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第四章 ラブコメって言ったら学園じゃね…
第336話 世は常に事もなし
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早朝の学園校門前、行き交うは新しい制服に身を包んだ乙女たち。
そこに数台の高級車が現れた。
車から降りたのはやはり同じ学園の制服に身を包んだ女子生徒たち。彼女たちはある一台の車の前に整列し、その時を待つ。
ゆっくりと開かれた後部座席からは、豪奢な髪を靡かせた一人の女子生徒が降りてきた。
「ここが此れから通う学舎、桜泉学園ですか。校舎前まで行けないなんて不便ですね。
まぁ、良いでしょう。貴女たち、行きますよ。」
「「「はい、お嬢様」」」
彼女たちは連れ立って学園高等部校舎へと向かって行った。
数台の黒塗りの車が現れた。
中からはサングラスに黒スーツ姿のお姉様方。耳にはインカムを装着し、しきりに周囲を警戒している。
そこに到着した三台の車、お姉様方の警戒が更に強くなる。真ん中の高級車から降りるメイド服姿の女性、彼女は移動すると後部座席の扉を丁寧に開けた。
"スッ"
校門前に降り立つは美しい女性。その容貌は一国の王女様と言っても差し支えのないものであった。
「姫様、参りましょう。」
「だからその姫様は止めようよ~、もっと気軽にキャロルって呼んでって言ってるじゃん。それに貴女制服はどうしたのよ、何で学生がメイド服?おかしいでしょうよ。」
「いえ、メイド服はメイドの戦闘服、何もおかしな点はございません。それより早く参りましょう。
他の生徒たちのご迷惑になりますので。」
「もう、分かったわよ。でも貴女もちゃんと制服着なさいよね、同じ学生なんですから。」
「お心のままに、姫様。」
"前はキャロって呼んでくれたのに~!"
女性たちは騒がしく校舎の方に去って行った。
何か凄い、この学園の女子生徒って皆あんな感じなの?俺怖いんですけど。
警備員さん、そこの所どうなんです?
「黙れ不審者、入学式と言うこんな大事な日に迷惑掛けやがって。今警察を呼んだからな、もう逃げられないぞ、大人しくしていろ!」
いや、ですから警備主任さんに確認を取って下さいってさっきから言ってるじゃないですか。
この際マネジメント部の吉川さんでも生徒会副会長の石川洋一君でも風紀委員の風見屋鈴子さんでも誰でも良いですから、お願いしますよ。
「馬鹿野郎、皆さんお忙しい方ばかりじゃないか、しかも風紀委員長の風見屋鈴子さんなんて今日はますます多忙なんだぞ。黙ってそこで座っていろ!」
へいへい、大人しくしてますよ。
どうも、入学初日から登校拒否を食らう憐れな男、のっぺり佐々木です。
もう二回目だと怒りも沸かない。すでに諦めの境地、スマホは取り上げられてるので外部に連絡すら出来ない。
「あ、早朝からご苦労様です。こちらが先ほどお話しした不審者です。はい、当校の制服まで用意した計画的な犯行かと。そこまで周到に準備しているのに何故変装くらいしないのか理解に苦しみますが、詳しくはそちらにおまかせしても?
