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階下の物音
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「君の、もっとドロドロした話、聞かせて?」
ってあの人がいうから。
***
子供の頃、夜寝るのが嫌だった。
理由はいくつかある。
自分が寝た後に、大人たちはどんな楽しい話をしているのだろう、とか。
暗い部屋にお化けがいるんじゃないか、とか。
嫌な明日が来てしまうから、とか。
色々ある中に、こういう理由もあった。
ある夜、いつも通りにおやすみを言って寝たその夜、トイレに行きたくなって目が覚めた。
すると、階下から物音がしたのだ。
トントン、コンコン、ボソボソ。
ああ、大人たちが起きているのだな、子供抜きでなんの話をしているのかな、と耳をそば立てる。
パタパタ、ゴソゴソ、ボソボソ。
何を言っているかはわからない。
とりあえず、トイレに行くために、布団から這い出る。
目を擦りながら、廊下へ出ると、両親の部屋のドアが開いていた。
何の気なしに目を向けると、そこには──寝ている両親の姿があった。
じゃあ、末っ子が起きているのかな? と部屋を覗くが、やっぱり寝ている。
それに、階下の物音は、1人じゃない、確実に複数の人のものだった。
トントン、ガサガサ、ボソボソ。
──じゃあ一体、下にいるのは誰なんだ……?
怖くなって、トイレに行くこともやめ、もう一度布団に潜り込んだ。
確かめに行ってはいけない気がした。
見てはいけないような気がした。
怖かった。
ずっと長い夜に感じた。
朝は、いつも通りにやってきた。
ただ、自分は寝不足と膀胱が破裂しそうなのとで、気分は最悪だった。
恐る恐る布団から出てみる。
朝の日差しで、家の中が明るい。
昨日感じた恐怖は、どこにもなかった。
半ば安心して、だが、警戒しながら階段を降りた。
トントントン、ポコポコ。
母さんが朝食を作る音、父さんが新聞を取りに行く音、末っ子が顔を洗う音。
いつも通りの朝だった。
家族に昨日の晩の話をしたら、寝ぼけていたのだろう、という答えだった。
誰一人として、夜に起きたものはいなかった。
みんな、僕と同じ程に夢に世界へ行っていた。
気のせいだったということで一旦は緊張は解け、何もなかったように朝食を食べた。
ただ、頭の隅で、昨日のことが、妙に引っかかる。
気のせいにしては、やけにリアルだったのだ。
だから、夜は、怖いのだ。
ってあの人がいうから。
***
子供の頃、夜寝るのが嫌だった。
理由はいくつかある。
自分が寝た後に、大人たちはどんな楽しい話をしているのだろう、とか。
暗い部屋にお化けがいるんじゃないか、とか。
嫌な明日が来てしまうから、とか。
色々ある中に、こういう理由もあった。
ある夜、いつも通りにおやすみを言って寝たその夜、トイレに行きたくなって目が覚めた。
すると、階下から物音がしたのだ。
トントン、コンコン、ボソボソ。
ああ、大人たちが起きているのだな、子供抜きでなんの話をしているのかな、と耳をそば立てる。
パタパタ、ゴソゴソ、ボソボソ。
何を言っているかはわからない。
とりあえず、トイレに行くために、布団から這い出る。
目を擦りながら、廊下へ出ると、両親の部屋のドアが開いていた。
何の気なしに目を向けると、そこには──寝ている両親の姿があった。
じゃあ、末っ子が起きているのかな? と部屋を覗くが、やっぱり寝ている。
それに、階下の物音は、1人じゃない、確実に複数の人のものだった。
トントン、ガサガサ、ボソボソ。
──じゃあ一体、下にいるのは誰なんだ……?
怖くなって、トイレに行くこともやめ、もう一度布団に潜り込んだ。
確かめに行ってはいけない気がした。
見てはいけないような気がした。
怖かった。
ずっと長い夜に感じた。
朝は、いつも通りにやってきた。
ただ、自分は寝不足と膀胱が破裂しそうなのとで、気分は最悪だった。
恐る恐る布団から出てみる。
朝の日差しで、家の中が明るい。
昨日感じた恐怖は、どこにもなかった。
半ば安心して、だが、警戒しながら階段を降りた。
トントントン、ポコポコ。
母さんが朝食を作る音、父さんが新聞を取りに行く音、末っ子が顔を洗う音。
いつも通りの朝だった。
家族に昨日の晩の話をしたら、寝ぼけていたのだろう、という答えだった。
誰一人として、夜に起きたものはいなかった。
みんな、僕と同じ程に夢に世界へ行っていた。
気のせいだったということで一旦は緊張は解け、何もなかったように朝食を食べた。
ただ、頭の隅で、昨日のことが、妙に引っかかる。
気のせいにしては、やけにリアルだったのだ。
だから、夜は、怖いのだ。
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