男女比世界は大変らしい。（ただしイケメンに限る）

第四章 ラブコメって言ったら学園じゃね…

第349話 見せて貰おうか、お前たちの想いとやらを

ゾロゾロと集まって来る一年Gクラスの女子生徒たち。
”陸上部専用グラウンドに集合”、”文句があるなら実力を示せ”。この二つだけで全員トレーニングウエアに着替えてくるあたり流石はスポーツ推薦脳筋、話しが早くて助かる。
遅れてとことこやって来たのはマネジメント部の吉川、もう事情聴取とやらは終わったのかな？ん？まだ終わってないと、用事があると言って抜けて来たと。それはそれはご苦労様です。
ではここからは打ち合わせ通りに。

今回の事態は事前に予測できた事、あらかじめ対策は打たせて頂いております。陸上部には春休み中に訪れて打ち合わせ済み。あの時は陸上部を懐柔するためにSaki様モードで来たんだよな～。正門で一切止められなかったけど。
こっちからわざわざ訪問理由を告げて来客者記録残したけどさ、本当にこの学園ってイケメン至上主義なのね。
そんで陸上部で今回の事態の説明とメイクoffの顔を披露、その上で協力を仰ぎました。
いや～、あの時は驚かれたな～。”私たちのSaki様を返して”って言われた時にはどうしたもんかと思ったもん。ですのでこののっぺり、陸上部での呼び名は”中の人”でございます。（グスン）

「さて、クラスメートの諸君、よく集まってくれた。皆の言わんとしている事は一つ、”イケメン寄越せ”、この認識で間違いはないかな？」
大きく頷くクラスメート女子たち。全部で三十人ほどだろうか、全員ではない所を見ると何人かは特に今の境遇に興味はない様だ。”どうせすぐに上に行く”、その自信の表れだろう。

「ではまずイケメンをご用意しよう。木村君来てくれ！」

俺の掛け声と共に陸上部の部室棟からやって来るイケメン。すらりと背の高いそれでいてしっかりと発達した筋肉に覆われた身体は見る者を魅了する。
そこに集まったクラスメート女子からは一様に黄色い悲鳴が上がっていた。

「彼は今年の外部進学生徒木村英雄君、ご覧の通りのイケメンだ。
君たちにはこれからあるゲームをしてもらう。そのゲームで俺に勝てたら彼をGクラスの生徒にすることを約束しよう。
そんな事を一学生が言っても信用は出来ないだろうから口約束ではない証拠をお見せする。」

そこでマネジメント部吉川の登場、彼女は一通の書類をクラスメート女子の目に付く様に高く掲げた。

「これは理事会からの承認書類だ。内容はこれから行われる勝負によりもたらされる結果の承認を許可するという旨のものだ。つまり君たちが勝てば、少なくとも次の体育祭までは木村君は君たちのクラスメートと言う事になる。
では私はどうなるのか、そのような事態を引き起こせば当然誰かが責任を負う事になる。そう、私だ。
つまり少なくとも君たちはこののっぺり顔の男からは解放される事になるのだ。
君たちに負担を強いる以上私も進退を懸けようというのだ、公平な勝負だろう？」

静まり返る女子たち、そう、これはただのお遊びなんかじゃない、真剣勝負そのものなのだ。

「ゲームのルールを説明しよう。これから行うのは”チェイサー”、文字通り追いかけっこだ。この二百メートルトラックを周回する形で行う。逃げ子は私だ、先に逃げる私の背中に誰かがタッチすれば君たちの勝利だ。
私の勝利条件は三十分逃げ回る事。また仮に周回遅れになった場合その参加者は失格となるし走行の邪魔をした場合も同様だ、その辺はプライドの問題だな。」

俺は悠然とグラウンドのトラックへ向かう。

「開始時のハンディキャップ距離は十メートル。これは君たちにいらぬ負担を敷いた事に対する詫びと受け取って貰おう。決して君たちを馬鹿にしている訳ではないと言う事を明言しておく。」

徐々に上がるボルテージ、あぁ、久々のこの緊張。第二回逃走王決定戦本選以来満たされなかった想いが身体の中を駆け巡る。

「準備は良いかな？では早速始めよう。陸上部の先輩方、合図を頼む。」

木村君、悪い、俺スゲ～楽しいわ。

”位置について”

さぁ、全国から集まった精鋭たち、魅せてくれよ、お前たちの全力を。

”用意”

いざ、勝負！

”ビ――――――――――ッ！”