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第四章 ラブコメって言ったら学園じゃね…

第436話 学園七不思議 (5)

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「何でそいつが動いてるんですか!魂入ってませんでしたよね!えっ、どう言う事、しかも滅茶苦茶スムーズに動いてるじゃないですか。入りたてですよね、ありえないんですけど!」

「ちょっと待て、なんだそいつの霊力は、さっきまでの比じゃないぞ。一国どころか全世界に喧嘩売れるレベルだぞ、しかもその聖なる気は一体。神の如き力を持つ神とは異なるモノ、そんなものこの世には存在しない筈だぞ!」

ブリジットと海姫さんが捲し立てる。マミーと増山のおっちゃんは未だ硬直状態。ん?あれって気を失ってる?ついにシャットダウンしたって感じ?
葛の葉は頭に狐耳が出てるし。尻尾尻尾、九本全部出ちゃってるから、毛がブワッて広がってるから!
えっ、ノエルも頭に何か付いてるんだけど?しかも尻尾?スカートの後ろに二本、ピンと突き立ってるんですけど!?
朱音さんは口をポカーンと開けて停止してるし。
これってなんてカオス?
う~ん、取り敢えずみんなが回復するのを待とうか、何度も説明するの面倒だし。
ハニワ、一度戻ってくれる?そんで周りの設備取り込んじゃって欲しいんだけど。全部エネルギーに変えちゃっていいから。

「いや、旦那さん。このままの格好でも行けるで。これかなり高性能やったからな、下手な神器より全然力あるねん。お陰でワイの機能もフル解放やで。ここらの設備ならおやつ感覚で取り込めるわ。」

そう言いてのひらかざすハニワ。すると周囲の様々な機材設備が次々と発光し始める。

”ポワンッ”
部屋全体が光に包まれた時、それらはシャボン玉の様に弾け飛び淡い光と共に消えて行った。残されたのは、その光景をただ呆然と眺める探索メンバーだけであった。

”カチャン”

差し出されたティーカップからは爽やかなミントの香りが漂ってくる。
どこからともなく準備されたテーブルとイス。
何もないガランとした地下室で、我々探索隊は一時の休憩を取っているのであった。
はぁ~、たまにはハーブティーもいいもんだ、心が落ち着くよね。
あ、クッキーもあるんだ。相変わらず美味しいよ、ノエルいつもありがとう。
一礼をし、黙って後方へ下がるノエル。今は頭部の耳も二本の尻尾も見当たらない。
彼女は先ほどの事を無かった事にしたらしい。
うん、この件は触れないでおこう、その方がお互いにとって良いと判断しました。
そんな彼女の隣では葛の葉がすまし顔で控えている。私はただの護衛でございますって顔が何かムカつく。一緒に混ざろうぜ~、嫌ですか、勘弁してくれと、そうですか。何かジト目で見て来るし、僕ちん寂しいぞ。
ブリジットと海姫さんは”さあ、全部話せ!”とばかりに目を爛々とさせているし。君たち好奇心に素直過ぎ、少しは落ち着きなさい。

「じゃあ息子、説明をお願い出来るかい?」

気絶からの無事な生還を果たしたマイマザーと増山のおっちゃん。どうもハニ子の聖なる気に当てられてしまったようです。ハニ子もあの時は調整がよく分かっていなかった様で、今は隣で出されたクッキーを食べています。
朱音さんはどうしたのか?椅子に座って置物の様になってますがなにか?

そんじゃ先ずはこいつの自己紹介からね。ハニ子、ハニワに戻って。

「旦那さん、了解や。」

発光と共に白いハニワの姿になる”ハニワ”。俺はソレを皆が見えるようにテーブルの上に置いた。

「Bonjour。ワイは人工精霊の”ハニワ”っちゅうもんや。普段は旦那さんのブレスレットをしておます。旦那さんの傍は静かで落ち着くねん。あんじょうよろしゅう頼んます。」

