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第四章 ラブコメって言ったら学園じゃね…

第382話 蠢く小物 (2)

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「本当にふざけるなって話だよな、なにが天下の名門私立桜泉学園高等部だよ、あいつら外部進学生の事歯牙にも掛けやしやがらねえ。
知ってるか?ここの教師どもが俺たちの事をなんて言ってるのか、生贄だよ生贄。
優秀な内部進学生徒様を引き立てるための生贄、それが俺たち外部進学生の役割なんだとよ。」
”プハ~ッ“
噴き出された紫煙が室内に広がる。

「それになんだ、スカウトを掛けて来たのはお前らだって言うのに放置って。釣った魚には餌をやらないって奴か?鳥籠の鳥にはこの対応で十分でしょうって言う事か?
そう言った学園と俺たち外部進学生の間を取り持つのがマネジメント部の役割じゃないのか?
それを言うに事欠いて他にも担当している方がおりますのでってそいつらみんな内部進学生徒じゃないか、思いっきり学園に慣れてる連中の何をサポートしてるってんだよ。外部協力企業への派遣業務?俺に回ってきた話なんざ酒の席の御酌だぞ!?
ふざけるな、このまま男性保護観察局に訴えてやろうかってんだ。何が大学進学に影響が出ますよだ、そんなもん知った事か!
それに女子連中の残念なものを見る様な顔、俺たちが一体何をしたって言うんだ、無視したり蔑ろにしたことがあったか?言葉使いや態度が気にいらない?
お前ら何様だって言うんだ!」

”そうだそうだ!その通り、やってられるか!”
共鳴し怒りを増幅する男子生徒たち。

うん、これは雪ちゃんには見せられないわ。
この学園やっぱ終わってるわ。そりゃ授業さぼってこんな所でタバコも吸うよな~。
やってられないって言うの。
特にマネジメント部、お前らふざけるな!?
一度心底分からせる必要があるか?北川さんと相談案件かなこれは。

「そんでこいつどうするさ。」
さっきから怒りの声を上げていたリーダー格の男子生徒が仲間内に問い掛ける。

「あぁ、煙吸ってる所を見られちまったからな~。ただで返す訳にもいかないんだよな~、面倒くせえ。」
彼らの視線の先にいる者、それは一人の女子生徒であった。

「なぁ、どうする?ここには俺たちだけしかいないんだしよ、ちょっといい目を見させれば言う事聞くんじゃね?」

「あん?俺は嫌だぜ、こんな事で結婚相手ですなんて言われたら目も当てられねえっての。そんなリスク、パスパス。」

「バーカ、誰がまともに相手するって言ってんだよ、遊びだよ遊び、飽きたらポイ捨て、当たり前だろ?」

「なるほど、それもそうか。こんなの他の連中に言っても相手にされないだろうしな。」
徐々に雰囲気の悪くなる室内。男どもの目に怪しい光が宿り始めるってはいそこまで~。
まったく思春期真っ盛りのお猿さんたちはこれだから。お前らも他所に行ったらモテモテなんだから学園の中でくすぶってないで他所に目を向けなさいね。それでちゃんといいお相手見つけて結婚する、産めや増やせやは国の方針なんだからそれこそ引く手数多でしょうが。こんな所で人生棒に振ってどうする、男性更生院に送られちゃうよ?もう搾精マシーン扱いになるらしいよ?君たちには一度資料映像を見せてあげよう。

”な、なんだお前は”とか”いつからそこに”とか言ってるけどそんな声は無視無視。
俺は一度スマホの録画ボタンを止めて、男性保護観察局のホームページにアクセス。ログイン画面に国民番号を入力し男性専用ページへGO。
高校生以上しか閲覧できない専用ページ、男性更生院の実態と業務と言う資料映像を再生する。

”う、噓だろ、こんなの許されるはずが無いだろうが、男性保護法はどうしたんだよ!”
”ヒーッ、やばいやばいやばい、本当勘弁して、俺たちが悪かった、反省してます。”
”ヴェ、気持ち悪い。マジかよ、こんなん人権なんかないじゃん。”

え~、これは全てマジです。嘘だと思うのなら男性保護観察局のホームページへご自分の国民番号を入力し男性専用ページにアクセスしてみてください。
それでも信じられない場合は直接男性保護観察局にお問い合わせください。
因みにこれって割とソフトな内容らしいですよ?俺気になったんで入学前に男性保護観察局に直接行って後学の為って事で教えて貰ってきましたから。
う~ん、あれは衝撃的だったな~。資料映像見た時酪農家の人達って偉いな~って変な感想持ちましたから。

所で皆さんこんな所で何なさっているんです?早く授業に戻られた方がいいですよ?
よろしければ其方の物はこちらで処分しておきましょう。全部お出しくださいね?
後匂いが服に付いてますね、こちら消臭スプレーです。気休めくらいにはなるでしょう。後ほど本格的に専用スプレーを使われる事をお勧めいたします。

それでこちらの部屋の鍵はどなたが?はいこちらですね、戸締りは私《わたくし》が行っておきましょう。もうここは利用されない方がよろしいかと、お互いの為ですものね。詳しい相談事、不平不満がございましたら副生徒会長の石川洋一君をお尋ねください。のっぺり顔の紹介と言えば無下にはしないでしょうから。
ほら、皆さん行った行った。

何か狐につままれたような顔をして各教室へと戻って行く男子生徒たち。
えっ?派手なアクションで締めなくていいのかって?嫌だよ面倒くさい。そう言うのはひろし君みたいな主人公や石川洋一君のドラマに出るような”ヒーロー“がやるもんなんだって。
俺みたいな裏方は口先三寸でサクッと終了、うん、これに限るね。

さてと、災難だったね上田さん。
俺は先ほどから部屋の隅で震えている上田さんに声を掛けた。

まぁ、アイツらを許せとは言わないけどさ、ああいう燻ってる連中もいるって事は覚えておいて欲しいかな。世の中きれい事だけじゃないんだよ、女子が燻ぶってる様に男子もまた色々抱えてるんだよね。
はい、立てる?

俺は優しく彼女に手を差し出す。
彼女は俺の手を取りゆっくりと立ち上がった。

どうしたのさっきから顔を伏せてるけど。やっぱり怖かったかな?ごめんね、もっと早くに助けに来れなくって。今下の階に兵頭がいるから一緒に教室に戻ろう?それとも保健室の方がいいかな、俺そう言うの疎くってよく分からないんだよね、ごめんね。

上田さんは何か顔を赤くして震えている様だ、今になって恐怖が回って来たのかもしれない。

上田さん、大丈夫?
俺は彼女の顔を覗き込むように姿勢を低くした。

「あ~んもう、のっぺりのくせに何なのよ~!!」

突然の咆哮、上田さんは叫び声を上げると俺を突き飛ばし一人走り去ってしまった。

床に尻餅を付き暫し呆然とする俺。はっ、しまった逃げられた!
俺は急ぎ窓の外から下の兵頭に声を掛けた。

「上田さんが逃げ出した!そっち行ったから後を頼む!!」
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