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第22章 機関と教授と担当。
3 怨霊と懺悔。
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僕らが語り終えると同時に、大きな音がした。
ドンドンッ、ドンドンッ。
『あぁ、駐在さんかと、意外とココまで聞こえるものなんですね』
《はい、良く響くんですが、彼は特別に大きく叩いてくれているのかと》
『そうですか、真方、一緒に迎えに行って差し上げなさい』
「はい」
真っ白な女性用の背広に、紫のシャツを着た女性が指示すると。
真方と呼ばれた方が立ち上がり、部屋を出ると。
また。
ドンッ、ドンッ。
と音が。
けれど、彼ら、彼女達には聞こえていないらしく。
「あ、あの、もしかして、今の音が」
『私に聞こえたのは、先程の2回だけですが、どうです石井』
《俺にも、同じくその2回続きの音だけ、ですが》
『あぁ、私にハ聞こえマシた、今回は1回の2続きデスね』
「はい、はい、そうなんです」
『そう、なんですね、俺達にしか聞こえなかったから』
『デスが、巻き込まれたであろうお登勢サン、神主サンには聞こえていたデスよね』
「それは、今思うと、分かりません」
『確かに、俺もです』
当たり前が、当然が、ひっくり返ってしまった。
全て。
もしかして僕は。
「もしかして、僕は何か」
『まだ、推察するには幾ばくか不足が有ります、先ずは駐在さんの書類も確認させて下さい』
《失礼します!お待たせしました!》
『いえいえ、駆け付けて下さったんですね、助かります』
《いえ、すべき事をしたまでです、どうぞ》
『ありがとうございます、拝見させて頂きます』
俺達が見た事が、その証拠が何も残っていなかった。
窓の泥も、血も、何もかも。
『そんな、でも、確かに』
『こうは考えられませんか、中には香るだけで幻覚を催す花が他国には存在しています、それらが持ち込まれ嗅がされてしまった。アナタ達は酷く相性が悪く、今でも、幻聴が聞こえてしまっている』
「ですけど」
『若しくは、彼女は耳が良い血筋なんです、独特な楽器の音がアナタ達だけに聞こえているだけかも知れない』
確かに、世には珍しい花も有る。
そして犬笛なる、人には聞き取れぬ楽器が有る事も。
『確かに、そうした存在が有るとは』
『どちらも、均等に存在する可能性が有る、そうは思いませんか』
信じようと信じまいと、呪いは受ける。
そして信じようと信じまいと、お登勢さんも神主も、確かに消えている。
『そう考える、利は』
『先ずは心の平穏です。魔が差す、付け入られる隙を、隙間を埋めるべきかと。どうでしょう、和尚』
《そうですね、数度しかお見掛けした事は有りませんが、以前のアナタ達はもっと生き生きとしてらした。生き生きと、溌溂とする事は、時に邪気祓いにも繋がるかと》
「では、なら、僕らに隙が」
『落雷に打たれる事は時に運、時に避けられぬ命運の場合が有る。ですが、たかが人である私達に、どう区別が付くと言うのでしょう』
《そして私達に区別が付いたとて、全てを知れる、とは思えませんが。もし全てを知れるとしても、それが幸か不幸かは、人や物事其々かと》
人が寿命を知れぬ事は、幸か不幸か。
確かに、そうした議論は未だに有る。
けれど。
「もし、僕が悪いなら、何とかしたいんです。もう、被害を出したく無いんです」
『分かりました、直ぐに対処致しましょう。ですが、もうココには居られなくなります、宜しいですね』
《移動か死か、それだけだ》
「僕は、構いませんが」
『俺も、大学へ行くには出るしか無かったので、それは構わないんですが』
『では、暫くお待ち下さい』
『はい、宜しくお願いします』
「お願いします」
俺達は、後に後悔する事となった。
安易に、返事をしてしまった、と。