”ズズズズズッ”
話し終えると紅茶を飲むハニワ、とってもシュール。

「自己紹介ありがとうよ、それでその人工精霊ってのは何なんだい?」

お、流石マイマザー、ハニワ姿にも耐えたか。俺だったらこっちの方がインパクトがデカいんだけどね。

「せやね、簡単に言えば人の想像する妄想の産物やね。ほれ、物語やアニメに出て来るやろ、勇者を導く精霊様。実際はそないなもんおらへんからだったら作っちゃおうって頑張った結果やね。詳しゅうはそこのブリ嬢ちゃんの方が知っとるで。」

「あ、はい。人工精霊とはユーロッパ王国の魔術師協会と教会組織が中心に研究開発を行った夢の産物ですね。ですがその試みはことごとく失敗、精霊石の生成までは上手く言ったんですが、どうしても起動しなかった様です。その内精霊石の有用性の方がクローズアップされ、計画はいかに純度の高い精霊石を作り出すかにシフトして行った様ですよ。
現在も各国の主要な教会ではこれら精霊石が広く使われていると聞いています。
で、そこの人工精霊は初期に作られた低性能の精霊石としてこの国の教会に送られたそうです。教会も教皇一派の集団失踪事件以降揺れてますから。異端審問会も解散したようですしね。
各国教会の繋ぎ止めに必死なんでしょうね。その精霊石も倉庫に長年放置されていた品だったそうですから。」

ブリジットの話しに驚きを隠せないマイマザー。そんな事をやってたのかってやってたらしいですよ、実際。

「それでそんな低性能の精霊石が何で精霊になって動いてるんだい。」

「う~ん、それはワイもよう分からへんねん。ワイこの国に来てから教会の縁起ものみたいな扱いで飾られてたんねん。大して力も出せんよってにな。せやけどある日”お前たちは自由だ”って声が聞こえたねん。それから少しづづ意識ゆうんが整理されて来てな、ある時動けるようになったっちゅう訳や。」

あ、何人か”あれか”って呟いてる。ノエルが優しい目でこちらを見て来るんだけど、なんで?

「旦那さんと出会ったんは偶然やね。姿を消して街中をぶらぶらしてたら急に周りの心の声が入って来んようになってな、辺りを見回した時におったのが旦那さんやってん。ワイの周囲の心が聞こえるんは基本機能やから止めるのにも神経いるねん、ホンマ疲れるんやで。でも旦那さんの周りならそんなん一切気にせんでええから最高やねん。」

あ~、最初に会った時そんな事言ってたな~。だから付いて来たみたいな。

「それでさっきのあれは何なんだい?そこで寝ていたクローンの素体になって動いていたけど。」

「あぁ、あれもワイの機能やね。ワイは初期の人工精霊計画の作品やから色んな機能がてんこ盛りやねん。お陰で精霊石としては最低品質やったんやけどな。その機能の一つに物を取り込んで再現するゆうんがあんねん。しかも性能アップのおまけ付きやで、せやからワイは張り扇やら小太刀やらになれんねんな。旦那さんが面白がって色んなもんをくれよるんやけどたまにごっついもんくれよるねん。そのたびに機能が解放されてな。それにさっきの姉ちゃんやろ、全開放状態やでホンマ。
おばちゃんは夜の儀式の時にもおったやろ?どやった、旦那さんの変身は?いまいちやったらもう少し工夫せなあかんな~。」

「それじゃ、あの素体を取り込んで己がものにしたって所かしら。」

あ、マミーしゃべり方がおかしくなって来ている。そろそろ一杯一杯って所かな?

「ちゃうねん、ワイは言うなれば自動運転モードやねん。あれの所有権は旦那さんやで、旦那さんのゆう事が最優先やからね。」

あ~、あれはやってみないと分からないかな?ハニワ、ハニ子バージョン。

「ほいな。」

再び光り、ハニ子に変わるハニワ。

「「さて、これで分かってもらえるかな?」」

シンクロする俺とハニ子。立ち上がり簡単な組手をする。見事な演武に一同目が点に。

「「要するにハニ子も俺がコントロールする事が出来るって事です、ハイ。」」

「しかもそれぞれ独立思考も可能。」

「私はのっぺりでもありハニ子でもあるんです。」(ニッコリ)

「「いえ~い。」」

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周囲は再び沈黙に染まるのでした。
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