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タキ

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スズM:尋常(じんじょう)じゃない痛み、喉が千切れるかと思うくらいの悲鳴、けたたましいほどの狂った笑い声が響く……最後にドロ ッとした喪失感(そうしつかん)が襲ってきた。
ショウ:ああ、やっとボクのものに……くふふ
0:間
スズ:うわああああああ!……はぁ、はぁ。ああ、夢か。着てんの、いつものジャージだし。めっちゃ気持ち悪い夢見たな
タキ:どうした?悪夢でも見た?
スズ:誰だ、お前……?
タキ:失礼な人。せっかく、黙って、寝かせてあげたのに、そんな目で睨まれるなんて、俺っち損しちゃう。プンッ
スズ:まさか、お前……ショウの兄貴か?ふわふわな話し方が似てるぞ
タキ:本当にアホなの?全然、違うんだけど!
スズM:読んでいた本を乱暴に閉じて、のっそりと
ベットにいる俺に、向かってきた。こいつ、背も、体つきも、大きいな。
タキ:神木多紀(かみきたき)って言ったら、さすがに、わかるよね?ふふふ
スズM:目を細めた顔をしたこいつを見て、やっとわかった。
0:間
スズM:2つの家庭の一家全員の命を奪う、殺人鬼がいた。そして、被害者の中で選ばれた1人の身体の一部を、公共の場所に置く、平成最大の凶悪犯。警察に、声明文を送ってくるんだけど、そこに書かれた“タキ”と、ニコニコマークが、頭の中で一致した。
 : 
スズ:お前か!!
タキ:気づくの遅いっす、あにさん。本当に警察ってアホ。アッハッハッハ
スズM:茶髪で、鼻筋が通った顔だから、ある意味、普通にいるイケメンの男性なのにな。
タキ:『神のみぞ知るキラー』が、目の前いるって、どういう気分?クスッ
スズ:笑う顔がスマートでイヤだな。あんな冷酷な殺し方をするやつがどこにでもいそうな青年なんて信じられないし
タキ:じゃあさ、誰も知らないあの猟奇殺人鬼を捕まえられるってわかったら?
スズM:タキは俺の前に両手を差し出した。
タキ:俺がやったこと、全部ちゃんと話すから。捕まえてよ(声を震わせる)
スズM:俺は手が動くのを確認してから、そいつの手を両手で掴むために前のめりになった。
タキ:ほんっと……単細胞
スズM:瞬時に両腕を捻られて、 背中を取られる。すぐに右肩の骨が外れる音が聞こえて、うつ伏せの状態でべッドに突き飛ばされた。
タキ:クスッ
スズ:うあ……あ 
タキ:アヒャヒャヒャヒャ。左目も失って、利き手も使えなくなってかわいそう~アヒャヒャヒャヒャ
スズM:くそっ!右肩が……めっちゃ痛い。そして今になって左に白いもやがあるのに気付いた。夢はショウにやられたもんやったんや。やっと理解したら、冷や汗が出てきた……とにかくやれることをやるしかないな。
0:間
スズ:(息切れをしながら)お前とトウパイの関係は、なんだ?
タキ:すぐ、、本人に聞くのはダメでしょ。とうとう、推理まで放棄すんの?
スズM:何事もなかったように、タキは、また、椅子に座り、くるくる回り始めた。
タキ:まぁ、俺っちのことがわからないのに、トウパイを、捕まえようとしてたんだもんね。ほんっと、ア・ホ
スズ:このや……ぐっ!
タキ:アハハ。面白いね、あにさん。お礼に、少し教えてあげるよ。トウパイって、名付けたのは俺。ドイツ語で、『無感覚』って意味。あの子たちに、殺し方も、ターゲットも、指示していたのが俺。そして
スズM:ハッとすると、いつの間にか、タキに抱きしめられていた。ダメだ……痛みに気が散って、状況把握が遅れている。
タキ:伊音スズのことを教えたのも、俺♪(耳元で囁くように)
スズM:めっちゃ気色悪い。でも、なぜか逃げたいのに逃げられない。
0:間
タキ:テレビ番組のカラオケ大会、出たあるでしょ?妹さんのために
スズM:俺は、ヒュッと、息を変に吸った……実の妹の綾菜(あやな)は、生まれつき腎臓が弱くて、とうとう、腎臓移植をしないと、生きられないところまで、きていた。俺は、溺愛していたし、その頃は、歌しか取り柄がなかったから、出た。ドナー登録の呼びかけと賞金を、治療費に充てるために。
スズM:結果は優勝。お金は入ったし、運よく、ドナーも見つかって、綾菜は手術をした。成功して、今は、旦那さんとささやかな幸せを感じながら、のんびりしている。
タキ:合うやつ見つかって、良かったね。それ、俺らのおかげだよ?(首にキスを落とす)
スズ:う、嘘だろ……?
タキ:本当だよ。俺さ、あれを観て、あにさんの歌声に、惚れちゃって。助けてあげようと思って、あの2人に声を掛けて、始めたのがトウパイ。確かターゲットは歌手志望の少女だったなぁ
スズ:俺が……トウパイを生んだのか。
タキ:あ、自分の罪を自覚した?じゃあ、その子の供養をしてあげよう。罪は償わなきゃ、いけないよね?(スズをベッドに押し倒し、首を思いっきり絞める)
スズ:うあ、あ……あ、あ!(苦しそうに)
タキ:ええ声やね、もっと、聞かせてよハハ……ねぇ、あにさん。俺には、声をちょうだい?ショウだけ、ずるいよ、ハッハッ
スズ:(もっと苦しそうに)
タキ:ああ、シャウト大好き……もうたまらん
スズ:死にたくない、死にたくないんだ
タキ:地獄は、これからだよ
スズM:急に唇を塞がれた感覚を最後にプツンと意識を失った。
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