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第四章 ラブコメって言ったら学園じゃね…

第476話 お仕事のお時間です。 (7)

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女達は己の力を持て余していた。
ある者はスポーツに身を捧げその力を解放しようとした。
またある者は格闘技にのめり込んだ。
だが彼女たちは一時の解放感と引き換えに更なる力を手にいれる。
そしてそのスポーツや格闘技の範疇ルールに収まらない、発散し切れないモノを抱え日々生活していた。
ある者は考えた、”ならば発散できる存在になればいい”。彼女は町の平和を守るヒーローになる事でその願いを叶えようとした。
ある者は考えた、”ならばこのエネルギーを他の方向に向ければいい”。彼女は一大事業家と呼ばれる存在になって行った。
だがそれは仮初、本当の意味での解放では決してなかった。

『”サインレッド、全ての行為を解禁します。”』

齎された知らせ、それは福音。
溜め込んだ欲求を少しでも発散出来ればと参加した男達との戯れ。確かにそれは楽しい催しであった。だがその中にも制約は存在した。全力で追掛けた、必死に食らい付いた。でも私の本領はこんなもんじゃない、ここであの技が使えたら、感情を爆発できたなら。
競技としての線引きルールが心と身体を縛り付ける。
今その枷が取り除かれた。
女達は狂喜した、”モウガマンシナクテイイ”のだと。

”バシュッ、ガシッ、ドサッ”(ニタ~)

また一匹、また一匹と倒される参加選手獲物たち
彼らの恐怖におびえる表情は極上のソース。
あぁ、もっとだ、もっと強い男旨い獲物を。
刹那の攻防、その中で交わされる激しいやり取り。
いいんだ、全てを開放しても、何をしても許されるんだ。
これまで培った全てをして。
喰らう、男共のプライドを、奴らの尊厳を。

”フッ、シュンッ、ガシッ、ドサッ”

瞬時に姿を認識外領域に落とし超低空タックル、そして締め技。彼には一体何が起きたのか分からなかった事だろう。もう意識を失い考える事も出来ないのだから。

残り参加者獲物、獲物、エモノ。
時刻は残すところ三十分、極上の料理はあと五名。
誰にも渡さない、あれは私の獲物モノだ~!
野獣たちはいっせいに飛び掛かった。

”バッ、ババッ、バシュ””サッ、ササッ、ダッ”

次々に繰り出される狩人達の魔手、その全てを躱す往なす。
地を這い、宙を飛び、それはさながら激しいアクション映画のワンシーンの様に。
息つく暇も許されない、いや、許さない。

”ブハッ”

堪らずの深呼吸、その一瞬の隙を見逃すケダモノはいない。
”ガシッ、ガシッ、ドサドサ”
複数の野獣鬼役により食い散らかされる子羊男性

”負けるか~!”
ゴルンゴ・ムガビはこれまでの人生を思い出す、部族の仕来たりにより闇深い谷底に落とされたことを、無数の吸血蝙蝠に襲われた時の事を。未知のケダモノと戦った事もあった、他部族との戦争をその武力で収めた事もあった。
この国に来てからは貧困に喘いだ事も、泥水を啜った事も。
その全てを跳ね返し、今俺はここにいる。
全ての感覚が研ぎ澄まされる、彼のリミッターが解放された。

”く、苦しい、極限とはここまでのモノなのか!”
マイケル・ダイアンは全てを持っていた。財産も地位も名声も、彼にとっては片手間で手に入る事であった。期待も羨望も嫉妬も、彼にとっては些事でしかなかった。
彼は退屈していた。すべてを持っているがゆえに、すべてを叶えられるがゆえに。彼は頂点、故に孤高。競い合う相手も無く、認め合う事も出来ない。なぜならすべては彼の下なのだから。
全開放の野獣女達の襲撃、それは彼が今まで経験した事のない領域。
彼は生まれて初めて、焦りと言う感情を知るのだった。

”アハハハ、何処まで、何処まで行くと言うの?もっともっともっと、壊れないおもちゃ、全力を許される男性、脳が痺れる、おかしくなりそう!”
ジョアンナ・マーシャルは狂喜した。今まで決して満たされる事のなかった思いが、己の全力を出しても許される相手が。探していた、求めていた。
下半身が疼く、脳内からドーパミンが溢れ出る。
既に獲物は三匹、あなたたちは私の最高のおもちゃパートナー
絶対逃がさない、必ず屈服させて見せる。
彼女の瞳に宿る怪しい光はより激しく燃え上がるのであった。


”あぁ、素晴らしい。君たちは最高だ。”

その声は、なぜか静かに心に届いた。

”これは私からの感謝の気持ちだ。いずれ君たちが至るであろう更なるステージ、その片鱗に触れて欲しい。”

世界から音が消えた。
時間が引き延ばされる。
男性参加選手が、女性鬼役が、全員の意識が強制的に別次元に誘われたかの様に。
思考が加速する、全てが止まって見える。
これが俗に言う”ゾーン”と言うものなのか。

”さぁ、ここからは第二ラウンドだ。この”逃走王”に付いて来れるかな?”

”ギュンギュンギュンギュンギュンギュン”

この不思議な空間の中で彼は更に加速する。すべての鬼役をすり抜け、己の存在を主張する。

”時間は有限だ、思い切り楽しもう。”



”ビーーーーーーーーッ”
『”競技終了で~す。”』
『『『うお~~~~~!!』』』

音が戻る、競技場一杯に鳴り響く大歓声。

『担架だ、担架を回せ。酸素吸入器急げ!!』
『病院と救急車両の確保、緊急医療チーム急げ!』

突然の喧騒に包まれる競技場、倒れ伏す大勢の人々。
その中ただ一人、悠然と歩を進める人物がいた。

『君たちは強かった。また戦える事を楽しみにしているよ。』

観客は歓喜した、ここに一人のヒーローが誕生した事に。
彼の名は”Saki”、逃走王フロンティア大会を制した史上最強の逃走王である。
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