ヴィティスターズ!

独身貴族

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Goûte moi 私を味見して 第5話 甘いのはお好き?

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Goûte moi 私を味見して 第5話 甘いのはお好き?
(上演10分)

──────────

《キャスト》

武藤:
シェフ:
ひより:

シルヴァ:
ミュラー:
ゲヴュルツ:
モスカート:
シュナン:

客1:(女性)



※収録時のお願い
[SE:  ]の所は2秒ほど間をおいてからセリフをお願いします。

また、***のある所は場面転換、あるいは補足です。
ここでも2秒ほど間を開けてください。

──────────

↓ 以下、本編 ↓

***


武藤N「ようやく、土曜日の夜も、半分が過ぎましたとさ。でかい団体も無事おかえり頂いたことだし、あとは後半戦、どうなるかだな」

タイトル:武藤
【ヴィティスターズ グート・モワ 第5話 甘いのはお好き?】

***

武藤「なあ、ひよりくん」

ひより「なになにー? むちょーさん」

武藤「その呼び方やめてくれますかね……。週末の客の入りって、こんな感じなんですか?」

ひより「うんー、そうだねー。今日よりも忙しい時もあるし、拍子抜けするくらい暇な時もあるかな」

武藤「差があるってことっすか」

ひより「そうだねー。お客さんが来るかどうかは、お腹の好き具合と気分次第だから。そこまでは俺たちもわかんないし。ま、神のみぞ知るってやつだね」

シルヴァ「お腹の好き具合は、流石の神様もわからないでしょう」

ひより「あ! シルヴァさんっ」

武藤「シルヴァ……って、まさかシルヴァーナ?」

シルヴァ「ええ、そうですよ。武藤くん」

武藤「お、俺の名前、知ってるんすか」

シルヴァ「みんな知っていますよ。期待の新人さん、とね」

武藤「な、何期待されてるんだ俺」

シルヴァ「ところで、ミュラーくんを見ませんでした? ひよりくん」

ひより「見てないなあ」

武藤「昨日はセラーで燻っていたけどな……」

シルヴァ「甘いものがお好きなお嬢さんがいらっしゃっているようですので、ドイツワインの出番かと思ったのですが、どこへ行ったのでしょう、あの人は……」

武藤「もしかすると、二階の本を読んでるんじゃないですか。本好きだって言ってましたし」

シルヴァ「ああ、あの人らしい。そうですね、二階も探してみます」

[SE:階段上がっていく]

武藤「……なんか、スッキリとした人だな」

ひより「でしょでしょ? 中性的で、綺麗だよね」

武藤「話し方も穏やかだし」

ゲヴュルツ「なんだよ、ああいうのがいいのか?」

武藤「う、出たな、ゲヴュルツ……」

ゲヴュルツ「おい、なんだよその反応は」

武藤「……昨日のアレを思い出してしまった。くそ」

ひより「ゲヴトラさんは今日もライチの香りすごいね~。ほーんと香水みたい」

ゲヴュルツ「香水じゃねーって。俺から溢れ出るアロマだ、っつてんのに。みんなして香りがうつるからあっち行けって、ひどいったらなんの」

ひより「あ、でも香水っていうより、塩とライチのあのジュースみたいな香りかも」

武藤「(吹き出す)ぶっ……」

ひより「ね、わかるっしょ?」

ゲヴュルツ「おいおい、なんだよ、そのジュースって」

ひより「今度飲ませてあげる~。親近感湧くかもね!」

ゲヴュルツ「なんだそりゃ……」

シェフ「お待たせしました~。甘めワインがお好きだってことで、取り敢えず、ドイツのものを色々揃えてみました」

ミュラー「ど、どうも。へへ……」

武藤「ミュラー、見つかったのか……なんか首を掴まれた猫みたいになってんな……」

客1「んー。なんかね? 前に来た時にね? テラー・シュヴァルツネッガーみたいな名前のワイン飲んだんだけどさ、それってある?」

武藤「なんか無駄に強そうだな」

シルヴァ「おそらくツェラー・シュヴァルツ・カッツのことでしょう」

客1「そう、それそれ!」

武藤「なんでわかるんだよ……」

客1「あとさぁ、シルヴァニア・スターローンみたいなやつ? 確か品種の名前だっけ? あのワインも飲みたい!」

シルヴァ「それはおそらく……私のことでしょうね……」(ちょっと笑いそう)

武藤「だからなんでわかるんだよ! アレで!! シルヴァーナを! シルヴァニア・スターローンって! どう聞こえたらそうなるんですか!?」

ひより「シルヴァさん……やるな……!」

客1「んー、あとねぇ」

シェフ「ん? なんです?」

客1「前にね、ここに来たことがあるんですけどぉ、その時飲んだワインがすっごく美味しくて。また飲みたいなって思ってきたんですけどお。どんな名前だったか思い出せないの」

