朝日兄弟の教育法

ゆるふわ詩音

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九九(前半)

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 「綺麗なお顔と黄金色の髪で一段と見目麗しい貴方様。二段な訳があるでこざいましょうか。三段腹のやつがれに包まれ、余談をお聞きになられておりますか?」

おかしい……ぼくはようちゃんと寝ていたはずなのに。

隣から聞こえるのはむずかしいことばと大人っぽい声。

「『ごたごたいうな、六段の調べの方がよっぽといい』なんて思っておられるでございましょう。早く起きませんと七段花が咲いてしまわれますよ。起きて八段錦をいたしましょう。そしたら、ぐだぐだと絨毯の上に寝転ぶのをお許しいたします。十一段崩しのお話を後でしてもよろしいでございましょうか?」

いつまでだんの話をされるかわからないから、ぼくは目を開いた。

「今日も十二分に生きましょう……おはようございます、愛しい夕馬」

目も口も三日月状にする顔で、やひこだとわかった。

「めざめさいあくやんなぁ、ゆうちょ?」

いじわるのような声とひらがなの話し方といっしょに、にょろにょろとしろくて長いものが目の前に現れてびっくりする。

「あ、ひゃあ!」

思わず変な声をだすと、ハハッとかわいた声で笑うのはたぶん、まひる。

「アッ……アアッ!」

にょろにょろのものは次にやひこのからだをなでるから、よひこはきもちよさからか、とおい目をした。

「きょうはくくをおぼえようなぁ」

そう言ってまひるの顔が目の前に現れたから、ぼくはドキッとする。

「まぁ、まずは……おまえのくちびるを、いただきま~す!」

逃げられなくて、目を閉じるしかなかった。

 「ゆーた……ああっ、何してるの!?」

ようちゃんの叫んだ圧でまひるはふっとぶ。

「ゆーたんは俺の運命の番なの! 邪魔せんといて!!」

ようちゃんはこうふんしすぎて右目がアカくなっていた。

「ごめんなぁ、ゆーたん」

ようちゃんはぼくにやわらかい笑みを向けて、やさしくキスをする。

 あたたかくて
 やさしくて
 とけそうになる

チカラがぬけるぼくをやさしく受け止めてふふふと笑うようちゃん。

「今日もご飯、美味しく出来たよ……みんなでたべようね」

優しい声で言ってぼくのほっぺたをなでてくれた。

「ヤーにぃとマーにぃの分も仕方ないから作ってあげたから。ほら行くよ」

まひるもよひこもシュンとしながら立ち上がる。

「どこまでも一緒さ、マイハニー」

ようちゃんは両目をパチンとさせて、ぼくを立たせてくれたんだ。

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