はい、ではよろしくお願いします。」
「おい、お迎えが来たぞ。大人しくするんだぞ、いくら男だからって暴れれば罪は重くなるんだからな?」
うゎ~い、本当に警察来ちゃったよ、しかも連行されちゃうよ。去らば私立桜泉学園高等部。
僕は行くよ、いざ、取り調べ室へ。
(side : 男性犯罪課捜査員)
今朝は朝から騒がしかった。始まりは一本の通報から、私立の名門、桜泉学園高等部の警備から男性不審者を捕らえたとの通報が入ったからだ。
あの学園は全国でもなの知れた名門校、その為数年に何度かこういった男性犯罪者の被害を受ける事がある。
しかも今回は学園の制服まで用意して侵入を試みる悪質なもの、流石にこれを見逃す訳には行かない。
それにこれは極秘情報だが、今年の外部入学生徒にはユーロッパ王国王女殿下がおられるとか、些細な事件とないがしろにする事は出来ないだろう。
「先輩、容疑者を連行して参りました。」
「おう、三号取り調べ室へ連れて行ってくれ。すぐに向かう。」
「了解です。おい、お前、こっちだついてこい。」
「へいへい、お役人様、何なりと。」
とぼとぼ後をついて行く男性。何とも奇妙な男だ。
男性犯罪者は警察に捕まった場合概ね二種類のタイプに別れる。ひどく怯えるか、喚き散らすか。
でもこいつはそのどちらでもなく、変に落ち着いた飄々とした態度を取っていた。
「まずはお前の事を聞かせて貰おうか。」
「うゎ~、ついに取り調べか~。もうどうとでもなれって感じがして来たよな本当に。
それで学園の外部進学生徒だって言っても誰も信じてくれないんですよね~。
他にある程度分かり易い肩書きだと、俺タレントやってます。のっぺり佐々木って名前で何回かテレビにも出てますんで、ネットで調べて貰えれば分かりますよ。」
「おい、どうだった?」
「はい、確かにこちらのっぺり佐々木さんですね。どこかで見たことあると思ったら"いい旅、湯め気分"ののっぺり佐々木じゃない、あんた何やってんのよ?もしかして突撃取材とか、ヨウツーベの"やってみた"企画?
あんた体張りすぎだっての、今時お笑い芸人でもそこまでしないわよ!」
容疑者の肩をバンバン叩いて大笑いする後輩捜査員。
「大体侵入するんならなんでSaki様やらないのよ、あれなら取り押さえなんて受けなかったんじゃないの?」
「え~、でもそれって何か違うって言うか、俺の本質はやっぱりのっぺりって言うか?
メイクだよりってのも何か違うじゃないですか~。」
「まぁ、あんたの事だから変な犯罪を起こすとは思えないけど、諦めて素直に取り調べを受けなさいね。」
「へいへい、もう好きにしてください。」
何かよく分からないが容疑者が素直に取り調べに応じるならそれに越した事はない。
早速色々聞いて行こう。
"ピリリリリッ"
それは容疑者のスマートホンの着信音だった。
「え~っと応答しても?」
「通話自体は認められている。マイク機能での通話になるが、それで良ければ出ても構わない。」
「それではお言葉に甘えて。」
容疑者は押収品のスマホの通話ボタンに手をやった。
"ピッ"
「佐々木君、今どこにいるんですか、もう入学式始まっちゃいますよ!」
それは焦った声をあげる女性のものだった。
「あ、吉川さんおはようございます。今ですか、警察署で取り調べを受けているところですが?」
「はぁー?佐々木君一体何しちゃってんですか?ふざけてるんですか?」
「えっ、何してるも普通に通学しようとしただけですが?そちらの警備員に取り押さえられて連行されて今ここって感じですが何か問題でも?
