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第四章 ラブコメって言ったら学園じゃね…

第394話 手打ち (2)

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「は、はい。本日はご面会いただき誠にありがとうございます。
私はユーロッパ王国呪術師協会一級呪術師クリスティーヌ・カサンドラと申します。以前訪れた際は友好使節団と謳いながら大変無礼な働き、誠に申し訳ありませんでした。」
突然頭を下げ謝罪の言葉を述べ始める女性、その動きに驚きを現しつつ事態を類推し行動に移る残りの二人。

『失礼、見鬼殿のご子息殿。私はユーロッパ王国で国王の地位にあるジュゼッペ・ウル・ユーロピアと申す者。以後お見知りおき願いたい。背後に控えるこれは我がユーロッパ王国王宮筆頭執事ベンジャミンと言う。重ねて見知りおき頂けると助かる。』

二人の男性は揃って礼をしながら自己紹介をした。って言うか早いよ。聞き取りが一杯一杯な上に知らない単語が多いよ。取り敢えずおっさんがジュゼッペ、爺さんがベンジャミンね。マミーこれであってる?顔引き攣ってるけど大丈夫?

『して本日の訪問理由であるが、我が国はとある超常なる存在によって完全に敗北せしめられてしまった。余はこの超常なるものにこれまでの非礼を詫び、和睦を結ばねばならない。
見鬼殿、ご子息殿、どうかこの通り。彼の超常なる者へこの思いを届けてはくださらぬであろうか。』

うん、無理だわ。正直何言ってるのか分からない。マイマザーはさっきから、”私は一杯一杯です”って顔を引き攣らせてるし。ノエルは・・・スゲー笑顔、あれ超楽しんでる。
クリスティーヌさん、クリスさんでいいかな?悪いんだけど、通訳お願いして貰っていい?流石にこれだけ早口かつ聞いた事のない単語じゃ話しが分からないんだよね。

「は、はい。畏まりました。」

じゃあ、一つ一つ整理して行こうか。
まず何に対して謝ってるのかって事だよね。これを間違えちゃったら形だけの謝罪で終わっちゃうからね。まったく意味をなさないから。
其方のベンジャミンさんは反応から見ると大和言葉も堪能な様ですが、よろしければ俺の言葉を其方のジュゼッペさんにお伝え願えますか?

「あ、あのこちら国王陛下でしてその、ジュゼッペさんと言うのは。」

クリスさんはもう状況は分かってるんでしょ?だったら話しを進める。それで新しい所から行きますか。最近と言えばベッキンガム宮殿崩壊の件ですよね。
あれって何で起きたと思います?

『あぁ、あの件であるか。あれは確か魔法士協会会長エマニュエル・ビゼットが彼の存在を封印したと報告し、その祝勝会を行っていた時の出来事であったな。』

あん時そんな事をしてたんかいこいつら。俺はくらくらする頭を振りつつ話しを続けた。

あの時の俺は全く其方の国に関係なく仕事で訪れたんですよ、それを空港からの拉致監禁、何とか首都に戻れば主犯のおばさんは上機嫌で宴会って、誰だって怒りますからね。しかもそちらの国にははっきり言いましたよね、”お前らはこの俺に喧嘩を売った”って。その上でさらに閉じ込めようとしたら報復されても文句は言えませんよ?

あ、それとあのおばさんとその組織。俺は犯罪集団って認識なんですが、かなり非道な行いをやってたようですよ。
ノエル~、ブリの奴呼んできて~。多分またネットで遊んでるから。それとこないだのUSBも持ってくるようにって。

ノエルが二階に上がりブリジットを連れて来た。その顔を見た三人のお客様は皆目を見開いて驚いていた。

えっとその顔からすると知っているのかな?犯罪組織の構成員ブリジット・ベルッチです。彼女さっき言った犯罪組織の裏情報を目茶苦茶知ってたんですよね。それでこのUSBがその証拠とクラウド上に保存されてるデータのコピーですね。これって一部ですから、何なら後で彼女から聞いて下さい。
ブリ、お前後でこの人たちに協力するように。何なら助っ人つけるから安心していいぞ。

「了解です、ご主人。ブリちゃんって呼んでね?」

それでベッキンガム宮殿崩壊の理由は分かりましたか?やり返したらさらに倍返しを食らった。それだけですから。

それで次、そこのクリスさんたちがこの家に訪問して来た時の話しね。
まぁ、彼女らは酷かったからね。リーダーの彼女は何とか全体をまとめようとしてたけど、他の連中はなに?本当に何しに来たんだか分からなかったから。
いうに事欠いて痛い目を見たくなかったら言う事を聞けだよ?
お宅の国ってどうなってるの?友好使節団?和平交渉?辞書で調べ直した方がいいんじゃない?

