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第四章 ラブコメって言ったら学園じゃね…

第343話 用務員さんと駄弁る (2)

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痛い・・・なぜ朱音さんが張り扇聖剣を・・・。

「これか?こないだヨウツーベで見つけた温泉王子の切り抜き動画で、王子が相方にこれをかましてるのを見て作ってみた。人相手に使うのは初めてだが、なかなか痛快な使い心地だな、これは。」

目の前でぶんぶん楽しそうに張り扇を振り回す朱音さん。
その温泉王子に張り扇かまされてる相方って、たぶん俺ですよ。中央都テレビの深夜番組”いい旅、湯め気分♨”の切り抜き動画ですね、それ。俺ってのっぺり佐々木って芸名でタレント活動しているんで、その番組でもメインMCやってましたから。

目を見開いて驚く朱音さん。箪笥の上のタブレットで動画を検索、再びこちらを見て驚愕の表情を浮かべる。

「全く気が付かなんだ、服装が変わっているだけなのに別人にしか見えないって一種の異能だぞそれは。それにさっきの気配操作、佐々木君はどこぞの異能集団の術師か何かかな?」

驚きで警戒の色を強める朱音さん。
でも異能集団か、そんなのがあるんだこの世界。そう言えば古都の動物使いの集団、あれも一種の異能集団なのかな?ペットの事式神とか言ってるくらいだし。(笑)

ま、俺はそう言うのはよく分からないんですけどね。ウチの事務所の増山さんなら神社とかお寺に詳しそうだし、そう言うのも知ってるのかな?

ん?誰か来た?

「お、これは久しぶりの御客人の様だぞ。まぁ、今更佐々木君の事を警戒してみても仕方が無いからその件は置いておくとしよう。今は客人だ、無事にここまで辿り着けるかな?」

ニマニマしながら何か楽しげな顔をする朱音さん。
無事に辿り着くって森にブービートラップでも仕掛けてあるの?止めなよあぶないから。

「いやいやそんな物騒な事はしとらんて、ただ人除けの結界をな。上手い事この場所を感知せんと辿り着けない様になっている。」

窓から外を見れば森の中を右往左往する女子生徒の姿があった。あれって順子ちゃんじゃん。お~い、順子ちゃ~ん。さっきからなに遊んでるの?

「えっ、この声は佐々木君?ってあった、ようやく守護者の御屋敷を見つける事が出来たってなんで佐々木君がそこにいるの!?」

えっ、お茶してただけだけど?

膝を付いて項垂れる順子ちゃん。”これまでの私の努力っていったい”とかぶつぶつ言ってるけど一体何の事?用務員さんになんぞ御用でもあったん?

「これ佐々木君、何で声掛けちゃうかな、せっかく面白くなって来てたのに認識されちゃったじゃないか。あの調子なら後二時間はうろちょろしていたんだぞ、そこに颯爽と現れて神秘的な演出をする私の楽しみが!」

うゎ、朱音さん性格悪。それにこんなところすぐ来れるじゃん。通学道のすぐ脇じゃん。

「「そんなのお前だけだ!」」

二人揃ってのいわれのない叱責、理不尽。


「かしこみかしこみおん声掛けいたしまする。ここに馳せ参じたりますは性は橘、名は順子と申す者にございます。以後御見知りおきを、おん願いたてまつります。」

朱音さん、順子ちゃんなにやってるの?
えっと歌舞伎の口上?舞台前挨拶みたいな感じ?

「あのな、佐々木君はよく分かってない様だから詳しくは言わんが、この場所と言うか私だな、それなりに敬われている存在なのだぞ。前にも言っただろ、この土地を守り生徒を守っているって。」

覚えてる覚えてる、だから住み込みの用務員さんなんでしょ?知ってる知ってる。

「な、仮にも守護者に対して用務員などと、申し訳ございませんでした。この者の失言、平にご容赦くださいます様お願い申し上げます。」

うわ~、順子ちゃん恐縮しちゃってるよ。えっと俺も朱音様って言った方がいい?

「よいよい、我は用務員の朱音さんじゃ、その理解で間違ってはおらんで気にするな。」

「有りがたき幸せにございまする。」

ねぇ、さっきから二人ともしゃべり方が仰々しいと言うかばば臭いよ?
普通にしゃべったら?

「「あ~、雰囲気ぶち壊しだ~!」」
”スパーン”

本日二度目の張り扇聖剣、超理不尽。
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