これって訴えたら俺勝てますよね、刑事さん?」
「どうだろうか?自分はまだ状況を把握しきってないから何とも言えないが。」
「えっ、本当に警察署にいるんですか?正門で不審者が出たって話があったけど、それって佐々木君の事だったんですか!?」
「あ~、まぁ、どうでもいいですけど桜泉学園高等部としての訴え取り下げてくれません?俺帰るに帰れないんで。」
「すみませんでした~。今迎えに行きますんで何卒ご容赦くださいませ~。」
「あ~、電話切れちゃった。で、この後どうします?俺カツ丼食べたいな~。」
「そうだな、私もそんな気分だ。おい、カツ丼三人前注文してこい。お前も食べるだろう?」
「えっ、いいんですか?すぐ行ってきます。領収証は桜泉学園高等部様でよろしいですか?」
「ハハハハ、分かってるじゃないか。すぐ行ってこい。」
「了解です。」
私たちは私立桜泉学園マネジメント部の吉川さんが来るまで、ダラダラ世間話に花を咲かせるのであった。
そこに数台の高級車が現れた。
車から降りたのはやはり同じ学園の制服に身を包んだ女子生徒たち。彼女たちはある一台の車の前に整列し、その時を待つ。
ゆっくりと開かれた後部座席からは、豪奢な髪を靡かせた一人の女子生徒が降りてきた。
「ここが此れから通う学舎、桜泉学園ですか。校舎前まで行けないなんて不便ですね。
まぁ、良いでしょう。貴女たち、行きますよ。」
「「「はい、お嬢様」」」
彼女たちは連れ立って学園高等部校舎へと向かって行った。
数台の黒塗りの車が現れた。
中からはサングラスに黒スーツ姿のお姉様方。耳にはインカムを装着し、しきりに周囲を警戒している。
そこに到着した三台の車、お姉様方の警戒が更に強くなる。真ん中の高級車から降りるメイド服姿の女性、彼女は移動すると後部座席の扉を丁寧に開けた。
"スッ"
校門前に降り立つは美しい女性。その容貌は一国の王女様と言っても差し支えのないものであった。
「姫様、参りましょう。」
「だからその姫様は止めようよ~、もっと気軽にキャロルって呼んでって言ってるじゃん。それに貴女制服はどうしたのよ、何で学生がメイド服?おかしいでしょうよ。」
「いえ、メイド服はメイドの戦闘服、何もおかしな点はございません。それより早く参りましょう。
他の生徒たちのご迷惑になりますので。」
「もう、分かったわよ。でも貴女もちゃんと制服着なさいよね、同じ学生なんですから。」
「お心のままに、姫様。」
"前はキャロって呼んでくれたのに~!"
女性たちは騒がしく校舎の方に去って行った。
何か凄い、この学園の女子生徒って皆あんな感じなの?俺怖いんですけど。
警備員さん、そこの所どうなんです?
「黙れ不審者、入学式と言うこんな大事な日に迷惑掛けやがって。今警察を呼んだからな、もう逃げられないぞ、大人しくしていろ!」
いや、ですから警備主任さんに確認を取って下さいってさっきから言ってるじゃないですか。
この際マネジメント部の吉川さんでも生徒会副会長の石川洋一君でも風紀委員の風見屋鈴子さんでも誰でも良いですから、お願いしますよ。
「馬鹿野郎、皆さんお忙しい方ばかりじゃないか、しかも風紀委員長の風見屋鈴子さんなんて今日はますます多忙なんだぞ。黙ってそこで座っていろ!」
へいへい、大人しくしてますよ。
どうも、入学初日から登校拒否を食らう憐れな男、のっぺり佐々木です。
もう二回目だと怒りも沸かない。すでに諦めの境地、スマホは取り上げられてるので外部に連絡すら出来ない。
「あ、早朝からご苦労様です。こちらが先ほどお話しした不審者です。はい、当校の制服まで用意した計画的な犯行かと。そこまで周到に準備しているのに何故変装くらいしないのか理解に苦しみますが、詳しくはそちらにおまかせしても?