『何故なんですか!』
「お願いします!僕は兎も角、せめて彼だけは」
『もう暫くで終わりますから、さ、向かいましょう』
僕らは大きく鳴り響く正門から出れば済む、と。
けれど、門前には、目の前には。
あの一反木綿の様な何かが。
「僕が行きます」
『ダメだ、折角ココまで』
『そうですよ、折角、ココまで来たのですから』
《のこ、りひ、とり》
顔も何もかもが引き伸ばされ、轢き潰された様な、白い着物を着た女性なのかも分からない何かは。
僕の方へと、ゆっくりと、うねりながら進み始め。
「何で、どうして」
《くれ、たご、あん、くれ、たご……》
繰り返される、意味すら分からない言葉。
性別さえ分からない、高くなり低くもなる声。
まるで饂飩の用に引き伸ばされた顔は、ヒキガエルの様でもあり。
お歯黒べったりの様に、赤黒く開いた口には、尖った無数の歯がびっしりと並び。
『同情してはならないモノも、この世には居る事を、どうか来世では忘れぬ様に。では、さようなら』
僕は再び覆い被さられてから、やっと悟る事が出来た。
容易に人を信じてはならない、裏表を持つ者は多く、時に迂闊では餌食となる事を。
「父さん」
『あぁ、帰ったのか。全く、何の連絡も無しに』
「父さん、今なら未だ、助かります。ですからどうか、自首して下さい」
『何を言っ』
「お登勢さん、神主、配達人。分かりませんか、どうして、何故消えたのか」
『お前は一体』
「父さん、何故、どうしてなんですか。どうして、何故、あんなにも危ない薬品を」
『何処で』
「お登勢さんが薬を盛ろうとしたんです、それに気付き問い詰めていると、逃げ出そうとした。けれど、怪異が出たんです、薄平べったい怪異が」
『お前、まさか薬を』
「いえ、素面です。だからこそ、怖いんです、アレはあまりに恐ろしい」
『怪異など、お前は本当に薬を』
「酷く薄いんです、顔はすっかり引き伸ばされ、赤黒い口には尖った歯がびっしりと」
『一体』
「ほら、来ましたよ、戸を揺らす音が聞こえる」
ガシャンガシャンガシャン。
『ひっ』
「何処で、あの薬の調合を知ったんですか、父さん」
『お前、悪戯するにしても』
ガシャンガシャンガシャン。
「分かりました、父さん、アレを招き入れるしか無さそうですね」
『一体、何を』
「父さんを救うには、こうするしか無いんです」
『待て!一体』
バンッ。
「ほら、来ましたよ」
人の手と言うには、あまりにも歪な手形が窓に張り付き。
夕暮れのせいか、それは泥なのか血なのか。
赤黒い液体が、横一文字に塗り付けられ。
『あ、アレは』
「父さん、何処で教わったんですか。今なら、全てを白状すれば助かる筈なんです、ですから」
話を聞く間も、窓の外を何かがゆっくりと、何かを塗り付けている。
『あ、アレは』
「きっと神罰、仏罰です、改心しましょう父さん」
『わ、私が、一体何を』
「あの薬を作り、広めた、それが罪です」
ガシャンガシャンガシャン。
『ひっ』
ガタガタガタガタ。
「父さん」
まるで動物が引っ掻いたかの様に戸が揺れ続け。
ピタリと止んだかと思うと。
ガチャリ。
『お、お前』
「父さんを生かす為です、分かって下さい」
鍵が、ドアが開くと。
『ひっ』
酷く引き伸ばされた容貌に、酷く歪な赤黒い口が開くと。
びっしりと、鋭く尖った無数の歯が。
「父さん、白状しなければ、ゆっくり噛み砕かれるだけですよ」
土の匂いに獣の匂い、そして血の匂いが。
『た、助けてくれ』
「父さん、白状して下さい、全て」
歩く音も無く。
その何かはゆっくり、ゆっくりと。
『わ、悪気は無かったんだ。ただ、ただ、良い薬だと』
「何処の誰から、得たんですか」
『し、知らない。学会で、飲み屋で知り合っただけの、その女が、面白い化学式が有るからと。違うんだ、良い薬だと』
《ぜん、ぶこ、ろし》
『何なんだ、何なんだお前は』
《たあ、とは、おま》
『来るな』
