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更に更に、その後。

アーリスのドレス。

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 着る喜びと言うか、着ているのを喜んで貰える喜びと申しますか、寧ろ着せられる喜びと言うか。
 ルツが用意してくれたドレスをローレンスに着て見せてみたり、ネオスに見せたり。

 そうしているウチ、すっかり肌寒くなった頃。

『もう飽きちゃったかも知れないけど、はい』

 アーリスから、黒と青のドレス。
 サテン地のマーメイドラインに段々にレースのフレアが付いてて、そこにはビーズも。

「可愛いけど、カッコイイ。良いじゃない、どうしてそんなに不安そうなの?」
『皆から貰ってるし、寒いかも』

「寒空で着るワケじゃないんだし、着て良い?」
『うん』

 いや、コレ、可愛いカッコイイから好きなのに。

「ありがとうアーリス」

『1番喜んで貰えると思ってたんだけど、何か違う』
「感心してるの、全部違うから凄いなと思って。相談したんじゃないの?」

『ううん、ルツの以外は関わって無い』
「可愛い、エロい、綺麗、カッコイイ。全部違うから凄いなと、嬉しいわよ?私的にはコレが1番似合うって言うか、私らしい気がしてるし」

『でもローレンスのも良いと思う、凄いエロいし』

「エロに重きが」
『エロいの目指してあのエロいのは凄いと思う』

「まぁ、確かに、突き詰め方がエグいわよね」
『僕のは僕のって、まんまじゃない?』

「それが良いんじゃない?」
『良い?1番ダメじゃない?』

「1番ダメは逆にローレンスのよ、他の誰にも見せられないんだもの。最後だと特に悩むわよね、ありがとう」
『気に入ってくれた?』

「勿論、見せびらかすならアーリスの、次にルツでネオス」
『でもローレンスのは凄いよ?他で見た事が無いし』

「アレ凄い先の図案だもの、それこそ誰にも見せられないわ」
『けどルツのドレスを欲しがったのはローシュだよ?』

「アレは見る用が大きめ、まぁ、ローレンスのも見てて技巧が凄いなとは思うけど。着て見せびらかすのはコレ、黒のレースに黒のビーズ、カッコ良過ぎでしょう」
『良い?』

「良い」
『ふふふ、良かった』

 本当に着て出歩きたいけど、場所がね。
 国外しか無いのよね、社交場って。

「見せびらかす場が欲しい」
『ネオスが落ち込むかもよ?』

「あー、じゃあ、肖像画にしとく?」
『良いの?残して』

「顔は残さずね」
『ふふふふ、僕のドレスを着た僕のローシュ』

 着せて脱がせて、また着せて。
 ある意味で1番男の子らしいアーリスが、1番楽しそうかも。



《ローシュ様の肖像画なのに、黒と青だし、顔が無い》

 折角、見れると思ったのに。

『ファウスト、どうした、何で悲しそうなんだ?』
《会いたいのに会ってくれないから、だから、顔が見れるのかなと思ってたのに》

『まぁ、姉上は恥ずかしがり屋だし、コレは半ばドレスを残す為だしな』
《コレ、アーリスさんの色ですよね》

『だな、他のは先過ぎてな、ココでも残せるのはコレだけなんだ』

《良いなぁ、僕もあげたい》

『お、じゃあ数年後までに家とドレスを用意すれば、もしかしたら姉上も応えてくれるかも知れんぞ』

《家と、ドレス》
『それまでに色々と知って、蓄えが有れば手伝ってやらんでもないぞ、頑張れ』

《はい》

 沢山本を読んで勉強して、狩りも通訳もして。
 家を建てて、備蓄を揃えて。

「で、ファウストまで家とドレスを用意したのね」
《白いドレスが無かったので助かりました、もしかして、皆さん取っといてくれたんですかね?》

「ルツの最初のドレスだけ関わって、後はもう色だけ気にして、其々が好きに作らせたらしいわ」
《あ、じゃあ色が、ネオスさんと被ってる?》

「形が違うし生地も違うし、アリ」

 ネオスさんのは絹で、僕のは木綿。
 最初は自分で織ろうかと思ったけど、上手な人にはどうしても勝てない。

 だから家もドレスも、専門家に任せた。

 けど備蓄と毛皮は僕が狩った。
 干して、鞣して。

 それからガラスの食器も、コップとかお皿も作った。

《家はどうですか?》

「文句無し」
《僕とも結婚してくれますか?》

「他は良いの?」
《何処まで比べれば良いですか?》

「そこよねぇ、ファウストなりに見て来たのよね?」
《逆に、ローシュ様みたいな人ってそんなに居ないですからね?》

「向こうじゃ石ころだったのに」
《ココだと珍しい鉱物なんですよ》

「念の為に聞くけど、もし断ったら?」
《そんな事をしても他の人とは結婚しないので、無駄な抵抗は止めた方が良いですよ?》

「王が余計な事を言うから」
《言われなくても聞いて回ってたかもですし、誤差ですよ誤差》

「何歳離れてるか分かってる?」
《ルツさんとローシュ様よりは離れてませんよ》

「殆ど同じじゃない」
《なら問題無いですよね》



 やっと、ファウストも。
