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番外編
*猫の日の彼ら*
しおりを挟む※時系列順のお話とは無関係の、2/22 猫の日ネタです。
※未来のお話。ロイドとユリウスが付き合ってます。
♢♦︎♢
「んにっ、にゃぁぁぁぁあ!?」
ーー驚きに満ちた鳴き声が、響き渡った。
「なっ、なんだ!? どうしたッ?」
その声にアシュレイは飛び起き、辺りを見回す。すると、隣で寝ていたはずの枢がいない。
どこに行ったのかと視線をさ迷わせれば、浴室の扉が開いていた。
「……カナメ? なにかあった、の……か?!」
「あ、アシュレイ……」
声をかけながら扉をくぐると、そこには涙を浮かべてこちらを見る枢の姿が。
しかし、普段と違うその見た目に、アシュレイは口を開けたまま立ち尽くしてしまったのだった。
♢♦︎♢
「失礼します! 少しリオンに用があるのですが、お借りしても構わないでしょうか……って、あぁ?」
ノックされたアシュレイの部屋。入るよう促すと、現れたのはロイドだった。
なにやら慌てた様子の彼は、リオンに用があったようだが、室内に目をやった途端動きを止めた。
「えっと、カナメ様? それもしかして……」
「みっ! 見ないでくださいぃ~!!」
ロイドが凝視する先。そこにはソファに丸まるように座り、隣のアシュレイの体で顔を隠すようにする枢の姿があった。
しかし隠しきれていない下半身から、見慣れないスラリとしたものが伸びている。
「……しっぽ」
「しっぽだな」
「っ、アッシュ殿下!!」
「可愛いのだから隠さずともよいではないか」
ポツリとこぼしたロイドに答えたのはアシュレイで、枢はそれに食ってかかっていた。思わずと言った様子で顔を上げた枢の頭上には、ぴくぴくと動く猫耳まで見える。
「恥ずかしいですこんなの! 見ないでくださいっ!!」
「恥ずかしくなどあるものか。ほら、私によく見せてくれ」
「っ、だから……ッ」
「カナメ様!!」
他人の視線など気にしないとでもいうように戯れだす二人。それをすぐに現実に引き戻したのは、ロイドの大声だった。
「っはい……っ!?」
「カナメ様! その猫耳としっぽはどうなさったんです!? いつからそのような事に!?」
「えっ、あの、ちょ……っロイドさん!?」
ずいっと枢に顔を近づけるロイド。そのあまりの圧に背を反らしてに避けてしまうが、彼は尚も詰め寄ろうとする。慌ててリオンが間に入って引き剥がしてくれた。
「で。何をそんなに慌てているのですか、貴方は?」
「あ、あぁ。取り乱してしまってすまない。実は……」
ロイドが語ったこと。それはーー
「ユリウスさんにも猫耳としっぽが……!?」
「そうなんですっ!! 朝起きたら突然生えていて! 恥ずかしがって布団から出てきてはくれないし、警戒してるのか触らせてもくれなくてっ!! なんでこんなことになっているんでしょうか?!」
「ぅ、あ! ちょ落ち着いてください……!! 僕にもなにがなんだかッ」
「近いぞ。離れろロイド!」
またしても距離が近づきすぎていたロイドと枢を、今度はアシュレイが引き離す。
「まったく落ち着くのだロイドよ。慌てるのもわかるが、カナメに詰め寄るのは違うだろう?」
「あっ。も、申し訳ございません!」
「わかれば良い。……さて、ユリウスもこのような姿になっているとは本当か?」
「っはい! そうなのです!! 本当にかわっ、いや、心配で……っ!」
「まぁ確かに心配ではあるだろうなぁ? こんな可愛い姿、誰に見られるともしれぬものな?」
「っそうなのです!! 幸い本日は休みだというので、私の部屋から出ないよう伝えてはいるのですが、いかんせん……」
「くくくっ! お前の部屋にか。それはいい!……なぁロイド? お前はユリウスに元の姿に戻って欲しいのか?」
「へ? えっと、それはその……」
「私はしばらくカナメにはこのままでいて欲しいがな?」
言いながらアシュレイは枢に生えた猫耳をくすぐる。「ふみゃっ!?」と奇妙な声を上げる枢を満足そうな顔で見てから、再びロイドに目を向けた。
「精霊塔のほうにも確認したが、特に結界に不備はない。魔獣の気配もないし精霊も反応していなかった。何らかの魔法かもしれないが、特に悪いものでもないだろう。……それなら、お前はどうする?」
ニヤリと笑いながらロイドと視線を混じえる。その間もアシュレイの指は止まらず動き、今では枢の顎下を撫でていた。枢はというと、不満そうにアシュレイを睨みつけてはいるが、黒いしっぽがご機嫌に揺れている。
「……っ、失礼します!!」
「あぁ。ユリウスによろしくな。あと程々にするのだぞ」
聞こえているのかいないのか。ロイドはあっという間に部屋を出ていき、その足でウィリアムのもとへと向かった。
「んにゃ……、アッシュ殿下?」
「ん~? 放ったらかしにして拗ねたか?」
楽しそうにロイドの出ていった扉を見ていたアシュレイに、枢が擦り寄る。なんだかんだ恥ずかしがってはいても、そのしっぽは彼の気持ちを雄弁に伝えていた。
腕にしっかりと巻きついた黒いそれを優しく撫でると、「にゃぁん」と甘えた声が上がる。
「よし! リオン、今日の仕事は仕舞いにする!」
「……はぁ。そうなると思ってました。明日は倍の量こなして頂きますよ?」
「あぁ、それで構わん。それじゃああとは頼んだ」
にこやかに告げると、ゴロゴロと喉を鳴らしている枢を抱き上げ、アシュレイは寝室へと籠ったのだった。
それと時を同じくして、ロイドの部屋から甲高い猫の鳴き声が聞こえたとか、聞こえなかったとか。
ーー真実は二人のみが知る。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
猫の日ネタでした。
勢いに任せすぎてて、ネタを活かしきれてない気しかしない……。
猫耳しっぽが生えた枢とユリウスは、このあとばっちりしっかり可愛がられました。
完全に空気扱いのリオンやジュードたちが可哀想になってきましたね。
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