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第四章 ラブコメって言ったら学園じゃね…

第460話 恋人たちの伝説

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市立桜泉学園高等部、その敷地面積は広く、在校生でも全ての施設をよく把握していないと言われている。そんな学園の奥に広がる森の片隅には太く大きな大樹が存在する。
"聖なる大樹"と呼ばれるその樹は、学園生徒の恋を叶える縁結びの樹としてこれ迄多くの生徒たちの恋を見守ってきた。そしてこれからも多くの生徒がこの樹に願いを託すのだろう、聖なる大樹はそんな彼ら彼女らをただじっと見守り続けるのだ。

うん、そのしめ縄似合ってるじゃん、なんか御神木って感じで格好良いぞ。

"・・・・・・"

いやマジだって、お前だってなんか気が引き締まった感じがするって言ってたじゃん。それにこの祠、理事長早速設置してくれたのね。こういうのって普通に売ってるんだね、俺は知らなかったんだけど次の日には業者が設置したらしいし、理事長仕事が早いよね。

"・・・・・・"

マジかよ、早速お参りに来てた子がいたって既に信仰対象じゃん、そのうち本当に神格が備わるんじゃないのか?そうしたら神様じゃん、聖樹様って呼ぼうか?恋の女神降臨って感じで。

"・・・・・"

アハハハハ、照れるな照れるな、胸張っていけって。これからも多くの生徒たちの恋を見守って行くんだからさ。


「なぁ順子や、のっぺりの奴さっきから相想樹の前で何やっとるんじゃ?」

学園の守護者、用務員朱音は先程より不審な行動をとる男子生徒を指差し、愛弟子の橘順子に問い掛けた。

「あぁ、あれですか。佐々木さん曰く樹と対話しているらしいですよ。何でも植物には意識があって、話し掛けたり音楽を聞かせたりする事で樹木の成長を促したり野菜の品質が向上したりするそうです。嘘か本当かはしりませんがなんと行っても子忘れ島の海猿の配下を手懐ける狂人ですからね、こちらの想像の斜め上を行くのはいつもの事です。」

そう言いなぜか遠い目をする愛弟子。こないだの鬼龍院家当主交代の儀式以降すっかり擦れてしまって、可哀想に。
彼女のお義父殿もこうして哀愁漂う中年男になってしまったのであろうか。
親子揃って不憫よの。

"え、マジ、聖樹っちそんな事出来るの?見たい見たい。"

向こうではのっぺりがまた何やら阿呆な事をしようとしているのが見てとれた。

「順子ちゃん、朱音さん、ちょっとこっち来てみて~。」

のっぺり阿呆が何やら呼んでいるようだ。

「順子ちゃんか朱音さん、どっちかそこに立ってくれる?そんでこっちを向いて掌を差し出してくれる?」

"では私が"、そう言い順子がのっぺりの前に立った。

「順子ちゃん、いつもの修行頑張ってるよね。こないだの儀式でも凄く凛々しくて。
そんな頑張り屋の順子ちゃんが大好きだよ、いつまでも応援してるね。」

のっぺりの突然の告白に固まる順子。するとそんな順子の前に一枚の淡く光る木の葉が舞い降り、彼女の掌の上に収まった。

「聖樹っちやるじゃん、凄い神秘的だった。これなら恋愛成就間違いなし、最高の演出じゃん!」

一人盛り上がるのっぺり。
えっ、はっ、何?聖樹の演出?どういう事?

「あ、これ?聖樹っちが恋愛成就の為に考え出した新しい試み。名付けて"幸運の木の葉"。
この樹の下で告白すると恋が叶うって話しがあったじゃない?あれって今までは聖樹の聖気に当てられてある種のトランス状態だったんだけど、それって駄目じゃん。クスリで興奮させてるのと代わらないからね。だもんで今はしめ縄で封印したんだけど聖なる大樹としては恋の手助けをしたいわけですよ、それがこいつのアイデンティティーなんでね。で、考えたのがこれです。
その木の葉、ちゃんと恋愛成就のお守りの効果もあるからもらっておいた方がいいよ。順子ちゃんラッキー♪」

こやつサラッととんでもない事を言わんかったか?相想樹が自分で考えて演出をした?恋愛成就の木の葉のお守り?
順子の掌の木の葉を見る。げ、弱いが本当に恋愛成就のお守りになっとる。しかも持続性が高い。これかなり良い品じゃぞ。

阿呆は相変わらす相想樹に向かい一人盛り上がっている。どうやら本当に樹と対話しておる様じゃ。
順子はと言えば・・・。
こちらへ右手を差し出す順子。
私は彼女に愛用の張り扇をそっと手渡す。

"ズバン"

木々の間に木霊する打撃音。
自業自得、乙女心をもてあそんではいけない。
こうして今日も悪は裁かれるのであった。(合掌)
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