上 下
465 / 525
第四章 ラブコメって言ったら学園じゃね…

第454話 その頃のっぺりは

しおりを挟む
「でね、ここがその伝説の樹って訳、凄く立派でしょ。」

「はい、まさか学園内にこんなに立派な樹木があるとは思いませんでした。」

目の前に聳え立つ一本の巨木、その大きさに思わず天を見上げる。本来なら学園のシンボルと言われても過言ではないその威容、それがなぜ森の片隅にひっそりと佇んでいるのか。
”やはりこの学園謎が多すぎるだろう。”いつぞやのゲームの舞台疑惑が妙な信憑性を帯びて来た事に戦慄を覚える男、どうも、のっぺり佐々木です。
お前は何をしているのか?いや~、ついこないだ学園の七不思議を探ってえらい目に遭ったじゃないですか?だもんで他にも地雷が埋まっていないかどうかの検証中です。放置して後で爆破でもされたら目も当てられない、何と言っても爆破しかねない主人公トラブルメーカーが当学園には在籍なさっておりますから。
お前の事だろう?違うからね、俺の場合どちらかと言えば爆破処理だから。天然さんは放置しておくとヤバいんだからね。周辺被害を最小限に抑えるのは裏方のお仕事でございます。
で、その手の学園情報に詳しそうな風見屋風紀委員長にお話しをお伺いしようとしたんですけどね、”だったら私が案内してあげるね♪”って案内係を申し出てくれちゃいましてね。いや、ありがたいんだけどさ、なんかこうグイグイ来られるってのが慣れてなくってですね~。月子さんは独特の不思議ちゃんの雰囲気があってそんなに気にはならなかったんですけど、風子さんの”お姉さんが何でもしてあげるね”って感じはどうしていいのか分からないと言いますか。これって絶対ダメ男製造機だよね。
ダメ男をさらにダメ男にしておいて”あの人は私がいないと駄目なの”って言いながら周りから同情されちゃうタイプ?
スゲ~厄介。悪い人じゃないんですよ?だから余計ね。

「それでね、この樹の下で告白してカップルになると、その恋人たちは一生幸せになるって言われているの。」

「へ~、そうなんですか。これだけ立派な樹だと何かそれだけの霊験あらたかなご利益がありそうですけどね。」

本当に何かご利益の在りそうな樹ではある。よく見ると薄っすら光っている様にも見える。
ん?薄っすら光ってる?樹って光るっけ?

「それでね、その、大地君?あの、私ね・・・❤」

顔を紅潮してモジモジし始める風子さん。その瞳は潤み、上目使いでこちらを見詰めている。

「その、大地君・・・」

その柔らかく瑞々しい唇がそっと開かれる。俺はそんな彼女から目が離せないって言うか”うりゃ!”

”ドゴンッ”

「はっ、あれ?私一体何を?あ、大地君、そうそう学園の不思議スポットの案内をしていたのよね。ごめんね、わたしちょっとボーっとしていたみたい。」

「ハハハ、大丈夫ですよ。風子さんは風紀委員の仕事の他にも受験勉強とかお忙しいんじゃないですか?きっとお疲れ気味なんですよ。ちょっと背中を失礼しますね。」

”ポンポン、ポン”

「わっ、何々?背中からスッと何かが抜ける感じがして凄いスッキリしたんですけど。大地君一体何をやったの?」

「これですか?近所の床屋さんに教わったマッサージですよ。掌を少し丸めるのがコツなんですよ。背筋がシャキッとして気持ちいいでしょ?教えてくれたおばちゃんのお墨付きですからね。」

「うん、凄くすっきりした。大地君ありがとう。」

「どういたしまして。今日はもう遅くなって来たんで残りはまた後日にしませんか?風子さんもお疲れのところ悪いですしね。」

「うん、そうね、じゃあ残りの案内はまた今度ね♪大地君も気を付けて帰るんですよ。寄り道してたら駄目だからね?」
こちらを覗き込む風子さん。うん大丈夫なようだ。

「はい、分りました。ではまた。」

俺は風子さんを見送った後、内ポケットからスマホを取り出す。

「もしもし朱音さん?ちょっと学園奥の森に来てくれる?大きな木があるところ。そう、そこ。待ってるんでよろしくね。」

通話を切り後ろの樹を見やる。その巨木は今だ薄っすらと光を帯びている。
”はぁ~”、俺はため息を吐かずにはいられなかった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた

楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。 この作品はハーメルン様でも掲載しています。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~

蒼田
青春
 人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。  目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。  しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。  事故から助けることで始まる活発少女との関係。  愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。  愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。  故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。 *本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?

ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。 それは——男子は女子より立場が弱い 学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。 拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。 「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」 協力者の鹿波だけは知っている。 大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。 勝利200%ラブコメ!? 既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!

やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり 目覚めると20歳無職だった主人公。 転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。 ”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。 これではまともな生活ができない。 ――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう! こうして彼の転生生活が幕を開けた。

元おっさんの幼馴染育成計画

みずがめ
恋愛
独身貴族のおっさんが逆行転生してしまった。結婚願望がなかったわけじゃない、むしろ強く思っていた。今度こそ人並みのささやかな夢を叶えるために彼女を作るのだ。 だけど結婚どころか彼女すらできたことのないような日陰ものの自分にそんなことができるのだろうか? 軟派なことをできる自信がない。ならば幼馴染の女の子を作ってそのままゴールインすればいい。という考えのもと始まる元おっさんの幼馴染育成計画。 ※この作品は小説家になろうにも掲載しています。 ※【挿絵あり】の話にはいただいたイラストを載せています。表紙はチャーコさんが依頼して、まるぶち銀河さんに描いていただきました。

処理中です...