Ice in love

白銀狼

文字の大きさ
上 下
4 / 19
氷の思い

新しい私 2

しおりを挟む
「ん?ユリア、おはよっ」
「あぁ、おはよう。」
 まだ、眠いのか、欠伸をかみ殺しているのは、グレンだ。彼については、まだまだ分からない事が山ほどある。これから徐々に知っていかなくてわ!と思う。まずは、いろいろと質問をしてみよう。
「グレン、君は、以前の私とどういう関係だったんだ?」
「お前と…友達だったんだ。アイリほどじゃないが、仲良かったんだぞ」
「友達?」
「あぁ…」
 グレンは、そう言うと少し悲しそうな顔をしていた。私には、彼の言葉の中に不思議と、気になるところがあった。腑に落ちないと言うか…友達なのだろうか?何かちょっと違うような…そんな気がする。
「おはようございます。ユリア、ゆっくり眠れましたか?」
「おはよう、カイト。もう、ぐっすり眠れたわ。」(アイスを抱いてねっ、気持ちよく眠れたわ。)
 私が、そう言うとカイトは、安心したように、カートに乗っけて運んで来た朝食をテーブルに並べた。
「美味しそうね!カイトが、作ったの?」 
 綺麗に並べられた、料理を見て私は、言った。すると、カイトは、嬉しそうに笑って「はい」と言った。あんなカイトの笑顔を見たのは、私が知っている中では、初めてだった。いつもカイトは、気難しい顔をしているから、新鮮に感じた。
「ところで、アイリさんは…」
「えっ?そういえば、朝会ったきりだ。」
 「そうかぁ…」
 カイトがアイリの事を気にするなんて、少し意外だった。こう言っては、何だが…カイトが、誰か自分以外を気にしたところを見た事なかった。私もアイリが今何処に居るのか心配だが、私よりカイトの方が心配して居るんだと思った。何故なら、アイリが居ないと始めに気が付いたのは、カイトだし、居ないと知ってからカイトは、心なしかオロオロしているからだ。いつものカイトらしくなく、落ち着かない感じだ。
 しかし、本当にアイリは、いったい何処に行ったんだろう?
 結局…アイリは、来なかった。屋敷の執事がアイリから手紙を預かったと言った。手渡された内容は、[昼、街の丘で待っています。]という内容だった。
 
 朝食を済ませた私は、アイリとの約束の場所に向かった。
 アイリとの約束の場所は、街外れの手入れされた丘だった。私は、ここへ来るのは、初めてのはずが…何故か懐かしい気持ちがこみ上げてくる。
『思いだせ…早く、わらわを思いだせ…』
 頭に鳴り響く、女の声。すると、急に頭が痛くなった。まるで何かに押しつぶされているかのような…痛みに意識が飛びそうになったその時、誰かの優しい笑顔が頭にふと浮かんだ。
【ユリア…大丈夫だ。安心してくれ。】
 その声、その言葉を私は、聞いた事がある。だが…記憶が無い…不安と恐怖が交差する中私は、アイスの声で我に返った。
『ユリア様っ?大丈夫ですか?』
「あっあぁ。大丈夫だ…」
 あれは、誰だったんだ…気づくと私の頬はじんわりと暖かくなっていた。片目からは、苦痛を堪えていたのか、それとも別の何かなのか。
 この頃の私は、自分がどんな時にどんな感情を持つかが分かるようになっていた。おかげで分からない事が増えた…自分が感情を得て嬉しかったが、カイトやアイリそして、グレン…一人一人に違う感情が芽生え、私は、自分の身体がそれぞれに反応が違う事を知ってしまい、戸惑っている。一番分からないのが…カイトとグレンに対する気持ちだ…アイリに会ったらスッキリするかもと思って、アイリを今待っている。アイリにも呼ばれたし、一石二鳥だ。


「おぅ、姉ちゃん。綺麗な格好して何処行くんだ?」
「うるさいわね、あなた達に構って居る暇は無いの!どっか行って頂戴?」
「そうかっかしないでくれよぉ~、良いじゃんかちょっとくらい。」
「鬱陶しいわね…って、きゃぁ?誰か助けてぇ?」

「誰か助けてぇ?」
 何処かからか声がした。この声はアイリだ?アイリに何かあったんだ?私は、すぐさま丘を駆け下り街中の声のする方に向かった。
「えっ?ユリア様っ何処にいかれるのですか?」
 私は、アイスの問いかけに答えず走った、ただがむしゃらに。
 しかし、私がアイリの元に着く前にある人物が居た。その光景を見たとたん、私の胸の奥がかぁっと熱くなった…
 
 アイリを助けたのは…グレンだった…

 何故か私は、その場から去るようにして走った。無我夢中でただひたすらに…
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

形だけの正妃

杉本凪咲
恋愛
第二王子の正妃に選ばれた伯爵令嬢ローズ。 しかし数日後、側妃として王宮にやってきたオレンダに、王子は夢中になってしまう。 ローズは形だけの正妃となるが……

妻のち愛人。

ひろか
恋愛
五つ下のエンリは、幼馴染から夫になった。 「ねーねー、ロナぁー」 甘えん坊なエンリは子供の頃から私の後をついてまわり、結婚してからも後をついてまわり、無いはずの尻尾をブンブン振るワンコのような夫。 そんな結婚生活が四ヶ月たった私の誕生日、目の前に突きつけられたのは離縁書だった。

家に帰ると夫が不倫していたので、両家の家族を呼んで大復讐をしたいと思います。

春木ハル
恋愛
私は夫と共働きで生活している人間なのですが、出張から帰ると夫が不倫の痕跡を残したまま寝ていました。 それに腹が立った私は法律で定められている罰なんかじゃ物足りず、自分自身でも復讐をすることにしました。その結果、思っていた通りの修羅場に…。その時のお話を聞いてください。 にちゃんねる風創作小説をお楽しみください。

心の声が聞こえる私は、婚約者から嫌われていることを知っている。

木山楽斗
恋愛
人の心の声が聞こえるカルミアは、婚約者が自分のことを嫌っていることを知っていた。 そんな婚約者といつまでも一緒にいるつもりはない。そう思っていたカルミアは、彼といつか婚約破棄すると決めていた。 ある時、カルミアは婚約者が浮気していることを心の声によって知った。 そこで、カルミアは、友人のロウィードに協力してもらい、浮気の証拠を集めて、婚約者に突きつけたのである。 こうして、カルミアは婚約破棄して、自分を嫌っている婚約者から解放されるのだった。

選ばれたのは美人の親友

杉本凪咲
恋愛
侯爵令息ルドガーの妻となったエルは、良き妻になろうと奮闘していた。しかし突然にルドガーはエルに離婚を宣言し、あろうことかエルの親友であるレベッカと関係を持った。悔しさと怒りで泣き叫ぶエルだが、最後には離婚を決意して縁を切る。程なくして、そんな彼女に新しい縁談が舞い込んできたが、縁を切ったはずのレベッカが現れる。

処理中です...