《えだ、けだ》
目の前には、赤黒く染まった無数に並ぶ尖った歯。
それは土臭く、獣臭く、血腥い。
「足先から、ゆっくりと噛み砕かれたなら、どんな心地がするのでしょうね」
『ぃ、いや、いやだぁああああ!』
私は、痛みを良く理解している、分かっている。
だからこそ、あの薬を作り出した。
だからこそ、苦痛から逃れる為に、私は。
《彼らが居なくなる事でしか、解決は難しかったのでしょうか》
私が出した6通の手紙が無事に届き、実際に解決へと動き出して下さったのは。
彼女の所属する機関だけ、でした。
ですが、この結末に納得すべきかどうか。
未熟者である事は勿論の事。
不慣れさ、門外漢故に、すんなりと飲み込む事が難しく。
『何手か有りましたが、神仏がこの道筋を選ばれたのかも知れない。ですが、そう思われる事も、難しいかと』
《殺生を禁じておりますので、はい》
『ですがアナタの手も汚れず、この地は浄化されました。全ては、仕方の無い事』
件の怪異が飛び去った先、黒塚の根元に、4人の遺体が埋まっており。
そのどれもが鋭い何かで胸を一刺し、されてらっしゃったそうで。
この行方知れずは、殺人鬼の犯行と推測され。
直ぐにも容疑者が浮かび上がり、捕まる目前、だったのですが。
《自死とは、本来でしたら避けられるべき行為です》
『ですが、苦痛から逃れる方法が他に無い以上、死は時に救いとなる。今は、人にはその程度の力しか無くとも、日進月歩の歩みを止めてはならない』
△△君の父親が容疑者として確保される寸前、刺身包丁で自害。
そして納屋からは、酷く滑らかな木の杭が発見され。
一連の事件は怪異では無く、人の仕業、と相成りました。
《あの子達は、向こうで幸せに過ごせているのでしょうか》
『勿論、何の罪も無い無辜なる民を、神仏が害する筈が無い。それこそが、この国の、この世のあるべき姿なのですから』
死での償い以外、本当に無かったのでしょうか。
分かりません。
若輩者の門外漢には、全く、分かりません。
ドンドンッ、ドンドンッ。
『あぁ、駐在さんかと、意外とココまで聞こえるものなんですね』
《はい、良く響くんですが、彼は特別に大きく叩いてくれているのかと》
『そうですか、真方、一緒に迎えに行って差し上げなさい』
「はい」
真っ白な女性用の背広に、紫のシャツを着た女性が指示すると。
真方と呼ばれた方が立ち上がり、部屋を出ると。
また。
ドンッ、ドンッ。
と音が。
けれど、彼ら、彼女達には聞こえていないらしく。
「あ、あの、もしかして、今の音が」
『私に聞こえたのは、先程の2回だけですが、どうです石井』
《俺にも、同じくその2回続きの音だけ、ですが》
『あぁ、私にハ聞こえマシた、今回は1回の2続きデスね』
「はい、はい、そうなんです」
『そう、なんですね、俺達にしか聞こえなかったから』
『デスが、巻き込まれたであろうお登勢サン、神主サンには聞こえていたデスよね』
「それは、今思うと、分かりません」
『確かに、俺もです』
当たり前が、当然が、ひっくり返ってしまった。
全て。
もしかして僕は。
「もしかして、僕は何か」
『まだ、推察するには幾ばくか不足が有ります、先ずは駐在さんの書類も確認させて下さい』
《失礼します!お待たせしました!》
『いえいえ、駆け付けて下さったんですね、助かります』
《いえ、すべき事をしたまでです、どうぞ》
『ありがとうございます、拝見させて頂きます』
俺達が見た事が、その証拠が何も残っていなかった。
窓の泥も、血も、何もかも。
『そんな、でも、確かに』
『こうは考えられませんか、中には香るだけで幻覚を催す花が他国には存在しています、それらが持ち込まれ嗅がされてしまった。アナタ達は酷く相性が悪く、今でも、幻聴が聞こえてしまっている』
「ですけど」
『若しくは、彼女は耳が良い血筋なんです、独特な楽器の音がアナタ達だけに聞こえているだけかも知れない』
