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「ねぇ、旦那様?」

「どうしたんだい? カトレア??」

 無駄だと解っているけど、私は旦那様に問いかける…

「どこか遠い所に2人だけで行きませんか?」

 今からだと間に合わないけれど…
 必ず旦那様は捕まってしまうの… 

 それでも私は貴方と共に生きたいの…

「残念だけど、僕はまだやる事が残っていてね…
 せっかくだからカトレア! 隣の国でお祭りがあるみたいだから、お義母さん達でも誘って行ってくればいいよ!」

 旦那様は笑顔で、私に隣国へ行く事を進める…

 1番初め…
 巻き戻る前の私は旦那様の提案を受けて、喜んでお祭りに行ったわ…

 そして、旦那様に沢山のお土産を持って帰ってきたら

 ………全てが終わっていた

 
 旦那様は処刑されていた…

 激しい拷問を受けたのか、もはや本当に旦那様かと疑う程に原型を留めていなかったけれど…

 それでも私には判った

 残酷な方法で殺されてしまった哀れな死体は間違いなく旦那様だという事に…


 旦那様は全て解っていたのだろう…

 妻である私にも咎が行かぬように数ヶ月前には離縁届けが提出されていた…

 お陰で私は罪に問われる事はなかった…


 旦那様と結婚式を挙げた時に私はこの国の神に誓ったのに……

【死が2人を分かつまでずっと側にいます】

 と……
 
 それなのに私は何も知らなかった…

 それどころか神に誓った約束さえ守れなかった…

 旦那様が亡くなる時に側にいれなかった…

 その旦那様への後悔が巻き戻りを起こしたのか、気がついたらに戻っていた…


 だけど…
 何度巻き戻っても旦那様は救えない…

 そもそも旦那様は逃げる気などないのだ…
 何度目かの巻き戻りの時に旦那様はボソリと呟いていた…

「やっと罪を償える…」

 その時に旦那様が見せた表情はとても穏やかで、これで全てが終わるといった安堵の表情を浮かべていた…

 これから自分に起こる事も解った上で逃げる気などないのだ…

  全ての罪を背負わされながら


 私では旦那様を逃がす事は出来ない…

 ならば他に旦那様を救う方法を探すが成功した試しがない


 私が何度もの巻き戻りの中で得た事といえば

『何故旦那様が処刑されるのか…』

『何故旦那様が全て解った上で逃げたりしないのか…』

 だ………

 これを知った所で余計に旦那様が逃げる訳がないと

 何故なら…

 それはこの国の闇の部分…

 旦那様が絶対の忠誠を誓うあの方達からの命令…

 逃げられる訳がない……

 もしも逃げたり、この事を口外しようものならきっと、家の領民達も酷い目に合わされるだろう…

 だけど、そうまでして守りたかった領民達からは罵倒され、あの方達からは見捨てられる……

 私は全てが許せない……

 あの方達も…
 領民達も…
 そしてこの国が…


 …………………

 だから私は今回で全てを終わらせようと思います…

 
 



 
 

 
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