 コレで盤石の体制にもなった、うん。

「王」
『良いじゃんかよ姉上、ファウストは何年も待ってたんだぞ?』

「アナタが希望を与えちゃったからでしょうが」
『だってもうスゲェ悲しそうな顔で言うもんだから、無理、アレを無下にすんのは無理だ』

 姉上が会わないと意地になるから、陰でコッソリ見せたりだとか。
 会わな過ぎても幻想が積み上がるだけかも知れんと諭して、少し会わせたりだとか。

 うん、俺、頑張ったわ。

「もう増やしませんからね」
『おうおう、おめでとう姉上』

「はぁ、どうも」

 俺も王妃も年を取っても、姉上は相変わらずで。
 だからココでもベールを付け始めて、顔を合わせるのは俺とだけ。

『姉上の年は変わらんのだし、大丈夫だろ』
「それはそれ、コレはコレ」

『楽しみだな、ファウストの女体化』
「アンタねぇ、格付けして遊んでるの知ってるのよ、王妃にバレたら殺されるわよ?」

『でもだって中身がルツだローレンスだぞ?まぁ、ネオスは可愛げが有るかも知れんが』
「ソレ、チクるわよ?」

『無い無い、王妃はアレにしか会って無いから大丈夫だ』
「男受けが良いのよね、女ネオス」

『控え目なのはネオスだけだからなぁ、他はもう全部、引き千切られそうだしな』
「ファウストも?」

『笑顔でな。アーリスなんて可愛い顔して捻り千切りそうだろう、こう、ふんって』
「ブチッと」

『おいやめろ』
「アンタが言い出したんじゃないの」

『姉上は男の痛みをまだ分からんのか』
「快楽しか与えられておりませんで、すみませんねぇ」

『試しに歯を当てられてみろ、もう怖くて堪らんぞ』
「界隈では悦びに変えてる者も居るかと」

『嫌だ、無理だ』
「と言うかどうしてそんな事になるのよ」

『大昔に、姉上に嫉妬してだ』
「あぁ、ご愁傷様」

『全くだ、くれぐれも男の姿で現れてくれるなよ?』
「そんな、心配し過ぎですよ」

『ダメだ、未だにアジア人は凄い少ないんだ、変わり種に惹かれても困る』
「王妃が、オネショタ」

『何だソレ』
「年上女性と、まぁ、大丈夫でしょう、王は真逆だもの」

『でもだ、王妃には絶対に見られてくれるなよ』
「はいはい」

 姉上の男の姿、ココのに凄いウケが良いから封印したんだよな。



『ダメだよローシュ、王様が言ってたでしょ、男の姿で公女様に会っちゃダメって』
「だってローシュの姿だとベールと手袋で暑いんだもの、それに私は仮にも忠臣の子供よ?弁えて無きゃ躾けるだけよ」

『もー、じゃあ口調は変えて、僕が女性体でベールと手袋をしていくから』
「はいはい」

 王様は世継ぎが成人して直ぐに病死。
 って嘘を正史派の事を逆手に取って広めた、対外的には病死って事にして隠居。

 王妃様が相談役で偶に表に出る程度で、裏の相談は相変わらず元王様が今の王様を援助してる。

 で、今は公女様の婚約者探し中。

『暑い』
「ほら」

『魔道具で良いじゃん』
「それで涼しそうにしてたら魔道具だってバレるでしょうよ、便利が身近に無い方が良いの」

『暑い』
「でしょうね」

《あらシアン、来てくれたのね。それにローシュも、暑い日なのにごめんなさいね》
「いえいえ、公女様でなくても結婚相手を吟味する事は当然ですから」
『そうね』

《さ、日陰へ、冷たい物も用意させてるわ》
『ありがとう』
「程々にね」

 本当に、暑い。

《それで、選定方法って》
「数は揃えます、その中から良いと思った者を選んで貰うだけですよ」
『期限は、そうね、涼しくなるまで。1ヶ月、秋の収穫祭の日に選んで』

「その日までに定期的に排除する者も選んで貰います、どちらも選ばない、は無し」

《適任者と不適格者の選別ね》
「はい、公女様も利口で助かります」

《父上と母上と、ローシュのお陰よ。ありがとう、頑張るわ》
『程々に、で』
「ですね、愛せるのが大前提ですから」

 年を取らないからって、相変わらず頼りにされてるし、外国とも内々で関わってる。
 それこそ秘密結社の方も、定期的に監査を入れないと方向性が固まらないからって。

『はぁ、暑いね、本当に』
「何百年後かにはもっと暑くなるのよ、今は寒冷期を抜けたばかりとも言えるんだから」

『死んじゃうよ?』
「ね、本当に死人が出るから、モスリンドレスを広めて良かったと思ってる」

『砂漠が広がったりは?』
「刈らなければ、刈っても植林をして、地を汚さなければ大丈夫の筈」

『世界ちゃんって、地球の事とか?』
「そこよね、相変わらず謎のまま。更に観測者が居れば、あるいわ」

『外部の観測者?』

「外なる、いえ、コレはマズいわね。そうだ、先に手を打っておかないと、禁書指定を出る前に出させるわ」
『そんな危ない何かが出るの?』

「クトゥルフ神話。今はそこだけね、アナタにも言えない事だから」
『危なさそうだから知らないでおく』

 ローシュがココまで言うのって、相当なんだと思うから、聞かないでおく。
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