はい、ではよろしくお願いします。」
「おい、お迎えが来たぞ。大人しくするんだぞ、いくら男だからって暴れれば罪は重くなるんだからな?」
うゎ~い、本当に警察来ちゃったよ、しかも連行されちゃうよ。去らば私立桜泉学園高等部。
僕は行くよ、いざ、取り調べ室へ。
(side : 男性犯罪課捜査員)
今朝は朝から騒がしかった。始まりは一本の通報から、私立の名門、桜泉学園高等部の警備から男性不審者を捕らえたとの通報が入ったからだ。
あの学園は全国でもなの知れた名門校、その為数年に何度かこういった男性犯罪者の被害を受ける事がある。
しかも今回は学園の制服まで用意して侵入を試みる悪質なもの、流石にこれを見逃す訳には行かない。
それにこれは極秘情報だが、今年の外部入学生徒にはユーロッパ王国王女殿下がおられるとか、些細な事件とないがしろにする事は出来ないだろう。
「先輩、容疑者を連行して参りました。」
「おう、三号取り調べ室へ連れて行ってくれ。すぐに向かう。」
「了解です。おい、お前、こっちだついてこい。」
「へいへい、お役人様、何なりと。」
とぼとぼ後をついて行く男性。何とも奇妙な男だ。
男性犯罪者は警察に捕まった場合概ね二種類のタイプに別れる。ひどく怯えるか、喚き散らすか。
でもこいつはそのどちらでもなく、変に落ち着いた飄々とした態度を取っていた。
「まずはお前の事を聞かせて貰おうか。」
「うゎ~、ついに取り調べか~。もうどうとでもなれって感じがして来たよな本当に。
それで学園の外部進学生徒だって言っても誰も信じてくれないんですよね~。
他にある程度分かり易い肩書きだと、俺タレントやってます。のっぺり佐々木って名前で何回かテレビにも出てますんで、ネットで調べて貰えれば分かりますよ。」
「おい、どうだった?」
「はい、確かにこちらのっぺり佐々木さんですね。どこかで見たことあると思ったら"いい旅、湯め気分"ののっぺり佐々木じゃない、あんた何やってんのよ?もしかして突撃取材とか、ヨウツーベの"やってみた"企画?
あんた体張りすぎだっての、今時お笑い芸人でもそこまでしないわよ!」
容疑者の肩をバンバン叩いて大笑いする後輩捜査員。
「大体侵入するんならなんでSaki様やらないのよ、あれなら取り押さえなんて受けなかったんじゃないの?」
「え~、でもそれって何か違うって言うか、俺の本質はやっぱりのっぺりって言うか?
メイクだよりってのも何か違うじゃないですか~。」
「まぁ、あんたの事だから変な犯罪を起こすとは思えないけど、諦めて素直に取り調べを受けなさいね。」
「へいへい、もう好きにしてください。」
何かよく分からないが容疑者が素直に取り調べに応じるならそれに越した事はない。
早速色々聞いて行こう。
"ピリリリリッ"
それは容疑者のスマートホンの着信音だった。
「え~っと応答しても?」
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「それではお言葉に甘えて。」
容疑者は押収品のスマホの通話ボタンに手をやった。
"ピッ"
「佐々木君、今どこにいるんですか、もう入学式始まっちゃいますよ!」
それは焦った声をあげる女性のものだった。
「あ、吉川さんおはようございます。今ですか、警察署で取り調べを受けているところですが?」
「はぁー?佐々木君一体何しちゃってんですか?ふざけてるんですか?」
「えっ、何してるも普通に通学しようとしただけですが?そちらの警備員に取り押さえられて連行されて今ここって感じですが何か問題でも?
これって訴えたら俺勝てますよね、刑事さん?」
「どうだろうか?自分はまだ状況を把握しきってないから何とも言えないが。」
「えっ、本当に警察署にいるんですか?正門で不審者が出たって話があったけど、それって佐々木君の事だったんですか!?」
「あ~、まぁ、どうでもいいですけど桜泉学園高等部としての訴え取り下げてくれません?俺帰るに帰れないんで。」
「すみませんでした~。今迎えに行きますんで何卒ご容赦くださいませ~。」
「あ~、電話切れちゃった。で、この後どうします?俺カツ丼食べたいな~。」
「そうだな、私もそんな気分だ。おい、カツ丼三人前注文してこい。お前も食べるだろう?」
「えっ、いいんですか?すぐ行ってきます。領収証は桜泉学園高等部様でよろしいですか?」
「ハハハハ、分かってるじゃないか。すぐ行ってこい。」
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