確かに、世には珍しい花も有る。
そして犬笛なる、人には聞き取れぬ楽器が有る事も。
『確かに、そうした存在が有るとは』
『どちらも、均等に存在する可能性が有る、そうは思いませんか』
信じようと信じまいと、呪いは受ける。
そして信じようと信じまいと、お登勢さんも神主も、確かに消えている。
『そう考える、利は』
『先ずは心の平穏です。魔が差す、付け入られる隙を、隙間を埋めるべきかと。どうでしょう、和尚』
《そうですね、数度しかお見掛けした事は有りませんが、以前のアナタ達はもっと生き生きとしてらした。生き生きと、溌溂とする事は、時に邪気祓いにも繋がるかと》
「では、なら、僕らに隙が」
『落雷に打たれる事は時に運、時に避けられぬ命運の場合が有る。ですが、たかが人である私達に、どう区別が付くと言うのでしょう』
《そして私達に区別が付いたとて、全てを知れる、とは思えませんが。もし全てを知れるとしても、それが幸か不幸かは、人や物事其々かと》
人が寿命を知れぬ事は、幸か不幸か。
確かに、そうした議論は未だに有る。
けれど。
「もし、僕が悪いなら、何とかしたいんです。もう、被害を出したく無いんです」
『分かりました、直ぐに対処致しましょう。ですが、もうココには居られなくなります、宜しいですね』
《移動か死か、それだけだ》
「僕は、構いませんが」
『俺も、大学へ行くには出るしか無かったので、それは構わないんですが』
『では、暫くお待ち下さい』
『はい、宜しくお願いします』
「お願いします」
俺達は、後に後悔する事となった。
安易に、返事をしてしまった、と。
『何故なんですか!』
「お願いします!僕は兎も角、せめて彼だけは」
『もう暫くで終わりますから、さ、向かいましょう』
僕らは大きく鳴り響く正門から出れば済む、と。
けれど、門前には、目の前には。
あの一反木綿の様な何かが。
「僕が行きます」
『ダメだ、折角ココまで』
『そうですよ、折角、ココまで来たのですから』
《のこ、りひ、とり》
顔も何もかもが引き伸ばされ、轢き潰された様な、白い着物を着た女性なのかも分からない何かは。
僕の方へと、ゆっくりと、うねりながら進み始め。
「何で、どうして」
《くれ、たご、あん、くれ、たご……》
繰り返される、意味すら分からない言葉。
性別さえ分からない、高くなり低くもなる声。
まるで饂飩の用に引き伸ばされた顔は、ヒキガエルの様でもあり。
お歯黒べったりの様に、赤黒く開いた口には、尖った無数の歯がびっしりと並び。
『同情してはならないモノも、この世には居る事を、どうか来世では忘れぬ様に。では、さようなら』
僕は再び覆い被さられてから、やっと悟る事が出来た。
容易に人を信じてはならない、裏表を持つ者は多く、時に迂闊では餌食となる事を。
「父さん」
『あぁ、帰ったのか。全く、何の連絡も無しに』
「父さん、今なら未だ、助かります。ですからどうか、自首して下さい」
『何を言っ』
「お登勢さん、神主、配達人。分かりませんか、どうして、何故消えたのか」
『お前は一体』
「父さん、何故、どうしてなんですか。どうして、何故、あんなにも危ない薬品を」
『何処で』
「お登勢さんが薬を盛ろうとしたんです、それに気付き問い詰めていると、逃げ出そうとした。けれど、怪異が出たんです、薄平べったい怪異が」
『お前、まさか薬を』
「いえ、素面です。だからこそ、怖いんです、アレはあまりに恐ろしい」
『怪異など、お前は本当に薬を』
「酷く薄いんです、顔はすっかり引き伸ばされ、赤黒い口には尖った歯がびっしりと」
『一体』
「ほら、来ましたよ、戸を揺らす音が聞こえる」
ガシャンガシャンガシャン。
『ひっ』
「何処で、あの薬の調合を知ったんですか、父さん」
『お前、悪戯するにしても』
ガシャンガシャンガシャン。
「分かりました、父さん、アレを招き入れるしか無さそうですね」
