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更に更に、その後。

雪だるま式。

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「本当にすみません、ドルフィン家の方には色々とお世話になってしまって」
《いえ、寧ろご休暇でいらっしゃる時に、内々の事に巻き込んでしまいまして》

「いえいえ、元はウチの甥が、すみません、以後気を付けさせますので」
《いえ、彼が悪いと言うより彼女の問題。一線を引いて交友関係を広げていたのは我々も知っています、事故ですよ、不運な事故。どうか彼を責めないで下さい、なんせまだ若いのですから》

「では、そう思っておく事にしますわ、ありがとうございます」

 ジュスティニアーニ家の当主ステラが心身を病み隠居、次期当主には長男が選ばれ、ウーディネのハプスブルク家から補佐が1人。
 そして騒動の一端を担ってしまったロレダン家には、トリエステ州からメディチ家が直々に監視役と補佐に加わる事に。

 そしてカサノヴァ家は、バルバリゴ家へ。

 どうしてこうなってしまったのか。
 ステラも、それこそベアトリス夫人も重圧に耐えられなかったのだろう、と噂されている。

 当主として、貴族として、評議会委員として完璧でいなければいけなかった。
 その重圧に呑まれ他者を必要とするか、排除するかの違いに過ぎない、と。

 観光地化を始めたばかりのこの地には、まだ寛容さが足りないのか、教養が足りないのか。



「で、落ち着いたから、ドレスを作らせる気になったってワケ?」
『と言うか、相談を、しようかと』

 騒動のせいでドレスの案が俺の中から吹き飛んでしまった、それこそ眠って襲われてしまっていたら、ローシュから同情も得てしまう事になっていたかも知れない。
 そうなればもう気軽に口説く事も、敢えて相手にされないだろう言い合いも、何もかもが消し飛んでいたかも知れないと思うと。

「エロいドレスねぇ」

『何か、もう、普通でも』
「良く無いわよバカ、着せて脱がせたいドレスを贈るのが礼儀、中身が良いから他はどうでも良いとか雑でバカな者が考える事なの。俺は良い男なんだ、ちゃんと見てるし知ってるって示すには、ドレスか」

『か』
「下着なんだけど、それは後よね」

『下着』
「アッチの知識も私は知ってるから、凄いの作れるわよぅ」

『凄いの』
「エロいの」

『凄い、エロいの』
「か、凄いエロいドレス」

『先ずは凄いエロいドレスで』
「ふふふふ、男の子はこうでないと」

 そうして、大罪に相談に乗って貰ってしまい。

『良いんですけど、この色の案も何も、見た事が』
「でしょうねぇ、私も初めて出すし」

『それは、良いんですかね』
「ぁあ、正史派ね。そいつらにしたら確かに私も魔王も邪魔でしょうね、向こうには存在して無い、排除したい理由としては確かにねって納得したわ。けどね、もう存在してるんだもの、だから排除だなんて短絡的過ぎ。そんな馬鹿に付き合う気は無いわ、アンタ達と摺り合わせながら情報を小出しにする、ココの者としてね」

『ローシュを外部者だと思いますか』
「帰還を断ってココで生きてる時点でココの子でしょうよ」

『ですよね』

 もしローシュが居なかったら、俺はどうなっていたか。

「そんなに大切なら、体を大事にしなさい。聞いたわよ全く」
『はいはい、気を付けます』



 本当に笑い事じゃ済まなかったのよね、逆に、ローレンスが致されてたとしたら。

「で、ドレスが何故か、いつも通り、と」
『ココまで策略を練ってたワケじゃないんですけど、似合いますよ、赤と黒』

 ステラが仕立てさせていたドレスを私が着る事に。
 そして青いドレスは。

《凄いですねぇ、このドレス、キラキラですよぉ》

 メディチ家夫人、ルクレツィア。
 可愛いのよね、中身は貴族らしくないのに、外見がもうお人形さん。

「義父に似ずに可愛いわねぇ」
《そりゃ義父なんですから似ませんよぉ、ふふふふ》

 もう、天使。

「あぁ、分かるわ、ウチの子に欲しい」
《もう大袈裟なんですから、ふふふ》

 青と白のドレスだし、もう存在からして一服の清涼剤。

『そうデロデロになる前に、ドレスはどうなんですか、何か変える所は?』
「あぁ、そうね、コルセットにも刺繡をお願いしないとね」
《胸元の豊かなドレープが更に豊かさを演出してますね、羨ましいなぁ》

