上 下
355 / 525
第四章 ラブコメって言ったら学園じゃね…

第351話 木村君、部活見学に行かない?

しおりを挟む
”キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン”

私立桜泉学園高等部での生活も今日で三日目。
初日二日目とかなり慌ただしい生活であったが、一般の授業も始まり漸くの平穏が訪れたと胸を撫で下ろす木村英雄十五歳であった。

「はい、今日はここまで。宿題は次回までにやって来る様に。」
授業終了を告げる担当教諭、四時限目の終了を告げるチャイムにクラス中の人間が移動を始める。
なぜならひろし君が学食に行くから。
そう、この学園には学食がある。そのシステムは中等部と変わらず、ひろし君はその実績(大混乱の原因と言う意味で)から特別にサロンの使用が許可されており、そちらで昼食を摂っているのだ。
この一年Aクラスに現在残っているのは木村英雄と高木康太、それに混雑を嫌う女子生徒が数名。残りの男子生徒は中等部出身者である為この事態には慣れっこなのだろう、それぞれの居場所へと散っていった。

「やぁ、木村君。この学園の生活にはもう慣れたかい。」
声を掛けたのは高木康太であった。
彼はいわゆる内部進学組、これまでひろし君の偉業をつぶさに見て来た被害者だ。そんな彼だからこそ外部進学生徒の木村に気を割いたのであろう。

「あぁ、高木か。この感じは小学校以来だからな、正直まだ慣れたとは言い難い。
改めて思うがひろし君は異常だな。彼と周りの女性は良いかもしれないが、周囲の男は堪ったものではないんじゃないのか?
それにあの留学生、危険な匂いがプンプンする。俺もモデルの修行で周りの気配を感じ取れるようになっているから分るが、彼女の周りには常に護衛が付いているだろう。しかも普通の生徒に悟らせない形で。」

カバンからお昼のお弁当を取り出し広げる木村。
彼のお昼は英雄君ママの愛情弁当だ。学食でいいと言ったら泣かれてしまったのだから仕方がない。
木村君の前の席を彼の席へとくっ付ける高木君。椅子に座ると机にはいつの間にかお弁当と飲み物が並べられていた。

「ありがとう志乃。君も一緒に食べるだろう?」

「はい、私はお隣で控えさせていただきます。」

声の方を向けば、艶のある短めの黒髪をヘアピンで留めた美しい女生徒が、自らの弁当を広げている所であった。

「確か如月さんだったよな。彼女更に腕を上げたんじゃないか?今なんかほとんど手品だぞ、いつの間に現れたんだその弁当。」

木村君は高木君のお弁当を指さす。
高木君はお茶を一口含み諦念を込めた声色で答えた。

「もう慣れた。」

常に気が付けば傍にいるのが如月志乃と言う存在。高木君の中では彼女は既に自分の一部となっているのだろう。

「それにしても木村君のお弁当は豪華だね。」

木村君のお弁当はそれはそれはボリュウミーなものであった。十代中ごろの食べ盛りな男の子だからこそのモノであろう。

「なんだ高木、一つ摘まんでみるか?」

すっとお弁当を差し出す木村君に”いやいや悪いよ”と遠慮する高木君。
遠慮をするなよと笑顔で進める木村君に苦笑いの高木君。
では私《わたくし》が一つと箸を伸ばす。
ウンウンこの卵焼きお砂糖が丁度良くってうまうまですな。ついでにこの唐揚げもよろしいでしょうか?

「「「!?」」」

ん?どうしたの三人とも驚いた顔をしちゃって?お弁当食べないとお昼休み終わっちゃうよ?

「「「いやいやいや、お前何時からそこにいたんだよ!?」」」

えっ?四時限目が終わってからずっと?横でナレーション入れてるのになかなか突っ込み入れてくれないんだもん。思わずちょっかい出しちゃったよ。(てへぺろ)
あ、俺も弁当持って来てたんだよね、お仲間に入れさせていただきま~す。

”誰か気が付いた?”
”いや全く、気配すら感じなかった。気配が無いなら無いで違和感を感じるのにそれすらなかったぞ!?”
”私もまったく。佐々木様は本当に人間なんでしょうか?”

