて、敢えて歴史がしっかり残る様に同じ事が起きるのを待つか。ココと同じ道を選ぶか、兎に角出来る方を選ぶ、どっちも正しいと思うから」
『鉄道や鉄の船についてはどう思う』
「それこそ教会派が合意したら、とか?」
《あぁ、正史派は大概が教会派らしいしね》
「もー、ね、砂漠地帯の一神教は大人しいのに」
《魔女狩りがね、やっぱり》
『ココでは魔法も魔道具も皆が扱える。正史通りに行いたいなら、寧ろ先ずは自らを裁くべきだろうに』
「裁くのは正しい側、だから裁きたいんだよ、正しいって証明しないと怖くて生きられない」
《少し聞き難かったんだけど、前のイーライって、多神教?》
「うん、今もね。でも一神教だったらどう思うかは何時も考えてた、知り合いに居たから」
『国としては過度な清貧を批判はしていても、教義は批判していない事は、分かって貰えてるだろうか』
「僕は分かるけど、他の人はどうだろうね。全てを認めて受け入れてくれないと許せない人って、居るから」
《そうだね、残念だけど君の母親とかね》
「本当、子供なんだよあの人」
『イーライの生前の年を聞くか、今でも偶に悩むんだが』
「聞く理由によるけど、多分言わないよ、利用しないなら知る意味が無い筈だし」
《少しだけ、僕らも子供っぽいと思われて無いか不安なんだよ》
「良いじゃん、年相応な時も有るし、大人びてるなと思ったり、凄い幼い時が有っても良いと思うんだけど、そんなにカッコつけたい?」
《つけたいよ、良いと思われ続けてたいんだし》
「文句が無いから困るんだよねぇ、フラれたら刃傷沙汰間違い無し、どっちかが死ぬ事になる」
『そうした魔法も一緒に探そう、心移りしそうになれば死ぬ魔法も探す』
《良いね、勝手に死んでくれたら手間が省けるし》
「けど愛してないと死んじゃうからって愛されるのも、何か嫌」
『なら掛かっている事を忘れれば良い、代わりの対価が支払われると思う魔法』
《呪いに近そうだから、やっぱり古い魔法、原始の魔法とか、神の魔法って呼ばれる分類っぽいよね》
「それか魔道具か、会えるかな、神様に」
《世界を変える気が無いからこそ、きっと会えるよ》
『あぁ、世界を変える事に比べたら、私達の願いは葡萄の種より小さい』
《ね、よし、そろそろ馬車に戻ろ。準備して》
「うん」
神が叶えるのは、願いに見合う者の見合った願いだ、と。
そして対価は様々で、見合わぬと放棄する者、それだけかと驚く者が居るとも聞く。
私達の願いは1つ、イーライと死ぬまで幸せのままに一緒に居る事。
子は、もし出来れば、イーライに似た子が欲しい。
《今日はココまでだね》
「えー、やっと港に着いたのに」
『夜間出港が未だに禁止されている以上は、仕方無い』
「それも魔女狩りだとか理想郷だとかのせいでしょ?」
『それは、後で話そう』
「また、まぁ、だよね」
《宿を取らないとね》
夜間出港が未だに禁止されているのは、スペインで興った新興一神教団が原因。
そして、そのスペインを制圧したのは、赤い天使。
「それが、ロッサ・フラウ?」
《本当かどうかは分からないけど、魔王と竜と制圧したらしい》
「それ絵本で似たのが有ったけど」
《本にだけ真実が隠されているとは限らないじゃん?》
『確かに、寓話にも真実が無いとは言い切れないが』
赤い天使と竜と魔王。
自らを愚かだと知らない民が偽予言者に操られ、利用されていた。
悪事を悪事と知らずに悪に手を染め、功績を収めれば楽園へ行けると唆され、混乱を齎す道具を作ろうとした。
けれど、どんな功を成そうとも、愚か者は楽園と言う名の死を齎された。
それでも女は子を産み続け、男は田畑を肥やし続けた、いつか楽園へ行けると信じ。
そして偽予言者と権力の有る者だけが、真の楽園で贅沢を続けた。
その事を悲しんだ神が赤い天使と花の色をした竜、そして魔王を遣わした。
一夜にして国が滅び、嘗て崇められていた女神が復活し、国は新たな王が支える事になった。
その国では誰もが学べ、好きな相手と婚姻を成し、子供が1人でも殺される事はない。
平和で新しい、けれども伝統と歴史と神が残る国に生まれ変わった。
《スペインをウチのブリテン王国やフランク王国が制圧したとされているけれど、多分、ロッサ・フラウだと思う》
「僕はそんなに神様を知らないけど、ロッサ・フラウなんて知らないよ?」
《もっと言うと、多分、転移者だと思う》
「えっ?」
『パトリック、それは流石にどうなんだ』