 胸元とお尻にふんわりとドレープが入った、緩めのマーメイドライン。
 でも皮膚が出過ぎな気が。

「ルクレツィア、妊娠すれば2倍になるらしいわね」
《2倍、そうなるとローシュさんは一体どう、はみ出してしまうのでは?》
『その時は零れ落ちない形にしましょうね』

「その肌が見え過ぎだから、黒のレースか何かで隠したいのだけど」
《そう隠すと逆に色気が増しそうな》
『ですよね、ほら』

「ルクレツィアぁ」
《せめてマントとかケープ?》
『それこそルクレツィの様に首元から広がるケープで、後ろ開きにして』

《良いですねぇ、流石色男》

 色男と言うか、エロ男と言うか。

「じゃあ、忙しいでしょうから適当で大丈夫よ、コッチをしっかりお願い。ロレダン家の補佐役なのだからね」
《じゃあローシュさんのは魅力が増す感じの手抜きでお願いしますね》

「言うわねぇ」
《えへへへ》

 もう、好き。

「はい、じゃあお疲れ様」
《お疲れ様でしたー》

『女にまで嫉妬させるとか酷く無いですかね?』

「何でルクレツィアに妬くのよ」
『ニヤニヤしてデロデロに溶けそうになってましたよ』

「アレが可愛くないとかどうかしてる」
『まぁ、見た目が良いかも知れませんけど、あざとさが無理ですね』

「あぁ、若いから」
『若さで片付けますか』

「私も若い頃は苦手だったもの」

『それで、よく見ろって言ってたんですか?』
「まぁ、そうね」

『まだ、周りを見ないとダメですかね』
「ギリギリまで、良く選んで考えて欲しい」

『俺の為に?』
「私の為にも、浮気されたら棒だけちょん切りたい派だから」

『欲だけ残させるって、エグいですね』
「こう言うのがダメなのよね?」

『まだ残忍さの心配をしてるんですか』
「そこまで気にしてないけど、気にすべきだとは思ってる」

『こう普通なのに、何が怖いんでしょうね』
「力、神の威光、加護。もっと神々を敬う人が来たらどうなるのかしら、神官的なのとか」

『世界征服が可能そうですね』
「それに限ってしない、とか有りそう」

『もしかして、俺もローシュの付属品だから、守って貰えたんですかね』

 あら、正解なんだけど、どうしようかしら。

「そうなるとハーレムって危険なんじゃない?」
『誰でもハーレムに入れる場合は、ですけどね。そうするつもりですか?』

「何ならしないつもりだったのよねぇ、ハーレム」
『無理ですよ、奪い合いになるだけ、そうされたいんですか?』

「それ良いわね、劇に、平民の男を奪い合う女貴族達」
『どうしたら仕事から離れるんでしょうね』

「エロい時」
『馬車でしてみたいんですけど、した事は?』

「それも劇に入れましょうかね」



 アーリスからの報告を王と聞いている間。
 コレは嫉妬と言うべきなのか、心配と言うべきなのか。

『姉上は、蜜か何かか?どうして羽虫が寄って来るんだか』
《今回に限っては、ローレンスとローシュの相乗効果かと。ローシュも欲しい、ローレンスも欲しい、では女性なら男の方かと》

『で、薬を盛るかよ』
『重圧に耐えられなかったんじゃないか、だって』

《現実逃避でしょう、完璧さを求められ、不安だからこそ心の拠り所にローレンスを置いた。私の黒真珠と同じなのでしょう、得られれば何とかなる、と》

 だとしても、どうにも。

『あ、ビーズ買って来たんだ』
『お、偉いぞアーリス』

『違うよ、ローシュのドレス用、ベールでも良いかなと思って』
『だとしてもだ、偉いぞアーリス、よしよし』
《綺麗ですね、ありがとうございます、お針子達に見せてみますね》