う~ん、なんか酷い言われ様。でもこれには訳があるのよ?おふざけでやってる訳じゃないんだからね。(ぷんすか)
俺は本日の一連の流れを説明した。

その一
登校する。⇒正門前で安定の職質。⇒定位置での待機。(持参のマグボトルでお茶をする)⇒警備主任登場からの本日の総評。(捕縛までの態度は良くないが、報告・連絡・相談は徹底していた点を評価。)⇒解放

その二
校内を歩く。⇒女子生徒に不審な目で見られる。⇒教職員に連行される。⇒担任の高橋先生に引き渡される。(なぜか小言付きで)

その三
校内を歩く。⇒風紀委員に職質される。⇒風紀委員室に連行される。⇒風紀委委員長の風見屋先輩に引き渡され解放される。(なぜか”不憫な”と言われ頭を撫でられる。)

その四
校内を歩く。⇒生徒会役員に捕まる。⇒生徒会室に連れて行かれる。⇒石川副生徒会長に引き渡される。⇒洋一君大爆笑。

こんな感じ?
もう面倒になっちゃってね、気配薄くして気にならないようにしています。多分授業中に正面から入って来ても誰も気にしないんじゃない?見えないんじゃなくって気にならないから。まさに路傍の石、モブの俺にピッタリ。

口をあんぐり開けてポカンとする三人。どうした?俺何か変な事言った?

”なぁ高木、アイツのどこがモブなんだ?俺にはさっぱり理解できないんだが。”
”流石親友、常に斜め上を突っ走ってるよ、もう意味が分からないよ。”
”私聞いた事があります。確かそんな妖怪がいました。”

なんかまた三人でぶつくさ言ってるし。そんで今日来たのは部活見学行かないってお誘いに来たんだけど?
今日の放課後暇?

「あぁ、俺は特に問題ないぞ。こっちが終わったらGクラスに顔を出そう。お前がこっちに来る方が問題が多そうだ。」

「ごめん親友、僕はパス。ちょっと調べ物があるんだ。今度の休みにでも家に遊びに来てよ。お母さんも会いたがってるし。」

えっ、マジ、康太ママのお誘いって手作りスイーツが頂けちゃうとか?行く行く、今度の休みね、絶対だからね。
ニコニコ笑顔の俺と若干引き気味の康太君。
それじゃ、他の人が帰って来る前に退散するね。木村君また放課後。バイバイ~。
俺は弁当を仕舞、Aクラスの教室を後にした。

「なぁ高木、今佐々木が帰って行ったの気が付いたか?」

「ううん、バイバイまで言われたのに気が付いたらいなくなってたって感じだった。」

「私《わたくし》、一瞬今まで誰と話をしていたのか分からなくなりました。」

「「「アイツ絶対人間じゃない。」」」

本人のいない所で人外認定をされるのっぺり佐々木君なのでありました。(涙)
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~

蒼田
青春
 人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。  目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。  しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。  事故から助けることで始まる活発少女との関係。  愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。  愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。  故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。 *本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

貞操観念逆転世界におけるニートの日常

猫丸
恋愛
男女比1:100。 女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。 夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。 ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。 しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく…… 『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』 『ないでしょw』 『ないと思うけど……え、マジ?』 これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。 貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

貞操観念が逆転した世界に転生した俺が全部活の共有マネージャーになるようです

卯ノ花
恋愛
少子化により男女比が変わって貞操概念が逆転した世界で俺「佐川幸太郎」は通っている高校、東昴女子高等学校で部活共有のマネージャーをする話

貞操逆転の世界で、俺は理想の青春を歩む。

やまいし
ファンタジー
気が付くと、男性の数が著しく少ない歪な世界へ転生してしまう。 彼は持ち前の容姿と才能を使って、やりたいことをやっていく。 彼は何を志し、どんなことを成していくのか。 これはそんな彼――鳴瀬隼人(なるせはやと)の青春サクセスストーリー……withハーレム。

貞操逆転世界の男教師

やまいし
ファンタジー
貞操逆転世界に転生した男が世界初の男性教師として働く話。

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

処理中です...