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加筆版
盈月の物怪、弄月の男に廻り合う
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悔しさと愚かすぎる勘違いへの少しの怒りで俄かに熱を帯びてくる俺。
なんであんなに冷静でいて
なんであんなに優しくしてきて
挙句の果てに勝手に嫉妬しとった癖に……なんで解らんのや。
我慢仕切れなくなった俺はガシガシと髪を掻き毟り、あ~と大声を上げた。
「俺のバートナーになれっちゅうてるやろが!!」
断りを入れぬ様に唇を強引に寒いだった。
唇、厚いし柔らかいんや……なんて査閲しながら閉眼した。
あまりの気持ち良さに此の儘でおってもええなあと堪能しとったんに、急に両手で頬をブチャッと潰されたから、若干不快になりながら開眼した。
「ほんまに俺でええんか?」
眼前に男の顔が有って、気恥ずかしくなる。
瞳の水分は増して今にも溢れそうやし、鼻も高くて下唇が厚い整った顔が美し過ぎやわ。
やはり此奴やないとアカン……困ったな。
「アンタがええんや」
震えとる男を安心させる様に穏やかに述べ、俺の手を優しく重ねる。
「よろしくお願いします」
大きく微笑んだ男の瞳からキラキラ輝く雫が零れた。
嬉し泣きなんて反則やわ……ああ、敵わんな。
唯の食事を済ませる為の筈が、こない心地良さと大切な存在を見つけることになるとは想像の範疇になかったわ。
「俺はレヴィ、よろしゅうな」
俺はニカッと牙まで見える位笑い、手を差し出した。
「小坂晴明……です」
男は急に人見知りをし始めて、恐る恐る手を握る。
お互い名前も知らんのにトントンと話をしとったなんて不思議やな。
きっと前世では一緒に旅をしていた相棒だったんちゃうか、なんてな。
今、きちんと胸に抱いて飛行しとる。
「晴明、大丈夫か?」
心配して言うたんに、男……晴明はニヤリと笑いよる。
「今んとこな……落とさんといてな?」
憎まれ口を叩く様になってもうた。
でも、めっちゃかわええわ。
「当たり前や。しっかり捕まっとれよ」
俺は抱きしめるカを強めた。
大丈夫や……堕ちる時は一緒やで。
「茶色の髪の吸血鬼なんて初めて見たわ。吸血鬼も色んな奴がおるんやなぁ」
余裕こいて俺の赤朽葉の髪を弄る晴明。
「.….元人間やからな」
「えっ!?」
心の臓が飛び出そうな程に仰天した声を上げるから、俺はクククッと笑ってやる。
「法螺に決まっとるがな」
「び、びっくりさせんなや!!」
揶揄ったらちゃんと驚くんや.……新たな一面を見つけたわ。
”俺が仕事遅いのは努力が足りんから。ご飯も寝るのも減らして全力で頑張れば……親も職場の皆も認めてくれる筈だから。俺はまだまだ出来るぞ!!”
朧げに思い出したのは遠い昔のこと。
もしかして此奴も? まさかな。
「ああ、心満意足やな」
晴明は穏やかに独り言ちて、ギュッと背中に回しとる腕の力を強めた。
過去のことなんかもうええわ。
未来は晴明と一緒に創っていくからな。
俺らの楔は固く打たれた。
盈月の物怪が弄月の男に廻り合ったのは運命やったわ。
絶対離れんし、離さんからな。
〈了〉
なんであんなに冷静でいて
なんであんなに優しくしてきて
挙句の果てに勝手に嫉妬しとった癖に……なんで解らんのや。
我慢仕切れなくなった俺はガシガシと髪を掻き毟り、あ~と大声を上げた。
「俺のバートナーになれっちゅうてるやろが!!」
断りを入れぬ様に唇を強引に寒いだった。
唇、厚いし柔らかいんや……なんて査閲しながら閉眼した。
あまりの気持ち良さに此の儘でおってもええなあと堪能しとったんに、急に両手で頬をブチャッと潰されたから、若干不快になりながら開眼した。
「ほんまに俺でええんか?」
眼前に男の顔が有って、気恥ずかしくなる。
瞳の水分は増して今にも溢れそうやし、鼻も高くて下唇が厚い整った顔が美し過ぎやわ。
やはり此奴やないとアカン……困ったな。
「アンタがええんや」
震えとる男を安心させる様に穏やかに述べ、俺の手を優しく重ねる。
「よろしくお願いします」
大きく微笑んだ男の瞳からキラキラ輝く雫が零れた。
嬉し泣きなんて反則やわ……ああ、敵わんな。
唯の食事を済ませる為の筈が、こない心地良さと大切な存在を見つけることになるとは想像の範疇になかったわ。
「俺はレヴィ、よろしゅうな」
俺はニカッと牙まで見える位笑い、手を差し出した。
「小坂晴明……です」
男は急に人見知りをし始めて、恐る恐る手を握る。
お互い名前も知らんのにトントンと話をしとったなんて不思議やな。
きっと前世では一緒に旅をしていた相棒だったんちゃうか、なんてな。
今、きちんと胸に抱いて飛行しとる。
「晴明、大丈夫か?」
心配して言うたんに、男……晴明はニヤリと笑いよる。
「今んとこな……落とさんといてな?」
憎まれ口を叩く様になってもうた。
でも、めっちゃかわええわ。
「当たり前や。しっかり捕まっとれよ」
俺は抱きしめるカを強めた。
大丈夫や……堕ちる時は一緒やで。
「茶色の髪の吸血鬼なんて初めて見たわ。吸血鬼も色んな奴がおるんやなぁ」
余裕こいて俺の赤朽葉の髪を弄る晴明。
「.….元人間やからな」
「えっ!?」
心の臓が飛び出そうな程に仰天した声を上げるから、俺はクククッと笑ってやる。
「法螺に決まっとるがな」
「び、びっくりさせんなや!!」
揶揄ったらちゃんと驚くんや.……新たな一面を見つけたわ。
”俺が仕事遅いのは努力が足りんから。ご飯も寝るのも減らして全力で頑張れば……親も職場の皆も認めてくれる筈だから。俺はまだまだ出来るぞ!!”
朧げに思い出したのは遠い昔のこと。
もしかして此奴も? まさかな。
「ああ、心満意足やな」
晴明は穏やかに独り言ちて、ギュッと背中に回しとる腕の力を強めた。
過去のことなんかもうええわ。
未来は晴明と一緒に創っていくからな。
俺らの楔は固く打たれた。
盈月の物怪が弄月の男に廻り合ったのは運命やったわ。
絶対離れんし、離さんからな。
〈了〉
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