『おうおう、行ってこい』

 ずっと、こう弱気になっていたんでしょうね、ステラと言う元当主は。
 子を抱え、家を守り、国を守る為に評議会委員に。

 ですけどローシュも同じ普通の女性。
 神々に愛されていると言うか、使われてると言うか。

《失礼します、ドレスかベール用にとビーズを仕入れたのですが》



 傍に居ても何も出来無いかも知れない、けど、何か出来たのではと。

『まぁ、取り敢えずローレンスがそこまで悪いってワケじゃないみたい』
『もしそうなったとしたら、子供の頃の私にも罪が有る事になりますしね』

『ネオス、それとは違くない?だってする事はしてるんだし』
『それ良く耐えられましたね、ローレンス』

『全員、ローシュだと思って接してたんだって、凄いよね』
『凄いですね、それ』

『で、ローシュが目の前に現れて、急に凄くローレンスが欲しくなったみたい』
『ローシュへの愛であって、その方への愛では無いのに』

『幻想を抱いてたんじゃないかって、黒真珠みたいに、得られたら幸せになれる』

『ですけど、そう思って行動していたんですよね、ルツさん』
『今もね、ローレンスも、ドレスの相談してたし。あ、白じゃないって、何か難しい色みたい』

『譲ってくれたワケでは?』
『ううん、もう新しいドレスにムラムラしてた』

『それどんなドレスなんですかね』
『教えてくんないんだよねぇ、エロいとしか教えてくんないの』

『難しい色の、エロいドレス』
『ネオスもエロいのにする?何か大罪の虚栄心が得意みたい』

『得手不得手が有るんですか、成程』
『体にピッタリのはエロいなと思った、マーメイドラインとか言うんだって』

『人魚って、居るんですかね?』
『それっぽいのは見たけど、イルカとかかも、海中だったから』

『そこら辺の事を全然手伝って無くて』
『けど色々とココで勉強してたんだし、大丈夫、後もう少しだけ我慢してね』

『はい、待ってますね』

 ただ、ドレスと言われても、それこそ種類を知らない。
 喜ぶかどうかも、何も。

《どうして全く、お主らはそうなのだろうか》

『カヤノヒメ様、すみません、お聞き苦しかったかと』
《婚礼の衣装程度、どうして我らにも用意させないのだ?》

『いや、作るのが大変だと知っていますし』
《だからこそ、本来であれば家族が用意する物。それこそ家も何もかも、武器でも凶器でも無いのに、どうして請うてくれぬのだ》

『既に私がお世話になっていますし、ローシュが喜ぶかどうか、離れている私にはとても、選べないので』

《贈り物、なのだろう、喜ぶであろうと思い贈る。そう躊躇い何もせんでは、得られるモノも得られんのでは無いか?》
『用意してみて、もしダメなら、それか無理に受け取られるのが嫌なんです』

《であれば国に譲れば良かろう、いつか来る誰かの為の蓄え、なれば無駄にはならんぞえ?》

『良いんでしょうか』
《勿論、お主も家族になるのだろう、当たり前の事だ》

 家族。
 ローシュと家族になる為の準備、儀式、確かに必要だと思う。



《うん、食いっぷりも素晴らしい、お前は実に良い女だな》
「ありがとうございます」

 貴族でもヴニッチみたいなのって、何処にでも要るみたい。
 貴族っぽくなくて、良い意味で大雑把な人。

《どうして結婚しなかったんだ?》
「あぁ、違うんですよ、1度離縁を経験しての独身なんです」

《で、待ちわびていた甥が本気を出して、妬まれたか》
「そう、妬みなんでしょうかね?」

《だろうよ、自分が愛されているのかと勘違いしたが、実はアンタへの愛だった。練習台にされて恨む様な女じゃないが、代わりに妬みになったんだろう、その境遇でも猛烈に愛される、そう愛されたかったんだろうさ》

「お声掛けが多かった、と耳にしているのですが」
《守られ様として、な、アレを守ろうとしたのも居たが。まぁ、地味だったしな、顔で選り好みして失敗したとも言えるが。いつまでも上を目指した弊害だろう、アレで妥協すべきだったんだよ、ステラは》

「それらが組み合わさり、妬みの様な何かになった」
《だと評判だぞ、コレが貴族平民問わず怖い所だ、周りの方が良く見て理解している。まぁ、当事者こそ分からんと言う良い見本でもあるがな、かっかっかっ》

 豪快で豪胆なバルバリゴ家、って評判だけど、本当にそのまんま。

 向こうと同じく、倒した敵の髭を毟って国に捧げた、バルバリゴ家。
 6つの髭を飾った家紋、珍しいよね、家紋に髭が入ってるの。

「見られている、と気を付けないといけませんわね。ねぇローレンス」
『ドルフィン家の当主の方は気にするなと言ってくれましたけどね』
《そうだそうだ、気にするな。髭を毟られても面の皮は厚く、堂々としていればお前の勝ちだローレンス》

「あの、誰か叱って下さる方の候補はいらっしゃいません?」
《ならアンタしか居ないだろうな、アンタ以外、他の誰の言う事も聞かんだろうさ》
『そうでも無いかと、年上の男性の言う事も聞きますよ、意外と素直ですから』

 凄いな、男にも色目を使えるのは本当に尊敬する。

《コイツはヤバいな、俺が女なら今ので食い付いてたぞ》
「そこら辺は何も教えていないんですけどねぇ」

 ね、不思議。
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