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第二章 中二病には罹りません ー中学校ー

第287話 カップルさん、いらっしゃ~い

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「佐々木くん、無理難題をお願いしておいてこんな事を言うのもなんですが、これ本当にやるんですか?」
困惑の表情を浮かべる加藤校長。気持ちは分かる、提案しておいてなんだが、俺自身こんな事していいのかなと言う葛藤もまだ残っている。
でももう何も浮かばないんだもん。無理だって、他にどうしようもないじゃん。
考えたさ、凄く凄く考え抜いたさ。どうしろって言うのさ、国の方針はビバ一夫多妻・カップル大歓迎なんでしょ?だったらいいじゃん、もう諦めようよ。

俺の心からの叫びは、加藤校長に最後の決心を付けさせた。

「全責任は私が取ります。佐々木君、いえ、のっぺり佐々木さん。思いっきりやっちゃって下さい。」

席を立ち深く一礼をする俺。賽は投げられた、いざ戦場へ。


(side:植松咲子)

「アー、アー、只今マイクのテスト中、只今マイクのテスト中。」
「植松ディレクター、照明OKです。」
「植松ディレクター、セット小道具一式、セッティング完了しました。」

「はい皆さん聞いてください、今回の試みはこれまでにない新しい番組の模索になりますです、はい。これが上手く行けばよし、そうでなくても新たな販路が開けること間違いございませんですよ、気合を入れて行きましょう。」

「「「はい!」」」

しかし佐々木君は相変わらず突拍子もない事を考えますね~。シリーズ化するかどうかは分かりませんが、こう言ったチャレンジ、この植松大好きでありますよ~。
しかも今回はスポンサーまで務めてくれるんですから、言う事有りません。スペシャル番組として関東テレビには話を通してあります。力いっぱいやっちゃってください。

会場は中学校の体育館。その壇上に設置されたソファーの番組セット。
ぞくぞくと会場入りする学校生徒観客たち。会場中央にはメインカメラ、舞台脇にサブカメラ要員が控えている。

”本番五秒前、三、二、一”

「「皆さん、こんにちは~~~~!」」
「本日メイン司会を務めさせていただきます、一年経ってもまだ新人、のっぺり佐々木で~す!」
「はい、アシスタントを務めさせていただきます、大人気女優、伊集院ミホで~す。」
「ミホちゃん今回はオファーを受けてくれてありがとうございます。ものすごい忙《いそが》しかったんじゃないんですか?」
「う~ん、今ドラマの撮影が入ってるんだけど、ちょうどぽっかり空きが出来ちゃってたのよ~。のっぺりくんとは一度一緒に仕事したかったし、事務所もOK出してくれたんで、番組宣伝がてら参加しちゃいました!」
「流石は大女優、一切の無駄が無い。じゃあ番組しょっぱななんだけど番宣入れちゃってください。」
「え、いいの?じゃあ遠慮なく。十月から始まります学園ドラマ「僕たちの七日間」、学園で繰り広げられる恋あり葛藤ありの人間ドラマです。私伊集院は新米教師の小林良子役で出演します。結構重要な役柄なんで、期待してください。主演はあの”hiroshi"君、いったい彼にどんな出会いがあるのか、刮目して観るべし!
月曜八時から、学園ドラマ「僕たちの七日間」、みんな見てね~。」
「おぉ~、それは楽しみです。会場のみんなもぜひ見てくださいね、あの"hiroshi"君が主演ですよ、リアタイ視聴が基本ですからね。」

「さて、ミホちゃんは今日がどんな番組なのか聞いてますか?」
「うん、聞いてはいるんだけど、未だに信じられなくって。本当にこんな番組成立するの?」
「それはやってみないと解りません。タイトルコール、行ってみましょう。」
「「カップルさん、いらっしゃ~い♪」」
”デテレテデテレ、テテッテレッテッテ~♪”

音楽と共に舞台脇から手を繋いで仲良く入って来た三人の男女。
女の子二人に挟まれた男の子は、とてもにこやかに笑っている。

「こんにちは~、ようこそいらっしゃいませ。三人のお名前を窺ってもいいですか?」

「三年C組、西山琢磨、十五歳です。」
「同じく三年C組、佐久間美千代、十五歳です。」
「同じく三年C組、手塚久美子、十四歳です。」

「え~っと、三人はクラスメートって事でいいのかな?」
「「「はい!」」」

「じゃあ、三人の馴れ初めと言うか、どうやって仲良くなったのか教えてくれる?」
「はい、三人とも一年の頃から同じクラスなんですが、切っ掛けは僕たちが入っている鬼ごっこ同好会の夏合宿ですね。」
「私たち二人がマネージャーをやっていて、西山君にアプローチを掛けたんだよね。」
「うん。西山君は今時珍しいくらい純朴で、私たち二人でモノにするんだって頑張ったんだよね。」
「でも二人とも無理に迫ってくる事も無かったし、節度ある距離感を保ってくれたのが良かったのかな?徐々に惹かれて行ったんです。」

「うわ~、マネージャーと選手の恋って本当にあったんだね、お姉さんそう言う話し大好きです。」
「ミホちゃん落ち着いて~、それで西山君たちはすぐに恋人同士になったの?」

「いいえ、家族に紹介してくれたり仲良くはさせて貰ってはいたんだけど、ちゃんとした恋人って訳には。やっぱりその辺男の子は慎重って言うか、付き合ってすぐにポイ捨てする様な最低男子じゃない分なかなかその先に進めなくって。」
「とても大事にしてくれるんだけど、友達以上恋人未満って関係だったんです。」

「それじゃあ、恋人同士になる出来事とかがあったとか?その辺詳しく聞きたいんだけど!」
「ミホちゃ~ん、相手まだ十代だから~、気持ちは分かるけど落ち着いて~。」

「はい、私たち三年生なんで、これから受験じゃないですか。この先も一緒にいられる保障なんて全くないんですよ。」
「高校生になったら新しい出会いもあるだろうし、このまま離れ離れになっちゃうんじゃないかって不安だったんです。」
「だから今年の鬼ごっこ同好会夏合宿の時、思い切って告白したんです。」
「そしたら西山君も嬉しいって言ってくれて。」
「僕も男ですから、こんなに真剣に告白してくれた子にいい加減な気持ちで返事なんて出来ません。これからも結婚を前提にお付き合いさせてもらうつもりです。」

”うわ~~~~~!!”
言い切った西山君に会場からは割れんばかりの拍手。
鳴りやまぬ西山コール、隣で一緒になってシュプレヒコールを上げる伊集院ミホ。
観衆の熱気は高まる一方だった。
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