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第四章 ラブコメって言ったら学園じゃね…

第387話 ここってどこ?

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空港から車で四時間、途中休憩を挟んだものの飛行機の移動が長かったためか身体にはかなりの負担となっています。
世界を股に掛ける方々っていつもこんな生活なのね、俺には無理じゃねと思うのっぺり佐々木君なのであります。

『ねぇブリジットさん、凄い森の中って感じなんだけど、今回の目的地っていったいどう言った所なの?』
車はどんどん田舎道から森の中の林道と言った場所を通過、こんな所で仕事っていったいどういうショーなんですかね。コンセプトが想像できないんですけど、プロの世界ってマジ分からん。

『あ、もう着きますよ。あちらが師匠のお住まいになります。』

急に森が開け、目の前には中世ヨーロッパにありそうなお城が湖を見下ろすように聳え立っていました。

「うわ、すげ~。お住まいって、大崎先生こんな家持ってたん?世界的なモデルってめちゃくちゃセレブやん。」
思わず漏れる感嘆の声、こんなん前世のカレンダーでしか見た事ありません。実際目にすると驚き半端ないな~。

”ガタン、ガッガッガッガッガッガッガッガッ、ドンッ”

おぉ~、跳ね橋ですよ。敵の侵入を防ぐ絶対防御、こんなん実際動く所を見れるだなんて感動ですって。メンテナンスにどれだけお金が掛かるんだか、持ってる人間はやる事が違うわ~。

『はい、到着しましたよ。今お荷物をお出ししますね。』

うわ~、マジで城だわ。玄関前にメイドさん方が立ってるし。何人雇ってるんだあの人、まぁこれだけ広ければ掃除も大変だから分るけどさ、人件費馬鹿にならんでしょうが。しかも世界中飛び回ってるから帰って来るのなんておそらく年に何回か?
完全に趣味だね、金持ちこえ~。
俺はブリジットさんに連れられ城の中へと移動するのでした。

”コンコンコン”
『ブリジットです、只今戻りました。師匠の言いつけ通り、佐々木大地さんをお連れいたしました。』
『あぁ、ごくろうさん。入っておくれ。』

”ガチャ”

開かれる荘厳な扉、室内には品の良い数々の装飾品が並び部屋の主の趣味の良さを現している。
目の前の飴色の執務机に向かい何か書きもの仕事をしている女性。
彼女はこちらの入室を確認するとゆっくりと顔を上げ向き直った。

『やぁ、初めまして。私はユーロッパ王国魔法士協会会長エマニュエル・ビゼット、君の事は星見で知る事が出来たよ。そちらの国では我が国の者が大変迷惑を掛けたようだね、実に申し訳ない。
ようこそユーロッパ王国へ、我々は君を歓迎しよう。』
その人はゆっくり立ち上がると笑顔で手を差し出してきた。

えっと誰?
状況が全く分からないんですけど?
悪いブリジットさん、教えて欲しいんだけど、あそこでめちゃくちゃ怪しい笑みを浮かべてるおばさんはいったい誰なん?
っていうかここ何処よ?
大崎先生は?今日ってファッションショーの打ち合わせじゃないの?
えっ?知らない?師匠に言われて空港に迎えに行っただけ?
チョッと確認したいから電話していい?

俺はスマホを取り出すとマイマミーに連絡を取るのでした。

「あ、もしもしお母様、もしかしなくてもそっち夜中だよね、こんな時間にごめんなさい。ちょっと訳分かんない事になってて。そう、空港に着いたらお迎えって人がいてさ、ついてきたらお城みたいなところでうさん臭いおばさん紹介されてるんだけど。今回のって大崎先生の所のモデルの仕事だよね?そうだよね、合ってるよね。
で、向こうから連絡とか入ってる?こっちの携帯まだ連絡無いから今まで気が付かなかったんだけど。
えっ、繋がらなかったの?変だな~。
仕事のスケジュール的には大丈夫なの?ショーは四日後だから早めに呼んで観光案内するつもりだったと、うわ~、大崎先生には悪い事しちゃったわ。
そんじゃホテルの場所とかは、封筒に入ってる住所に行けばいいのね、了解。
上手い事やってショーには間に合うようにするから。それじゃまた。」

あ、おばさんの事忘れてた。なんか顔を引き攣らせてるんだけど、やっぱり外人さんは短気だね~。

『大変申し訳ありません。どうやら私は間違ってこちらに来てしまったようです。東洋人の顔はよく似ていると申しますから、今頃こちらに来るはずであった御方も空港で難儀しているやもしれません。
私の事はご心配なく、タクシーを手配していただければ一人で目的のホテルまで向かいますので。お騒がせして申し訳ございませんでした。』
俺は深々と頭を下げ、この場を後にするのでした。

『っておいおいちょっと待ちたまえ、君を呼んだのは私たちで間違いない。君が我が国に喧嘩を売った東洋の怪異だと言う事は分かっているのだよ。ついに我が国に上陸したと言うのでブリジットを派遣した、見事に彼女の術中に嵌ってくれたみたいで一安心だったよ。君が人型をとって行動していると言う事は報告から分かっていたからね、騒ぎを起こすまでは大人しくしているだろうとの見解はまさに的を得ていた訳だ。
君にはここで大人しく生活して欲しいのだがね、この多重結界を自力で抜けれると言うのなら別だがね。』

なにやら自信満々に笑みを深めるおばさん、”ニチャッ“って擬音が付きそうないやらしい笑みだなおい。
って言うか分かんねえんだよ、こちとら外国人なんだよ、ユーロッパ王国言語はまだ勉強中なの、さっきまでの会話も一杯一杯な上によく分かってなかったからね。
えっとね、ここに来たのは間違いなの。
『ここに来たのは何かの間違いです。』ユァアンダースタン?
『ホテルに向かうのでタクシーを呼んでください。』OK?
もうこの国面倒くさい、とっとと仕事やって帰りたいわ本当。

目の前では俺の事を小ばかにする表情で両手を広げ首を振るおばさん。
『君はまだそんな事を言っているのかね?この城の一室を用意したのはこちら側の誠意なのだよ。この執務室は私のお気に入りの場所だったんだがね、君の為に提供しようと言うのだ、感謝して欲しいものだね。すでに術式は完成し切っている。君がこの部屋に入った時点で君はもう詰んでいるのだよ。お疲れ様、東洋の怪異殿。』

何かやり切ったと言う満足げな顔をして部屋を出て行くおばさん。
部屋のローテーブルにはいつの間にかメイドさんが食事の用意をしていてくれた。

はぁ~、なんかよく分かんないけど疲れた。
ブリジットさん、悪いんだけど明日ホテルまで送ってもらえる?今日はもう疲れちゃったから食事して寝ます。
あのおばさん人の話聞いてくれないんだもん、もう嫌だ。
俺は仕方が無くこの城で一泊する事にしたのでした。
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