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第四章 ラブコメって言ったら学園じゃね…

第445話 警護任務 (3)

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”ポンッ”
機内のシートベルト着用ランプが点灯する。

『機長よりご搭乗の皆様にご連絡いたします。当機は間もなくピスタチオ国際空港へ到着いたします。シートベルト着用の上お静かにお待ちください。
長い空の旅お疲れ様でした。ご搭乗ありがとうございました。』

さてお仕事お仕事、私は胸ポケットからサングラスを取り出し、耳にインカムを装着する。なくても遠くのブリの声も聞こえちゃうんですが。こう言うのは雰囲気の問題、先ずは格好から入らないとね。
気分は黒スーツの男達、宇宙人でも取り締まるんだろうか。

「ご主人到着しましたね、配置はどうしますか?」

「ひろし君周辺の護衛はスタジオCherryの二人に任せれば十分でしょう。一般人で彼女たちに敵う者はいませんから。緊急時の察知も優秀ですしね。
私たちはそれ以外、もっと広い周辺の警戒に当たりましょう。」

「了解です。ご主人とは初の警護任務ですね、都度指示をお願いします。」

「何言ってるのよ、要人警護ならあなたの方が先輩じゃない。あの師匠とか言うおばさんの警護に当たっていたんでしょ?」

「あぁ、あの頃は意志のない人形でしたんで、何も考えてなかったんですよね。知識はありますが咄嗟の判断となるとそんなに自信は無いです。」

「げっ、それじゃただ素人が二人来ただけじゃない。やっぱり増山のおっちゃんが来た方が良かったんじゃないのこれって。」

「あ~、増山さんでも悪くはなかったんですが、彼だと行動制限が掛かるんですよね、観光地の指定地域以外いけませんから。増山さん渋い中年ですけどイケメンではないんで、タスマニア公国の仕事って本当に人を選びますから。かと言って九条さんや本郷さんでは実力不足と言いますか経験値が違いますんで、結果ご主人しかいなかったと言う訳です。」

「だから嫌なのよタスマニア公国、この国の女性欲望に忠実過ぎ。」

俺はくらくらする頭を押さえつつ、着陸に備えるのであった。


”こちらハニ子、空港内、現在怪しい動き在りません。タスマニア側の厳重な警備が敷かれています。これよりタスマニア側の警備担当者との面会があります、戻って来てください。”
”こちらブリ、空港内の各順路、施設配置等確認終了。そちらに合流します。”

『はじめまして。高宮ひろしの警護を担当いたします佐々木ハニ子と申します。こちらは部下のブリジット・ベルッチ、どうぞよろしくお願いします。』

『はじめまして。私はタスマニア公国国家安全委員会のビルネイ・クロイッツ。今回高宮ひろし氏の警備主任を拝命している。後ろに控えるのは副主任のシルビア・バード、どうかよろしく頼む。』

こうして私たちの会談は堅い握手から始まった。

『所でクロイッツさん、警備主任とお呼びした方がよろしいでしょうか?』

ゆったりとした革張りのソファー、なかなかの高級品と見た。国の要人も立ち寄る国際空港なだけあってこうした設備も充実しているのだろう。

『いやいや、クロイッツで構わないよ、あなたは賓客側の人間だからね。それで何かな?』

『そうですか、ではクロイッツさんと。それで一つお聞きしたい事があるのですが、”ひろし君拉致計画”とは何でしょうか?』

『ん?一体何の事を言ってるのかよく分からないんだが?』

『あぁ、この後始まる国際テロに見せかけたひろし君拉致の計画の事です。警備主任が現場責任者なんでしょ?それで黒幕が大物議員のアルテイシア・クロイッツ。まぁ随分と大掛かりな計画だったんですね。
我々をここにおびき寄せたのも不確定分子を隔離する為ですか?』

『何を馬鹿な事を、君たちは我が国を愚弄するつもりかね?これ以上は賓客とは言え容赦はせんぞ。』

突然立ち上がりこちらに拳銃を突きつけるビルネイ・クロイッツ。突然の事態に慌てる副警備主任。

『まぁ、そんなに大きな声を出さないでくださいよ、興奮しすぎると身体に悪いですよ?ここはひとまずその睡眠薬入りのコーヒーでも飲んでリラックスしてください。
どのカップでもいいですよ?全部入ってるんですよね、即効性のある睡眠薬が。』

『なっ!?』

驚きの声を上げる副警備主任、対して鬼の様な形相のビルネイ・クロイッツ。
俺はテーブルのコーヒーカップに手をやりそれに口を付ける。
うん、無味無臭の薬剤なのね、普通に美味しいわ。
その光景に驚きの顔をする二人。

『あなた方は高宮ひろしをなんだと思っているのですか?彼は我が国の秘宝、”究極の王子様”と呼ばれる男性ですよ。それほどの男性をこの国に派遣する事の意味をちゃんとご理解いただけているのですか?
我が国はそれだけの誠意を見せているというのにこの仕打ち、貴国は我が大和国との戦争をお望みか?』
俺は二人に軽い威圧を掛ける。それだけで二人はガタガタと震えだし、今にも倒れそうになる。

『実行犯は三十七名、警備の中にもいるんですか。偽装逃走用車両と時限装置。やり過ぎでしょうが、馬鹿なんですか。それでC滑走路のプライベートジェットが本命と。
ブフォ、アルテイシアクロイッツって阿呆なんですか?なんで現場に黒幕が来ちゃうかな、待ちきれなかったんですか?
あぁ、そろそろひろし君の共同記者会見が始まりますね。邪魔しちゃ悪いですし、悪い子にはお休みいただきましょう。』

”パチンッ”
室内に響くフィンガースナップの音。

”バタンッ”
倒れ伏す警備主任。

『副警備主任のシルビア・バードさんでしたか。現在この空港にいる全ての容疑者を気絶させました。位置はそちらのブリジットが案内してくれます。警備員数名を連れて捕縛してください。しばらく目覚めませんからご安心を。下手に病院に運んだりしないでくださいね?キチンと拘留するように。国がどうなってもいいというのなら止めはしませんが。』(ニッコリ)

『は、はい。すぐに捕縛に向かいます。』

『よろしい。ではブリジット、そちらを頼みます。私は後の警戒に当たりますので。』

『了解しました。では参りましょうか、バード副警備主任殿?』

『よろしくお願いします、ブリジットさん。』

勢い良く部屋を出て行く二人。
”ズズズズズズズッ”

あ~、コーヒーが旨い。
しょっぱなからの面倒事にため息をきそうになるも、そんな事はどうでもいいとコーヒータイム(睡眠薬入り)を楽しむハニ子なのでした。
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