シルヴァ「……なるほど」

武藤「うん……? なんか、今緊張が走ったような?」

シェフ「だったら、色々味見してみるといいですよ。この店はテイスティングありなんで、いくつか飲んでもらって……」

シルヴァ「その中にもしかしたら、あなたの探しているものがあるかもしれません」

客1「え、そんな、いいんですかぁ?」

ミュラー「いいんですよ。やっぱり、飲みたいものを飲むことが、一番ですから。ね」

客1「は、はい……」

シルヴァ「……では、まずどれから飲んでみましょうか」

ゲヴュルツ「そこは俺からだろ。華やかで飲みやすく、女性ウケがいいと定評がある、このゲヴュルツ・トラミネールを」

ミュラー「それなら、僕の方が先だといいと思います。トラミナーさんのは味も香りも強いので……まずはリープフラウミルヒを、飲んでみてください」

シルヴァ「私のワインも甘いので、きっと……」

武藤「な、なんかみんなグイグイいくな……」

モスカート「(背後から)女性のひとり客。もしかしたら自分を探しているのかも……そう思ったら張り切りたくもなる、ってな」

武藤「モスカート。……そんなもんすかね」

モスカート「あいつらはまだおとなしい方だ。赤ワイン連中の中には、もっと面倒な奴がたくさんいる。……それをまとめるのが、君の役目だよ」

武藤「俺の仕事、接客じゃないんかい!」

モスカート「ワインの管理って、言ってみりゃあそういうことだろう? どれが飲み頃で、どれをお勧めするべきか。一本のワインばかり勧めるのも良くないし、飲み頃が過ぎてるワインが眠っているのも問題だ。いいかい? (囁くように)俺たちをうまく使いな」

[SE:物音]

シュナン「呼ばれて登場! シュナン・ブラン!!」

武藤「うわ! なんだなんだ、いきなり!!」

シュナン「お? 僕が呼ばれたような気がしたのですが……」

モスカート「誰も呼んでないさ、シュナン・ブラン」

シュナン「残念です……なかなか出してくれないので、張り切ってきたのに……」

モスカート「新人くん。このシュナン・ブランのワインも、随分と眠っていたようだぜ」

シュナン「最近ワインリストからも消されちゃいまして。多分、皆さんの中で僕は忘却の彼方へ追いやられてるのでしょう……しくしく、です」

武藤「ええっと、あのさ、ひとつ気になるんですけど、その長い前髪で前、見えてんですか?」

シュナン「お? 勿論です! ちゃーんと見えてますよ!! あちらにいる女性の方の顔までも、ちゃんっと見えております! 加えて見覚えもあります!」

モスカート「本当か?」

シュナン「随分前のことですが、僕は覚えています! 間違いないのです! ふふふ……アンジューで作った僕の甘口ワインを……出すのです……ふふふ」

武藤「このワイン、俺あんまり知らないんですけど、出しちゃっていいんですか? メニューにも載ってないなら……」

ひより「あ、なっつかしー! シュナン・ブランだ!」

シュナン「お! お久しぶりですー! ひよこさん!」

ひより「ひよりだからね? 覚えてね?」

武藤「ひよりくん、このワイン知ってます?」

ひより「うん、それね、もう入荷できなくなっちゃったらしくて、最後の一本なんだ! 出しちゃっていいと思うけれど」

武藤「え、そんなレアもの……」

 モスカート「むしろ、もう手に入らないなら出すべきだと思うぜ。なんせ、彼女はそのワインを探しにここへやってきたんだ。眠らせておくより、ずっと意味がある。そう思わないか?」

武藤「そっか……。よし、出そう!」

ひより「行けー、シュナン・ブラン!」

シュナン「はい!」

[SE:髪を横に流す]

武藤「ん……?」

[SE:足音]

シュナン「お久しぶりです。もう随分前のことですから、お忘れかと思ったのですが……会いに来てくれたのですね。感激です」

女性1「そうそう! 君! そのワイン! はぁ~甘くってとろとろで、もう一回飲みたかったの!」

シュナン「でも残念なことに、これが最後の一本なのです。折角ですので、ボトルで飲みませんか……? 最後の一滴まで、僕もお付き合いしますから」

女性1「最後の一本! そーなの? じゃあボトルで!」

ひより「ひゃー! めっずらしー! うちの店、宴会でなければ滅多にボトルで出ないのに!」

シェフ「しかもあのワイン、そこそこいい値段するぜ。あいつのおかげで売り上げ達成だ」

武藤「ってかキャラ変わりすぎだろ!! さっきの目隠れ小物キャラはどこいった! キラッキラのイケメンオーラ出してやがる!」

モスカート「あいつもシャルドネと同じタイプさ。場所によって全く違う顔を見せる。……これだから、ワインは面白い」

ゲヴュルツ「けっ。出番とられたみたいでやな感じだな」

ミュラー「でも、飲みたかったワインと出会えて、良かったです!」

シルヴァ「そうですね。我々は引き下がるとしましょう」

***

武藤「はぁ~あ」

モスカート「どうした。もう店は閉めたろ。今日の仕事は終わりだ。おつかれさん」

武藤「うん……」

モスカート「何か気にかかることでも? 俺でよければ聞くぜ?」

[SE:隣に腰掛ける]

武藤「……ただでさえ意味わからない奴らなのに、在庫管理任されて……俺、あんたたちをまとめること、できんのかな……って」

モスカート「ふっ。弱気になってるな」

[SE:肩を叩く]

モスカート「……できるさ。お前なら」

武藤「……その確証はどこから……」

モスカート「お前にはできない。そう言われるより、ずっといいだろ?」

武藤「あ……」

***回想

前の上司「お前はできないんだから、でしゃばってくるな! 何にもわかってねえくせに!」

武藤「ああ、そうかよ! 俺にはできないだったら、こんな仕事、やめてやる!」

***

武藤「うん……確かにな」

モスカート「結構向いてると思うぜ。それに俺はお前のこと、気に入ってるしな」

武藤「そうですか」

モスカート「そうだよ」

(キス)

武藤「む……油断した……!! ってかなんで今!?」

モスカート「そういう流れかなーと思って」

武藤「違う、違う、全然そうじゃない! なってない!」

モスカート「元気が出たようだな。とびきり甘いのをしてやったから」

武藤「あ~~~も~~~やっぱり調子狂うな~~~!!」

***

シェフ「続く!」














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