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第二章 中二病には罹りません ー中学校ー

第311話 それぞれの悲喜こもごも

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「私もうダメだよ、あなたの傍にいる資格なんてないんだよ。あなたにはあなたの道がある、こんな駄目な私よりもっと相応しい人が・・・。」
二人の男女、女は悲しみに涙を浮かべ男から顔を背ける。

「何言ってるんだよ、お前より相応しい相手って何だよ。お前がどれだけ頑張って来たのかだなんて俺が一番知ってるっての。別に一生の別れなんかじゃない、会おうと思えばいつだって会えるんだから。」
両肩をしっかり掴み、相手の目を見て話し掛ける男。心からの言葉にゆっくりと顔を上げる女。
見詰め合う二人、やがて二人はしっかりと抱きしめ合う。

ナニコレ?昭和歌謡のワンシーン?世代としても前世の俺の更に親の世代、男が港町から貨物船で旅立っちゃうって言うよく分からんシチュエーションの時代の奴。
なんで飛行機じゃなくて貨物船?密航?怪しいお仕事なの?
あの頃の歌って謎がいっぱいだったよな~。
少なくとも決して学び舎で見ていいもんじゃないこの光景。
しかもここは朝の中学校、これっていったい何なのさ。

おはよう木村君。今朝は色んな意味で訳分かんないけど、一体全体何が起きてるの?

「あぁ佐々木、おはよう。こないだから私立高校の合格発表があっただろ、本命に行けなかった奴や彼氏と同じ学校に入れなかった奴が騒いでるみたいだぞ。
みんな頑張っていたみたいだが、こればかりはどうしようもないからな。」

それでか~、永遠の別れじゃないって言っても三年間楽しいイチャイチャスクールライフが送れないってんなら、絶望的になる女子生徒野獣が出ても可笑しくないか~。

「それなんだがな、お前の所から新しいDVDが発売されてたぞ。桜木春子最新作、男を掌で転がすシリーズ第三弾、”離れた男を繋ぎとめる方法”。
月子姉さんが大絶賛していた、流石は桜木師匠だって言っていたな。さっきお前が見たって奴もそのDVDで紹介していたテクニックの一つだと思うぞ。」

駄菓子屋のおばちゃんまた出してたのねDVD。スタジオS&Bとしてはありがたいんですが、後から聞いて驚かされることが多くてですね~。
ウチもだいぶ規模が大きくなって来たから、俺が把握してない事業も増えて来てるんですよね~。マイマザーは面白そうって思ったらすぐにGOサイン出すし。
俺もなにがなんでも把握したいってたちじゃないから、みんなが楽しければそれでいいんじゃないって方だし。

「まぁ、俺が言うのもなんだがお前の所の会社、本当に行き当たりばったりだな。北川さんをはじめとした主要スタッフがしっかりしてるからいいが、彼女たちが抜けたら潰れるんじゃないか?そこの所大丈夫なのか?」

うん、木村君の言う通りなんだよね。うちって人に支えられてる事務所だから。それでもみんなやりたいことがあって入って来ているみたいだし、上手くやってるからいいんじゃない?
利益より楽しさ重視の会社だしね。月子さんを路頭に迷わせるような真似はしないよ。

「それは心配していないが、俺も一企業人を目指す身として勉強になると思ってな。そんなやり方もあるんだっていう稀有な例としてだが。」

そうだね、一般的でないのは誰の目から見ても明らかだし、代表がウチのマミーだしね。

お、西山君にみっちゃんくみちゃんおはよう。西山君たちは無事合格できたみたいだね、おめでとう。

「佐々木君おはよう。所で佐々木君に貰ったお守り、これ一体何?これを貰ってからもの凄く勉強がはかどったんだけど。頭がすっきりして物覚えも良くなった感じ、二人も同じ事言ってた。」
「「うん、凄かった。試験を受けた時も全然緊張しなかったもん。凄くリラックス出来て、全力を出せたって感じだった。」」

流石は道子さんの所のお守り、ご利益半端ないな~。
それ湯島天神にお勤めの巫女さんから貰ったお守りだよ、でも合格したのは三人の努力の賜物。お守りくれた巫女さんが言ってたけど、努力が結果に表れやすい様にはなっても幸運による結果だけを求めても何も起きないって。すべてはそれまでの道程が物語るんだってさ。
誇ってもいいんじゃない、三人とも本当におめでとうね。

「「「うん、ありがとう。」」」
何かスッキリした顔になる三人。お守りに頼りきりになるんじゃなく、自らの努力を大切にすればきっと結果はついて来るって。
老婆心ながら三人の若者の行く末に思いを馳せる、おじさんマインドののっぺり佐々木なのでありました。
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