《一夜にして国を滅ぼせる程の精霊や神なら、もっと崇められても良いのに、ココやスペインでも1国に1神殿しか存在していない。しかも本当に一神教由来の赤い天使なら、一神教がもっと持ち上げても良い筈、なのに赤い天使は教会では語られていない、寧ろ赤き衣の者としか語られない。演目としてすらも取り入れられて無いのが、不自然なんだよ、凄く》
「それだけで」
《だけじゃないんだ、ロッサ・フラウは突然発生してる、その前までの文献には名も無い。しかもスペインでの出来事の直後に建てられた神殿ばかり、それ以前は全く語られていない土地でも、建ってる》
『パトリック、どうして今までその事を』
《君に野心を持って貰いたく無かったのと、コレは僕の使命で趣味だったんだ》
多くを語られない神や精霊の方に僕は興味が湧いた、何故伝承が少ないのか、どうして統合されてしまったのか。
そう追えば転移転生者の何かに繋がるかも知れない、真の王族しか知れない事でも、もしかしたら何かを知れるんじゃないかと思って色々と探った。
「なん、僕?」
《うん、全ての転移転生者を国が把握出来てるワケが無い。もしかすれば何か例外が有るかも知れない、危険視されない方法は、そもそも監視を回避する方法は無いか。けど無かった、翼有る者が転生者を加護してる、だから知れる者には知れる体制が既に整ってる、少なくとも100年以上前から》
「知れる者が、転移者?」
《危険な転移転生者を処分する者が居ないと、ココまで治安は保てて無かったと思う》
「ぁあ、スペインでの出来事は、そっか」
《そんな事が出来るのは、やっぱり転移者だと思う。しかも神々や天使、それこそ竜や魔王まで協力してるなら、それしか無い》
「でも魔王って、ウチで凄い暴れちゃったじゃん?」
《そもそもアレは人間が仕掛けた事、また魔王に手を出したのが悪いんだよ》
『転移者なんだ、事件の大元は』
「正史派?」
《と言うか、魔王悪派だね》
『転移者を迎え撃ち、ウチに引き渡しに来た事が有るらしい。その転移者は魔王を倒せば帰れるのだと主張していて、何とか考え直して貰おうとしたんだが、ダメだったそうだ』
王宮での教育を洗脳だと主張し、再び魔王の元へ。
《で、魔王に迎え撃って貰った対価に、土地を内々に与えたんだって》
『あの立ち入り禁止区域には、本当に魔王の城が有る』
「へー、有るんだ、実際」
『まぁ、更に裏が有る。エルフ側との和解をと、同じブリテン王国に居住区を構えさせたんだが』
《アヴァロンは天に上ったままで、偶に魔道具庁に来てくれるけど、和解の道は遠いみたい》
「まぁ、家を追われたんだしね、直ぐに何も無しには許せないだろうし」
《で、まぁ、黒船で夜間出港を行い新大陸まで行ったのが、旧スペイン体制だった》
『夜間出港は勿論、未だに船を黒く塗る事も帆を黒や濃い色、海や空の色に似せる事も禁じられている』
「転移転生者のせいじゃん」
《だからこそ、物事を前に進めるのも、転移転生者に出来る事だとも思う》
「あー、上手く出来てるなぁ、そうなったら教会派と関わる事になって。そこで教会側とか天使様が許せば実行されるし、まだ早いとなれば許可が出ない、しかも教会側が反対してても神託には逆らえない。弱体化させ過ぎれば神託の権威が損なわれる、そして転生者には天使が付いてて、天使と言えば教会派か一神教か。良く出来てるよなぁ」
『その仕組みも全て、実は転移転生者が計画しての事なのかも知れない』
《侮らず見誤らず、逸脱しなかった者だけが生き残れる、と思ってる》
「僕、間違えてたら死んでた?」
《例え僕が守ってても不遇の死を遂げる可能性が有った、天使の加護が離れて不運が続いて、それこそ魔王に手を出せば。僕らは太刀打ち出来ない、彼は不死身、一生狙われ続けたら終わる》
「天使様の加護は信じてるんだ」
《例え見守るだけだとしても、見放したって事は周りの神霊に影響する筈、居ない事で悪い子だって事がバレる。なら誰が手を下すか、直接は手を下さないにしても、そう転がる様に差し向けてもおかしくない》
『事例が有るのか、パトリック』
《評判が悪い者の記録が、一切、無い》
「あー、記録からも抹消されてるんだ」
『怖くないのか、イーライ』
「寛容だって信じてるもん、それこそ運が悪いと思った事も無いし、見放されるよりずっと良いけど。苦痛じゃないのかな、ある意味で同性愛者を見守り続けてるんだし」
《まだ女の子になる前なだけだし、嫌なら魔道具に導けば良いだけじゃない?》
「あ、そっか、宜しくお願いします、天使様」
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