最後が本題、最初の事件第四王女襲撃事件ね。これ自体はどこぞの馬鹿貴族が起こした犯罪行為。それについては本人に直接言えばいい事だからまだいいかな。
軍隊が動いちゃった事については管理者責任だよね、しっかり謝罪してください。
んで、今回あなた方王宮が何をやっちゃったのか。
そこのベンジャミンさんには大使館で言ったはずなんだけどね。うまく伝わってなかったのかな。

”ブオッ”

突然溢れる気配、それはかつて経験した恐怖の記憶。身体が心が魂が。ガタガタと震えるそれを止める事が出来ない。今目の前にいるモノ、それこそが頂点、すでに自分たちは彼の超常と対峙していたのだと。

お前らは馬鹿を利用してこの国と俺の同級生を侮辱したんだよ。
知ってて放置したんだろ?不自然な警護、一個小隊の侵入。いくら馬鹿が権力があるからってそこまで勝手が出来る訳無いだろうが。部隊員の中に密命を受けた者が何人もいたよ。第四王女の身を危険から守れってな。潜入捜査ご苦労様って奴だ。そうそう、スナイパーの一団なんてのもいたな、他国の少年の尊い犠牲は王女の精神的成長には必要ですってか。で、その責任は大和国に擦り付けと、ずいぶんやってくれたじゃないか。

そう、彼らは何もわかっていなかったのだ、自分たちの罪を。ただ超常を怒らせた、だからそれを鎮めよう。我々は国家の為の礎になろう。
悲壮な決意のもとこの場に望んだ三人は、実は自分たちがすでに罪人だったことに全く気が付いてはいなかったのだ。

”ふわっ”

気配が消えた。今まであった身も凍るような恐怖が嘘のようになくなり、身体が羽のように軽くなっている。

ま、今まで机上の上でしか政治を行ってこなかったお偉いさんには分かれって方が難しいのかもしれないけどな。お互い立場が違うと考え方や感じ方に齟齬が生まれるのは当然だ。だが、その事に対する責任と言うものは分かって貰えたかな?

明日の朝、もう一度ここへ来い。お前らに見せたいものがある。
マミー、明日俺学校休むわ。緊急の仕事が入ったって事で連絡よろしく~。

俺はそう言い残すと自室へと戻って行った。


翌日の早朝、彼らは再び我が家の前に現れた。
それじゃ行こうか。
俺は彼らを促し学園高等部正門前まで移動した。

警備主任、突然こんなこと頼んですみませんでした。ちょっとこちらの生徒保護者に娘さんの普段の様子を見せたかったもんですから。
おなじみの警備室。窓の外には学園生徒が登校してくる様子が見える。
警備室の皆さんはすでに全員顔見知り。俺は顔パス状態で待機する。

現れる複数の車、警護らしきサングラスの女性が辺りを警戒する。しばらくしてやって来た三台の車。中央の高級車から現れたのは美しい女子生徒。

「姫様、夜遅くまでネット掲示板に噛り付くのはどうかと思うのですが。」
「だって仕方が無いじゃない、ひろし様の最新情報だよ?この機会を逃したら情報弱者になっちゃうよ?」
「そんな事を仰られなくても、いつでもひろし様には会えるではないですか。」
「分かってないな~。それはそれ、これはこれなんだから。」

二人の女子生徒は楽し気に話をしながら正門の中へと消えて行った。

警備主任ありがとうございました。それじゃ俺たちも校舎に向かいますね。
皆さんは俺の周りにいてくださいね。

薄れる気配。
もう誰も彼らの事を気に留めてはいない。

移動します。今日は一日第四王女の様子を見ていただきましょう。

目の前の彼女はとても楽しげに笑っていた。
友人と馬鹿な話をし、憧れのひろし君に話し掛け、皆と一緒に食事をする。それはまさに青春そのものであった。

昼休み、中庭の芝生に腰掛けひろし君たちと楽し気に話をする第四王女。
その様子を遠目から眺める国王一行。
俺はおもむろに彼らに問い掛けた。

どうでしたか?あなた方の大事な娘さんのご様子は。とても生き生きとしている様には見えませんでしたか?

『あぁ、あんなに元気よく笑いはしゃいでいるキャロラインの姿を見るのは久しぶりだよ。それこそ子供の頃以来じゃないだろうか。あの頃のあの子はよく笑う元気な娘だった。私は何時からあの子の笑顔を忘れてしまったのだろうな。』

そうですか。ではよくよく心に刻んでおいてください。あれがあなた方が彼女から永遠に奪おうとしていた姿だと言う事を。
あなた方の犯した罪の重さを。

もうこれ以上は言わなくても分かりますね。
大和国政府にはそちらから正式に謝罪する事。第四王女に関してはきちんとした見守りをお願いします。
最近色々な事があって彼女とゆっくり話しをする暇もなかったのではないですか?
この機会に、お会いになられてはいかがでしょうか。

俺はそう告げ、彼らの前を後にした。
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