『一体、何を』
「父さんを救うには、こうするしか無いんです」
『待て!一体』
バンッ。
「ほら、来ましたよ」
人の手と言うには、あまりにも歪な手形が窓に張り付き。
夕暮れのせいか、それは泥なのか血なのか。
赤黒い液体が、横一文字に塗り付けられ。
『あ、アレは』
「父さん、何処で教わったんですか。今なら、全てを白状すれば助かる筈なんです、ですから」
話を聞く間も、窓の外を何かがゆっくりと、何かを塗り付けている。
『あ、アレは』
「きっと神罰、仏罰です、改心しましょう父さん」
『わ、私が、一体何を』
「あの薬を作り、広めた、それが罪です」
ガシャンガシャンガシャン。
『ひっ』
ガタガタガタガタ。
「父さん」
まるで動物が引っ掻いたかの様に戸が揺れ続け。
ピタリと止んだかと思うと。
ガチャリ。
『お、お前』
「父さんを生かす為です、分かって下さい」
鍵が、ドアが開くと。
『ひっ』
酷く引き伸ばされた容貌に、酷く歪な赤黒い口が開くと。
びっしりと、鋭く尖った無数の歯が。
「父さん、白状しなければ、ゆっくり噛み砕かれるだけですよ」
土の匂いに獣の匂い、そして血の匂いが。
『た、助けてくれ』
「父さん、白状して下さい、全て」
歩く音も無く。
その何かはゆっくり、ゆっくりと。
『わ、悪気は無かったんだ。ただ、ただ、良い薬だと』
「何処の誰から、得たんですか」
『し、知らない。学会で、飲み屋で知り合っただけの、その女が、面白い化学式が有るからと。違うんだ、良い薬だと』
《ぜん、ぶこ、ろし》
『何なんだ、何なんだお前は』
《たあ、とは、おま》
『来るな』
《えだ、けだ》
目の前には、赤黒く染まった無数に並ぶ尖った歯。
それは土臭く、獣臭く、血腥い。
「足先から、ゆっくりと噛み砕かれたなら、どんな心地がするのでしょうね」
『ぃ、いや、いやだぁああああ!』
私は、痛みを良く理解している、分かっている。
だからこそ、あの薬を作り出した。
だからこそ、苦痛から逃れる為に、私は。
《彼らが居なくなる事でしか、解決は難しかったのでしょうか》
私が出した6通の手紙が無事に届き、実際に解決へと動き出して下さったのは。
彼女の所属する機関だけ、でした。
ですが、この結末に納得すべきかどうか。
未熟者である事は勿論の事。
不慣れさ、門外漢故に、すんなりと飲み込む事が難しく。
『何手か有りましたが、神仏がこの道筋を選ばれたのかも知れない。ですが、そう思われる事も、難しいかと』
《殺生を禁じておりますので、はい》
『ですがアナタの手も汚れず、この地は浄化されました。全ては、仕方の無い事』
件の怪異が飛び去った先、黒塚の根元に、4人の遺体が埋まっており。
そのどれもが鋭い何かで胸を一刺し、されてらっしゃったそうで。
この行方知れずは、殺人鬼の犯行と推測され。
直ぐにも容疑者が浮かび上がり、捕まる目前、だったのですが。
《自死とは、本来でしたら避けられるべき行為です》
『ですが、苦痛から逃れる方法が他に無い以上、死は時に救いとなる。今は、人にはその程度の力しか無くとも、日進月歩の歩みを止めてはならない』
△△君の父親が容疑者として確保される寸前、刺身包丁で自害。
そして納屋からは、酷く滑らかな木の杭が発見され。
一連の事件は怪異では無く、人の仕業、と相成りました。
《あの子達は、向こうで幸せに過ごせているのでしょうか》
『勿論、何の罪も無い無辜なる民を、神仏が害する筈が無い。それこそが、この国の、この世のあるべき姿なのですから』
死での償い以外、本当に無かったのでしょうか。
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若輩者の門外漢には、全く、分かりません。
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